11 / 12
11
しおりを挟む
今日で平内の部屋に行くのは辞めよう。悠は心の中でそう決めた。
いつものように平内の部屋で夕食を済ませた後、悠は平内のほうに向き直った。
「平内さん、話があるんだ」
「なに、改まって」
改めて口に出して伝えようとすると緊張してくる。そんな悠が話し始めるのを、平内は静かに待っている。
「……あの、こういうの今日で終わりにしたい」
「どうしたの、いきなり」
平内が驚いた表情でこちらを見ている。
悠は今日のために考えてきた、もっともらしい理由を話し始めた。
「仕事終わりで疲れてるし、お互いプライベートの時間を大切にしたほうがいいし……」
「もしかして、僕と一緒にいるの嫌?」
「そうじゃないけど……」
嫌じゃない、本当は一緒にいたい。でも気持ちを伝えるべきではない。
悠が何も言えないでいると、平内は悲しい表情をして口を開いた。
「そうでしょう。僕がきみのこと襲うんじゃないかって思ってるでしょう。この前だって、僕がきみに触れたら急に帰っちゃうし」
「それは、ちが」
「脅えさせてごめん。もう無理に僕の部屋に誘ったりしないから。気を使わせちゃってごめんね」
悠の言葉を遮るように、平内は言い切った。
「違うって言ってんじゃん」
「……中原くん?」
急に大きな声を出したからか、平内が驚いた表情でこちらを見ている。
「好きなんだ、平内さんのことが」
気がついたときには、言うはずのなかった思いが口から出ていた。
「えっ」
「最初は変な人だと思ってた。でも、一緒にいるうちに優しいとことか話してて楽しいとことか、全部好きになった」
好きだと言葉に出したらもう止まらなかった。平内への思いがどんどんあふれてくる。
「あのとき助けたのが平内さんのエゴだったとしても、俺は救われたんだ。変に気を遣わないでいてくれるのも嬉しかった。俺を一人の人間として接してくれて嬉しかった。いつの間にか、まだ生きたいと思えるようになってた」
声が震える。油断したら泣いてしまいそうだ。
途切れ途切れの悠の話を、平内は何も言わずにじっと聞いてくれている。
「……セックスする約束だって、いつするのか内心ドキドキしてた。でもこの前、約束は無かったことにするって言われて、平内さんは俺としたくないんだって思った」
「それは、きみが僕を避けてたから……」
「気持ち悪いこと言ってごめん。でも、このまま気持ちを隠し通すのは無理だった。だから、平内さんのせいじゃないから、謝らないで」
自分のせいなのに、平内に謝られるといたたまれなくなる。
「中原くん」
「好きになってごめんなさい。じゃあこれで」
このままいると目から涙が溢れそうなので、早くこの場を去りたい。
「ちょっと待って」
立ち上がって部屋を出ていこうとすると、平内に腕を掴まれた。
「離せよ、出ていくから」
そう言った刹那、平内の顔が近づいてきて唇に柔らかいものが触れた。悠は何が起きたのか理解できず、頭が真っ白になった。
「……なにして」
「中原くん、僕のこと好きなの?」
「だから、そう言ってんじゃん」
とりあえず、平内の顔が近くて逃げ出したいのだが、両手を掴まれているため出来ない。
「いつから」
「……一緒に居るうちに、気づいたら」
「なんだ、僕達すれ違ってたんだね」
「それって、どういう」
「僕もきみが好きだよ」
平内は、こちらを真っ直ぐ見つめて言った。自分はからかわれているのだろうか。
「うそ……」
「嘘じゃないよ。僕が嫌で避けられてると思っていたから、きみが僕を好きだって言ってくれて嬉しい」
我慢できなくなって、悠の目から涙があふれた。これは夢なのだろうか。夢ならばこのまま覚めないでほしい。
「中原くん、抱きしめてもいい?」
悠が小さくうなずくと、平内は優しく抱きしめてきた。フワッと彼の香りがする。
「ずっとこうしてみたかった」
耳元で囁かれ、心臓が痛いくらいドキドキする。平内に触れている部分が熱い。
二人はそのまま見つめ合って、どちらからともなく唇を重ねた。徐々に口づけは深くなっていき、何も考えられなくなってくる。
「服、脱がせてもいい?」
平内がそう聞いてきたが、悠はお風呂に入ってないのが気になった。
「俺、汗かいてるから汚い……」
「じゃあ、一緒にお風呂入ろっか」
「お風呂でヤるのかよ」
「まさか、ベッドで大事に抱くに決まってるじゃん」
そんなことをさらっと言える平内に、悠は顔を真っ赤にすることしかできなかった。
平内に手を引かれ、二人は脱衣所へ向かった。
