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朝ごはんは、カリカリベーコンのついたフレンチトーストと、レタスのサラダ、オニオンコンソメのスープ。
今日も美味しそう。
ぐぅ、と腹が鳴る。そんな様子に、ランが笑っておはようとか言うのだ。
なにこの、完璧な彼氏。自分が女だったら、二つ返事で結婚しちゃいそう。でも、ランは「女だったら」自分に興味は示さなかったかもしれない。
無意識に、オレンジジュースを二つ、グラスに注いで向かいに座ったランを見ていた。ランが、なに?と首をかしげる。
「んー・・・。ランて、オレが女だったらよかった・・・とかは思わないんだろうなって。」
ランは、問いかけに、不思議そうな顔でまた首を傾げた。
「それは・・・思わなかったな。・・・どっちかって言うと、俺が女だったら、とは思うよ。」
「・・・そうなの?」
ランが女だったら?
想像していると、ランが苦笑した。
「俺、小さい頃はけっこう可愛かったんだよ。女だったら、楓李好みだったかもしれない。」
それは、そうかも。男のランの顔だって、カッコイイって思うし。
「でも、そうだったら、出会えていたとしても、ここまで近づくのは難しかったと思うから・・・しょうがないかな。」
そうか・・・。そうだな。
女だったら、自分は逆に避けていただろうから。とすると、ランが男で良かった、ということになる。でも、もともとの話として、性的な付き合いを望まないから、女性とのかかわりをしてこなかったのである。男同士でも性的な付き合いをするとなると・・・。
「食べよう?」
思考を遮って、ランがフォークを手にした。
「あ、あぁうん・・・。お腹空いた。」
「お腹鳴ってる。食欲出たみたいで良かった。」
そうだ。昨夜は食べる気もしなくて。でも、ランと一緒だったら、夕ご飯も食べられた。
注がれたオレンジジュースを一口する。甘酸っぱい味と、香り。
「美味しい。」
「うん。オレンジって、元気が出るような気がするんだよね。」
あぁ。気を使ってくれてるんだ。
優しい。
モリモリ食べるランの様子を見ているだけで元気が出る。
一緒にいたら、毎日楽しそう。
「ラン。話があるから、時間作ってもらえる?」
駅に向かう分かれ道で、ランの目を窺う。綺麗な瞳が、一瞬揺れた。
身支度を整えて、職場までは徒歩のランと一緒にマンションを出た。空は雲一つない夏空。今日も暑くなりそうだ。
「うん。・・・早い方がいい?」
「ランの都合に合わせる。」
「・・・なら、仕事終わりにまた連絡するよ。」
ちら、と左腕の時計を見るランに、わかった、と返事をしてため息する。
「じゃぁ、夜に。行ってきます。」
手を振って歩き出したランを見送って、駅の方へと向かった。
「お泊りですかぁ?」
おはよう、と言ったその後に、天羽がスンスンと匂いをかいでそう言った。
「え。あー・・・まぁ。そうです。」
「いい匂いする。・・・食べられちゃったの?」
金曜からずっと伊住さんの家?と目を輝かせる天羽に、その期待には、そのうち応えることになるのかも、と眉を寄せる。
「まだ、キスもしてませんよ。」
そう。あれは未遂で・・・。でも、いずれするのだろう。
気持ちは、ランの告白を受け入れる方向で、シミュレーションを始めている。キスをして・・・そういえば手はもう繋いだし、デートはしたし、お泊りもして・・・。あれ?もしかして、あとはもうえっちしてもいいカンジ?男同士って、付き合ったらどれくらいでするのかな。
ネットに聞くか、桃に聞くか、天羽に聞くか・・・。
うーんと唸っていると、天羽が着替え終えて、シャーっと更衣室のカーテンを開けた。
「そういう手順、踏むタイプなんだ?」
・・・どういう意味?
首をかしげながら、更衣室に入る。カーテン越しに、天羽が続けた。
「あの容姿でしょ。ワンナイトとかもありそうかなって。」
「ワンナイト?」
うんそう。と言う天羽に、しかしどうだろうと思う。こと、自分に関しては、誠実に接してもらっているように思う。キスの一件のほかは、性的な接触はなかった。
もしあったら、その時点で逃げ出していた可能性が高い。
「それ・・・ないと思いますけど。・・・根拠ってあります?」
「特にないわね。でも、性欲強そうなのに、そういう感じを見せないから、どこかで発散してるのかなって。ストイックなイメージの人って、そういう感じじゃない?」
酷い言われ様だ。
「えぇ。じゃぁオレは?」
「・・・楓李君はさ、苦手でしょ?女性。」
ギクリ。
カーテンを開ける手が止まる。
「へぇ・・・。わかるもんですね。」
ため息して、カーテンを開け、靴を履き替える。
「それはまぁ、ね。見る目はある方なのよ。・・・だから、伊住さん大丈夫かなって。」
「伊住さんは・・・。」
「おはよう!」
言いかけたところで、不破が入ってきた。
「おはようございまーす。」
「おはようございます。」
挨拶をした、天羽と自分を交互に見て、不破は気まずそうな顔をした。
「タイミング悪かった?」
お盆のシフト出てるので、チェックしてください。と不破から指示があり、休憩中にバックヤードでシフト表を見ている。夏休みなこともあって、学生組がシフトに入れるので、来客は見込んでいるが、さほどキツそうではない。どうにかなりそうだと思う。
ちゃんと眠れれば。
気温は高いし、疲れはあると思う。でも、しっかり眠れさえすれば、ちゃんと回復できる年齢である。問題は隣の親子だ。
母親は入院したようだが、それでお盆中は帰ってこないのだろうか。その辺の事情が読めないから、不安ばかり募ってしまう。
とにかくもう、一秒たりとも関わり合いたくない。
方法としては、自分が明楽の寮に引っ越すことなのだろう。どうにか、今の環境から逃げ出したい。
・・・その、逃げ出したいのだという事情を、包み隠さずランに話す必要があった。
寮に入れたら。そうしたら、少しは対等な関係に近づけないだろうか。
アパートで眠るのが嫌だから、ランと付き合いたい。なんて、体を家賃に、間借りさせてくださいって言っているようで。
そんなのは、お互い望んでないってわかるから。
まずはちゃんと話をしなくちゃ。
閉店作業を終えて、着替えてからランにメールする。
『駅のロータリーで待ってる。』
ランからそう返信があって、慌てて忘れ物の確認をし、そそくさと商店街を後にした。
やってきた電車に飛び乗って、三駅。仕事モードからの切り替えには、丁度いい距離だった。改札を抜けて、噴水のあるロータリーへ。街灯の下に、見覚えのある青い車を見つけて駆け寄る。
「おつかれさま!」
声を掛けると、半そでのワイシャツ姿のランが、ピンと上に手をあげた。跳ね出しそう、と思う程度に嬉しそうで、はにかんでしまう。これから、割とシリアスな話をしようとしているのに、顔を見られるだけで嬉しかった。
やられてるな。
ランの言った、『好き』という言葉のパワーにひれ伏す。
この、どこからどう見てもカッコいい男が、自分を好きだと言った誇らしさに、頭のなかで大玉の虹色花火が打ちあがる。
あーオレ。ランのこと、好きだなぁ。
唐突にそうと自覚して、ぶわっと汗が噴き出した。耳が熱い。
「荷物持とうか。・・・どうかした?」
ランが、いつも通りを装って、手を差し出す。無意識に触れ合ったランの指先が、ひやりと冷たい。
ちがう。オレが熱いんだ・・・。
ドキドキしてるくせに。
オレが今日、ランにどんなこと言うのか不安で、心配で、でもきっと期待もしてて、ドキドキしているくせに。
涼しい、少し冷たい声音で、そんなことを言う。でも、その眼鏡の奥の目が少し潤んで、街灯のまばゆい明りに光ってる。
「ありがとう。大丈夫。・・・あ、ほら、タクシーがどけって。」
「やば。」
ランは、後でハザードを光らせるタクシーに手をあげて謝ると、乗って、とこちらに向き直り、運転席に乗り込んだ。
「とりあえず出すね。」
くるりとロータリーを出て、見知った街並みへと走らせていく。
「・・・泊る?」
「うん。・・・でも、それも含めて、ちゃんと話をしたい。」
コク、とランがのどを鳴らした。緊張感が高まっていく。
「うん。・・・あの・・・。こんなこと言うの、本当にズルいと思うんだけど。・・・言ってもいい?」
なんだろう?
「・・・いいよ?」
返すと、ランは一呼吸おいて、来週誕生日なんだ、と言った。
「は?え?」
「車のナンバー、覚えてる?」
「えっと?」
とっさに出てこなくて、首をかしげていると、820、だよとランが言った。
「この車は、父がお金を出して、母が選んで、色は俺が決めて・・・選べたから、ナンバーは誕生日にしたんだ。」
気がつくかなって思ったけど、まだそんなに親しくないよね、と苦笑する。
「だから・・・あの・・・。話、お手柔らかに。」
できればいい返事が聞きたいです、と眉を八の字にしている。
そんな顔を、カワイイと思ってしまい、ますますやられてるな、と思った。
あれ?でも。
「ランのお父さんって、イタリア人じゃなかった?このマーク、日本のだと思ってたけど。」
「選んだのは、母だから。スバル、ってメーカーの車だよ。乗りやすくて気に入ってる。」
「へぇ。ランは、この色が好きなの?」
青というには深みのある色だと思う。大人っぽいというか、それでいて遊び心のある・・・。
「好き。」
ドキ。
いや。車の色の話しだって。
「・・・なんで?」
「楓李が、俺のことに興味持ってくれるの、すごく嬉しい。
笑わない?食べ物にはない色だから、だよ。」
「ぷふ。」
そんな理由で??
なんとも可愛らしい返事に、思わず笑ってしまう。
「ついたよ。夕ご飯、パスタでいい?出来合いのソースと、スープとサラダの、簡単ごはんだけど。」
「食べさせてもらえるだけで、感謝感謝だよ。」
素直に礼を述べると、ランはまたニコニコして車を降りた。
ランは簡単ごはんと言ったけれど、大満足の夕食を食べ終えて、ダイニングテーブルに向かい合っている。
大切な話をしなくてはならない。
でも、占い師の話をするかどうかは、まだ迷っている。それよりも、ランの誘いに乗った理由を、ちゃんと説明しなければと思っていた。
今日は、レモンの入ったソーダ水を飲んでいる。キッチンカウンターで育てているミントの葉をちぎって浮かべたりするあたりが、なんともおしゃれだ。他に、ローズマリーとバジルと、猫サラダが並んでいた。
「・・・話しておかなきゃいけないことが、いくつかあって。」
口を開くと、ランが神妙な面持ちで、うん、と相槌をうった。
「まずは・・・、オレのアパートの話しなんだけど。」
「うん?」
首をかしげる仕草に、それはそうだよな、と思う。
「住み始めてまだ、そんなに経ってないんだけど。隣に、母子家庭が越してきたんだ。・・・オレは、女性と子供が苦手で、特に怒鳴り声とかがほんとにしんどいんだけど、毎晩夜になると、隣から聞こえてきて。正直、眠れてなかったんだ。」
うん。とランがまた頷く。
「だから、最初にここに泊めてもらった時に、静かだった、よく眠れた、って。それで、泊りのお誘いは、オレにとって都合が良かったっていうか。ランの家は、安心してぐっすり眠れる場所だったんだ。」
至れり尽くせりだったしね、と苦笑する。
「・・・そんな事情があったんだね。そうか、それで、続けて誘っても迷惑そうじゃなかったのか。」
うん。と、今度は自分が頷く。
「もしかして、昨夜アドリーナが一緒でも大丈夫だった?」
「ちょっと狭いくらいは気にならなかったよ。」
そうか。先を越されたな。女の子には勝てないや。と、呟くのを、耳が拾う。
「・・・それで、その・・・。オレは、女性・・・というか母性?的なものが苦手で。子供も苦手で・・・。だから、欲しくはないんだ。彼女も家庭も。でも、だからって、男が好きなわけでもないし、恋愛はしたことがなくて。」
「うん。ゲイじゃないのは分かってたから。」
ランはそう言うが、じゃぁ男性と女性、つまり人間とは恋愛できないことになってしまう。
「でも、オレね・・・。ランに好きって言ってもらえるのは、嬉しいって思ったんだ。」
ランの瞳がふわっと広がる。緑のキラキラに頭上のライトが反射して瞬(またた)いた。
「ランは、男として、その・・・とても優秀だと思う。体格も、人間性も、地位とかそういうのも。だから、そんな人に、好き、って言われるのは、オレも誇らしく感じるんだ。なんかこう・・・オレ、捨てたもんじゃないなっていうか。自己肯定感爆上がりっていうか。」
これは多分、前に勤めていたブラック会社が、あんまりにもあんまりで、プライドがズタズタだったから余計にそう感じるのだろう、と分析している。
「うん。」
目に見えて嬉しそうに目を細めるランに、これを言うのは気が引けるが・・・。
「・・・でも、セックスできるかはわからない。」
「あ・・・。」
告げると、ランが明らかな動揺を示した。
「付き合えたら、オレ、たぶん幸せだと思う。でも、その・・・子供が欲しくなかったから、セックスをしないでここまで来てて・・・相手が男になったからって、子供ができないからって、できるかわからくて・・・。」
キス、したかったら、その先もしたいよね?と上目遣いに問いかけると、ランは首を傾げた。
「俺はそもそも、男同士の付き合いに、セックスは求めてないよ。そういう人たちはたくさんいるし・・・お互いに求めてないならすべきじゃないよね。」
そう・・・?そうだろうか。
「ランが求めてないなら、それでいいけど。今はしたくなくても、したくなるかも。」
「それは、お互いさまでしょ。」
そう、か。
どっちがどっちを抱くか・・・も含めて。先のことはわからない、ということか。
「じゃぁ、そのことを踏まえて、返事、聞かせてくれる?」
ランが、静かに微笑んだ。
まるで、ノーと言われれることは想定していない、自信に満ちた表情だった。
求められてる。
こんな顔をする男に、イエスと応えることを。
「うん。あの・・・オレで良かったら。お付き合い、したいです。」
「ぜひ!これからよろしくお願いします!」
張りのある声で、ぺこりと頭を下げるランにつられて、こちらもペコリ。
「あ、でもでも。まだ話してないこと・・・。」
「それは、俺もあるから。ゆっくり、話していけたらいいと思う。」
ランにも?
