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1章
夢と言い聞かせて
しおりを挟む目が覚めると見慣れた天井がぼんやりとしていた。
あれ……?私……
起き上がり辺りを見回したけれど、ここは私の部屋だ。夢だったんだろうか……
「カル……マ??」
ぼんやりしている頭が一気に冴える。
夢なわけない。まだ抱きしめられた感覚が残っているし、あの切なげな声も、愛しそうな目も全てが明確に浮かび上がってる。
一体彼は、何者だったんだろうか。
名前だって日本人にしては珍しい名前だ。それに、物語に出てきそうなあの家。本当に同じ国だったんだろうか。
『マリア……』
あった覚えがないのに。あの声で名前を呼ばれると、ひどく泣きたくなる。抱きしめられると振り払えらない。
夢で片付けられる話ではなかった。この世のものとは思えないくらい妖艶で美しい男性だったせいで、鮮明に覚えている。
「カルマ……さん」
そっと名前を呼ぶと、肌寒さを感じた。何故か開いている窓から風が入りこみ、カーテンがふわふわと揺れている。
現実とかけ離れた体験のせいで頭も少し痛い。
窓を閉めようとふと外を見て、ハッとした。
……この高さからどうやったら登れるの?どうやって人1人を抱えて、ここから抜け出せるの?? 人には無理じゃないだろうか。ブルッと寒気が私を襲う。
だけどあの人がヴァンパイアなら、血を飲まれてもおかしくなかったはず。いや、ヴァンパイアなんて信じられないけれど。
「……ダメ。もう寝よう。これも夢なのかも」
自分を納得させるため、そうはっきり口にして窓を閉めた後再びベッドの中へと入った。
まだ満月の明るさが部屋を少し明るくしている。
『……マリア……』
あの人が求めているのは私じゃないのに。
こんなにも切なくて、こんなにも悲しい。
満月との相乗効果なのか、またポロリと涙がこぼれ落ちた。
明日、瑠偉にどんな顔して会えばいいんだろう。うまく笑えるだろうか……
だって私の心はまだ、カルマさんのあの切なげな顔でいっぱいだ。
この感情が愛しいというものに、近いと思い知らされるくらいに。
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