38 / 38
番外編
秋を楽しもうじゃないか 後編
しおりを挟むとりあえずコトが済ませるまで大人しく静かに待っていようと元の位置に戻り、座って待機する。
料理長のくぐもった声と濡れた音や肉同士がぶつかる音がとても卑猥で、どこにも行けない逃げられない状況に身体が縮こまってしまう。
ワタルが下に聞こえないように僕の耳のそばで話しかけられた。
「俺が気付いた頃にはもう始まってた。あそこ一応死角になってるけど、上に人がいるって気付いてなかったんだろうな」
うわ、ちょっとやめろ。こんな状況でドキドキしてんのに、耳元で話しかけるな。下半身たのむから反応するなよ。
「ねぇ、俺らもこういう開放、しちゃう?」
あほか! 開放しねぇよ!
そう言いたいが声を抑えて言える自信はなく、黙っているだけだ。
先ほど覗いた時の情景が頭にこびり付いて離れない。
料理長といえば厳しい顔しか見たことなかったのに、とろけた顔してカイを受け入れていた。
料理長は常に料理一筋で、家庭を持つと必ず相手に迷惑かけるからと独身を貫くといった人だった。確か若くして料理長になったはずだから今は確かもうすぐ30代後半ぐらい……? カイは同じくらいか?
いやいやそうじゃなくて! あの二人そういう仲だったの⁉︎ だからあんな口調だったのか!
「カ……イ……っ、早く、イってっ! あんっ」
「うそつき。まだ足りないんでしょ」
カイがそう言った後、激しくなっていく音が嫌でも耳に入る。時々抑えきれなかった喘ぎ声も聞こえてきて、今度の出勤で料理長と顔合わせるときに普通でいられる自信がない。どうしよう。
側にいたワタルがなにやらモゾモゾしていたが、気付いたら後ろから抱きしめられており、身体を膝で挟められていた。
ワタルの顔が僕の肩に乗せ、耳元で囁く。
「まだ時間かかりそうだね」
臀部に明らかに勃っているのを押しつけられた。ただ僕もそうなっているから、抵抗出来ない。
つい大きな声が出てしまわないように必死に声を抑えながらワタルに伝える。
「何も……するなよ……」
「大丈夫、こうしてるだけ。……でもちょっとだけ肌に触れたいな」
唇が僕の首をさするように触れてくる。
「んんっ…」
二人のせいでこっちもなんか変な感じになる。ワタルがさっきから呼吸が荒い。
僕もワタルのどこかに触れたい——そう思った。
膝の上にワタルの片手が置いてあったのを気付き、それを両手で掴んで口まで持っていく。
手の甲を頬で擦り寄せながら、唇まで持っていき軽く吸ってみる。
ザラリとした感触が唇で感じるのが気持ちいい。
ワタルの手の肌を楽しんでいる間は動きがなかったが、しばらくすると動き始めた。
指が僕の頬や唇をなぞったり、時々口の中に入れようとしては、はぐらかす。
そんな動きがもどかしくて、手首を握り人差し指を口の中に入れて舐めてやった。何もするなよと言ったのに、自分がこうしてちゃ意味がない。
僕がワタルの指を受け入れたことで問題ないと捉えたのか、中指や薬指も口の中に入り、舌や上顎をなぞられていく。
無理矢理でもなく、弱くもなく、感じるであろうのところで唇とともに擦られ、軽い快感が肌に響いていく。
口だけなのに変な感じだ。そういえばワタルの舐めたことなかったっけな。前に一回してやろうかとは思ってたけど、結局せずのままだっけ。
指が口から抜かれるたびに口端から涎が出ていくのを感じる。
時々ワタルの感触を歯で感じたくて甘噛みしたりした。
「えっろ……。本当にここでしちゃだめ?」
「……だめ。ここはやだ」
「じゃ、早く下山しよう」
スクッと立ち上がり、岩から降りようとするワタルに慌てるが、耳をすませてみると静かになっているのに気付く。
二人はすでにコトは済ませてどっかに行ったようだ。それに気付かないくらい夢中になっていたのかと思うと恥ずかしくなる。
「待って、腰が立てない」
「……だから、なんでそう煽るかな?」
「煽ってるつもりはない。というか、元々はあの二人のせいだ」
「まぁ、そうなんだけどさ。落ち着いたら言って。先に降りるから」
そう言って、ワタルはリュックを背負いさっさと降りた。
おそらくこれ以上居るとヤバいと思ってのことだろう。いつだってケンタ優先に考えてくれる。
とりあえずしばらく腰が立たないのと、股間が落ち着くまで呼吸を整えることに集中する。