「・・・うん。」
「ところで、今日はお泊り?」
「・・・差し支えなければ。」
「アドリーナに先を越されたから、一緒に寝たい。」
えぇ。
「それは・・・。休みの日とかじゃ駄目ですか?眠れるかわからない。」
「たしかに。それは俺も。」
ふふ、と笑い合って、肩の力を抜く。ふーっと深呼吸すると、ガチガチに緊張していたのがわかった。それはランも同じだったようで、コキコキと肩を回していた。
「どうしよ。人生初のお付き合いなんだけど。」
「・・・同性は初めて、って言ったら?」
「えぇ・・・?」
うそでしょ。そうなの・・・?
それはどういう意味なのか、おいおい聞くことになるのか。
なんにしても、ランはこれから、友達ではなく『恋人』になったのである。
そういえば、ランが自分のどこを好きになったのか、聞いてないな。
ランとは別々の寝室に入り、触らせてはくれないアドリーナにベッドを半分占拠されて、丸くなっている。
オレンジ色の常夜灯が、ぼんやりと灯っている、静かな室内。
これ、これだよ。オレに必要なもの。静かな寝床。
思えば、実家にいた時も、弟たちと雑魚寝状態で、ゆっくり寝た記憶がない。蹴られたり、殴られたり、腹に頭突き食らったり・・・。壁の薄いアパートは、母子が越してくる前から、外の音が聞こえて、ざわざわとしていたように思う。
耳がキーンとするほどの静寂。もしかして、相当防音が良い壁なんじゃないだろうか。
これなら、中からの声も・・・外には聞こえないな。
と、思い、ハッとする。
もしかして、えっちの時も、声とか気にしなくていい・・・?
うわぁ・・・。
股間がむずりとしてしまい、わたわたと体をたたむ。熱を持ち始めるそこを、手のひらで包んで落ち着かせる。普段から、あまり自慰はしないけれど、ここは人の家だし・・・。
だめ・・・。
なんとなく、恋人ができたことで、性的なもののハードルは微妙に下がったように思う。前ほどの嫌悪感や、禁忌的なイメージは薄れた。とはいえ、それをお互いで解消することは、まだしばらくなさそうだが。
ってことは・・・もしもの時は一人でするんだよなぁ・・・。
ランのこと、想像して?
恋人、なんだからと、思い浮かべては見たものの、それはなんだか違うなと、打ち消した。
そういうことをしなくてもいい恋人、が自分の求めるものだったのかもしれない。
占い師の言ってた、よりよい未来って・・・こういうことなのかも・・・。
でも、それはあくまで、自分にとって都合のいい恋人で。
ランにとって、ふさわしい人間になりたいな。
まずは、家の問題を何とかしなきゃ。寮に入れたら・・・そしたら・・・。
興奮してるかとも思ったけれど、目を閉じると眠りに落ちるのはすぐだった。
「考えたんだけど。アパートは、二年契約だよね?それは、そのままで、半同棲とか、越してくるとか、考えられない?」
朝いちばん、目玉焼きを焼きながら、ランがそう口にした。
昨夜考えていたのだろう。昨日話したことの流れからしたら、至極当然の思考だった。
「うん・・・。それは、少し考えさせて。なんていうか、ここに転がり込むのは少しプライドが引っ掛かるというか。アパートをそのままで、ここに来るってことは、家賃とか払えそうにないし。・・・会社の方で、寮に入れそうな話があって。検討中なんだ。近くはなるでしょ?」
「寮?」
「明楽フーズの社員寮。」
答えると、ランは口をへの字に曲げて、不満そうな顔をした。
「社員寮はねぇ、やめておかない?」
「なんで?・・・壁が薄いとか?」
懸念事項は、そこである。しかし、ランの答えは意外なものだった。
「出るって噂なんだよ。」
「・・・出るって・・・アレ?」
黒いカサカサした虫の方じゃなくて、いわゆる生きてない人。
「・・・ほんと?」
「噂だから。」
もしかして、それで住んでる人が少なくて、空きがある?とか?
納得の話しに、うそでしょう、となる。
「嘘ついてない?」
「晴海さんに聞いてみるといいよ。」
そこまで言うなら。
生きてない人のせいで、眠れなかったら元も子もない話である。話が通じない分、生きている人より厄介かもしれないし。
「うん・・・。じゃぁまぁ、同棲の話は考えさせてよ。まだ、昨日恋人?になったばっかりなんだし。」
「恋人です。でも、眠れないって困るでしょ?」
押しの強い恋人がぐいぐい来る。
「寝不足が限界にきたら泊りに来るのじゃ駄目?」
「プラスアルファ欲しい。」
「週末なら。・・・ただし、家事は分担で。」
妥協点を探ると、ランは、それはもちろん、と出来上がった朝ごはんのプレートを持ってきた。
目玉焼きと、ウィンナーと、レタスとミニトマト。わかめスープにご飯。
「オレンジのシャーベットあるけど、食べる?」
「少し貰う。」
食後にね、とランが座ったので、いただきます、と手を合わせた。
米粒がピカピカで美味しい。半分日本人じゃなくても、お米は炊けるんだな、と感心してしまう。家事の分担を申し出たが、自分にできることはあるのだろうか。
今日も美味しそう。
ぐぅ、と腹が鳴る。そんな様子に、ランが笑っておはようとか言うのだ。
なにこの、完璧な彼氏。自分が女だったら、二つ返事で結婚しちゃいそう。でも、ランは「女だったら」自分に興味は示さなかったかもしれない。
無意識に、オレンジジュースを二つ、グラスに注いで向かいに座ったランを見ていた。ランが、なに?と首をかしげる。
「んー・・・。ランて、オレが女だったらよかった・・・とかは思わないんだろうなって。」
ランは、問いかけに、不思議そうな顔でまた首を傾げた。
「それは・・・思わなかったな。・・・どっちかって言うと、俺が女だったら、とは思うよ。」
「・・・そうなの?」
ランが女だったら?
想像していると、ランが苦笑した。
「俺、小さい頃はけっこう可愛かったんだよ。女だったら、楓李好みだったかもしれない。」
それは、そうかも。男のランの顔だって、カッコイイって思うし。
「でも、そうだったら、出会えていたとしても、ここまで近づくのは難しかったと思うから・・・しょうがないかな。」
そうか・・・。そうだな。
女だったら、自分は逆に避けていただろうから。とすると、ランが男で良かった、ということになる。でも、もともとの話として、性的な付き合いを望まないから、女性とのかかわりをしてこなかったのである。男同士でも性的な付き合いをするとなると・・・。
「食べよう?」
思考を遮って、ランがフォークを手にした。
「あ、あぁうん・・・。お腹空いた。」
「お腹鳴ってる。食欲出たみたいで良かった。」
そうだ。昨夜は食べる気もしなくて。でも、ランと一緒だったら、夕ご飯も食べられた。
注がれたオレンジジュースを一口する。甘酸っぱい味と、香り。
「美味しい。」
「うん。オレンジって、元気が出るような気がするんだよね。」
あぁ。気を使ってくれてるんだ。
優しい。
モリモリ食べるランの様子を見ているだけで元気が出る。
一緒にいたら、毎日楽しそう。
「ラン。話があるから、時間作ってもらえる?」
駅に向かう分かれ道で、ランの目を窺う。綺麗な瞳が、一瞬揺れた。
身支度を整えて、職場までは徒歩のランと一緒にマンションを出た。空は雲一つない夏空。今日も暑くなりそうだ。
「うん。・・・早い方がいい?」
「ランの都合に合わせる。」
「・・・なら、仕事終わりにまた連絡するよ。」
ちら、と左腕の時計を見るランに、わかった、と返事をしてため息する。
「じゃぁ、夜に。行ってきます。」
手を振って歩き出したランを見送って、駅の方へと向かった。
「お泊りですかぁ?」
おはよう、と言ったその後に、天羽がスンスンと匂いをかいでそう言った。
「え。あー・・・まぁ。そうです。」
「いい匂いする。・・・食べられちゃったの?」
金曜からずっと伊住さんの家?と目を輝かせる天羽に、その期待には、そのうち応えることになるのかも、と眉を寄せる。
「まだ、キスもしてませんよ。」
そう。あれは未遂で・・・。でも、いずれするのだろう。
気持ちは、ランの告白を受け入れる方向で、シミュレーションを始めている。キスをして・・・そういえば手はもう繋いだし、デートはしたし、お泊りもして・・・。あれ?もしかして、あとはもうえっちしてもいいカンジ?男同士って、付き合ったらどれくらいでするのかな。
ネットに聞くか、桃に聞くか、天羽に聞くか・・・。
うーんと唸っていると、天羽が着替え終えて、シャーっと更衣室のカーテンを開けた。
「そういう手順、踏むタイプなんだ?」
・・・どういう意味?
首をかしげながら、更衣室に入る。カーテン越しに、天羽が続けた。
「あの容姿でしょ。ワンナイトとかもありそうかなって。」
「ワンナイト?」
うんそう。と言う天羽に、しかしどうだろうと思う。こと、自分に関しては、誠実に接してもらっているように思う。キスの一件のほかは、性的な接触はなかった。
もしあったら、その時点で逃げ出していた可能性が高い。
「それ・・・ないと思いますけど。・・・根拠ってあります?」
「特にないわね。でも、性欲強そうなのに、そういう感じを見せないから、どこかで発散してるのかなって。ストイックなイメージの人って、そういう感じじゃない?」
酷い言われ様だ。
「えぇ。じゃぁオレは?」
「・・・楓李君はさ、苦手でしょ?女性。」
ギクリ。
カーテンを開ける手が止まる。
「へぇ・・・。わかるもんですね。」
ため息して、カーテンを開け、靴を履き替える。
「それはまぁ、ね。見る目はある方なのよ。・・・だから、伊住さん大丈夫かなって。」
「伊住さんは・・・。」
「おはよう!」
言いかけたところで、不破が入ってきた。
「おはようございまーす。」
「おはようございます。」
挨拶をした、天羽と自分を交互に見て、不破は気まずそうな顔をした。
「タイミング悪かった?」
お盆のシフト出てるので、チェックしてください。と不破から指示があり、休憩中にバックヤードでシフト表を見ている。夏休みなこともあって、学生組がシフトに入れるので、来客は見込んでいるが、さほどキツそうではない。どうにかなりそうだと思う。
ちゃんと眠れれば。
気温は高いし、疲れはあると思う。でも、しっかり眠れさえすれば、ちゃんと回復できる年齢である。問題は隣の親子だ。
母親は入院したようだが、それでお盆中は帰ってこないのだろうか。その辺の事情が読めないから、不安ばかり募ってしまう。
とにかくもう、一秒たりとも関わり合いたくない。
方法としては、自分が明楽の寮に引っ越すことなのだろう。どうにか、今の環境から逃げ出したい。
・・・その、逃げ出したいのだという事情を、包み隠さずランに話す必要があった。
寮に入れたら。そうしたら、少しは対等な関係に近づけないだろうか。
アパートで眠るのが嫌だから、ランと付き合いたい。なんて、体を家賃に、間借りさせてくださいって言っているようで。
そんなのは、お互い望んでないってわかるから。
まずはちゃんと話をしなくちゃ。
閉店作業を終えて、着替えてからランにメールする。
『駅のロータリーで待ってる。』
ランからそう返信があって、慌てて忘れ物の確認をし、そそくさと商店街を後にした。
やってきた電車に飛び乗って、三駅。仕事モードからの切り替えには、丁度いい距離だった。改札を抜けて、噴水のあるロータリーへ。街灯の下に、見覚えのある青い車を見つけて駆け寄る。
「おつかれさま!」
声を掛けると、半そでのワイシャツ姿のランが、ピンと上に手をあげた。跳ね出しそう、と思う程度に嬉しそうで、はにかんでしまう。これから、割とシリアスな話をしようとしているのに、顔を見られるだけで嬉しかった。
やられてるな。
ランの言った、『好き』という言葉のパワーにひれ伏す。
この、どこからどう見てもカッコいい男が、自分を好きだと言った誇らしさに、頭のなかで大玉の虹色花火が打ちあがる。
あーオレ。ランのこと、好きだなぁ。
唐突にそうと自覚して、ぶわっと汗が噴き出した。耳が熱い。
「荷物持とうか。・・・どうかした?」
ランが、いつも通りを装って、手を差し出す。無意識に触れ合ったランの指先が、ひやりと冷たい。
ちがう。オレが熱いんだ・・・。
ドキドキしてるくせに。
オレが今日、ランにどんなこと言うのか不安で、心配で、でもきっと期待もしてて、ドキドキしているくせに。
涼しい、少し冷たい声音で、そんなことを言う。でも、その眼鏡の奥の目が少し潤んで、街灯のまばゆい明りに光ってる。
「ありがとう。大丈夫。・・・あ、ほら、タクシーがどけって。」
「やば。」
ランは、後でハザードを光らせるタクシーに手をあげて謝ると、乗って、とこちらに向き直り、運転席に乗り込んだ。
「とりあえず出すね。」
くるりとロータリーを出て、見知った街並みへと走らせていく。
「・・・泊る?」
「うん。・・・でも、それも含めて、ちゃんと話をしたい。」
コク、とランがのどを鳴らした。緊張感が高まっていく。
「うん。・・・あの・・・。こんなこと言うの、本当にズルいと思うんだけど。・・・言ってもいい?」
なんだろう?
「・・・いいよ?」
返すと、ランは一呼吸おいて、来週誕生日なんだ、と言った。
「は?え?」
「車のナンバー、覚えてる?」
「えっと?」
とっさに出てこなくて、首をかしげていると、820、だよとランが言った。
「この車は、父がお金を出して、母が選んで、色は俺が決めて・・・選べたから、ナンバーは誕生日にしたんだ。」
気がつくかなって思ったけど、まだそんなに親しくないよね、と苦笑する。
「だから・・・あの・・・。話、お手柔らかに。」
できればいい返事が聞きたいです、と眉を八の字にしている。
そんな顔を、カワイイと思ってしまい、ますますやられてるな、と思った。
あれ?でも。
「ランのお父さんって、イタリア人じゃなかった?このマーク、日本のだと思ってたけど。」
「選んだのは、母だから。スバル、ってメーカーの車だよ。乗りやすくて気に入ってる。」
「へぇ。ランは、この色が好きなの?」
青というには深みのある色だと思う。大人っぽいというか、それでいて遊び心のある・・・。
「好き。」
ドキ。
いや。車の色の話しだって。
「・・・なんで?」
「楓李が、俺のことに興味持ってくれるの、すごく嬉しい。
笑わない?食べ物にはない色だから、だよ。」
「ぷふ。」
そんな理由で??
