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最終話 電脳恋愛のすゝめ
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「やっほー」
「……おはよう」
眠気を堪え、通学路を歩いていると声をかけられた。
自称僕の「共犯者」、志波桜その人である。
「朝から元気で羨ましいよ。なんかいい事でもあったの?」
「クオンちゃんほどじゃないよー」
「何だその返しは」
「だってユニちゃんとお話し、できたんでしょ?」
相変わらず勘が鋭いというか何というか……
「えぇ……何で知っているのさ」
「顔見ればわかるよ♪……それでどうだった?」
「質問ざっくりしすぎでしょ……話すべきことは話したさ。何もかもね」
「ふーん……そっかそっか……ねぇ、久遠ちゃんはさ」
「その「ちゃん」はやめなさい……それで、何?」
「ユニちゃんのこと好きなの?」
そういえば以前久村のやつに、YUNIさんを好きなのか?と聞かれたことがある。
当時の僕は突然現れ、目の前で神プレイを魅せたYUNIさんに強く惹かれた。この人のことについて知りたい、どうしてそんな強く在れるのか聞いてみたいと思った。
実際そんなYUNIさんのことを僕は好きだったのだと思う。
では、高田ユニさんはどうだろうか?
「……桜っていつもいきなりぶっ込んでくるよね」
「えへへ……」
「いや褒めてないからね?」
「いいじゃん!それで……どうなのどうなの?」
「……答えはイエスでもありノーでもある」
我ながら煮え切らない返事だけど、これが今の本心だ。
僕はここ1ヶ月くらい、1人の人間を様々な角度から見たことになる。それはクラスメイトであったり、教師であったり、母親であったり、元友人であったり……。
そんな遠回りをして得られた結論はその人と会って、直接話して、長い時間をかけなければ人1人のことすら理解することもできないという当たり前の事実だった。
つまり僕はまだ彼女のことを何も知らないということだ。
「ぶーぶー!はっきりしないのは良くないと思いまーす!」
「だって僕は高田さんに直接会ったことも無いし……お互い知らないことが多すぎるよ」
「好きでも無い相手にあそこまでできないと桜は思ってたんだけど」
「それはもちろんそう。……けど僕は高田さんをまだ十分に知れていない。だからもっと好きになれるように学校に来てもらおうとあれこれ頑張ったんじゃないか」
「……ま、そういうことにしておいてあげるよ」
「あらやだこの子ったら……一体何が不満なんですかね?」
「いーっだ!クオンちゃんのバーカ!また後でね!!」
謎の暴言を遺し、彼女は駆け足で学校へと消えていった。
相変わらず神出鬼没で意味不明な女だけど、今回の一件では色々と助けてもらった挙句、こうしてアフターフォローもしてくれた。
高校に入って得た貴重な僕の友人、かけがえのないものの一つである。
きっと僕はこれからも彼女に振り回されつつ、色々と助けてもらうのかも知れない。願わくばこの関係が末長く続けばいいなと僕は思った。
校舎内はまだ人もまばらだった。
頑張って早起きした甲斐もあったものだ。教室へと歩みを進め、扉の前に立つ。
一回深呼吸。
僕は扉を開ける。
教室には誰もいなかった。
「まあ、そんなもんだよね」
期待はしてないわけじゃなかった。
それなりに頑張ったし、ユニさんにも少しは届いたのかと思った。
けど諦めるにはまだ早い。
そもそもユニさんと約束していたわけでもないし、現在時刻は8時前。流石に少し早すぎたのかもしれない。
暇を潰そうと携帯ゲーム機を取り出そうとした時、教室のドアが開いた。
「はあ……はあ……ふぅ……はあ」
見知らぬ女生徒が教室に入ってきた。
