ジュアは呪い屋さん

湖ノ上茶屋

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17.これから

17-1

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「それで、えっと、なんだっけ?」

 お母さんが、口の周りに砂糖をキラキラさせながらあたしに問う。

「だから、その……。お母さんは人を呪ったこと、あるの?」
「うーん。たいそうな呪いはないよ。でもね、転べ~、とか、テストで名前書き忘れろ~、とかは、ある!」
「そういう時、その呪いってどうなった?」

 お母さんがマグカップに手を伸ばした。ゴクンと一口、コーヒーを飲む。ふわん、と苦い香りがあたしの鼻までやってきた。

「どうって言っても。だいたいは想うだけだよ。転べ、って想っても、転ぶこともあるけど、転ばないことのほうが多いし。テストで名前書き忘れろ、って想っても、書き忘れることなんて稀だし。なんなら、そんなこと考えてたからか私が名前書き忘れたりもしたかな」
「へぇ」
「呪いって……、ああ、ここで言う呪いっていうのはさ、魔術的なものじゃなくて、悪い祈りみたいなものなわけだけど」
「うん」
「そういうのってさ、なんだかんだ自分に返ってくるんだよ」
「え?」
「その呪いが、本当になるかどうかはさておいて、自分に返ってくるの。呪ったことと同じ形で返ってくるかもしれないし、姿形を変えて返ってくるかもしれない。どうやって戻ってくるかなんてわかんないけど、とにかく、なんか戻ってきちゃうんだよね。自分のところに。だから、お母さんは呪わないようにしてる。生きてたらさ、ムカつくこととかいろいろあるけど、そういう時も呪わないようにしてる」

 呪えばそれが自分に返ってくる――。

 お母さんの話を聞いて、だからあんなことに巻き込まれちゃったんだ、ってあたしは思った。

「ねぇ。もしも呪いたくなっちゃったら、どうするの?」
「えっとね。例えば、嫌なことをされたりしたら、『こういうことをしたら人を嫌な気持ちにしてしまうって、気づかせてくれてありがとう』って思うようにしたり。あとは、『こんなことでイライラしちゃうくらい、自分に余裕がないことを気づかせてくれてありがとう』って思ったり」
「ありがとうって、思うの?」
「うん。だって、呪いが返ってくるのなら、ありがとうも返ってくるのかな? って思うから。どうせだったら、ありがとうが返ってきてくれたほうがいいじゃん? まぁ、あんまり返ってきてる実感とかないけどね」

 だんだん、過去の自分にイライラしてきた。

 実際、あたしが呪ってきたことなんて、別に呪わなくてもいいことだったから。

 気づきをくれるものばかりだと思ったから。

 あたしも、ありがとうって思っていればよかった。

「そうだ。お母さんも、ジュアにひとつ相談したいことがあるんだけど。いいかな?」
「うん。もちろん」


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