異世界で迷子を保護したら懐かれました

稲刈 むぎ

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14.王都へ

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「触るなって言ったよな」

リビングに辿り着くと、一瞬触発の雰囲気だった。
ノルックが一方的にだけど。

「わお。もしかして透視してるの?えっちだなー」

キュリテの煽りにも、ノルックは無言だ。
…あれ?否定しないの?

「いや、ここに珍しいものがあってね?」

指し示す方を見ると、テーブルに置いたままになっていた、ソニアさんが作った置物があった。

「それは、私のです。」

盗られたら困るので、急いで回収してカーディガンのポケットにしまう。

「あんたが作ったものじゃないよね?」

「…はい。この家に住んでいた、お婆さんが作ってくれたものです。」

ソニアさんが作ってくれたけど、中の魔力はノルックのもの。まさか、誰の魔力かわかるとか言わないよね。

「その婆さんは今どこに?」

「ずっと前に、亡くなりました。」

ふむ。と、無精髭をさすりながら考え込んだ。意図が掴めずノルックに解説を求めようとしたけど、ノルックはキュリテを睨んだまま視線を外そうとしなかった。

「そんな優秀な魔女がこんなところに…?知らなかったのが惜しいくらいだ。知ってたら真っ先に口説きに行くのに。」 

口説きに来たところでダイアさんがいるんだから足元にも及ばなくて門前払いだ。
ダイアさんに敵う人なんているんだろうか。

キュリテへの好感度はどんどん下がっていく。これ以上ノルックにも近寄らせたくないんだけど。
本当にノルックこの人に魔法を教わってたわけ?

ソニアさんは先見の魔女であることを隠していた。しかもノルックが見落とすくらいの結界らしい。ここにいることは、誰にも知られないように相当な気を配っていたに違いない。

「なあ、ダメ元だけど、その子って譲って貰えたり…」

言い終わらないうちに、キュリテの耳元を風の刃が掠める。

「調子に乗るな。今すぐ首を刎ねるぞ。」

「ノルック!ちょっとやりすぎだよ。でも、すみません。この家のものは渡せません。全部大事なものなんです。それに、お婆さんからずっと大切にしていて欲しいと言われたんであげることはできません。」

キッパリと断ると、意外にキュリテはあっさり引き下がった。

「ざーんねん。とりあえずどういう仕組みか気になるけど、こんな技術があることは有意義だな。方法は帰ってから探せばどこかにあるだろうし。
…で、話はまとまったのか?」

「そのことなんですが」

ポケットに入れたの置物ソニアさんを握りしめて、深呼吸をした。

「ノルック、私も一緒に王都に行ってもいい?」

ノルックに向き直る。

「少しなら、ソニアさんたちが残してくれたお金もあるし、王都では宿屋にでも泊まれたらいいからノルックには迷惑かけないつもり。」

亡くなる前に、いくらかのお金が入った袋をソニアさんから渡されていた。
相場がわからないからいくら必要になるかわからないけど、それなりの重さがあったから一泊くらいはできると思う。

王都に行ったら、この世界の価格についても学んでこないと。

「もちろん。行こう。今すぐ行こう。ミノリが住むところは僕が用意するから問題ない。宿屋になんて泊まらせないから。」

ノルックが目の前に現れて手を取られた。
だからこの短い距離で魔力を無駄遣いしないの。

宿屋になんて…って、王都って治安悪いのかな?ちょっと不安になってきた。

「ま、待って。一応荷造りとかはしたいから、行くのは明日以降だと嬉しいんだけど。」

さすがに全てを現地調達できるほどの財力はないだろうから、せめて数日の服や念の為の胃薬とかは持っていきたい。

「嬢さんが来てくれるなら、まぁいいか。こっちとしてはありがたいな。
こいつ、すぐに嬢さんに会おうと脱走しようとするし、行き先が王都内なら呼びに行くとしても移動が楽だ。」

なんと。そんなことを。

ノルの顔が近づく

「ミノリが王都が嫌だったら、すぐ帰ってこれるから。」

「わ、わかった!」

王都に行くって言ったけど、お金もそんなにないだろうし、ノルックの登城を見届けて相場とか確認できたらすぐ帰るつもりなんだけどな?あと本は買いたい。

「ほんなら陛下らには明日登城しますって伝えとくわ。遅れずに来いよ。」

ノルックはツンとして答えない。

「わかりました。私が絶対連れていきます」

ノルックが王命は絶対って言ってたし、とりあえず呼び出しには応じさせないと。

そんなこんなで急遽王都に行くことになったのだけど…

森での生活しか知らないのに、早まったかな。
荷造りをしながら、決意したはずの気持ちが後悔に変わり始めていく。

荷造りのカバンには、御守り代わりに胃薬と頭痛薬は気持ち多めに詰め込むことにした。
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