【BL】くそガキとたわむれ

祈 -inori-

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王子様とは

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王子様とは?


身長180㎝。肩につく程に伸ばされた茶髪をかき上げれば女性の視線は釘付け。涼しげな瞳に漂う色気はフィギュア界随一とも言われるこの俺、弁天べんてん 親慶ちかよし19歳、モデルもこなす俺こそ王子でしょ!!って自惚れてるんだけど…世間での人気は3番目。

「…なに見てんだよ…」

昨年某雑誌で行われたフィギュア選手人気投票『王子様は誰だ!!』。で、悲しいかな俺のすぐ上の順位にいたのはこのくそガキ古河こが 義経よしつね
身長は158㎝(公式ではサバよんで160㎝にしてる)、14歳。素材は良いのに自身がおしゃれに興味がないため髪型は美容師の実姉まかせの茶色メッシュのふわふわパーマ。子犬を思わせる茶色の真ん丸な瞳は若干自信なさげにも映るが、リンク上では強気な性格が顔を覗かせてそのギャップがたまらないという女性が急上昇。

なんて…。

「分かってない!!王子たるもの大人の色気が大事でしょ!!」
「練習しろよ」

思わずリンクの脇で叫ぶとそれまで華麗に滑り回ってた義経が呆れたように溜め息をついた。

「納得行かないんだよ!お前が俺よりも王子様なんて!!」

雑誌のページを開いてくそガキに見せつけると、義経はその雑誌の存在すら知らなかったようで物珍しそうに端から端まで丁寧に読み始めた。

「…ていうか、お前ソワくんにも負けてんじゃん」
湊和そわはいいんだよ!!演技中のあいつの色気は俺も認めてる!!」

花巻はなまき 湊和そわ。身長172㎝、17歳。現世界王者にしてフィギュア界一の人気者で誰もが認める『ザ・王子』。現代の辞書では王子とひけば湊和の名前が出てきてもおかしくない程に演技中の湊和は完璧な王子様だ。
それなのにひとたびリンクを降りれば艶やかな黒髪には天使の輪が浮かび、切れ長の瞳は優しさをたたえ、人懐っこい無邪気な笑顔は老若男女すべての人間を虜にする。

認める。

湊和は人間としても王子としても完璧だ。


「だがしかし!!お前はちっこいしすぐ寝るし、インタビュー受けても人見知りのコミュ障!!到底王子には似合わない!!」
「…お前、大丈夫か?」

ここまで訳分からないことを言われればさすがの義経も親慶の頭を心配せざるを得ない。

「ここまで言われて悔しかったら色気を出してみろよ。俺が納得する色気をなぁ!!」

「…」

相変わらず訳の分からない俺に義経は準備運動のように軽くリンクを滑り始めた。
俺はそれを肘をついて見つめながら、まぁ、綺麗な顔してるよななんてくだらないことを考えていた。

しばらくして義経がちらりと俺を横目で確認して…遠目でも分かる、あのくそガキ、今溜め息つきやがった。

そして流れるようにこちらに向かってきた義経は、リンクから上がって俺の左手を手に取りーー

「Shall we dance?」

流暢な英語に一瞬たじろぐと、義経は俺の手の甲に軽く唇を落とし瞳を伏せたまま照れ臭そうにはにかんだ。





あ………俺、堕ちた。





いつもの照れ屋で人見知りでコミュ障のお前はどこにいったんだ!!と疑いたくなるほどの色気に俺は顔が熱くなるのを感じ両手で必死に隠した。


「どうだ!」

腰に手をおいて再びリンクに戻った義経は満足気に鼻息を荒くした。
指の間から伺う義経の顔はそれでも恥ずかしかったのだろう俺に負けないほどに赤く色付いていた。

「……とっても色っぽかったです王子様…」

気付いたら最高の賛辞を義経に送っていた俺はしばらく顔の熱が冷めることがなかった。







おまけ。



「ソワぁ…この前さぁ…」

久しぶりに合同練習で一緒になった湊和に、この前の義経の色気事件の話をしたら湊和は「へぇ~」なんて声を上げてから一緒に座っていた長椅子を降りて俺の前に膝をついた。

…嫌な予感。

俺の手を取る湊和に、既視感デジャヴュのようだと俺はごくりと息を飲んだ。




「……Merry me?」




はい、これダメなやつっ!!!!!!



周りにはキラキラと星さえ飛んでるように見える程漂う半端ない色気の湊和に、俺は思わず鼻を押さえて上を向いた。



気ぃ抜いたら鼻血出る…。



手元は見えないけど俺の手を湊和はまだ解放してくれてはいなくて、ちらっと様子を伺うと湊和は恥ずかしそうに困ったように眉を潜めながら微笑むと「返事が欲しいな…」と先刻までとは違う艶っぽい色気に俺は思わずーーー



「……ぃ、ぃえす……」



と小さく答えた…。




end
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