聖女の力を奪ったと婚約破棄されましたが、奪われたのは私のほうです。

西楓

文字の大きさ
5 / 6

神託

しおりを挟む
「おじさま、おばさま。母の容態が悪いようなので、少しお暇をいただいてもよろしいでしょうか」
マリアンナの言葉に、胸がどきりと音をたてる。

(聖女様、このところ音沙汰がなかったのは、体調が優れなかったからなのね。でも神託がないということは大きな病気ではないということよね)

通常は次期聖女が成人する頃に神託が下り、次期聖女へ聖女の力のすべてを明け渡すことになっている。しかし、次期聖女が成人するまでに聖女の寿命が尽きる場合は、聖女がなくなる数か月まえには神託が下り次期聖女に力を譲ることとなる。
この1か月間聖女様からの音沙汰はないが、すくなくとも命にかかわるような病気ではないということだろう。

(体調が優れないので力をコントロールできなかったのかしら。それとも力を私に送ることができない状況だったのかしら…)

私の中の聖女の力が満たされていないということは、すくなくとも聖女様にほとんどの力が残っているということだろう。
体調のことも、私に連絡がないことも気になるが、私が次期聖女とバレるわけにはいかない。
もう少し様子をみておきましょう。




マリアンナが伯爵家に戻って数日経過したころ、突然どくんと心臓が激しく音を立てた。

(聖女様の身に何かが?私はどうしたらよいのだろう。すぐにでも聖女様のもとへ駆け付けたい。
でも8歳の私に何ができるだろう。次期聖女であることを告げることもできないし)

「お母さま、ナリーヤ伯爵夫人のご容態はいかがなのでしょう?マリアンナから連絡はきておりますでしょうか」
マリアンナが公爵家にきてからほとんど会話をしていない母に勇気を出して話しかけてみた。

「レティシア、貴女はそんな冷たい言い方で…マリアンナがいないと自分が困るから早く帰ってほしいと思っているんでしょう。自分のことだけを考えるなんて…本当に非情な子ね。一体誰に似たのかしら。マリアンナはお母上のご容態が優れないので看病疲れでやつれているのよ。そんなマリアンナを労る気持ちなんてひとつもないのね」
母が冷たく厳しい視線を私にむけてくる。

(聖女様のことを聞くことがどうしてマリアンナの不在を咎めているように思えるのかしら)

母も父もマリアンナを大切に扱うようになって、私の言動に難癖をつけることが増えてきた。

(ほとんど話しかけもしないくせに、少しでも何かを話すとすぐに私批判に結びつけるんだから。でもどうしよう。聖女様のことがわからない。私はどうしたらよいの。私から聖女様に力は送れないのかしら)

力を送る方法などわからない私は、頭の中で聖女様へ力を送ることをイメージしてみたが、当然送ることなどできなかった。

(私には祈ることしかできない。どうか聖女様を助けてください)



毎日毎日、必死に祈る私に突然神託が下された。

「レティシアが次期聖女に任命された。すぐに神殿へむかう準備をしなさい」

「わかりました、お父様」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

婚約破棄された悪役令嬢、実は最強聖女でした〜辺境で拾った彼に一途に愛され、元婚約者が泣きついてきてももう遅い〜

usako
恋愛
王太子の婚約者でありながら「悪女」と呼ばれ婚約破棄された公爵令嬢リディア。 国外追放されたその日、命を救ってくれたのは無骨な騎士ルークだった。 彼に導かれた辺境の地で、本来の力――“聖女”としての奇跡が目覚める。 新たな人生を歩み始めた矢先、かつて自分を貶めた王太子が後悔とともに現れるが……。 もう遅い。彼女は真の愛を知ってしまったから――。 ざまぁと溺愛が交錯する、爽快逆転ラブファンタジー。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

『偽物』と追放された真の聖女ですが、辺境の冷徹公爵に拾われて溺愛されています。ちなみに私を捨てた国は禁術の呪いで滅びかけているようです。

ささい
恋愛
「君は偽物だ。今すぐこの国から失せろ!」 十年間、聖女として国に尽くしてきたエミリシアは、王太子ユーベルトから非情な婚約破棄と追放を言い渡される。 代わって現れたのは、禁術を操り偽りの奇跡を振りまく侯爵令嬢リディエッタだった。 着の身着のままで最果ての辺境・ミューレンベルク領へ辿り着いたエミリシア。 そこで彼女を待っていたのは、冷徹と名高い公爵レオフィリスによる、予想外の過保護なまでの溺愛だった。 ※『追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。』の改稿連載版ですm(_ _)m   全6話、完結まで予約投稿済です。 2/3の19:00に3話、以降は毎日7:00投稿予定。2/6に完結となります。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」 婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。 他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

婚約破棄のお相手は

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。 幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。

処理中です...