スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい

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第16話 一ノ瀬さんが得たもの、失ったもの

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「ぴぎゃぴぎゃ」

「辰巳君、スライムを発見しました!」

 降りてすぐのことだ。十m程先にスライムAを発見した。一ノ瀬さんは様子を見ている。

「どうぞ、その神剣でドーンしちゃっていいですよ。俺は一応カバーに入ります」

 一ノ瀬さんがステータスで変化した身体の感覚に慣れることも重要なので、俺は基本後衛でサポート。できるだけ一ノ瀬さんが戦闘し、モンスターを倒してもらう。まぁ、一ノ瀬さんのステータスであれば──。

「了解、いきますっ。ハッ!!」

 十mを一足飛びで詰め、

「ぴっ? ぎゃあああああああああ」

 ドーン。パシャパシャパシャ……。

 振り下ろされた神剣の一撃はまばゆい謎の光を発光させ、スライムを四方八方へ爆散させる。ほら、この通りだ。そして、その酸性雨は十m後方で銃を構えて立ち尽くす俺にも降り注いだ。

 シュー、シュー。

「あ、辰巳君。レベルが、私もレベルが上がりましたっ!」

「うん、良かった。俺も経験値が入ったみたいだよ、ハハハ……」

 経験値の代わりに俺の身体からは煙が立ち上り、HPは2減った。10の内の2。つまり二割削られたわけだが。一ノ瀬さんが本当に嬉しそうなので、こんなのへっちゃらだ。但し、あと四回同じことをされたら俺はリスポーンされる。

「わっ、それは朗報ですっ、良かったですっ」

「う、うん」

 このタイミングでそれを言うと、まるで俺がリスポーンされることが朗報のようだよ、一ノ瀬さん、と思ったが、そんな意図があるわけがないので曖昧に笑っておく。いや、ないよな?

「それでレベルアップでステータスは上がってる?」

「えと……上がってますっ! あっ、それに、ほら、辰巳君見て下さい、宝箱も出ましたっ。赤い宝箱ですね」

「赤箱ぉっ!?」

 俺が雑魚敵はおろか、ボス戦を何十週してもドロップしなかった赤箱を初っ端のスライムでドロップしたようだ。

「そ、そうか神剣でLUKが500も上がってるから……」

 レベル1の平均的なLUKは10~20だ。しかもLUKは成長しづらいため、LUK500とかレベル一万相当かも知れない。恐るべしLUKの差……。

「えと、開けますね?」

「えぇ、どうぞ」

 当然討伐者である一ノ瀬さんが開けるべきだ。何といっても赤箱は装備品以上が確定しているため期待が膨らむ。そして少し緊張した面持ちで一ノ瀬さんは宝箱に手を当てると──。

『スライムパーカー』

 と、そう表示された。

「辰巳君っ、スライムパーカーが出ました!」

「う、うん、やったね? と言っても初めて見る装備だから、どんな性能だろうか」

 スライムから装備が落ちたことはないため詳細は分からなかった。共有アイテムボックスに仕舞われたスライムパーカーをタップし、性能を見てみる。

【スライムパーカー】頭+上半身装備。VIT、MND+10、乗算ボーナス1.05倍。物理攻撃15%カット。炎ダメージ1.5倍、水ダメージ0.5倍。

「なるほど……、強いと思うな。物理カット15%と水ダメ半減はすごく良さそうだ。炎属性の攻撃を持つ敵にさえ気を付ければ結構長く使えるんじゃないかな?」

「わぁ、使える装備で良かったです! ……どうします? 辰巳君が装備します?」

 この時の問いに俺は善意で答えた。100%厚意からこう答えたのだ。

「いや、一ノ瀬さんが倒した敵からドロップ、まして初めての戦利品なんだから一ノ瀬さんが装備すべきだよ。ほら、それに俺はこのゴブリン装備があるし」

 自嘲しながらサラッとそう提案したのだ。それがまさかあんな──。

「フフ、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。装備【スライムパーカー】」

 一ノ瀬さんの身体が一瞬光り、その上半身にはスライムパーカーが装備されていた。そう、まさにスライムがそのまま張り付いたようなパーカーだ。つまり、半透明。いえす、ぶらじゃーだ。

「………………わぁ」

「え、どうし──。キャァァァッ!! み、見ないで下さいっ」

「ハッ、はいっ」

 両腕で胸を隠し、しゃがみこむ一ノ瀬さん。くるりとその場で後ろを向き、腰ミノをひらひらとさせる俺。

「…………装備、チュートリアルアーマー。……ふぅ、もうこっちを向いても、大丈夫です」

 恐る恐る振り返る俺。一ノ瀬さんは僅かにうるんだ目でこちらを睨んでいた。

「……辰巳君はこうなるって知ってたんですか?」

「いえ、知りませんでした。神に誓って」

 俺は土下座し、顔を上げないままそう言った。

「……信じます。はしたない姿を見せてしまってごめんなさい。できれば忘れて下さい」

「もちろんです。忘れます」

「じゃあいいです。はい、もう立って下さい。驚いただけで別に怒ってもいませんから」

「……ありがとうございます」

 一ノ瀬さんは優しかった。もしこのまま喧嘩になっていたら俺は一ノ瀬さんに、一ノ瀬さんだって俺のパンツ見たんだからおあいこじゃん、と言おうとしていた。いや、言わずに済んで良かった。本当に。
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