いつものように平内の部屋で夕食を済ませた後、悠は平内のほうに向き直った。
「平内さん、話があるんだ」
「なに、改まって」
改めて口に出して伝えようとすると緊張してくる。そんな悠が話し始めるのを、平内は静かに待っている。
「……あの、こういうの今日で終わりにしたい」
「どうしたの、いきなり」
平内が驚いた表情でこちらを見ている。
悠は今日のために考えてきた、もっともらしい理由を話し始めた。
「仕事終わりで疲れてるし、お互いプライベートの時間を大切にしたほうがいいし……」
「もしかして、僕と一緒にいるの嫌?」
「そうじゃないけど……」
嫌じゃない、本当は一緒にいたい。でも気持ちを伝えるべきではない。
悠が何も言えないでいると、平内は悲しい表情をして口を開いた。
「そうでしょう。僕がきみのこと襲うんじゃないかって思ってるでしょう。この前だって、僕がきみに触れたら急に帰っちゃうし」
「それは、ちが」
「脅えさせてごめん。もう無理に僕の部屋に誘ったりしないから。気を使わせちゃってごめんね」
悠の言葉を遮るように、平内は言い切った。
「違うって言ってんじゃん」
「……中原くん?」
急に大きな声を出したからか、平内が驚いた表情でこちらを見ている。
「好きなんだ、平内さんのことが」
気がついたときには、言うはずのなかった思いが口から出ていた。
「えっ」
「最初は変な人だと思ってた。でも、一緒にいるうちに優しいとことか話してて楽しいとことか、全部好きになった」
好きだと言葉に出したらもう止まらなかった。平内への思いがどんどんあふれてくる。
「あのとき助けたのが平内さんのエゴだったとしても、俺は救われたんだ。変に気を遣わないでいてくれるのも嬉しかった。俺を一人の人間として接してくれて嬉しかった。いつの間にか、まだ生きたいと思えるようになってた」
声が震える。油断したら泣いてしまいそうだ。
途切れ途切れの悠の話を、平内は何も言わずにじっと聞いてくれている。
「……セックスする約束だって、いつするのか内心ドキドキしてた。でもこの前、約束は無かったことにするって言われて、平内さんは俺としたくないんだって思った」
「それは、きみが僕を避けてたから……」
「気持ち悪いこと言ってごめん。でも、このまま気持ちを隠し通すのは無理だった。だから、平内さんのせいじゃないから、謝らないで」
自分のせいなのに、平内に謝られるといたたまれなくなる。
「中原くん」
「好きになってごめんなさい。じゃあこれで」
このままいると目から涙が溢れそうなので、早くこの場を去りたい。
「ちょっと待って」
立ち上がって部屋を出ていこうとすると、平内に腕を掴まれた。
「離せよ、出ていくから」
そう言った刹那、平内の顔が近づいてきて唇に柔らかいものが触れた。悠は何が起きたのか理解できず、頭が真っ白になった。
「……なにして」
「中原くん、僕のこと好きなの?」
「だから、そう言ってんじゃん」
とりあえず、平内の顔が近くて逃げ出したいのだが、両手を掴まれているため出来ない。
「いつから」
「……一緒に居るうちに、気づいたら」
「なんだ、僕達すれ違ってたんだね」
「それって、どういう」
「僕もきみが好きだよ」
平内は、こちらを真っ直ぐ見つめて言った。自分はからかわれているのだろうか。
「うそ……」
「嘘じゃないよ。僕が嫌で避けられてると思っていたから、きみが僕を好きだって言ってくれて嬉しい」
我慢できなくなって、悠の目から涙があふれた。これは夢なのだろうか。夢ならばこのまま覚めないでほしい。
「中原くん、抱きしめてもいい?」
悠が小さくうなずくと、平内は優しく抱きしめてきた。フワッと彼の香りがする。
「ずっとこうしてみたかった」
耳元で囁かれ、心臓が痛いくらいドキドキする。平内に触れている部分が熱い。
二人はそのまま見つめ合って、どちらからともなく唇を重ねた。徐々に口づけは深くなっていき、何も考えられなくなってくる。
「服、脱がせてもいい?」
平内がそう聞いてきたが、悠はお風呂に入ってないのが気になった。
「俺、汗かいてるから汚い……」
「じゃあ、一緒にお風呂入ろっか」
「お風呂でヤるのかよ」
「まさか、ベッドで大事に抱くに決まってるじゃん」
そんなことをさらっと言える平内に、悠は顔を真っ赤にすることしかできなかった。
平内に手を引かれ、二人は脱衣所へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる