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幸せになって
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しおりを挟む「…義経は?」
練習場をぐるりと見回した親慶はあるべきはずの姿がないことに首を傾げ目の前の神楽に訊ねた。
「調子悪そうだったから帰らせた…」
いつも以上に険しい表情の神楽に違和感を感じたものの親慶はほっと胸を撫で下ろした。昨日の様子だと今日はまともに練習なんか出来ないだろうと踏んでいた親慶は、それでも練習の虫の義経が出てきたら無理矢理にでも家に送り返してやろうと決めていた。
「流石、かぐっちゃん!よく見てんね」
「…あれ、お前じゃねぇだろうな?」
「あれ?」
「義経の首の……いや、心当たりがねぇならいい…」
言い淀む神楽は途中まで言いかけ、足早に親慶から離れていってしまった。垣間見えた義経の首に散りばめられた痛々しい程のキスマークに親慶は関係ないのだろうと判断したのだ。
「…来るならちゃんと隠してこいよ…」
神楽の後ろ姿に大きく息を吐いた親慶はこの場にいない義経に小声で悪態をつくとたまたま視界に入った存在に目を見開いた。そして、目が合ってしまった相手、湊和もバツが悪そうな表情を浮かべ渋々親慶に向かい歩いてくる。
「…よぉ。合同練習は昨日だけのはずだぜ?」
努めて冷静に、いつもどおりの声のトーンと口調を心掛けた親慶だが胸中は煮えくり返りそうな程の怒りがぐるぐると渦を巻いていた。
「…うん、そうだよね…。えっと…ヨシは今日は…?」
湊和の口から出た義経の名前を聞いた瞬間、親慶はその綺麗な顔を殴り飛ばしてしまいたい衝動にかられたがなんとか左手で右手を押さえ込み、いつもどおり軽薄な笑顔を浮かべた。
「アイツ体調悪いみたいで今日は帰ったよ。……体、痛いみたいだったけどなんか知ってるか?」
表情を崩さない湊和の眉が一瞬、ぴくりと跳ねた。ポーカーフェイスが得意な湊和にカマをかけたところで大した成果はないだろうと思っていた親慶だがその一瞬を見逃さなかった。しかしそれ以降、湊和は動じる素振りもなくいつもどおりの表情で「分からないな」と答えた。
「ヨシに渡したいものがあったんだけど急ぎじゃないからまた今度会った時に」
「急ぎじゃないのにわざわざ来たの?」
「え?」
「もし良かったら俺が預かっておこうか?もしそれが本当にあるんなら…」
牽制を続ける親慶に流石の湊和も苛立ちを隠せず鋭い視線を向ける。
「…今日はやけに僕につっかかかって来るね。どうしたの?」
「別に?ただ湊和は昨日の義経の様子を誰よりも知ってるんじゃないかって思って?」
「知らないって。僕、昨日は早目に帰っちゃっ──」
「誰よりも遅くまで……いたよな?」
「っ…!」
そこまで言うと湊和の動きが止まり、頬を汗が流れた。
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