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生存
骨折り損のくたびれ儲け
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「一時間瓦礫をひっくり返して成果はコーラ一本…」
武装集団の争いに巻き込まれたのか爆発物の跡が残る瓦礫だらけのコンビニ跡地で、男がコーラの缶を片手に項垂れていた。
「割にあわねぇええ!!」
この辺りは既に放棄された廃墟だ、大声で迷惑を被る人は一人も居ない。
大声を出して少しスッキリしたようで汗を拭いながら
「もうちっと残ってるかと思ってたんだがなぁ」
既に誰かが漁った後なのだろう、瓦礫の下に隠れるように入り込んでいたコーラ以外食べ物は一時間探しても見つからなかった。
「漁って速攻コーラが見つかったから、他に残ってるものがあるんじゃねぇかと必死になって瓦礫をどかしまくった結果、何も見つかんねぇとは…」
迫撃砲でも打ち込まれたのだろうか、コンビニの天井はぶち抜かれており、大きな穴が空いていた。
その為、店内にも関わらず日差しが差し込んで来る。
ジリジリと肌を焼く日光を浴び、汗だくになりながら数十キロもある瓦礫を退かす作業はかなりの重労働だ。
手元にある500mlのコーラで取れる水分やカロリーでは、甘めに見積もってもプラマイゼロ。
コーラだけだと気付いて落胆した精神ダメージを含めれば大幅マイナスなのは間違いない。
「こうなりゃやけ飲みだ!」
飲まなきゃやってられんとばかりに、赤い塗装が剥がれ落ち、瓦礫によって押し潰され変形しているコーラのプルタブを起こす。
もしかしたらどこか傷があり隙間から炭酸が抜けているんじゃないかと危惧していたが、プシュという炭酸の音を聞き僅かに安心する。
自身の食糧事情からして炭酸が抜けていても飲むが、折角なら美味しく飲みたいのは仕方ない事だろう。
汗を流し喉がカラカラだった事もあり、喉に流し込んでゆく。
「ぬるい!美味い!」
当たり前だが先程まで瓦礫の下に埋もれていた物だ、冷たいわけがない。
ぬるいジュースなど甘ったるくあまり美味しい物ではないが久しぶりのジュース、甘美すぎて疲れが吹き飛ぶ…ような気もしなくもない。
炭酸が喉を通り過ぎてゆく刺激的な感触の後に、鼻に抜ける爽やかな香り。
人工島ではありふれた飲料の一つで、五年前まではかなり頻繁に飲んでおり、ひどく懐かしい思い出の味だ。
この島と違ってコーラは昔から何一つ変わってなかった。
「贅沢を言えばこいつが冷えててポテチがあれば他に何もいらない。…いや、貰えるならもっと栄養のあるもん欲しいが。」
先程項垂れていたとは思えない程度には割と楽しげだ。
一人で生き抜くにはどんな状況であっても楽しく振る舞うのが精神的に一番だという事を理解している。
「独り言が染みついちゃったな。」
五年間…正確には三年間の長い一人旅による弊害だ。
争いを避ける為には人の多い所に寄らないのが一番だ、結果廃墟など伝って移動すると、滅多に人と話すことはない。
「はぁ…最後に人と会ったのは二ヶ月前か?」
挨拶より前に銃弾や異能による攻撃を仕掛けてくる奴らは人に含まないものとする。
「流石に人肌恋しいな、地図通りなら近くに自衛団の守る中立的な街があった筈…物資補給も兼ねて寄るとするか」
重い腰を持ち上げてコンビニの外に向かうと夕日が出てきた。
「クソ…そいや一時間ここで瓦礫ひっくり返してたな…」
時間感覚がおかしくなっていたのだろう、少なくとも今出て徒歩で暗くなる前に着く距離ではない。
暗くなると当然危険が増す。
道に罠を仕掛けておく追い剥ぎもいる以上、罠の発見が遅れる夜間に出歩くのは避けるべきだろう。
