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第17話 少女の世界と青い春
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『ユニ……ターゲットを誘い込んだわ。構えなさい』
『あ、あ、はっ……はいっ!』
密林を双剣が舞う。
迫り来る怪物の猛攻をかわしつつ、合間に反撃を加え、指定のポイントへと誘い込む。
『もうすぐつくわ。ユニ、準備はいいわね?」
『あ、あのっ……ちょっと、不具合が
『来たっ……ぶちかましなさい!!ユニ!!」
密林を抜けた先の荒野には大剣を担いだオッサンが立っている。
ここまでは計算通り……あとはユニがタイミングを合わせられるかどうか。
しかし、先ほどからユニの様子が少しおかしい。……いや、あの子はいつも少し様子がおかしいのだけれど、こと狩りにおいては抜群の集中力と凄まじい技巧を発揮する。けれど、今はなんだろう……焦っている?というかとにかく集中できていない感じだ。
『ユニ……?あなた
どうしたの、と聞く暇もない。
何故なら私の後を追い、ヤツが密林から飛び出してきたからだ。
その怪物には影が無かった。
何故なら存在自体が影であり、その敏速は陽の光すら捉えきれず、気を抜けば瞬殺される。
名は【マンイーター】
その瞳が暗闇の中で妖しく光った。
影は真っ直ぐユニのアバターへと迫る。
しかし、ユニは動かない。
いや、もしかしたら動けないのかもしれない。大剣の秘技であるカウンターモーションを発動していないのだ。何もしない場合、数秒後には無様に吹っ飛ばされるユニのアバターを想像する。絵面は愉快だが、報酬的には実に不愉快だ。せっかくここまで追い詰めたのに、こんなしょうもないことでクエスト失敗なんて洒落にならない。
しかし、そうこうしている間にも【マンイーター】の鋭い前爪による攻撃がユニへと迫る。
『ユニ!!しっかりしなさい!!」
『……っ!!』
私の声で目が覚めたのか、ようやくユニのアバターに動きが見える。
カウンターが間に合わないと気づいたユニは
迫り来る攻撃をバックステップで回避した。
咄嗟の判断にしては上手すぎる。恐らくあれはただの回避ではなく、大剣固有のバックステップモーションだ。そこから予想される展開は
ーーーーーーッッッッ!!!!
迫る連撃に対し、大剣が振るわれた。
その一撃は頭部へと見事に直撃。一定の時間獲物から自由を奪う。
『ナイスユニ!!一気に畳み掛ける!!』
『はっ……はい!!』
間も無く影は掃討され、反省会が始まった。
『さて……私の言いたいことはわかるわね?」
『は……はいぃぃ……えと、あの……お母さんがですね』
『お母さん?それがどうかしたの?』
『ご飯だからと部屋に突撃されまして……』
『あー……実家暮らしはその辺大変ね』
『ま、牧村さんは一人暮らしなんでしたっけ』
『そんな感じ。親に縛られるのは面倒だから』
『へ、へぇ……そうな『ユニちゃん入るわよ~!!……あら、まだゲームやってたのねぇ……ってあらあら?MAPLEってどなた?ユニちゃんのお友達かしら……こんばんは~ユニの母の恵梨です~『お、お母さん!!やめてください!!あ、あ、牧村さんっちょっと失礼します!!』
どうやら母親に襲撃されてしまったらしい。モンスターの動きはあれだけ華麗に受け流せるのに、現実のユニはひどく鈍臭い。ま、それもあの子らしいと思う。
明日になったら根掘り葉掘り聞いてやろうと思っていた私は知る由もなかった。
まさか私自身があんな目に遭おうとは。
「楓ちゃんこんにちは!ユニの母の恵梨です~……って昨日も話したかしら?ふふふ……まさかユニちゃんがお友達を連れてくるなんて……嬉しいわぁ!……おばさん張り切っていっぱいお菓子作ったの!!いっぱい食べてね!」
どうしてこうなった?