なんとも可愛らしい返事に、思わず笑ってしまう。
「ついたよ。夕ご飯、パスタでいい?出来合いのソースと、スープとサラダの、簡単ごはんだけど。」
「食べさせてもらえるだけで、感謝感謝だよ。」
素直に礼を述べると、ランはまたニコニコして車を降りた。
ランは簡単ごはんと言ったけれど、大満足の夕食を食べ終えて、ダイニングテーブルに向かい合っている。
大切な話をしなくてはならない。
でも、占い師の話をするかどうかは、まだ迷っている。それよりも、ランの誘いに乗った理由を、ちゃんと説明しなければと思っていた。
今日は、レモンの入ったソーダ水を飲んでいる。キッチンカウンターで育てているミントの葉をちぎって浮かべたりするあたりが、なんともおしゃれだ。他に、ローズマリーとバジルと、猫サラダが並んでいた。
「・・・話しておかなきゃいけないことが、いくつかあって。」
口を開くと、ランが神妙な面持ちで、うん、と相槌をうった。
「まずは・・・、オレのアパートの話しなんだけど。」
「うん?」
首をかしげる仕草に、それはそうだよな、と思う。
「住み始めてまだ、そんなに経ってないんだけど。隣に、母子家庭が越してきたんだ。・・・オレは、女性と子供が苦手で、特に怒鳴り声とかがほんとにしんどいんだけど、毎晩夜になると、隣から聞こえてきて。正直、眠れてなかったんだ。」
うん。とランがまた頷く。
「だから、最初にここに泊めてもらった時に、静かだった、よく眠れた、って。それで、泊りのお誘いは、オレにとって都合が良かったっていうか。ランの家は、安心してぐっすり眠れる場所だったんだ。」
至れり尽くせりだったしね、と苦笑する。
「・・・そんな事情があったんだね。そうか、それで、続けて誘っても迷惑そうじゃなかったのか。」
うん。と、今度は自分が頷く。
「もしかして、昨夜アドリーナが一緒でも大丈夫だった?」
「ちょっと狭いくらいは気にならなかったよ。」
そうか。先を越されたな。女の子には勝てないや。と、呟くのを、耳が拾う。
「・・・それで、その・・・。オレは、女性・・・というか母性?的なものが苦手で。子供も苦手で・・・。だから、欲しくはないんだ。彼女も家庭も。でも、だからって、男が好きなわけでもないし、恋愛はしたことがなくて。」
「うん。ゲイじゃないのは分かってたから。」
ランはそう言うが、じゃぁ男性と女性、つまり人間とは恋愛できないことになってしまう。
「でも、オレね・・・。ランに好きって言ってもらえるのは、嬉しいって思ったんだ。」
ランの瞳がふわっと広がる。緑のキラキラに頭上のライトが反射して瞬(またた)いた。
「ランは、男として、その・・・とても優秀だと思う。体格も、人間性も、地位とかそういうのも。だから、そんな人に、好き、って言われるのは、オレも誇らしく感じるんだ。なんかこう・・・オレ、捨てたもんじゃないなっていうか。自己肯定感爆上がりっていうか。」
これは多分、前に勤めていたブラック会社が、あんまりにもあんまりで、プライドがズタズタだったから余計にそう感じるのだろう、と分析している。
「うん。」
目に見えて嬉しそうに目を細めるランに、これを言うのは気が引けるが・・・。
「・・・でも、セックスできるかはわからない。」
「あ・・・。」
告げると、ランが明らかな動揺を示した。
「付き合えたら、オレ、たぶん幸せだと思う。でも、その・・・子供が欲しくなかったから、セックスをしないでここまで来てて・・・相手が男になったからって、子供ができないからって、できるかわからくて・・・。」
キス、したかったら、その先もしたいよね?と上目遣いに問いかけると、ランは首を傾げた。
「俺はそもそも、男同士の付き合いに、セックスは求めてないよ。そういう人たちはたくさんいるし・・・お互いに求めてないならすべきじゃないよね。」
そう・・・?そうだろうか。
「ランが求めてないなら、それでいいけど。今はしたくなくても、したくなるかも。」
「それは、お互いさまでしょ。」
そう、か。
どっちがどっちを抱くか・・・も含めて。先のことはわからない、ということか。
「じゃぁ、そのことを踏まえて、返事、聞かせてくれる?」
ランが、静かに微笑んだ。
まるで、ノーと言われれることは想定していない、自信に満ちた表情だった。
求められてる。
こんな顔をする男に、イエスと応えることを。
「うん。あの・・・オレで良かったら。お付き合い、したいです。」
「ぜひ!これからよろしくお願いします!」
張りのある声で、ぺこりと頭を下げるランにつられて、こちらもペコリ。
「あ、でもでも。まだ話してないこと・・・。」
「それは、俺もあるから。ゆっくり、話していけたらいいと思う。」
ランにも?