案外興奮していたのか、頬が火照っていて冷たい風を感じるのが少し恥ずかしくなった。
こんな青空の下でヤるとか考えられないけど、もし性欲スイッチがまだあったらきっと我を忘れて絶対ここでやってたんだろうなぁ……。ワタルもきっと付き合ってくれているだろう。
色々考えてるうちに股間も落ち着いていて、呼吸も通常通りだ。
ワタルも多分落ち着いているだろうと思い、声を掛けると声が返ってきた。
さっそく降りようとするも、案外なかなか難しく途中で足を滑らせ、地面に落ちると目をつぶりながら受け身に切り替わろうとしたら、ワタルは想定内だったようで、キャッチしてくれた。
「すまん。足が滑った」
「んにゃ、問題ない。むしろ俺に頼ってくれよな」
キャッチついでに、ぎゅっと強く抱きしめられ勝ち気な笑顔が目の前にある。
なんだかキスしたくなり、ワタルの唇を軽く触れてみると、まさかしてくれるとは思わなかったのか目をぱちくりしていた。
なんか優越感があり、思わず笑みを作るがキス仕返しされ、舌まで入り込んできてなかなか離してくれない。早くどけと背中をポカポカと叩く。
「ケンタからキスしたくせに」
「うるさい! 下りるぞ!」
「それってケンタも早く……」
「そうだよ! だからさっさと来い!」
照れ隠しに早口で返答し、早足で下りる。
「待て待て。そんなに早く下りちゃうと怪我しちゃうし慣れてないんだから明日筋肉痛になるぞ?」
確かに早く下りようとすると勢いで怪我しやすいのだが、そこまで馬鹿じゃない。
「……ワタルは早く下りたくないんだな?」
「今のは煽ってるな?」
答えは笑みで返してやった。
◇
「あ~、煽るんじゃなかったな……」
腰が変な感じのまま、出勤する羽目になるとは思わなかった。
下山するまでお預けをくらったせいでもあるが、今回はあの岩の上でワタルの指をはむはむしたのを思い出し、してやろうかと提案したのがいけなかった。
ワタルはずっとされてみたいなと思っていたらしく、しかしお願いするのもなと我慢していたようで、爆発しちゃったというね。
……まぁ、口淫している間はワタルを支配してるようで楽しかったけどさ。結局僕もワタルと変わりないってことだよなぁ。
怠い身体に鞭を打ちながらランチタイムが始まるまでの準備をこなしていると、料理長から声掛けられビクッとなってしまった。
「ケンタ、ちょっといいか?」
「は、はい。なんでしょう、か」
「こないだ娯楽専用の山行ってみたんだがな、一食分を持って行けるようなのを考えてみたんだ。カイからケンタも行ったと聞いてな、なんか意見あれば言ってほしい」
キッチン台の上には表面がツルツルになっている木の皮に包まれている一食分の食糧携帯が置いてあった。広げてみると、ライスを丸めたものやひと口分の旬の食材がいくつかあり、気軽に食べれるように出来ていた。
「あ、良い、感じです、ね」
料理長の顔を見ると、あの時を思い出してしまって、目を合わせれない。……というか、カイがなんで僕が行ってたの知ってんだよ⁉︎
カイの方を見ると明らかにニヤニヤした顔で見守っていた。……アイツ、僕たちがいる事をわかってたな⁉︎
しかも料理長の様子からして、僕たちが居たことはおそらく気付いていない。
「よし! 今からレシピ書いておく。娯楽専用の山が開いてる間はこの食糧携帯を売ろう」
「えっ、人手は大丈夫ですか?」
「問題ない。カイに全て任す」
「……あっ、はい」
向こうから何やら叫んでるっぽいが、知らないふりする。料理長もスルーしていた。
悪どいことを考えるとしっぺ返しがとんでもないってことを経験してもらわないとな。うん。
カイのしでかした結果、食堂はより繁盛となりしばらくは忙しい日々となった。
結局、料理長とカイの関係を知ることはそう遠くはなかったが、知らないままでいたかったなと思うケンタであった。
■■■
ケンタの同僚が密かに気に入ってるので、名前を出してみました!
料理長との関係も元々決まってたので少しでも話に入れたいなぁ~と思った結果ですが、いつかは二人の話も作りたいなぁとは考えてます。
ありがとうございました!
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる