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1章
奇跡の少女
しおりを挟む「奇跡が起こった……女の子だ!!! 女の子が生まれたぞーっっ!!!」
私が誕生したのはとても綺麗な満月の夜。病院内で父と祖父が叫んだ台詞は”奇跡”という単語から始まった。
理由は明確、父の家系は代々男しか生まれてこなかったのだ。17世紀頃生きていた、たった1人のご先祖様を除いて。
家系図を見るとそれは一目瞭然で、私とその人以外は全て男性。
なので私は”奇跡の娘”と言われた。
おまけに誕生日もそのご先祖様と同じ。
そのことにちなんで真理亜(マリア)という名前も彼女からいただいた。
いまでも母が語る。
「貴女が生まれた日は、彼の家の喜びがすごかったのよ。明日は天と地がひっくり返るかもって言ってたわ。」と。
クドイけれど”女”が生まれることが”奇跡”と呼ばれてもおかしくない。何たって何百年も男家系が続いていたのだから。
そして不思議なことに奇跡はそれだけでは、終わらなかった。
16になった私が祖父の家に置いてある肖像画を見せてもらった時、息を飲んだのだ……
そこにいるのはまるで私。
違うといえば髪の色と目の色だけ。
ご先祖さまは外国の人のようだけど私は、クォーターと呼ばれるもの。
血を引いているとしても、日本の血の方が強いのにここまで似ているなんて流石にゾッとする。
更に極め付けは隣の家の幼馴染だ。
ご先祖様であるマリアさんには、吸血鬼の魔の手から救ってくれた婚約者がいるらしい。
その者とやがて愛し合い結婚したと記された書物があるのだけど……。
なんと幼馴染がその婚約者にそっくりなのだ。
”時を超えて出会った運命の2人”
と父の家系から言われ続けて育った私達。
彼もその婚約者の名前をもらい瑠偉(ルイ)と名付けられた。
まぁこれは多分、親同士が昔の書物を見て面白半分でやったことなのだろうけど。
偶然なのか必然なのか……
周りが囃し立てるから、瑠偉とは恋人同士。
まぁこれは、のちの話でいいか……
「真理亜。何ぼーっとしてるの? ほら学校の時間よ」
「わかってるわ。ママ」
「いってらっしゃい。奇跡のお姫様」
「いってきます。パパ」
外国流の挨拶を交わして私は制服に身を包み、家を出た。
奇跡の娘
なんて大それたことを言われる割に、私は普通の生活を送っている。
朝、目覚ましに起こされ、制服を着て、学校へ。普通に日本語しゃべって、普通に友達と絡んで、時には恋人とデートする。他の子となんら変わりない。
マリアさんは、よく吸血鬼に狙われたと書物に書いてあったけど、この時代にはそんなことはありえないし。
まぁたった1つだけ、普通じゃないことをあげるとするなら……
満月を見ると必ず涙が零れ落ちる。
これくらいだ。
幼い時からずっと。胸が苦しくて切なくて、雫がポロリと頬を伝う。
理由ははっきりわからないし、知る必要もないと思っていた。
そうね。あんな不思議なことが起こり始める前までは。
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