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キスしてみな
しおりを挟む「なぁ、義経。いつになったらキス、してくれんのかなぁ…」
「…」
はぁぁぁーっと冬特有の灰色の空に大袈裟に吐いた息は真っ白に姿を変え、すぐに霧散した。
前を歩く14歳男子にしては小さな後ろ姿を一瞥すると振り向く気配もなく、俺はまた溜め息をついた。
俺、弁天 親慶は5歳年下の古河 義経にある提案をした。それは年頃の男子によくあるくだらない遊びで。
「義経、キスしたことあるか?」
「まだなんてやっぱりガキだな、義経は」
「同級生だって今時みんなしてるだろ」
なんて煽り続けた結果、
「じゃあ義経から俺にキスしてみてよ」
なんて訳分からない結果に辿り着いて今にいたる。
もちろん義経は「何バカなこと言ってんだ、こいつ」って眼差しを俺に向けてきてから一向に口を開かなければこちらを見ようともしない。
元々人よりも遅い成長期がコンプレックスな義経は俺よりも20センチ以上も小さく、最近やっと始まった声変わりには誰にも気付かれないようにひっそりと喜んでいることを俺は知っている。
そう…俺だけが知っている。
「…にやにやしててキモい」
「んん…」
いつの間にか振り向いたらしい義経にそう冷たく言い放たれると、少しだけ優越感に浸っていた俺は現実に引き戻されて恥ずかしさに喉を鳴らした。
くだらないことを考えてる内に目的地のスケートリンクに着いたらしく、義経はにやっと意地悪く笑った。
「なになに~?ようやくキスしてくれる気になった?」
応えるように俺も意地悪く笑うと、先に階段を上っていく義経の後を小走りで追い掛けた瞬間ーーー。
ゴツッ!!!!!
「いっだぁぁぁぁぁ!!!」
「いってぇ!」
階段の段差を利用して、いつもより近付いた距離に、ふいに胸が高鳴ったのもつかの間…男の唇だろうと柔らかい感触を想像して覚悟を決め(?)た俺はゆっくり目を閉じたが、予想に反して俺に与えられたのは信じられないくらい硬い、石頭の頭突きだった。
「ちょ、ちょっと待て、義経っ!!」
「なに?」
涙目で少し上目遣いなその角度に、ふいに可愛いじゃないかと思ってしまう自分のバカな思考回路に呆れつつも、義経のおでこを撫でながら反対の手で自分のおでこを擦る。
…ちょっと膨らんでる…(悲)。
「お前ねぇ…危ないことするなよ。このまま落ちたらどうすんの…」
「…だって」
「ん?」
「キス…したことねぇもん…」
涙目のまま、少しだけ頬を膨らませた義経は悔しそうにそう呟いた。
可愛い…。
負けず嫌いな性格の義経がこんなセリフを口にするにはよっぽど勇気が必要だっただろうなと慮ると、俺は義経のおでこを撫でていた手を頬に滑らせて拗ねてそっぽ向いていた顔を正面に戻した瞬間、強引に唇を重ねた。
驚いて見開く真ん丸の瞳に、また心の中で可愛いなと思ってからその小さな体をお姫様抱っこで担ぎ上げた。
「っ!!おいっ!!」
「これで誤魔化すのはなしだからな」
「はっ?」
「今度は頭突きなんて可愛くないことしないでここにしてくれよな」
言いながらウインク&投げキッスなんてしてやれば「気持ちわりぃ…」なんて可愛いげのない言葉の後に、げぇって嘔吐する仕草も加えて…あぁ、可愛くねぇなぁとか思うけど、そっぽ向かれた義経の耳は心配になるくらい真っ赤で。
たまらずにそこにキスすると…
お返しに頭突きが飛んできた。
この生意気なくそガキのきまぐれなたわむれに振り回されながら俺は退屈な毎日を有意義なものに変えていくのだった。
end
付き合ってないよぉ(笑) by親慶
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