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新たなる問題の発生
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突然の事件が起きた。弟の裕二が頭を打って入院したと連絡があったのだ。学校側の説明では、どうやら遊んでいる最中に不注意で怪我をしたとのことだ。お母さんが外へ出れる身体でないため、俺が入院先の病院へ行くことになった。幸い、裕二は重傷ではなく、数日間入院すれば退院できるレベルの怪我だった。
「裕二、どうしたんだ頭なんて怪我して?」
「ちょっと階段で転んじゃっただけだから、大丈夫だよ」
どことなく裕二の表情が暗い。何か、他に言いたいことがあるのだろうか?
「何かあるならお兄ちゃんに言ってみな」
「いいよ、お兄ちゃん大変そうだし……」
この言い方は何かある。でも裕二の性格からして正直に言うとは思えない。アプローチの仕方を変えてみることにした。僕は治療を担当した先生を探して話を聞くことにした。
「先生、弟の治療ありがとうございます」
「あぁ、君がお兄さんか。ちょっと気になることがあってね。君の家はその、教育が厳しい家庭かい?」
「厳しくはないと思いますが、というよりお父さんもいないし、お母さんも動けない状態なので、経済的に厳しいといった環境です」
「そうでしたか。イヤなことを聞いてしまって申し訳ないです。ですが、誰かから暴行を受けたと思われる痣が複数身体から見つかりましてね。場合によっては警察に通報しようか考えていたところなんですよ」
突然明かされた事実に俺は驚いた。
「弟からは何か話を聞きましたか?」
「口を閉ざしています。もし家庭環境に原因がないとすれば、恐らく学校における問題かと思います。本人からヘルプがない以上、私としては動けない立場なのですが、一度弟さんとよく話されるのが良いかと思います」
そう言われて改めて裕二と話した。しかし、何も答えを返してこなかった。一家が大変な時に迷惑をかけたくないと裕二なりに気を遣っているのだろう。どうすれば良いか……。
「ダメ元で相談してみよう」
俺はおじさんに連絡をしてみた。事情を話すと、すぐに来てくれることになった。
「なるほど、いわゆる漢のプライドってやつだね。ただ、君の弟君が潰れる前に心の声を聞いてやらないとね」
二時間ほどして、おじさんが病院に来てくれた。
「すいません無理を言って急に来て貰って」
俺は頭をぺこぺことさげた。
「なぁに、君の弟君のピンチとあれば助けにならないとね」
俺とおじさんで改めて裕二の休んでいる部屋へとお邪魔した。
「はじめまして、私は連城というおじさんだ。君のお兄さんにはいつもお世話になっているよ」
「どうも、はじめまして」
裕二は少し緊張しているようだった。おじさんはまず、趣味や休日何をしているかというお話をして、緊張をほぐすようにした。裕二の緊張がほぐれたのを見計らっておじさんは本題に入った。
「少し、君についてお話を聞かせて貰った。何を聞いたかははっきりは聞かないが、その話を聞いて私が思ったのは、君は幼いながらも辛抱強く、プライドの高い男だと思った。それは心から立派だと私は思うよ」
「……ど、どうも……」
「そして君がより良い男になるためには勇気も必要だ」
「ゆ、勇気ならあるよ……」
「私が言った勇気とは自分よりも強い者に立ち向かう事ではない。自分の弱さを認めることだ。それは大の大人でも持っていない事が多いんだよ」
「……」
裕二は何も言わないが、心が動かされているのが兄として経験的に分かった。
「弱さを認めた後は私を頼れば良い。お手数をかけさせたくないという気持ちがあるなら、大丈夫だ。クソみたいな連中を地獄に葬るのはむしろ楽しめる性格なんでね」
「おじさん!」
爆弾発言をしたおじさんに思わず突っ込みをいれてしまった。
「もしよければ……相談いいかな?」
「ああ、いいとも」
やった、裕二がようやく話す気になってくれた。まずこれで一歩進めたぞ。最後は危ないと思ったけど、やっぱりおじさんの人生経験あってこその発言に、裕二は説得力を感じたのだろうな。
