あほうぎ

降守鳳都

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あほうぎ

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 ある国に阿呆がいました。
 阿呆は、本当はかしこい人でした。
 かしこ過ぎて阿呆と思われていたので、みんなから遠ざけられていました。
 それでも阿呆はみんなのことが好きなので、遠くからみんなに向かって、大きな声でこう言いました。
 「ぼくはみんなのことが嫌いではありません」
 それを耳にしたみんなは、何故か分かりませんが腹が立ったので、阿呆に向かって石を投げつけました。
 その様子が雲上の神様の目に留まりました。
 神様はそれを悲しく思いましたが、どうすれば良いのか分かりません。
 そこで神様は、遥か遠くの星にいるかしこい仏様に呼びかけました。
 仏様はすぐさまやって来て、神様の前で一枚の紙を折って、形あるものを創って差出しました。
 意味が分からずに呆けている神様に仏様は、おごそかな声で力強くこう告げました。
 「この『あほうぎ』を与えなさい」
 神様はその言葉ではたと気づいて、それをうやうやしく受け取り、すぐにそれを雲上から阿呆めがけて放り投げました。
 頭上に落ちた『あほうぎ』を阿呆が手にもって、何となく自然に口元をそれで隠しながら、
 「ぼくはみんなのことが嫌いではありません」とみんなに向かって口にしてみたところ、『あほうぎ』から七色の光の粒が煌めきと輝きを放ちながら飛び出して、みんなの体を包みました。
 みんなは石を投げつけませんでした。
 仏様はそれを見てしずかにほほえみ、来た時と同じようにものすごい速さで遥か遠くの星へと戻っていきました。
 それから阿呆は『あほうぎ』で口元を隠して、みんなに声が届けられるようになったので、勇気を出してみんなのうちの一人に近づいて、畏れながら少し離れて『あほうぎ』でその肩を軽く叩いてから、『あほうぎ』で口元を隠してこう言いました。
 「ぼくはきみのことが嫌いではありません」
 そして時が流れ、阿呆もいなくなって、みんなもいなくなって、あったこともなかったことも過ぎ去った今でも、ある国では実に悲しいことですが、人と人が離れなければならないことになって話をする時には、『あほうぎ』を使って肩を叩いてから、『あほうぎ』で口元を隠して話をするそうです。

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