全力疾走でもしてきたのか短く切り揃えられた髪は乱れ、俯きながら肩で息をしている。
呼吸を整え、彼女は顔をあげる。
彼女と目が合った。それは真夏の雲ひとつない空の色をしている。教室から差し込む陽の光で照らされた色素の薄い髪も相まって、どこか異国の血を感じさせた。
僕は席をたち、教室の入り口に立つ彼女の元へと歩く。
170cmある僕が彼女の元に立つと、やや見下ろす形となった。
「「あの……」」
「「あっ……」」
声が被ってしまう。何となく気まずい。
「わ!!」
「うわっ!?」
目の前の少女が突然大きな声を出したので、僕は驚いてしまった。
「す、すすすすみません!!」
「あ、あの……ちょっと落ち着いて?一回深呼吸しようか?」
「い、いえ……だ、大丈夫です。ごめんなさい」
「謝らなくていいんだよ。僕の名前は紬《つむぎ》久遠《くおん》って言います。君の名前を……聞いてもいいかな?」
「高田ユニ……と、言います」
思わず笑みが出そうになったのを何とか堪え、僕は続ける。
「ユニさんって呼んでもいいかな?」
「は……はい!!あの、わ、私も……く、く、久遠さんと、呼んでも……よろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。……ユニさん疲れたでしょ?このまま立っているのも何だから座ってお話をしようか」
「はい!」
それから僕らは朝のHRが始まるまで、たわいもない話をした。
名前のこと、今日の天気のこと、学校のこと、家のこと……そして好きなゲームのこと。
久村が登校して、僕らは互いに自己紹介を行なった。
牧村も登校してきた。彼女はこちらを一瞥して、そのまま自席につき、友人と話し始める。一瞬彼女が笑ったように見えたのは、きっと気のせいだろう。
「おーっす。ホームルーム始めんぞー……席につけー」
教室に安藤先生が入ってくる。今日も気だるそうで何よりだ。
生徒たちは名残惜しそうに、それぞれ自身の席に戻っていった。
出席を取る先生は今日も怠そうに、でもしっかりと一人一人の名前を呼んでいく。
「篠澤ー……関口ー……高田ー……」
「は、はい!!」
「うむ、元気でよろしい。次、田代ー……中嶋ー……」
返事を終えた僕は隣の席を見る。
「……っ!?な、何でしょうか?」
「ふふっ……いいや、何でもない」
空席が埋まり、そこには彼女がいた。
僕らは電子の海で偶然出会い、幸運にもこうして隣り合うまでになった。
これまで色んなことがあったし、きっとこれからも色んなことがあると思う。
その度に世界は様々な側面を僕らに見せつけ、一喜一憂させるのだろう。
僕らの物語はこれからも続いていく。
「……おはよう」
眠気を堪え、通学路を歩いていると声をかけられた。
自称僕の「共犯者」、志波桜その人である。
「朝から元気で羨ましいよ。なんかいい事でもあったの?」
「クオンちゃんほどじゃないよー」
「何だその返しは」
「だってユニちゃんとお話し、できたんでしょ?」
相変わらず勘が鋭いというか何というか……
「えぇ……何で知っているのさ」
「顔見ればわかるよ♪……それでどうだった?」
「質問ざっくりしすぎでしょ……話すべきことは話したさ。何もかもね」
「ふーん……そっかそっか……ねぇ、久遠ちゃんはさ」
「その「ちゃん」はやめなさい……それで、何?」
「ユニちゃんのこと好きなの?」
そういえば以前久村のやつに、YUNIさんを好きなのか?と聞かれたことがある。
当時の僕は突然現れ、目の前で神プレイを魅せたYUNIさんに強く惹かれた。この人のことについて知りたい、どうしてそんな強く在れるのか聞いてみたいと思った。
実際そんなYUNIさんのことを僕は好きだったのだと思う。
では、高田ユニさんはどうだろうか?