「僕、学校でいじめられているんだ。体育が苦手だからそれでいじめっ子が目をつけて、僕を毎日殴ったり蹴ったりするんだ。その子がいじめるから周りの子も加担して僕をいじめるようになったんだ。入院したのも、僕をお寺の鐘つきの鐘みたいに持ち上げて数人がかりで頭をコンクリートにぶつけたからなんだ……」
あまりにも酷い事実に僕は激怒した。この怒りをすぐに学校にぶつけたい。
「裕二! そういう事は前々からあったんだろう! すぐに先生に言えよ!」
「言ったけど……それで余計酷くなった結果が今の状況だし……それに、いじめっ子の親が元暴力団で先生もあまり強く言えないって背景があるみたいなんだ……」
「春音君、確か学校側の説明でも、いじめによる暴行ではなく、遊んでの怪我と虚偽の説明があったね。その時点で学校側にまともに対応する気はないと思うね」
「なんて酷いんだ……」
「それと裕二君、そのいじめっ子の親御さんは元暴力団と言っていたね。もしかしたらおじさんはその人を知っているかもしれない。いじめっ子の名前を聞かせてくれないか」
「藤野 進樹って名前だよ」
おじさんはその名前を聞いて、にやりと笑った。
「あいつの息子か、親が親なら子も子だな……裕二君、おじさんが必ず解決してあげるからね。それと、いじめを解決するには相応の力が必要で、非凡な子でもない限り一人で解決するのは難しい。だからこそ、今の君のように協力者を求める行動というのが大事になる。今後の人生に活かすといい」
「あ……ありがとうございます!」
やっと裕二の顔の表情が明るくなってきた。今の時点で、おじさんに感謝の気持ちでいっぱいだ。
「さて、まずはいじめ問題にまともに対応しない学校にお仕置きをせんとな……」
裕二が怪我をしてから3日後に変化が起きた。はじめに裕二の小学校にお年寄りからかなりのクレームの電話がかかってきた。クレームの内容は主に、いじめ問題にまともに対応しない小学校を批判する声ばかりだった。それだけではなかった。老人達が集団になってデモ活動までやっているのだ。おまけに裕二の担任の名前・顔写真までついている。
「おじさん……なんかとんでもない事になっているんだけどなにをしたの?」
「なぁに、正義のためであれば人はかなり攻撃的になれるという心理を利用したまでさ。特にお年寄りは子供が大好きだからね。私の人脈を利用して事実を近所のお年寄り達に広めてもらっただけさ」
俺は、改めておじさんを敵にまわすようなことはしないのが良いと心から思った。そしておじさんの裏での工作活動の成果で学校側から直接お詫びをする場が設けられた。裕二の入院している部屋に担任と校長が来るとのことだった。
「会いたくない」
裕二の一言で俺とおじさんが代理として謝罪を聞くことになった。
「この度は、私どもの管理の不届きでお子様に怪我をさせてしまい申し訳ありませんでした!」
深々と頭を下げて先生二人が謝罪した。
「いえいえ、謝って貰えれb」
「ここからは私一人で話す」
おじさんが僕の言葉をさえぎった。
「謝罪したという実績を残すためだけに来られても困りますねえ。現に裕二君は先生二人に会いたくないと言っている。もっと心からの謝罪対応をして貰わないと彼も学校もいじめっ子も許さないでしょう」
「で、では加害生徒に十分に言い聞かせて……」
「人様にいじめをする生徒がたった一回緩い説教したごときでいじめをしない子になるとお思いなんですかね?」
「いえいえ、加害者生徒の親御さんも交えて話せば、必ず反省してくれると思うので」
「理想で子供の教育を語るんじゃねえぞ!!」
おじさん恒例のヤクザモードは何度か見ているが、正直言っていまだに慣れないし怖い……。
「悪人は説教しても大きくなっても悪人のままだ!! だから二度と悪さをしでかさねえように、トラウマになるレベルの厳罰を与えることができる環境にする必要がある!! つまり、悪さして刑務所にぶちこまれるのと同じ理屈だ!!」
「そ、それではあなたは加害者を少年院にでも入れたいのですか?」
「できれば、少年院に入れるよりもキツい事が良いと考えている。あとそれと、あんたら被害者生徒が遊びで怪我をしたと虚偽の報告をしたな?」
「そ、それは担任の私が周りの生徒の声を聞いてそのまま校長まで報告したからです。事実確認を確実にしていなかった点については深く反省しています」
