電脳恋愛のすゝめ

コトシナミノル

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第3話 私の初めての友達

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「ふへへ……フレンド……かぁ……」

 久々の他人との狩りは新鮮でした。
 最初は不安で仕方がありませんでした。私の生涯を振り返ると、他人と何かをした記憶というのはほとんどありません。

 幼稚園の時は砂場で泥団子を作るのが好きでした。皆は鬼ごっこやおままごと、ブロックで遊んでいましたが、私は1人でピカピカの泥団子を作るのに幼稚園時代の全てを費やしました。
 小学校の時は教室の隅で本を読むのが好きでした。男子は校庭でボール遊び、女子は教室で好きな配信者やお洋服、お化粧に関するおしゃべりをしていたのだと思います。けれど、私は誰とも話す事はなく、教室の隅で自分の世界に引きこもり、6年間を終えました。
 中学生に上がり、一つの出会いがありました。無論、引っ込み思案でコミュ障の私ですから、対人的なそれではありません。

 モンフェスです。

 確か私が小学生の頃にはもう、モンフェスの発売自体はされていました。しかし家庭用であったため、小学生にはゲーム機本体を購入するハードルが高く、興味があっても手を出せずにいました。
 では何故中学生になって買ったのかというと、この時に出たモンフェスは携帯機専用だったからです。その携帯機はちょうど私の父が持っており、私が必要ならと父が譲ってくれました。それから私はお小遣いを貯めてソフトを購入し、モンフェスに手を出したのです。
 あの時どうしてこんなにモンフェスがやりたかったのかは今でもわからないことがあります。一つだけわかる事は、あの時このゲームに手を出した事で、ギリギリ踏みとどまっていた私は、世間一般のレールから明確に足を踏み外してしまったのだという事でしょう。
 それから私はひたすらモンスターを討伐しました。誰に頼まれたわけでもなく、別にお金が貰えるわけでもないのに私は狩って、狩って、狩って、ひたすらモンスターを狩りました。
 そんな感じで私の中学生活3年間は幕を閉じました。
 後悔はありませんでした。
 ゲームの良いところは、やればやるだけ確実に成長することです。最初は手強いと思っていたモンスターも敵の動きを覚えて、装備を変え、自身の動きを変えれば確実に倒せるようになります。そこには現実にはない手応えがありました。
 ただ、時折思うことがあります。
 こんな私にも友達ができて……も、もしかしたら恋人ができて……なんて未来があったのかなあ、と。

 その後ゲーム以外やることがなかった私はなんとなく近くの公立校を受け、高校生になりました。
 こんな感じで私、こと 高田 ユニ の高校生活も何事もなく終わるのかなと思っていました。
 あの時までは


 ピンポーン♪

 
 いつの間にか私は眠ってしまっていたようです。
 時計を見れば時刻は17時ちょうど。
 

 ピンポーン♪


 先ほどから玄関のチャイムの音が聞こえます。お母さんは留守にしているのでしょうか?
 ……面倒ですが仕方ありませんね。
 自宅警備員らしく、荷物の受け取りくらいは軽くこなしてみせましょう。

 インターホンのモニターに映っていたのは宅配の方ではなく、見知らぬ男の子でした。
 ……すみません、訂正しなければならないところがありますね。
 見知らぬ、というのはやや語弊があります。
 なぜならその方が身に纏っていたのはかつて私が通っていた高校の制服だったからです。
 しかし……顔は知りません。初めて見る方でした。
 てっきり宅配の方だと余裕をこいていたので、私の思考はしばしフリーズしてしまいました。

「ど、どうしよう……お母さんもいないし……で、でもこのままやり過ごすのも……」

『もしもーし!……どなたかいませんかー?』

 男の子にしてはやや高めの声が、インターフォン越しに聞こえます。
 それに対し

「ひゃっ!?ひゃい!います!」

 反射的に返答をしてしまいました。
 我ながら痛恨のミス。
 普段だったらコンビニの店員さんにも声が小さいと聞き返されてしまうくらいなのに、どうしてこんな時だけ無駄に大きな声が出てしまったのでしょう?

『……あ、よかった~僕、2年A組のつむぎ久遠くおんって言います!高田ユニさんでしょうか?』

「そ、そ、そ、そう!です!!」

 他人の声のボリュームに合わせて音量を調節できないのは、典型的なコミュ障の特徴です。
 ああ……現実でもテキストだけで会話したい……。

『先生に言われてプリント持ってきたんですが……これ、どうすればいいでしょう?』

 紬さんは困っているように見えました。無理もありません、知らない同級生の家にプリントを届けさせられた挙句、玄関先でコミュ障に門前払いを食らっている最中なのですから。
 私は寝起きの頭を回転させ、結局出た一言が

「あ、あの、郵便受けに、入れておいて……ほしい、です」

 でした。
『はーい』とだけ残し、紬さんは帰って行きました。
 彼には申し訳ないなあと思っています。
 そもそも私が引きこもっていなければ、彼がここに来ることもなかったはずですから。
 それから5分くらい待って、彼が完全にいなくなったと窓越しに確認し、私は郵便受けにプリントを取りに行きました。
プリントは複数ありました。一枚一枚、確認していきます。

『各教科の課題』
『不審者目撃情報』
『PTA便り』

 そして

「学級通信……」

 そこには笑顔で表彰状を掲げる女の子の写真が掲載されていました。

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