「・・・うん。」
「ところで、今日はお泊り?」
「・・・差し支えなければ。」
「アドリーナに先を越されたから、一緒に寝たい。」
えぇ。
「それは・・・。休みの日とかじゃ駄目ですか?眠れるかわからない。」
「たしかに。それは俺も。」
ふふ、と笑い合って、肩の力を抜く。ふーっと深呼吸すると、ガチガチに緊張していたのがわかった。それはランも同じだったようで、コキコキと肩を回していた。
「どうしよ。人生初のお付き合いなんだけど。」
「・・・同性は初めて、って言ったら?」
「えぇ・・・?」
うそでしょ。そうなの・・・?
それはどういう意味なのか、おいおい聞くことになるのか。
なんにしても、ランはこれから、友達ではなく『恋人』になったのである。
そういえば、ランが自分のどこを好きになったのか、聞いてないな。
ランとは別々の寝室に入り、触らせてはくれないアドリーナにベッドを半分占拠されて、丸くなっている。
オレンジ色の常夜灯が、ぼんやりと灯っている、静かな室内。
これ、これだよ。オレに必要なもの。静かな寝床。
思えば、実家にいた時も、弟たちと雑魚寝状態で、ゆっくり寝た記憶がない。蹴られたり、殴られたり、腹に頭突き食らったり・・・。壁の薄いアパートは、母子が越してくる前から、外の音が聞こえて、ざわざわとしていたように思う。
耳がキーンとするほどの静寂。もしかして、相当防音が良い壁なんじゃないだろうか。
これなら、中からの声も・・・外には聞こえないな。
と、思い、ハッとする。
もしかして、えっちの時も、声とか気にしなくていい・・・?
うわぁ・・・。
股間がむずりとしてしまい、わたわたと体をたたむ。熱を持ち始めるそこを、手のひらで包んで落ち着かせる。普段から、あまり自慰はしないけれど、ここは人の家だし・・・。
だめ・・・。
なんとなく、恋人ができたことで、性的なもののハードルは微妙に下がったように思う。前ほどの嫌悪感や、禁忌的なイメージは薄れた。とはいえ、それをお互いで解消することは、まだしばらくなさそうだが。
ってことは・・・もしもの時は一人でするんだよなぁ・・・。
ランのこと、想像して?
恋人、なんだからと、思い浮かべては見たものの、それはなんだか違うなと、打ち消した。
そういうことをしなくてもいい恋人、が自分の求めるものだったのかもしれない。
占い師の言ってた、よりよい未来って・・・こういうことなのかも・・・。
でも、それはあくまで、自分にとって都合のいい恋人で。
ランにとって、ふさわしい人間になりたいな。
まずは、家の問題を何とかしなきゃ。寮に入れたら・・・そしたら・・・。
興奮してるかとも思ったけれど、目を閉じると眠りに落ちるのはすぐだった。
「考えたんだけど。アパートは、二年契約だよね?それは、そのままで、半同棲とか、越してくるとか、考えられない?」
朝いちばん、目玉焼きを焼きながら、ランがそう口にした。
昨夜考えていたのだろう。昨日話したことの流れからしたら、至極当然の思考だった。
「うん・・・。それは、少し考えさせて。なんていうか、ここに転がり込むのは少しプライドが引っ掛かるというか。アパートをそのままで、ここに来るってことは、家賃とか払えそうにないし。・・・会社の方で、寮に入れそうな話があって。検討中なんだ。近くはなるでしょ?」
「寮?」
「明楽フーズの社員寮。」
答えると、ランは口をへの字に曲げて、不満そうな顔をした。
「社員寮はねぇ、やめておかない?」
「なんで?・・・壁が薄いとか?」
懸念事項は、そこである。しかし、ランの答えは意外なものだった。
「出るって噂なんだよ。」
「・・・出るって・・・アレ?」
黒いカサカサした虫の方じゃなくて、いわゆる生きてない人。
「・・・ほんと?」
「噂だから。」
もしかして、それで住んでる人が少なくて、空きがある?とか?
納得の話しに、うそでしょう、となる。
「嘘ついてない?」
「晴海さんに聞いてみるといいよ。」
そこまで言うなら。
生きてない人のせいで、眠れなかったら元も子もない話である。話が通じない分、生きている人より厄介かもしれないし。
「うん・・・。じゃぁまぁ、同棲の話は考えさせてよ。まだ、昨日恋人?になったばっかりなんだし。」
「恋人です。でも、眠れないって困るでしょ?」
押しの強い恋人がぐいぐい来る。
「寝不足が限界にきたら泊りに来るのじゃ駄目?」
「プラスアルファ欲しい。」
「週末なら。・・・ただし、家事は分担で。」
妥協点を探ると、ランは、それはもちろん、と出来上がった朝ごはんのプレートを持ってきた。
目玉焼きと、ウィンナーと、レタスとミニトマト。わかめスープにご飯。
「オレンジのシャーベットあるけど、食べる?」
「少し貰う。」
食後にね、とランが座ったので、いただきます、と手を合わせた。
米粒がピカピカで美味しい。半分日本人じゃなくても、お米は炊けるんだな、と感心してしまう。家事の分担を申し出たが、自分にできることはあるのだろうか。
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