「……おい、お前は教師止めて泥棒にでもなる気か?」
「は、はぁ?」
担任はおじさんの言った言葉の意味を理解できていなかったようだ。
「嘘をつくなと言っているんだよ!! お前は被害者生徒がいじめられていたのは分かっていた!! だったら容易にいじめによる怪我と判断は可能だろう!! それともそこの校長さんは教師は嘘つきになれとでも教えてんのか!!」
校長はしゃべりずらそうな雰囲気だ。
「い、いえ、決してそのような事は……」
「仕方ないじゃないですか!! いじめが認定されれば、ただでさえ多い仕事が増えてサービス残業の時間も増えるし!! 私の評価は下がって安月給が維持されるんですよ!! いじめ問題なんてくそくらえですよ!!」
ついに担任が暴走してしまった。これはますますおじさんがヒートアップするのでは……
「くっくっく、担任さんよ、あんたの本音が聞けて少しは仏の気持ちを出す気になったぜ。公務員様も苦労してんだな……校長よ、直接的原因では内が職場環境の改善もやっておいたほうがいいぜ」
「は、はい!!」
「あと担任さんよ、元暴力団の親御さんと俺とで対話する機会をつくってもらおうか? この後のケリは俺がつける」
「わ、分かりました!!」
といった感じで、先生方による謝罪対応は終わった。
「春音君、驚かせてしまって済まなかったね。でも現実的にあそこまでまともに対応はしてくれないんだ」
「正直おじさんが怖かったです……でも弟の裕二のためにここまでやってくれて本当に感謝しています」
「感謝の気持ちを述べるのはまだ早いさ」
そう、肝心の元暴力団の父親とやらである。小学校内の空き部屋でおじさんと僕が待機していた。やがて、担任とみるからに柄の悪い中年がきた。その中年の見た目、スキンヘッド、サングラス、ひげ、太った体型、手首に数珠と、元暴力団と言われても納得のいく格好である。
「忙しいのに呼び出しやがって!!」
ドスを効かせた声で問題児の父親が怒鳴って俺達を睨み付けてきた。
「元気そうだな、藤野。俺だ、連城だ」
おじさんのその一言で問題児の父親が萎縮した。
「れっ!? 連城、いや連城さん!!」
「担任さん、ここからは親密なお話になるんでしばらく席を外して頂きたい。よろしいかな?」
「はい、了解です!!」
担任が部屋を出るとおじさんの話が始まった。
「確かお前が売春の子をかなりの数ポン中にして、俺がお仕置きして以来だな。重体までいくレベルだったが、元気そうで安心したぜ」
「は、はい……」
さっきまでとはうってかわって問題児の父親が小さく見えた。
「俺の知り合いの子が酷い暴行を受けてな。話を聞いてみると、お前の子が主な要因らしい。だから、父親としてお前にはその子に容赦なきしつけをして欲しい。少しでもしつけが足りない、被害児童の裕二君への謝罪が甘いと思ったら、また重体になっちまうかもなぁ?」
どたん
ついには問題児の父親が土下座をしだした。
「申し訳ありませんでした!!」
「よろしい。お前も忙しいようだからすぐに帰ってお前のガキをしつけるんだな」
「はい!!」
思ったよりもあっさりと対応が済んでしまったようだ。
「よし、これで裕二君も小学校に無事に登校できるだろう」
後日のことである。裕二の話によれば、藤野進樹が顔を酷く腫らして登校してきたようで、裕二の姿を見ると、皆の目があるにもかかわらずすぐにそのばで土下座をしたのだ。さらに裕二を少しでもいじめるやつがいたら俺がぶん殴ると公言した。これにて裕二のいじめ問題は解決したのだった。
ただ一つ、心配な出来事が一つ出来た。
「お兄ちゃん、連城のおじさんとエッチなことをしているんでしょ?」
「ふぁっ!? そそそそ、そんなことしてないぞ!!」
「いや、隠さなくても分かるよ。お金を貰ってやっているんでしょ。僕もちょっとはお兄ちゃんの力になりたいって考えているし、それに……連城のおじさんだったらエッチなことをされてもいいかなと思う……」
どうやら、あの一件で弟がおじさんに惚れてしまったようだ。俺の恋のライバルが弟になろうとは夢にも思ってなかった。
「裕二、どうしたんだ頭なんて怪我して?」
「ちょっと階段で転んじゃっただけだから、大丈夫だよ」
どことなく裕二の表情が暗い。何か、他に言いたいことがあるのだろうか?
