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らしくない
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しおりを挟む「…やっぱりユキ、最近よく笑うよな。」
移動中の車内でそう言ったのは、悠二だ。
「え、そう?」
もしそうだとしたら…
「やっぱりルナちゃん効果?」
ニヤニヤしながら振り返る隼人さん。
「それやんな!さっきの取材中もよう喋るなぁ思っとったわ~、ユキらしくない!」
健ちゃんまで加わる。
「いや、最初は俺らもめちゃくちゃ心配してたんだよ?いくらプロモとはいえやり過ぎだろって思ったし。でも、ユキ、アリだと思い始めてるだろ、るーなちゃんのこと。」
鋭いのはいつも隼人さん。
「…そんな、別に。まあ一人暮らしよりは、誰かが家にいる方が会話もあるし、そのせい、かな。」
…完全なる俺の片思い、だなんて。
知られたら、恥ずかしすぎて死ねる。
「次の仕事、ルナちゃんと一緒ですよね?」
と コンが言うのと、俺のケータイが鳴るのが同時だった。
「ん、ごめん。出るわ。
…もしもし?…うん。いや、もう局の駐車場まで来たよ。……別にみんな暇してるだろうからいつでも良いよ。…えー、めんどい。…ははっ、はいはいはい。………ん、待ってる。
………あー、なんかハザマさんがうちの楽屋に挨拶に来たいって言ってて…」
と電話を切って顔を上げると、ニヤニヤした4人の視線が俺に集まっていた。
「え?何?」
驚いて聞いても、皆、べつにー?なんて言うだけで。
「おいおい聞いたかー?」
「いやー、ユキが、ねえ~?」
「“…ん、待ってる”。」
「「「「「あはははははっ」」」」」
車内には、俺のマネと冷やかしの笑い声が響く。
…ああー、もう。
なんで俺がこんな恥ずかしい思いしなきゃいけないんだよ、くそ。
『はじめまして、狭間ルナです。…もう本当に大ファンなので、皆さんとお会いできるの楽しみにしてました…!』
いつにも増して楽しそうに笑うルナに、メンバーからは、かわいい~なんて声が漏れる。
「ユキから色々聞いてるよ~!」
『わあ!隼人さんお久しぶりです!
…ちょっと、ユキ君は皆に何言ってるの?変なこと言ってないよね?!』
「え~!なんなん、ユキ君、なんて呼んではるん?!めっちゃかわええー!ルナちゃん、俺んことも健ちゃん呼んでぇや!」
『そんな…!健ちゃん、いつも沢山笑わせてもらってます。おおきに!』
健ちゃんに合わせて関西弁なんて使えば、もうハートをガッチリ鷲掴みだ。
「いやー、本当にかわいいなぁ!ユキお前、羨ましすぎだぞ。」
なんて、悠二が俺のことを叩く。
「…外面は良いんだって。」
『もうユキ君黙って!』
「ははっ、何、悠二の前だと照れてんの?」
『…うるさいよ、意地悪。』
「おーい、楽屋でイチャイチャしないでくれるー?」
「そうですよ、家帰ってからにしてくださーい」
「いや、そういう訳じゃ…」
皆に茶化されて我に帰る。
ダメだ、ルナをこれ以上ここにいさせたら、嫌でももっとボロが出る…
…いや、別に、やましいことなんて、悲しいくらいに何もないけどね。
でも何か知られたら、また冷やかされるのかと思うと…面倒だ。
「おい、ルナ、そろそろ戻「いやちょっと待って!」」
俺の話を遮ったのは、悠二だ。
やっぱりなんとなく、ルナと悠二って似てるよな。
「え、俺の記憶が正しければさ、ユキ、メンバーと話すときはルナちゃんのこと、狭間さんって呼ぶよね?!」
「今俺もそれ思ったよ!何、やっぱりユキ満更でもないんじゃん!!」
…くそ、自爆した。
『へ?何?どういうこと?』
「いや、ちゃうねん。俺らさっきもな、ルナちゃんと生活し始めてから、ユキが明るうなったって話してん。せやのにコイツ認めんくてなぁ~?」
「いやー、でももう否定できないね!ユキが彼女でもない女の子を名前呼びなんて、ルナちゃんのこと、信頼してる証拠じゃん!」
「ルナちゃん、ユキさんのこと、末永~くよろしくね。」
『え?え?』
どういうこと?と困ったようにキョロキョロするから、
「…いや、ルナは何も悪くないから大丈夫。」
つい頭に手を乗せてなだめてしまう。
「うわー!ユキ頭ぽんぽんなんてどこで覚えたん?!」
「あざといなー!」
「あーもう!いいからお前ら黙れって…」
ヒューヒューなんて冷やかしが入るのは、もう完全に男子校のノリだ。
やっぱりそろそろ帰らせ…
「ルナちゃんお昼まだ?一緒に弁当食おうよ!」
『え!良いんですか?!』
…今 俺は悠二を、本気で殴りたいと思ったよ。
『なんか…ユキ君怒ってる?』
俺の隣に座ったルナは、小声でそんなことを尋ねてくる。
…ああ怒ってるさ。
悠二に誘われて喜んじゃって、なんかいつもより楽しそうなのも気に食わないし、メンバーはわかった上で完全に楽しんでるし。
でも、そんなこと。
「…別に。いつも通りだって。」
お前に言えるわけ、ないだろ。
ああ、くそ。
俺、かっこ悪。
「えー、ユキ、BLUEの楽屋じゃいつもこんなだよ?なになに、家ではもっと笑うの??」
俺の弱味を握ろうと必死な隼人さん。
おいルナ、頼むからこれ以上余計なことは…
『なんだかんだで楽しくやってるんですよ。ね?ユキ君……あ!ちょっと!』
「え?」
ルナが形相を変えて俺の腕を取る。
『ユキ君袖!ご飯粒付いてる!!』
「…あ、本当だ、ごめん。」
『朝貸す時に白い服だから気を付けてって言ったじゃん!…まだご飯粒だからいいけどさ~』
「だからごめんって…」
もう~、なんて言うルナから視線を外せば、
「…なにニヤニヤしてんだよ」
「「「「「べっつにー?」」」」」
わはははははっと手や机を叩きながら爆笑するメンバー。
「いやー、本当に一緒に暮らしてんだなぁって思ってね。」
「いいっすねえ!俺も早く結婚してー!」
「いや結婚はしてないし、てか付き合ってもないし」
「あー、ユキが照れてんの初めて見たわ~!こんなん家じゃ絶対デレデレやんな!お前そういうタイプか?!」
「クールなユキのデレデレとか見てみてー!絶対面白いじゃん!」
「あーもう!良いから!ほらルナ、帰って準備!!!」
メンバーに一通り笑われたところで、えー?なんて不満そうなルナを無理矢理楽屋に帰した。
「頼むから変なこと言うなよ?この後の収録。」
まだ笑い転げているので釘を刺せば、分かってる、なんて言うものの…こいつら絶対に分かってないな。
「せやけど、俺らが何も言わんでも、絶対司会者につっこまれるで?」
そう、問題はそれだ。
今日だけでなく、ドラマのために今後何本も2人でのプロモーションがある。
バラエティの司会を務める芸人さん達は、絶対に報道について何か言ってくるだろう。
「いつも通りクールにかわせよー?」
別に俺は大丈夫だよ、なんて周りにはこたえるが…正直なところ、自信がないんだ。
さっきだって必死に隠そうとしたのに、やっぱり、目の前にルナがいると普段の調子になってしまう。
元気で明るくて、あまりにも自由だけど、そそっかしくて…何かあったらどうしようって、気が気じゃないんだ。
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