クルリと振り返り屋根のないボロボロのコンビニを見上げ、小さくため息を吐く。
「今夜はここで過ごすか…」
武装集団の争いに巻き込まれたのか爆発物の跡が残る瓦礫だらけのコンビニ跡地で、男がコーラの缶を片手に項垂れていた。
「割にあわねぇええ!!」
この辺りは既に放棄された廃墟だ、大声で迷惑を被る人は一人も居ない。
大声を出して少しスッキリしたようで汗を拭いながら
「もうちっと残ってるかと思ってたんだがなぁ」
既に誰かが漁った後なのだろう、瓦礫の下に隠れるように入り込んでいたコーラ以外食べ物は一時間探しても見つからなかった。
「漁って速攻コーラが見つかったから、他に残ってるものがあるんじゃねぇかと必死になって瓦礫をどかしまくった結果、何も見つかんねぇとは…」
迫撃砲でも打ち込まれたのだろうか、コンビニの天井はぶち抜かれており、大きな穴が空いていた。
その為、店内にも関わらず日差しが差し込んで来る。
ジリジリと肌を焼く日光を浴び、汗だくになりながら数十キロもある瓦礫を退かす作業はかなりの重労働だ。
手元にある500mlのコーラで取れる水分やカロリーでは、甘めに見積もってもプラマイゼロ。
コーラだけだと気付いて落胆した精神ダメージを含めれば大幅マイナスなのは間違いない。
「こうなりゃやけ飲みだ!」
飲まなきゃやってられんとばかりに、赤い塗装が剥がれ落ち、瓦礫によって押し潰され変形しているコーラのプルタブを起こす。
もしかしたらどこか傷があり隙間から炭酸が抜けているんじゃないかと危惧していたが、プシュという炭酸の音を聞き僅かに安心する。
自身の食糧事情からして炭酸が抜けていても飲むが、折角なら美味しく飲みたいのは仕方ない事だろう。
汗を流し喉がカラカラだった事もあり、喉に流し込んでゆく。
「ぬるい!美味い!」
当たり前だが先程まで瓦礫の下に埋もれていた物だ、冷たいわけがない。
ぬるいジュースなど甘ったるくあまり美味しい物ではないが久しぶりのジュース、甘美すぎて疲れが吹き飛ぶ…ような気もしなくもない。
炭酸が喉を通り過ぎてゆく刺激的な感触の後に、鼻に抜ける爽やかな香り。
人工島ではありふれた飲料の一つで、五年前まではかなり頻繁に飲んでおり、ひどく懐かしい思い出の味だ。
この島と違ってコーラは昔から何一つ変わってなかった。
「贅沢を言えばこいつが冷えててポテチがあれば他に何もいらない。…いや、貰えるならもっと栄養のあるもん欲しいが。」
先程項垂れていたとは思えない程度には割と楽しげだ。
一人で生き抜くにはどんな状況であっても楽しく振る舞うのが精神的に一番だという事を理解している。
「独り言が染みついちゃったな。」
五年間…正確には三年間の長い一人旅による弊害だ。
争いを避ける為には人の多い所に寄らないのが一番だ、結果廃墟など伝って移動すると、滅多に人と話すことはない。
「はぁ…最後に人と会ったのは二ヶ月前か?」
挨拶より前に銃弾や異能による攻撃を仕掛けてくる奴らは人に含まないものとする。
「流石に人肌恋しいな、地図通りなら近くに自衛団の守る中立的な街があった筈…物資補給も兼ねて寄るとするか」
重い腰を持ち上げてコンビニの外に向かうと夕日が出てきた。
「クソ…そいや一時間ここで瓦礫ひっくり返してたな…」
時間感覚がおかしくなっていたのだろう、少なくとも今出て徒歩で暗くなる前に着く距離ではない。
暗くなると当然危険が増す。
道に罠を仕掛けておく追い剥ぎもいる以上、罠の発見が遅れる夜間に出歩くのは避けるべきだろう。
クルリと振り返り屋根のないボロボロのコンビニを見上げ、小さくため息を吐く。
「今夜はここで過ごすか…」
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