「何かあるならお兄ちゃんに言ってみな」
「いいよ、お兄ちゃん大変そうだし……」
この言い方は何かある。でも裕二の性格からして正直に言うとは思えない。アプローチの仕方を変えてみることにした。僕は治療を担当した先生を探して話を聞くことにした。
「先生、弟の治療ありがとうございます」
「あぁ、君がお兄さんか。ちょっと気になることがあってね。君の家はその、教育が厳しい家庭かい?」
「厳しくはないと思いますが、というよりお父さんもいないし、お母さんも動けない状態なので、経済的に厳しいといった環境です」
「そうでしたか。イヤなことを聞いてしまって申し訳ないです。ですが、誰かから暴行を受けたと思われる痣が複数身体から見つかりましてね。場合によっては警察に通報しようか考えていたところなんですよ」
突然明かされた事実に俺は驚いた。
「弟からは何か話を聞きましたか?」
「口を閉ざしています。もし家庭環境に原因がないとすれば、恐らく学校における問題かと思います。本人からヘルプがない以上、私としては動けない立場なのですが、一度弟さんとよく話されるのが良いかと思います」
そう言われて改めて裕二と話した。しかし、何も答えを返してこなかった。一家が大変な時に迷惑をかけたくないと裕二なりに気を遣っているのだろう。どうすれば良いか……。
「ダメ元で相談してみよう」
俺はおじさんに連絡をしてみた。事情を話すと、すぐに来てくれることになった。
「なるほど、いわゆる漢のプライドってやつだね。ただ、君の弟君が潰れる前に心の声を聞いてやらないとね」
二時間ほどして、おじさんが病院に来てくれた。
「すいません無理を言って急に来て貰って」
俺は頭をぺこぺことさげた。
「なぁに、君の弟君のピンチとあれば助けにならないとね」
俺とおじさんで改めて裕二の休んでいる部屋へとお邪魔した。
「はじめまして、私は連城というおじさんだ。君のお兄さんにはいつもお世話になっているよ」
「どうも、はじめまして」
裕二は少し緊張しているようだった。おじさんはまず、趣味や休日何をしているかというお話をして、緊張をほぐすようにした。裕二の緊張がほぐれたのを見計らっておじさんは本題に入った。
「少し、君についてお話を聞かせて貰った。何を聞いたかははっきりは聞かないが、その話を聞いて私が思ったのは、君は幼いながらも辛抱強く、プライドの高い男だと思った。それは心から立派だと私は思うよ」
「……ど、どうも……」
「そして君がより良い男になるためには勇気も必要だ」
「ゆ、勇気ならあるよ……」
「私が言った勇気とは自分よりも強い者に立ち向かう事ではない。自分の弱さを認めることだ。それは大の大人でも持っていない事が多いんだよ」
「……」
裕二は何も言わないが、心が動かされているのが兄として経験的に分かった。
「弱さを認めた後は私を頼れば良い。お手数をかけさせたくないという気持ちがあるなら、大丈夫だ。クソみたいな連中を地獄に葬るのはむしろ楽しめる性格なんでね」
「おじさん!」
爆弾発言をしたおじさんに思わず突っ込みをいれてしまった。
「もしよければ……相談いいかな?」
「ああ、いいとも」
やった、裕二がようやく話す気になってくれた。まずこれで一歩進めたぞ。最後は危ないと思ったけど、やっぱりおじさんの人生経験あってこその発言に、裕二は説得力を感じたのだろうな。
「僕、学校でいじめられているんだ。体育が苦手だからそれでいじめっ子が目をつけて、僕を毎日殴ったり蹴ったりするんだ。その子がいじめるから周りの子も加担して僕をいじめるようになったんだ。入院したのも、僕をお寺の鐘つきの鐘みたいに持ち上げて数人がかりで頭をコンクリートにぶつけたからなんだ……」
あまりにも酷い事実に僕は激怒した。この怒りをすぐに学校にぶつけたい。
「裕二! そういう事は前々からあったんだろう! すぐに先生に言えよ!」
