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わがまま
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翌日。リンク上を滑る義経に変わった様子はない。むしろ昨日までより調子は良くなってる気がする。
てっきり湊和に『手伝ってもらった』時みたいにもっとぐだぐだになるかと思ってたのに…。
昨日の行為を思い出し親慶は呆気に取られていた。湊和とどのような行為をしたかは定かではないが昨日の自分とほぼ同じ行為をしたと思われるのにこの反応の違いはなんなのかと親慶は頭をひねる。念のため神楽にも義経の様子を訊ねてみるが、昨日まで不調だったが今日は大分良くなったと親慶と同じ評価をしていた。
「…」
三年前、湊和にした時もこんな感じだったなと親慶は瞼を閉じた。
大会後、困惑している湊和に今回の義経と同じようなことをした。恥ずかしがって嫌がる湊和を半ば無理矢理抜いてあげたんだっけ?と他人事のように思い出すと、その日からなんとなく湊和に避けられ妙なイタズラを仕掛けられるようになった。
直接言われたことねぇけど、やっぱり湊和には嫌われたよな、アレで…。
しかし、そんな自覚がありながら義経にも同じことをしてしまうあたり学習能力ねぇなぁと親慶は自虐的に笑う。
まぁ…湊和には好奇心だったけど義経には…。
そう考えて実らない自身の想いに再び力なく自嘲した。
「…調子良さそうだな…」
「あ、チカ」
タイミング良く休憩に来た義経に声をかけると義経からは思いがけずなんとも間の抜けた返事が返ってきた。タオルで顔を拭きながら気まずい素振りもなくいつもどおり視線もちゃんと合わせてくる。てっきり赤面させて逃げ回るだろうと予想していた親慶は物足りなさを感じつつ義経を見つめていると、スポーツ飲料が流れる義経の喉がいやに扇情的で親慶はごくりと生唾を飲み込んだ。
『きす…して…』
あの唇が本当にそんなことを言ったのかと疑わざるを得ない程、義経はあっけらかんとしていた。
意識してたのは俺だけか…。
もしかしたら義経も自分と同じ感情を抱いているんじゃないかとあのおねだりから淡い期待をしていた親慶は奈落の底に突き落とされた気分だった。
「…せっかくからかいに来たのにつまんねぇの。てぇっきり俺の顔見たら顔真っ赤にして逃げていくもんだと楽しみにしてたのに…」
落胆を隠すように大袈裟に肩をすくませ頭を振る親慶を義経は呆れたように一瞥する。
「湊和くんとのこと別に変なことじゃないって分かったら気は楽になったし…チカが変態ってこと確信したし…」
「かっわいくねぇ…昨日はあんなに素直で可愛かったのに…」
わざと含みを持たせた言い方をすれば勘のいい義経のことだ、親慶が何を言いたいのか理解して期待通りの反応をしてくれると踏んでいたがまたも強烈な肩透かしをくらった。予想に反して義経はきょとんと、本当になんのことか分からないというあどけない表情で「なんのことだ?」と一言呟いた。
長い付き合いの二人だ。親慶は義経にこんな完璧な演技が出来ないことを知っている。それならば昨日の義経のあの可愛いおねだりは義経の記憶の中からは完全に削除されてしまっている…もしくは寝惚けていて覚えていないということだと確信した親慶は完敗を認めがっくりと項垂れた。
「都合良いとは思ったんだよなぁ…」
理由は定かではないがあれは義経の意思ではなかったことが親慶をさらに大きく落胆させた。
しかし、それならば親慶にはある疑問が浮かんできた。
同じセリフを湊和にも言ったのかと…。
「なぁ、湊和とはキスしたのか?」
「っ!!いき、なりなんだよ…」
親慶の思わぬ質問に義経の顔は一瞬にして真っ赤に染まり睨み付ける鋭い視線は親慶が期待していた反応のそれで、親慶はふいに心臓に小さなトゲが刺さったような痛みを覚えたが手を当てて様子を見ても痛みは一瞬で消えてしまった。
「気になるだろ?俺にとっても間接キスになるんだから…」
「バカかよ…」
「大事なことだろ」
あまりに真剣な親慶の様子に義経は呆れながら湊和との行為を思い出して右手の指先で自分の唇に触れた。
思い出すのは上書きされた感触のみ。
昨日の熱を思い出した体は義経の体の体温を急激に引き上げ自身にも熱を集める。
「…っ…したって言ったら消毒でもすんのかよ…」
首まで真っ赤に染まった義経を見て逆に心配になった親慶だが、それは湊和とのキスを思い出したからこその反応だと確信すると再び胸にトゲが刺さったような感覚に襲われる。
やっぱり…湊和が相手だとそんな反応すんだな…。
義経からのあのおねだりが寝惚けて言ったものだとしたらあのキスも義経はきっと覚えていないはずだと断定した親慶は罪深い義経の頭をいつもより強めに叩くとリンクを後にした。
