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1章
懐かしい名前
しおりを挟む涙ながらの私の言葉に彼は一瞬悲しそうな顔をすると
「やはり……覚えてないか」
そう呟いて、ソッと私から離れた。
覚えてないって……会ったことも見たこともないのに。髪の色と目の色のことを言っているから、ご先祖様と勘違いしてるの??
「……あ、の……」
「まぁそんなことはどうでもいい。またこうしてお前に会えたのだから……」
私はマリアさんではないということを伝えようとしたのに。あまりに嬉しそうに微笑むので言葉を失ってしまった。
……よく見るととても綺麗な顔立ちをしてる……。目は宝石みたいだ……
「……もう離さない。マリア」
魅入っているとするりと手を絡め取られ、手の甲にキスが落ちる。まるで媚薬のような甘い声に、身体が支配されたよう。こんなこと、おかしいのに……この手を拒否することができない。
「……こ、困ります。」
だけど脳裏に浮かんだ家族や瑠偉の顔。もし仮に誘拐されたとしたのなら、大変なことだ。
「貴方がどうやって私をここに連れてきたか知りませんけど、家に帰して下さいっ。」
「……嫌だ」
「なっ!!」
グイッと引き寄せられて彼の腕の中に収まった。
「……帰すわけない……」
苦しいほどに抱きしめられて、身をよじっても逃げられない。耳元に彼の唇が寄って
「……お前のいない生活など、もううんざりだ」
切なく苦しい声で囁かれた。
ドクンドクンと鼓動が速くなっていく。おかしいことは、わかってる。私には瑠偉がいるのに、こんなことをしてはいけないということも。だけど私の身体を包み込む彼の手が震えていて、思わずまた泣きそうになった。
私の中に湧き上がるこの感情は……一体なんなんだろう。
ソッと彼の背中に手を伸ばそうとした刹那
「それまでです。ご主人様。」
先程まで言葉を発さなかった少年がいつの間にか私達のそばにいたのだ。
「邪魔するな。ウト。お前はお呼びじゃない」
「いいえ。いけません。彼女は家に帰ることを望んでいます。貴方はそれを無理矢理従わせるのですかっ……?」
なんてしっかりした男の子なんだろう。見るところまだほんの子供なのに、どこか妖艶でこちらもまた美しい。
「……そうだな……お前の言いたいことはわかった……」
彼の言葉とともにゆっくり解放された身体。名残惜しそうな手から逃れた私は、どこか寂しい気持ちに襲われた。
「……悪かったな。マリア……少しわがままを言った。」
「……い、いえ……あの……」
「……一旦うちへ帰そう……」
「ま、待って!貴方の名前は……?」
何故このタイミングで名前を聞いてしまったのかは、わからない。だけどこのまま名を知らないままというのは嫌だった。
「カルマだ……」
「え……」
手を掲げられたら自然と暗闇へと堕ちていく。
「愛しいマリア……また必ず……会いに行く」
そんな優しい声と共に、意識は再び途切れた。
カル……マ?どこかで聞いた……
懐か……しい……??
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