「言ったけど……それで余計酷くなった結果が今の状況だし……それに、いじめっ子の親が元暴力団で先生もあまり強く言えないって背景があるみたいなんだ……」
「春音君、確か学校側の説明でも、いじめによる暴行ではなく、遊んでの怪我と虚偽の説明があったね。その時点で学校側にまともに対応する気はないと思うね」
「なんて酷いんだ……」
「それと裕二君、そのいじめっ子の親御さんは元暴力団と言っていたね。もしかしたらおじさんはその人を知っているかもしれない。いじめっ子の名前を聞かせてくれないか」
「藤野 進樹って名前だよ」
おじさんはその名前を聞いて、にやりと笑った。
「あいつの息子か、親が親なら子も子だな……裕二君、おじさんが必ず解決してあげるからね。それと、いじめを解決するには相応の力が必要で、非凡な子でもない限り一人で解決するのは難しい。だからこそ、今の君のように協力者を求める行動というのが大事になる。今後の人生に活かすといい」
「あ……ありがとうございます!」
やっと裕二の顔の表情が明るくなってきた。今の時点で、おじさんに感謝の気持ちでいっぱいだ。
「さて、まずはいじめ問題にまともに対応しない学校にお仕置きをせんとな……」
裕二が怪我をしてから3日後に変化が起きた。はじめに裕二の小学校にお年寄りからかなりのクレームの電話がかかってきた。クレームの内容は主に、いじめ問題にまともに対応しない小学校を批判する声ばかりだった。それだけではなかった。老人達が集団になってデモ活動までやっているのだ。おまけに裕二の担任の名前・顔写真までついている。
「おじさん……なんかとんでもない事になっているんだけどなにをしたの?」
「なぁに、正義のためであれば人はかなり攻撃的になれるという心理を利用したまでさ。特にお年寄りは子供が大好きだからね。私の人脈を利用して事実を近所のお年寄り達に広めてもらっただけさ」
俺は、改めておじさんを敵にまわすようなことはしないのが良いと心から思った。そしておじさんの裏での工作活動の成果で学校側から直接お詫びをする場が設けられた。裕二の入院している部屋に担任と校長が来るとのことだった。
「会いたくない」
裕二の一言で俺とおじさんが代理として謝罪を聞くことになった。
「この度は、私どもの管理の不届きでお子様に怪我をさせてしまい申し訳ありませんでした!」
深々と頭を下げて先生二人が謝罪した。
「いえいえ、謝って貰えれb」
「ここからは私一人で話す」
おじさんが僕の言葉をさえぎった。
「謝罪したという実績を残すためだけに来られても困りますねえ。現に裕二君は先生二人に会いたくないと言っている。もっと心からの謝罪対応をして貰わないと彼も学校もいじめっ子も許さないでしょう」
「で、では加害生徒に十分に言い聞かせて……」
「人様にいじめをする生徒がたった一回緩い説教したごときでいじめをしない子になるとお思いなんですかね?」
「いえいえ、加害者生徒の親御さんも交えて話せば、必ず反省してくれると思うので」
「理想で子供の教育を語るんじゃねえぞ!!」
おじさん恒例のヤクザモードは何度か見ているが、正直言っていまだに慣れないし怖い……。
「悪人は説教しても大きくなっても悪人のままだ!! だから二度と悪さをしでかさねえように、トラウマになるレベルの厳罰を与えることができる環境にする必要がある!! つまり、悪さして刑務所にぶちこまれるのと同じ理屈だ!!」
「そ、それではあなたは加害者を少年院にでも入れたいのですか?」
「できれば、少年院に入れるよりもキツい事が良いと考えている。あとそれと、あんたら被害者生徒が遊びで怪我をしたと虚偽の報告をしたな?」
「そ、それは担任の私が周りの生徒の声を聞いてそのまま校長まで報告したからです。事実確認を確実にしていなかった点については深く反省しています」
「……おい、お前は教師止めて泥棒にでもなる気か?」
「は、はぁ?」
担任はおじさんの言った言葉の意味を理解できていなかったようだ。
