転生王子はざまぁされたい

西楓

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第1王子の側近

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プラチナの髪にグリーンの瞳の男性は、理性的な目をしており、細身だが凛々しく引き締まっている。
冷たい表情をしていて隙がなくどこか近寄りがたい雰囲気を身の纏っている。

その傍らには、よく手入れされた艶やかなプラチナの髪に、エメラルドグリーンの瞳でくっきりとした目鼻立ちの見目麗しい少女が座っている。。
きりりととした瞳と赤い口紅が意志の強さと勝気な性格を表していた。
この少女も男性と同じく独特の雰囲気を醸し出している。

(ソフィア嬢とよく似ている…ということはあの男性が宰相の息子の?
敵意をビシバシと感じるよ。兄上の側近をしているんだっけ?)

俺と兄は俺達の思惑をよそにして、ライバル関係が築かれており、必然とその周りも対立していた。
兄の側近の彼は兄の立太子の障害となる俺のことを快く思っていないのだろう。
俺は彼らに見えぬように小さくため息をついた。

婚約して2年となるが、婚約者のソフィア嬢とプライベートで話をするのはこれで4回目だ。
俺の記憶が戻ってからは今回が初めてであり、彼と顔を合わせるのは記憶の前を含めてもこれが最初だ。

(久々のお茶会だし何を話していいか緊張するよ。
しかも…なんだよ~ソフィア嬢と個別に話すだけでもどきどきなのに、兄まで同席かよ~
何でいるんだよ)


「クリストファー殿下。お初にお目にかかります。ソフィアの兄のエドウィンと申します。以後お見知りおきを」
「エドウィン殿、こちらこそよろしく頼む」
恭しく礼をするエドウィンに向け軽く会釈をする。

「このたびはご無理を言いまして申し訳ありません。
一度貴方の心積もりをお伺いしておきたかったので、妹に無理を言って同席させていただきました」

エドウィンの言葉と共にソフィアが席を外す。前もって打合せでもしていたのだろうか。

第1王子派のエドウィンと俺が個別に親しく話すことはない。
中立な立場の公爵としては、兄のエドウィンを第1王子の側近とし、妹のソフィアを第2皇子の婚約者とすることで、どちらかに肩入れすることなく均衡を保っているのだろう。
もし、これでエドウィンが俺と親密になったら、公爵が第2王子派に鞍替えしたと詮索され、現在のパワーバランスが崩れ第2王子勢力が絶大となる。
国王の意向を尊重する公爵としては現在の均衡を保っておきたいのだろう。
いらぬ誤解を招かぬように、ソフィアのお茶会に紛れて内密に接触してきたというところだろうか。

(心積もり?いったい何を確認したいのだろう?妹を大事にしているかの確認?牽制?
いや、違うだろう。妹への情はあるだろうが、彼は情で動くような人間ではない。
もしかして、俺がアレクサンダーに仕掛けたことがバレた?)

「いや、問題ないよ。私も一度君と会ってみたかったからね。それで聞きたいこととは何だい?」
緊張で胸がバクバクとなり、頭の中でこだまする。

「…殿下。殿下は最近のアレクサンダー殿下のご様子はご存じですか?」
エドウィンは小さく呼吸を繰り返すと、真剣な顔をして口を開いた。

「兄上の?最近、公務や学問に意欲的に取り組んでおり、著しく成績が上昇しているとは耳にしているが」

「えぇ、アレクサンダー殿下の成長はすさまじいです。このままだと優秀だといわれる貴方にも近いうちに追いつくでしょう。
今までは圧倒的な能力や才能に加え、何事にも全力を尽くすクリストファー殿下の姿勢は、王太子として求められる理想の姿であると評判になっておりました。
平民だけでなく貴族の中でも貴方を熱狂的に応援する支持者もかなり多い。
後ろ盾の第1王子と、才能の第2王子。民からの支持を得られるのは第2王子でしょう。
後ろ盾はないけれど、圧倒的なカリスマ性を持つ第2王子を立太子することで、一部の特権貴族への権力の偏りを減らし、下級貴族や平民の不満を解消を図ることができる。
そのような意図もあって、国王陛下は敢えて王太子の任命を先延ばしにしていると考えておりました。

しかし、現在のアレクサンダー殿下は能力的にも評価されつつあり、このままでは誰も阻むことなく圧倒的大差でアレクサンダー殿下が王太子することでしょう。
そうなると現在力を既に持っている第1王子派にさらに権力が集中し、権力の悪用が起こり国家は腐敗することでしょう。
国内貴族の勢力均衡を保つためには、立太子した第1王子の補佐を貴方が務めるか、後ろ盾を持たない貴方が立太子するかのどちらかが必要だと考えています。
殿下、貴方は、仮に第1王子が立太子されたらどのようにされるおつもりでしょうか?
最近のクリストファー殿下には以前の気概が感じられません」
エドウィンは眉間に皺を刻み、苦悩の表情を浮かべている。

(まさか…エドウィンからこんな話を聞かされるなんて…)
ゲームの中では第1王子のことはほとんど描かれていなかったし、その側近のこともほとんど触れられていなかった。
国内の勢力分布なども語られず、ただ、第2王子がヒロインと婚約し立太子するとしか描かれていない。

「エドウィン殿、第1王子の側近である君が私を支持しているかのように誤解されかねない発言は控えた方がよいよ。
父上は私が成人になった際に王太子をどちらかに任命すると仰っておられた。私は父上が決断するまで、これまでと変わらず王子として恥じぬように行動するのみだ。
今の発言は聞かなかったことにしよう。ただ、私も政治腐敗を防ぎこの国を良き方向に導きたいと思っておる」
エドウィンをまっすぐ見つめ、低い声で落ち着いて言葉を伝える。

(さすがに、民を不幸にしてまで自由を求めてはいない。敢えて進言してきたエドウィンの思いには真摯に向き合おう)

「さようでございますか。出過ぎたことを申し上げました。
私もソフィアもこの国の平穏を第一に願っておりますので、そのことを頭の片隅にでも留めておいてください」

(これって、決して手を抜かぬように釘を刺されたってことなのかな。
第1王子派のエドウィンから鼓舞されるなんて…
ただ責任から逃れ、自由になりたかっただけなのに…
俺には王太子となるか、王太子の補佐となるかの道しか残されていないのか…
改めて考えてみよう)

エドウィンとのぎすぎすした空気に晒され心が疲弊した俺は、アレクサンダーとの長閑な空気を思い起した。
過ごした期間は短かったが、彼の側は居心地がよく心が落ち着いた。
一年以上も前のことだが彼との日々は鮮明に覚えていて、今でも会話が鮮明に思い出される。
エドウィンからきつく当たられた元凶の一人だというのに、アレクサンダーのことを思うと心が和みあたたかくなった。


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