運命の出会いを果たした入学式からはや半年、私と高田ユニはすっかり仲良しになっていた。お互い高校まで友人がいなかったことや、共通の趣味を持っていたことがやはり大きかったのだと思う。
高校デビューを目論んでいた私の思惑は高校初日のあの瞬間、もろくも崩れ去った。
今にして思えばそれで良かったのかもしれない。たぶん、あのままユニをスルーして他の人間に話しかけても私は無理をしてしまっていただろう。そしてお互い嘘をつき続け、遠慮して、自分を押さえつければ精神は磨耗する。
その先に待つのは……あまり想像したくない。
半年経った今でもユニとの会話は少しぎこちない。それは、彼女が極度のコミュ障であるのと同時に、私も他人と正しく接する術を知らないからだ。けれどユニとの会話は心地よい。何故なら彼女と話していても自分を偽ることは無く、心から楽しく思えるからだ。
正直、友人と呼べる存在がここまで人生を豊かにするとは思わなかった。
「あら?楓ちゃんどうかしたかしら??甘いもの好きじゃなかったかしら……で、も!!安心して~そう思っておばさんちゃんと色々と用意したんだから!!今用意するからちょっと待っててね!!!!」
危うく意識が入学式あたりまで飛びかけていたけれど、そう易々と現実は私を逃してはくれないらしい。
ユニがモンフェスのプレイ中に母親の襲撃に遭った翌日、私は高田家へと来ていた。
『あ、あ、はっ……はいっ!』
密林を双剣が舞う。
迫り来る怪物の猛攻をかわしつつ、合間に反撃を加え、指定のポイントへと誘い込む。
『もうすぐつくわ。ユニ、準備はいいわね?」
『あ、あのっ……ちょっと、不具合が
『来たっ……ぶちかましなさい!!ユニ!!」
密林を抜けた先の荒野には大剣を担いだオッサンが立っている。
ここまでは計算通り……あとはユニがタイミングを合わせられるかどうか。
しかし、先ほどからユニの様子が少しおかしい。……いや、あの子はいつも少し様子がおかしいのだけれど、こと狩りにおいては抜群の集中力と凄まじい技巧を発揮する。けれど、今はなんだろう……焦っている?というかとにかく集中できていない感じだ。
『ユニ……?あなた
どうしたの、と聞く暇もない。
何故なら私の後を追い、ヤツが密林から飛び出してきたからだ。
その怪物には影が無かった。
何故なら存在自体が影であり、その敏速は陽の光すら捉えきれず、気を抜けば瞬殺される。
名は【マンイーター】
その瞳が暗闇の中で妖しく光った。
影は真っ直ぐユニのアバターへと迫る。
しかし、ユニは動かない。
いや、もしかしたら動けないのかもしれない。大剣の秘技であるカウンターモーションを発動していないのだ。何もしない場合、数秒後には無様に吹っ飛ばされるユニのアバターを想像する。絵面は愉快だが、報酬的には実に不愉快だ。せっかくここまで追い詰めたのに、こんなしょうもないことでクエスト失敗なんて洒落にならない。
しかし、そうこうしている間にも【マンイーター】の鋭い前爪による攻撃がユニへと迫る。
『ユニ!!しっかりしなさい!!」
『……っ!!』
私の声で目が覚めたのか、ようやくユニのアバターに動きが見える。
カウンターが間に合わないと気づいたユニは
迫り来る攻撃をバックステップで回避した。
咄嗟の判断にしては上手すぎる。恐らくあれはただの回避ではなく、大剣固有のバックステップモーションだ。そこから予想される展開は
ーーーーーーッッッッ!!!!
迫る連撃に対し、大剣が振るわれた。
その一撃は頭部へと見事に直撃。一定の時間獲物から自由を奪う。
『ナイスユニ!!一気に畳み掛ける!!』
『はっ……はい!!』
間も無く影は掃討され、反省会が始まった。
『さて……私の言いたいことはわかるわね?」
『は……はいぃぃ……えと、あの……お母さんがですね』
『お母さん?それがどうかしたの?』
『ご飯だからと部屋に突撃されまして……』
『あー……実家暮らしはその辺大変ね』
『ま、牧村さんは一人暮らしなんでしたっけ』
『そんな感じ。親に縛られるのは面倒だから』
『へ、へぇ……そうな『ユニちゃん入るわよ~!!……あら、まだゲームやってたのねぇ……ってあらあら?MAPLEってどなた?ユニちゃんのお友達かしら……こんばんは~ユニの母の恵梨です~『お、お母さん!!やめてください!!あ、あ、牧村さんっちょっと失礼します!!』
どうやら母親に襲撃されてしまったらしい。モンスターの動きはあれだけ華麗に受け流せるのに、現実のユニはひどく鈍臭い。ま、それもあの子らしいと思う。
明日になったら根掘り葉掘り聞いてやろうと思っていた私は知る由もなかった。
まさか私自身があんな目に遭おうとは。
「楓ちゃんこんにちは!ユニの母の恵梨です~……って昨日も話したかしら?ふふふ……まさかユニちゃんがお友達を連れてくるなんて……嬉しいわぁ!……おばさん張り切っていっぱいお菓子作ったの!!いっぱい食べてね!」
どうしてこうなった?
運命の出会いを果たした入学式からはや半年、私と高田ユニはすっかり仲良しになっていた。お互い高校まで友人がいなかったことや、共通の趣味を持っていたことがやはり大きかったのだと思う。
高校デビューを目論んでいた私の思惑は高校初日のあの瞬間、もろくも崩れ去った。
今にして思えばそれで良かったのかもしれない。たぶん、あのままユニをスルーして他の人間に話しかけても私は無理をしてしまっていただろう。そしてお互い嘘をつき続け、遠慮して、自分を押さえつければ精神は磨耗する。
その先に待つのは……あまり想像したくない。
半年経った今でもユニとの会話は少しぎこちない。それは、彼女が極度のコミュ障であるのと同時に、私も他人と正しく接する術を知らないからだ。けれどユニとの会話は心地よい。何故なら彼女と話していても自分を偽ることは無く、心から楽しく思えるからだ。
正直、友人と呼べる存在がここまで人生を豊かにするとは思わなかった。
「あら?楓ちゃんどうかしたかしら??甘いもの好きじゃなかったかしら……で、も!!安心して~そう思っておばさんちゃんと色々と用意したんだから!!今用意するからちょっと待っててね!!!!」
危うく意識が入学式あたりまで飛びかけていたけれど、そう易々と現実は私を逃してはくれないらしい。
ユニがモンフェスのプレイ中に母親の襲撃に遭った翌日、私は高田家へと来ていた。
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