元々今日はモデル業の撮影のためリンクに来る予定はなかった親慶だが、どうにも義経の様子が気になり足を運んだが期待したものはなに一つ得られず、むしろなにかを失った気すらしながら足取り重くスタジオへ向かった。
てっきり湊和に『手伝ってもらった』時みたいにもっとぐだぐだになるかと思ってたのに…。
昨日の行為を思い出し親慶は呆気に取られていた。湊和とどのような行為をしたかは定かではないが昨日の自分とほぼ同じ行為をしたと思われるのにこの反応の違いはなんなのかと親慶は頭をひねる。念のため神楽にも義経の様子を訊ねてみるが、昨日まで不調だったが今日は大分良くなったと親慶と同じ評価をしていた。
「…」
三年前、湊和にした時もこんな感じだったなと親慶は瞼を閉じた。
大会後、困惑している湊和に今回の義経と同じようなことをした。恥ずかしがって嫌がる湊和を半ば無理矢理抜いてあげたんだっけ?と他人事のように思い出すと、その日からなんとなく湊和に避けられ妙なイタズラを仕掛けられるようになった。
直接言われたことねぇけど、やっぱり湊和には嫌われたよな、アレで…。
しかし、そんな自覚がありながら義経にも同じことをしてしまうあたり学習能力ねぇなぁと親慶は自虐的に笑う。
まぁ…湊和には好奇心だったけど義経には…。
そう考えて実らない自身の想いに再び力なく自嘲した。
「…調子良さそうだな…」
「あ、チカ」
タイミング良く休憩に来た義経に声をかけると義経からは思いがけずなんとも間の抜けた返事が返ってきた。タオルで顔を拭きながら気まずい素振りもなくいつもどおり視線もちゃんと合わせてくる。てっきり赤面させて逃げ回るだろうと予想していた親慶は物足りなさを感じつつ義経を見つめていると、スポーツ飲料が流れる義経の喉がいやに扇情的で親慶はごくりと生唾を飲み込んだ。
『きす…して…』
あの唇が本当にそんなことを言ったのかと疑わざるを得ない程、義経はあっけらかんとしていた。
意識してたのは俺だけか…。
もしかしたら義経も自分と同じ感情を抱いているんじゃないかとあのおねだりから淡い期待をしていた親慶は奈落の底に突き落とされた気分だった。
「…せっかくからかいに来たのにつまんねぇの。てぇっきり俺の顔見たら顔真っ赤にして逃げていくもんだと楽しみにしてたのに…」
落胆を隠すように大袈裟に肩をすくませ頭を振る親慶を義経は呆れたように一瞥する。
「湊和くんとのこと別に変なことじゃないって分かったら気は楽になったし…チカが変態ってこと確信したし…」
「かっわいくねぇ…昨日はあんなに素直で可愛かったのに…」
わざと含みを持たせた言い方をすれば勘のいい義経のことだ、親慶が何を言いたいのか理解して期待通りの反応をしてくれると踏んでいたがまたも強烈な肩透かしをくらった。予想に反して義経はきょとんと、本当になんのことか分からないというあどけない表情で「なんのことだ?」と一言呟いた。
長い付き合いの二人だ。親慶は義経にこんな完璧な演技が出来ないことを知っている。それならば昨日の義経のあの可愛いおねだりは義経の記憶の中からは完全に削除されてしまっている…もしくは寝惚けていて覚えていないということだと確信した親慶は完敗を認めがっくりと項垂れた。
「都合良いとは思ったんだよなぁ…」
理由は定かではないがあれは義経の意思ではなかったことが親慶をさらに大きく落胆させた。
しかし、それならば親慶にはある疑問が浮かんできた。
同じセリフを湊和にも言ったのかと…。
「なぁ、湊和とはキスしたのか?」
「っ!!いき、なりなんだよ…」
親慶の思わぬ質問に義経の顔は一瞬にして真っ赤に染まり睨み付ける鋭い視線は親慶が期待していた反応のそれで、親慶はふいに心臓に小さなトゲが刺さったような痛みを覚えたが手を当てて様子を見ても痛みは一瞬で消えてしまった。
「気になるだろ?俺にとっても間接キスになるんだから…」
「バカかよ…」
「大事なことだろ」
あまりに真剣な親慶の様子に義経は呆れながら湊和との行為を思い出して右手の指先で自分の唇に触れた。
思い出すのは上書きされた感触のみ。
昨日の熱を思い出した体は義経の体の体温を急激に引き上げ自身にも熱を集める。
「…っ…したって言ったら消毒でもすんのかよ…」
首まで真っ赤に染まった義経を見て逆に心配になった親慶だが、それは湊和とのキスを思い出したからこその反応だと確信すると再び胸にトゲが刺さったような感覚に襲われる。
やっぱり…湊和が相手だとそんな反応すんだな…。
義経からのあのおねだりが寝惚けて言ったものだとしたらあのキスも義経はきっと覚えていないはずだと断定した親慶は罪深い義経の頭をいつもより強めに叩くとリンクを後にした。
元々今日はモデル業の撮影のためリンクに来る予定はなかった親慶だが、どうにも義経の様子が気になり足を運んだが期待したものはなに一つ得られず、むしろなにかを失った気すらしながら足取り重くスタジオへ向かった。
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