ジュアは呪い屋さん

湖ノ上茶屋

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10.痛い痛いの……

10-1

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 今日の体育は、男子と女子、別々でやるサッカーだ。

 低学年の頃はいっしょにやっていたような気がするけれど、成長していくほど別れることが多くなった。

 着替えは中学年から別々になったんだったっけ?

 このことをお母さんに話すと、「いいなぁ」っていつも言う。

「お母さんのころなんてね、高学年だって同じ部屋で着替えてたんだよ? 洋服の下でもぞもぞやりながら、必死に隠れながら着替えてさ。体育の授業だってさ、やっぱり男子のほうがこう、なんていうの? 活発に動けるっていうか、パワーが強いっていうか。だから、なんか男子中心、女子添え物って感じでさ。これっぽっちも楽しくなかったよ」

 毎回のように同じことを言うけれど、時々聞いたことがないエピソードがちょこっと添えられていたりするから、お母さんが過去の愚痴をこぼすときは、けっこう楽しく聞いてる。

 そんなお母さんがママ友ネットワークから手に入れてきたらしい情報によると、中学生になったり高校生になったら、もっともっと別れることになるらしい。

 そうなるのはちょっと楽しみだけど、ちょっと怖い気もする。だって、今までどおりがどんどんと崩れていくってことだから。今よりもっと楽しくなる可能性があるけれど、今よりもっと面白くなくなる可能性もあるってわけで――。

「コラー! ジュア、ボールに集中してー!」
「あ、ごめーん! ぼーっとしてた!」

 ナゴミに言われて、あたしはゲームに集中する。いけない、いけない。ゲームの途中で隣のゲームばっかり見てるとか、ダメダメすぎ。

『タケシ! パースッ!』

 隣のコートからダイキの大きな声が聞こえてきた。声に続いて、バンッって力強くボールを蹴る音も聞こえてきた。

『どーこ蹴ってんだよ、ダイキ!』

 ボールはタケシのほうに飛ばなかったらしい。タケシの声は、面白い話をしているときみたいに弾んでいた。

「あ! コトちゃん、危ない!」

 突然、ミキが叫んだ。すると、すぐ、


 
 バシッ! ドンッ!



 隣のコートから飛んできたボールが、コトちゃんのお腹にぶつかった!

 コトちゃんはバランスを崩して倒れた。

「大丈夫?」

 女の子たちは、ゲームなんて放り投げて、コトちゃんのところへ走り寄る。

『あ~、えへへ。ごめんごめん』

 ダイキはヘラヘラと頭を掻きながら、コトちゃんに謝った。

「ヘーキ、ヘーキ」

 コトちゃんがすぐにダイキを許した。

「コト、大丈夫? 怪我はない?」

 先生が走り寄ってきて、コトちゃんに訊いた。

「大丈夫です。ちょっと擦っちゃったけど、こんなのなんてことないし」

 本当だ。手のひらを擦りむいちゃってる。

「そう? だけど、保健室に行って洗ってこようか。絆創膏は……」
「いや、このくらい、そのままで平気です。もし血がにじんできちゃったりしたら、保健室行きます」
「そう?」
「はい。それじゃあ、サッカーしよう! ごめん、ゲーム止めちゃった」
「そんな、コトちゃんのせいじゃないから!」

 コトちゃんが大ごとにしなかったから、何ごともなかったかのようにサッカーは再開された。

 ボールが転がる。みんなが走る。
 大きな声が、ボールとともにあちこちを駆け回る。

 隣のコートからは、的確そうに聞こえる男子のプレー指示が漏れ聞こえてくる。

 あたしの目は、気になるほうばかりをロックオンして見続ける。


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