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番外編

向坂夫妻のお話 2

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『えっと…ユキ君?なんで?』


やっと落ち着いてきて、運転する彼を覗き込めば、どうもなんだか怒っているらしい。



「…1人で歩いて行くなって言ったよね?」



…あ!そういえばそんな約束した!


『ごめん!忘れてた!』


素直に謝れば、ふうっと溜め息。




「徒歩15分のスーパーにわざわざ車出すのが面倒なのも分かるけどさ、さっきのアイツでしょ?噂のストーカー君。」




そうなのです。


お家のすぐそばにあるスーパーで、最近、さっきの彼にいつも待ち伏せされていて。


今の所何かされたわけでもないんだけど、何かあってからでは遅いから、1人で行く時は歩いて行っちゃダメだとユキ君に言われてて…


『ごめんね、本当に本当にすっかり忘れてたの。』



言われたそばから今日もまた彼につけられて、もしユキ君が来てくれていなかったら、と考えると、謝ることしかできない。




「…頼むから、心配させないでよ、もう。」



そう言ったユキ君の横顔は、ツンと口を尖らせていて。


なんだか、怒ってるっていうより…




『…拗ねてる?』



あ、ヤバい。

そう思った時には口に出してしまっていた。



拗ねてる?なんて言って、また怒られちゃうな。



ごめんなさいの準備をしてた私に、ユキ君は、

「拗ねてるよ!」

なんて、いつになく素直に認めるの。


「拗ねてるよそりゃ。なんで俺に言わないの?ライブ前で忙しいから気を使わせてるの、分かってるけど、俺は、疲れててもなんでも、ルナに頼られるの、好きだもん。」


スーパーでおつかいくらい、言ってくれれば俺がするのに。だって。



一生懸命運転してるから、ちっともこっちなんて見ないで、前向いてそんなこと言うけど。


ユキ君の耳、真っ赤なの。




『…へへ、じゃあ、今度から、一緒に行ってね?』


それがなんだか嬉しくって、私は自然に笑顔になる。



そしたら私の言葉に、少し口角を上げて、ニヤニヤしながらコクンと頷くのが、最高にかわいいの。




あー!本当にかわいい!

33歳のおっさんなのに!



あのね、何がかわいいってね、ユキ君たら、自分がニヤニヤしてるの、隠せてるって思ってるの!



だから今も、御多分に洩れず、


「…あー、でもやっぱ、めんどいな~」


なんて言ってみたりして。




これ、ユキ君なりの、照れ隠し。


全く、素直じゃないなぁ。


顔はすっごく嬉しそうだよ?


もう。




でもこんなにかわいいユキ君は、全国のBLUEファンには秘密。ごめんね、皆。



ここで私が、素直じゃないな~なんて言うと、きっとまた拗ねちゃうの。

それもまたかわいいんだけどね、今日は、助けてもらったから特別。



『え~、そんなこと言わないでよ。私、ユキ君と一緒にお買い物したいもん!お願い!…ね?』



照れ隠し、気付かないふりをしてあげる。


そしたらユキ君は、仕方ないな~、なんて。


「…ルナ、目を離すと何しでかすか分かんないし。本当、世話が焼ける。」



そんなこと言って、こんな私が、好きで好きでたまらないくせに。



でも、それも言わないでおく。


『良かった!ありがと!』


素直なありがとうの方が、ユキ君、喜んでくれるの、知ってるから。





「…そしたら、買い物の帰りに、ご飯食べに行けるしね。この間ルナが行きたいって言ってたところ、行く?」



そう言いながら、車は自宅マンションの前を素通り。


『うん!行くー!』


やった、久しぶりにデートだ!



確かあそこは個室になってるお店だったから…うん、決めた。




『うふふ、楽しみだな~!ね!』



「…一緒に買い物行けば、また、いつでも連れて行けるから。」




だから絶対に一緒に行けって、そういうことでしょ?


私が危ない目に、合わないように。



『うん、お買い物するときは、絶対に一緒ね!』




言葉足らずのユキ君が恥ずかしくて言えないことは、いつも私が言ってあげるの。


好き、の気持ちを素直に伝えられる今が、最高に幸せで、決して当たり前じゃないんだって、私は知ってるから。




…そのお買い物に、来年からもう1人増えることになりそうなのは、お店に着いてから教えてあげよう。





end.

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みんなの感想(1件)

riru
2021.01.11 riru

凄く面白かったです!
途中から涙が出てきちゃって、こたつに埋もれて母から見えないようにしながら、泣きながら読んでました(笑)
読み終わったときには、とても幸せな気分になっていました(^^♪
とっっっても面白かったです(^o^)/

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