かみひこうき

たい焼き

文字の大きさ
1 / 1

かみひこうき

あれは遠い夏の事、僕が長野県にある祖母の家にお泊まりに行っていた時の話。
する事もなく、ただ新聞の広告で紙飛行機を折り飛ばしていた。
そんなある日、祖母の家の隣に住む多恵おばさんが亡くなった。多くの人が集まり、涙を流していた。
僕は人が死ぬという事はどういう事なのか、まだわかっていなかった。
それはあの子も同じだったようだ。
その子は他の子供達とは離れた場所で、ただひたすらその手に持つグリム童話を読んでいた。
その子の髪に付いた、大きな髪飾りが、何故か印象的だった。
あの子がどうしようも無く気になった僕は、紙飛行機を折る手を止め、声をかけに近づいた。

「君は、他の子と遊ばないの?」

「……。」

言葉は帰ってこなかった。僕は少し腹を立てまた元の場所へ戻り紙飛行機を折り始めた。
折り終えた紙飛行機を持ち、またあの子の元へ行った。

「この紙飛行機で遊ばない?」

あの子はチラッとこっちを見た。そして不思議そうな顔をして、

「紙飛行機?」

「そう!知らない?お父さんに教えてもらったんだよ!お父さんはね、すごく飛ぶ紙飛行機を作るんだ!」

「お父さん…。私にはお父さんはいないの。だから紙飛行機を知らない。」

僕は子供ながらに何かを察し、謝ろうとした。
だが、遠くから名前を呼ばれあの子はどこかへ行ってしまった。


12年後の夏の日、僕は高校の屋上で1人弁当を食べていた。僕の座るすぐ横には、授業中に不良が吸っていたであろうタバコの吸殻が捨ててあった。
法を犯してまで吸いたくなるタバコとはどの様なものなのか、興味はあった。だが、手を出す勇気はない。
弁当を食べ終わり、保冷バッグに片付ける。
教室にいるのが憂鬱だ、教室に僕の居場所はない、ひたすらそう思い、生きていた。
昼休みの屋上は僕の楽園だ。誰にも邪魔されること無く、夏に吹く爽やかな風を全身で感じることが出来る。
だが、そんな1人の時間を、今日初めて壊された。
屋上の扉が開き、どこか見覚えのある髪飾りをした女が出てきた。
彼女は僕を見るなりこう言った。

「あなた何処かで会ったことある?」

僕はその声を知っていた。でも思い出せない。
何処か懐かしく、1度しか聞いた事のないはずの声、1度しか聞いていないけどハッキリと覚えている声。
何処かで聞いたことある。だが、全く思い出せなかった。
でも、何故か1つ、言葉が頭に浮かんだ。そしてその言葉を口に出した。

「紙飛行機で遊ばない?」

「うん、いいよ。」

今なら、紙飛行機の折り方、わかるよ?
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。