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どうやら異世界に来たようだ
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目が開けると、そこは異世界だった。
なんていうものに憧れていたのは5年前。そして今、現実となったようだが…。
「ふ、ふ、ふざけんなぁぁぁ」
見渡す限り森、森、森…なんてこともなく、目の前に王様やらなんやらが召喚に成功したと喜んでいるでもなく、赤子からスタートというわけでもない。
僕はただ、大きな窓が一つ付いた木製の4畳程の部屋にいた。
窓からの風景からどうやらここは二階のようだ。
外を覗くとそこには中世のヨーロッパのような町並みが広がっており、人間だけでなく俗に言うエルフ、獣人、ドワーフなどが行き交っている。他にも背中に羽があったり、獣人と言うよりも最早二足歩行の獣という方が似合う風貌の者もいた。
いやぁ、犬の散歩のような感覚で人間を丸呑みできる大きさの蜘蛛を連れているのを見たときはかなり驚いた。普通に危ないと思うし、できれば遭遇したくない程度にキモかった。
驚くなんて一体何年ぶりだろうか。
取り敢えず視線を窓の外から室内へと移す。
少し傷んだフローリングに、白く寝心地が良さそうなシーツと布団の乗った木製ベッド。勉強机のようなものに、それに合わせた椅子(もちろん木製)。あとは…
「鏡と封筒…。」
鏡は僕の全体を映せる程度に少し大きめであり、机の上に置いてある封筒は紙が上質(この異世界での基準)過ぎて違和感がありまくりだ。
まずは鏡を覗いてみる、つもりなのだがこれで姿形が変わっていたらと思うと少し気が引ける。
意を決し、覗いてみると…
「なんだ。そのままか。」
血の気のない死人のような白い肌、白というより銀に近い色を持ち肩あたりできれいに切りそろえられた髪、血のように赤く濁った大きく少し吊った瞳とそれに伴った整いすぎた顔。体は10歳という年齢にしては細く、そして小さい。
そしてその容姿に似合わない黒い軍服に、腰に一本の刀を下げている。
戦場の死神と呼ばれた少女、『ソラ』の姿が映っていた。
「やっぱり、この服は似合わないな。」
全体的に白く実年齢よりも幼く見える僕に黒い軍服は思わず苦笑いするほどに似合っていない。
刀だけは髪と瞳に合わせ白と赤になっているが、それが更に協調性を失わさせている。
ともかく、姿が変わっていなくて良かった。いや、羽があれば飛べていたと考えると…まぁ、いい。どうせ慣れていなくて練習する羽目になっただろう。そんなことはめんどくさい。
「さて、次は…こいつだな。」
僕は一つの違和感しかない封筒を取り、差出人と宛名を確認する。その瞬間、今日二度目の驚きが目に入った。
「なんで、僕の、昔の名前が…。」
僕の昔の名を知る者はもう居ない。かつて知っていた者たちは全員帰らぬ人となり、名前は戸籍を丸々消した。その後は「ソラ」として生きてきたし、その前の所有物等も全て処分した。
差出人の場所にはテルシェ。聞き覚えのない名だ。
「取り敢えず…読むか」
刀を使って封を切る。中にはきれいな文字の並んだ手紙が一枚入っていた。
拝啓 ――― 様
はじめまして、私はテルシェ。
この世界の唯一神として存在している者です。
と言っても、この世界に宗教の概念は無いので私の存在を知っているのはほんの一握りだけれども。
あなたがめんどくさいと思っている、魔王討伐のために、危険人物として教会に監禁、などということもありません。
ですがあなたにひとつお願いがあるのです。
この世界は魔法主義になっており、自身の身体能力を上げることは無駄であるという考えが一般的な考えになってしまっています。
しかし、魔力を持つ者は半々。そのため魔力持ちとそうでない者の扱いの格差が年々広がっています。
魔王は存在しませんが、魔獣の存在するこの世界において魔力が無いという理由から優秀な人材を逃すのは人類における痛手です。
そこであなたに魔法は万能ではなく、人の価値のすべてではないと証明してほしいのです。
刀一本で生き抜いてきたあなたなら…きっとできるはずです。
めんどくさい、帰りたいと願うのであればこの手紙を封筒に戻してください。
ですが、もしこの願いを聞き届けてくれるのならば一階に説明のための人員が待機しています。
その者から今後の大まかな動きやこの世界の情報などをを聞いてください。
この世界をあなたが良き道へ導いてくれることを私は祈ります。
テルシェより
要するに、魔法こそが全てだと勘違いし天狗になっている奴らの鼻っ柱をへし折れ、ということか。
僕は手紙と封筒を手から離した。その二枚の紙は空気抵抗を受けながらゆっくりと落ちてゆく。
「まぁ、暇つぶし程度にやりますか。」
僕は扉を開け部屋を出た。