「……桜っていつもいきなりぶっ込んでくるよね」
「えへへ……」
「いや褒めてないからね?」
「いいじゃん!それで……どうなのどうなの?」
「……答えはイエスでもありノーでもある」
我ながら煮え切らない返事だけど、これが今の本心だ。
僕はここ1ヶ月くらい、1人の人間を様々な角度から見たことになる。それはクラスメイトであったり、教師であったり、母親であったり、元友人であったり……。
そんな遠回りをして得られた結論はその人と会って、直接話して、長い時間をかけなければ人1人のことすら理解することもできないという当たり前の事実だった。
つまり僕はまだ彼女のことを何も知らないということだ。
「ぶーぶー!はっきりしないのは良くないと思いまーす!」
「だって僕は高田さんに直接会ったことも無いし……お互い知らないことが多すぎるよ」
「好きでも無い相手にあそこまでできないと桜は思ってたんだけど」
「それはもちろんそう。……けど僕は高田さんをまだ十分に知れていない。だからもっと好きになれるように学校に来てもらおうとあれこれ頑張ったんじゃないか」
「……ま、そういうことにしておいてあげるよ」
「あらやだこの子ったら……一体何が不満なんですかね?」
「いーっだ!クオンちゃんのバーカ!また後でね!!」
謎の暴言を遺し、彼女は駆け足で学校へと消えていった。
相変わらず神出鬼没で意味不明な女だけど、今回の一件では色々と助けてもらった挙句、こうしてアフターフォローもしてくれた。
高校に入って得た貴重な僕の友人、かけがえのないものの一つである。
きっと僕はこれからも彼女に振り回されつつ、色々と助けてもらうのかも知れない。願わくばこの関係が末長く続けばいいなと僕は思った。
校舎内はまだ人もまばらだった。
頑張って早起きした甲斐もあったものだ。教室へと歩みを進め、扉の前に立つ。
一回深呼吸。
僕は扉を開ける。
教室には誰もいなかった。
「まあ、そんなもんだよね」
期待はしてないわけじゃなかった。
それなりに頑張ったし、ユニさんにも少しは届いたのかと思った。
けど諦めるにはまだ早い。
そもそもユニさんと約束していたわけでもないし、現在時刻は8時前。流石に少し早すぎたのかもしれない。
暇を潰そうと携帯ゲーム機を取り出そうとした時、教室のドアが開いた。
「はあ……はあ……ふぅ……はあ」
見知らぬ女生徒が教室に入ってきた。
全力疾走でもしてきたのか短く切り揃えられた髪は乱れ、俯きながら肩で息をしている。
呼吸を整え、彼女は顔をあげる。
彼女と目が合った。それは真夏の雲ひとつない空の色をしている。教室から差し込む陽の光で照らされた色素の薄い髪も相まって、どこか異国の血を感じさせた。
僕は席をたち、教室の入り口に立つ彼女の元へと歩く。
170cmある僕が彼女の元に立つと、やや見下ろす形となった。
「「あの……」」
「「あっ……」」
声が被ってしまう。何となく気まずい。
「わ!!」
「うわっ!?」
目の前の少女が突然大きな声を出したので、僕は驚いてしまった。
「す、すすすすみません!!」
「あ、あの……ちょっと落ち着いて?一回深呼吸しようか?」
「い、いえ……だ、大丈夫です。ごめんなさい」
「謝らなくていいんだよ。僕の名前は紬《つむぎ》久遠《くおん》って言います。君の名前を……聞いてもいいかな?」
「高田ユニ……と、言います」
思わず笑みが出そうになったのを何とか堪え、僕は続ける。
「ユニさんって呼んでもいいかな?」
「は……はい!!あの、わ、私も……く、く、久遠さんと、呼んでも……よろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。……ユニさん疲れたでしょ?このまま立っているのも何だから座ってお話をしようか」
「はい!」
それから僕らは朝のHRが始まるまで、たわいもない話をした。
名前のこと、今日の天気のこと、学校のこと、家のこと……そして好きなゲームのこと。
久村が登校して、僕らは互いに自己紹介を行なった。
牧村も登校してきた。彼女はこちらを一瞥して、そのまま自席につき、友人と話し始める。一瞬彼女が笑ったように見えたのは、きっと気のせいだろう。
「おーっす。ホームルーム始めんぞー……席につけー」
教室に安藤先生が入ってくる。今日も気だるそうで何よりだ。
生徒たちは名残惜しそうに、それぞれ自身の席に戻っていった。
出席を取る先生は今日も怠そうに、でもしっかりと一人一人の名前を呼んでいく。
「篠澤ー……関口ー……高田ー……」
「は、はい!!」
「うむ、元気でよろしい。次、田代ー……中嶋ー……」
返事を終えた僕は隣の席を見る。
「……っ!?な、何でしょうか?」
「ふふっ……いいや、何でもない」
空席が埋まり、そこには彼女がいた。
僕らは電子の海で偶然出会い、幸運にもこうして隣り合うまでになった。
これまで色んなことがあったし、きっとこれからも色んなことがあると思う。
その度に世界は様々な側面を僕らに見せつけ、一喜一憂させるのだろう。
僕らの物語はこれからも続いていく。
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