「嘘をつくなと言っているんだよ!! お前は被害者生徒がいじめられていたのは分かっていた!! だったら容易にいじめによる怪我と判断は可能だろう!! それともそこの校長さんは教師は嘘つきになれとでも教えてんのか!!」
校長はしゃべりずらそうな雰囲気だ。
「い、いえ、決してそのような事は……」
「仕方ないじゃないですか!! いじめが認定されれば、ただでさえ多い仕事が増えてサービス残業の時間も増えるし!! 私の評価は下がって安月給が維持されるんですよ!! いじめ問題なんてくそくらえですよ!!」
ついに担任が暴走してしまった。これはますますおじさんがヒートアップするのでは……
「くっくっく、担任さんよ、あんたの本音が聞けて少しは仏の気持ちを出す気になったぜ。公務員様も苦労してんだな……校長よ、直接的原因では内が職場環境の改善もやっておいたほうがいいぜ」
「は、はい!!」
「あと担任さんよ、元暴力団の親御さんと俺とで対話する機会をつくってもらおうか? この後のケリは俺がつける」
「わ、分かりました!!」
といった感じで、先生方による謝罪対応は終わった。
「春音君、驚かせてしまって済まなかったね。でも現実的にあそこまでまともに対応はしてくれないんだ」
「正直おじさんが怖かったです……でも弟の裕二のためにここまでやってくれて本当に感謝しています」
「感謝の気持ちを述べるのはまだ早いさ」
そう、肝心の元暴力団の父親とやらである。小学校内の空き部屋でおじさんと僕が待機していた。やがて、担任とみるからに柄の悪い中年がきた。その中年の見た目、スキンヘッド、サングラス、ひげ、太った体型、手首に数珠と、元暴力団と言われても納得のいく格好である。
「忙しいのに呼び出しやがって!!」
ドスを効かせた声で問題児の父親が怒鳴って俺達を睨み付けてきた。
「元気そうだな、藤野。俺だ、連城だ」
おじさんのその一言で問題児の父親が萎縮した。
「れっ!? 連城、いや連城さん!!」
「担任さん、ここからは親密なお話になるんでしばらく席を外して頂きたい。よろしいかな?」
「はい、了解です!!」
担任が部屋を出るとおじさんの話が始まった。
「確かお前が売春の子をかなりの数ポン中にして、俺がお仕置きして以来だな。重体までいくレベルだったが、元気そうで安心したぜ」
「は、はい……」
さっきまでとはうってかわって問題児の父親が小さく見えた。
「俺の知り合いの子が酷い暴行を受けてな。話を聞いてみると、お前の子が主な要因らしい。だから、父親としてお前にはその子に容赦なきしつけをして欲しい。少しでもしつけが足りない、被害児童の裕二君への謝罪が甘いと思ったら、また重体になっちまうかもなぁ?」
どたん
ついには問題児の父親が土下座をしだした。
「申し訳ありませんでした!!」
「よろしい。お前も忙しいようだからすぐに帰ってお前のガキをしつけるんだな」
「はい!!」
思ったよりもあっさりと対応が済んでしまったようだ。
「よし、これで裕二君も小学校に無事に登校できるだろう」
後日のことである。裕二の話によれば、藤野進樹が顔を酷く腫らして登校してきたようで、裕二の姿を見ると、皆の目があるにもかかわらずすぐにそのばで土下座をしたのだ。さらに裕二を少しでもいじめるやつがいたら俺がぶん殴ると公言した。これにて裕二のいじめ問題は解決したのだった。
ただ一つ、心配な出来事が一つ出来た。
「お兄ちゃん、連城のおじさんとエッチなことをしているんでしょ?」
「ふぁっ!? そそそそ、そんなことしてないぞ!!」
「いや、隠さなくても分かるよ。お金を貰ってやっているんでしょ。僕もちょっとはお兄ちゃんの力になりたいって考えているし、それに……連城のおじさんだったらエッチなことをされてもいいかなと思う……」
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