サバトキングダム~記憶はないけど、日本神話最強の神『アマテラス』の力があるので異世界無双します~

なかえ

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2章 ウルタールの猫

第12話 湖の夜真人・アマビエ

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『新世62年11月 昼 ウルタールの湖にて』
儀式には幾つかの手順があった。
1.湖の前に祭壇と生け贄を用意する

2.村の長が代々受け継いできた呪文を唱えることで、湖に住む夜真人"アマビエ"を召喚する

3.生け贄を殺すのはアマビエではなく村の男である。代表者に少女の首を落とさせ、生け贄とする。ただし、生け贄の少女にはくれぐれも生きる希望を与えてはいけない。



全ての準備が整い、ついにおぞましい儀式が開かれる。大人も子供も関係なく、村に住む全員が一ヶ所に集結していた。村の林の奥にある湖を群衆が囲う。

その中心には絢爛な祭壇が設置されており、着飾った一人の娘が立たされていた。

「それでは十年越しの生け贄の儀を始める」

村長の低い声が民衆のざわめきを征し、静寂をもたらす。静かになったのを確認した村長は奇妙な呪文を口ずさみ始める。

忌々しい呪詛を口ずさみ続けること数十秒、それは姿を現した。湖面を破り現れる冒涜的な存在。出現と同時に周囲に狂気的な悪臭が充満する。

2m程あるそれは鳥のようなクチバシと長く傷んだ黒色の髪を持つ。全身には不気味に濁った七色の鱗がびっしりと生えており、三本の足で湖面に浮いていた。

「アマビエ様!」

村人全員が頭をたれる。アマビエは大きく縦長な目を閉じたり、開いたりさせながら祭壇に立たされたメネスをヒダのついた舌で舐めまわす。

気持ち悪いとか死ぬのが怖いとかよりも、メネスはノアに対して申し訳ないという思いで心が一杯だった。

──結局こうなるのが私の運命なんだ。ごめんなさいノア……あなたにとっても迷惑をかけた。

一通り少女をねぶり終えた怪物は満足したと言わんばかりに後ろに下がり、村人たちの様子を見守る。

そして屈強な村男がメネスの首を跳ねようと前に出た。男はメネスを突っ伏すと、重厚な剣を少女の首に当てて軌道を確かめる。

一撃で細い首を断つであろう刃が振り下ろされたその時、ノアの拳が男の顔を殴り付ける。

「ノアっ!」

ギリギリの所でノアは間に合った。百人を越える村人、そして圧倒的な存在感を放つ湖の夜真人、そのどれにも臆することなく力強く彼は叫ぶ。

「生きることを諦めるなメネス!」

その瞬間、運命の二択がメネスに提示される。

     【諦める】  【諦めない】

──絶対に無理だと思っていたのに、こうして本当にノアは助けに来てくれた。やっぱり諦めなかったから運命は変えられるんだ! なら私もっ……

      【諦めない!!!!】

「私は諦めにゃい! 死ぬまで生きてもっと世界を知りたい!」

揺るぎない生きる希望を少女は叫ぶ。それに対抗するように村人からの罵声が一気に飛び交う。

「皆を不幸にしてまで生きるなんて、傲慢だ!」
「大人しく死ねよ!」
「とっとと食われろ化物!!」

大人から子供まで、あのジョンまでもがメネスに対して死ぬことを強要する。

そんな中、ノアは彼女を守るように抱き寄せた。
実は二人が触れ合うのはこれが初めてである。メネスの容姿にノアは少し驚いていた。

奇形だと聞いていたが、その顔だちはとても可愛らしく、黒髪も綺麗であった。そして頭には黒い猫耳がちょこんとついていて、臀部には尾もはえていた。

思っていたのとまったく違う見た目に驚きはしたが、ノアの思いは何も変わらない。

「安心しろ。俺だけはメネスの味方であり続けるから」

「うん、ノアを信じてるよ。私どうしたらいい?」

「アマビエは必ず俺が倒す。だからメネスは林の方に逃げろ」

「分かった。死なないでねノア」

「必ず後で合流しよう」

メネスは湖から離れ、林の方に走り出す。彼女は見た目通りに猫の性質を持っていた。俊敏に村人たちの間をすり抜けて、人間離れした速度で林を駆ける。

「ニンゲン! 追いかけロ! 捕まえられなきゃ皆殺しダ!」

アマビエの刺さるような声が、そこにいた全員の脳に直接響く。危機感を感じた村人たちはメネスを追って、走り出す。

村人たちが捌け、湖にはノアとアマビエだけが残された。両者の間には狂気的な殺意が満ちていた。
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