床に落ちた二枚の紙は、差出人と宛先人の名がわからないほどに切り刻まれていた。
なんていうものに憧れていたのは5年前。そして今、現実となったようだが…。
「ふ、ふ、ふざけんなぁぁぁ」
見渡す限り森、森、森…なんてこともなく、目の前に王様やらなんやらが召喚に成功したと喜んでいるでもなく、赤子からスタートというわけでもない。
僕はただ、大きな窓が一つ付いた木製の4畳程の部屋にいた。
窓からの風景からどうやらここは二階のようだ。
外を覗くとそこには中世のヨーロッパのような町並みが広がっており、人間だけでなく俗に言うエルフ、獣人、ドワーフなどが行き交っている。他にも背中に羽があったり、獣人と言うよりも最早二足歩行の獣という方が似合う風貌の者もいた。
いやぁ、犬の散歩のような感覚で人間を丸呑みできる大きさの蜘蛛を連れているのを見たときはかなり驚いた。普通に危ないと思うし、できれば遭遇したくない程度にキモかった。
驚くなんて一体何年ぶりだろうか。
取り敢えず視線を窓の外から室内へと移す。
少し傷んだフローリングに、白く寝心地が良さそうなシーツと布団の乗った木製ベッド。勉強机のようなものに、それに合わせた椅子(もちろん木製)。あとは…
「鏡と封筒…。」
鏡は僕の全体を映せる程度に少し大きめであり、机の上に置いてある封筒は紙が上質(この異世界での基準)過ぎて違和感がありまくりだ。
まずは鏡を覗いてみる、つもりなのだがこれで姿形が変わっていたらと思うと少し気が引ける。
意を決し、覗いてみると…
「なんだ。そのままか。」
血の気のない死人のような白い肌、白というより銀に近い色を持ち肩あたりできれいに切りそろえられた髪、血のように赤く濁った大きく少し吊った瞳とそれに伴った整いすぎた顔。体は10歳という年齢にしては細く、そして小さい。
そしてその容姿に似合わない黒い軍服に、腰に一本の刀を下げている。
戦場の死神と呼ばれた少女、『ソラ』の姿が映っていた。
「やっぱり、この服は似合わないな。」
全体的に白く実年齢よりも幼く見える僕に黒い軍服は思わず苦笑いするほどに似合っていない。
刀だけは髪と瞳に合わせ白と赤になっているが、それが更に協調性を失わさせている。
ともかく、姿が変わっていなくて良かった。いや、羽があれば飛べていたと考えると…まぁ、いい。どうせ慣れていなくて練習する羽目になっただろう。そんなことはめんどくさい。
「さて、次は…こいつだな。」
僕は一つの違和感しかない封筒を取り、差出人と宛名を確認する。その瞬間、今日二度目の驚きが目に入った。
「なんで、僕の、昔の名前が…。」
僕の昔の名を知る者はもう居ない。かつて知っていた者たちは全員帰らぬ人となり、名前は戸籍を丸々消した。その後は「ソラ」として生きてきたし、その前の所有物等も全て処分した。
差出人の場所にはテルシェ。聞き覚えのない名だ。
「取り敢えず…読むか」
刀を使って封を切る。中にはきれいな文字の並んだ手紙が一枚入っていた。
拝啓 ――― 様
はじめまして、私はテルシェ。
この世界の唯一神として存在している者です。
と言っても、この世界に宗教の概念は無いので私の存在を知っているのはほんの一握りだけれども。
あなたがめんどくさいと思っている、魔王討伐のために、危険人物として教会に監禁、などということもありません。
ですがあなたにひとつお願いがあるのです。
この世界は魔法主義になっており、自身の身体能力を上げることは無駄であるという考えが一般的な考えになってしまっています。
しかし、魔力を持つ者は半々。そのため魔力持ちとそうでない者の扱いの格差が年々広がっています。
魔王は存在しませんが、魔獣の存在するこの世界において魔力が無いという理由から優秀な人材を逃すのは人類における痛手です。
そこであなたに魔法は万能ではなく、人の価値のすべてではないと証明してほしいのです。
刀一本で生き抜いてきたあなたなら…きっとできるはずです。
めんどくさい、帰りたいと願うのであればこの手紙を封筒に戻してください。
ですが、もしこの願いを聞き届けてくれるのならば一階に説明のための人員が待機しています。
その者から今後の大まかな動きやこの世界の情報などをを聞いてください。
この世界をあなたが良き道へ導いてくれることを私は祈ります。
テルシェより
要するに、魔法こそが全てだと勘違いし天狗になっている奴らの鼻っ柱をへし折れ、ということか。
僕は手紙と封筒を手から離した。その二枚の紙は空気抵抗を受けながらゆっくりと落ちてゆく。
「まぁ、暇つぶし程度にやりますか。」
僕は扉を開け部屋を出た。
床に落ちた二枚の紙は、差出人と宛先人の名がわからないほどに切り刻まれていた。
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