今宵満月の夜、ヴァンパイアの夢を

ミルク

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1章

赤い目

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 放課後……どうしようか。教室に戻って授業を受けながら私は大きくため息を吐いた。瑠偉との約束を断って、カルマに会いに行くってことは、浮気になるのかな? 「やめておいたほうが……いいのか……」小さく小さく呟いて、真っ白なノートにぐちゃぐちゃと意味のない線を描いた。

 時間はもう迫っている。時計を見るとあと10分ほどで今日の授業は終了だ。あとはHR、それが終われば……

『……いつか必ず思い出す日が来る』

 あの切なげな声は、私の思考をおかしくする。あの切なげな顔は、私の身体を動けなくする。自分が自分じゃないみたいに、彼を求めて仕方がない。

 ぼーっとそんなことばかり考えていたせいか、いつの間にかチャイムが鳴り響き授業が終わった。瑠偉とはクラスが違うから、連絡を入れておこう。ほんの少しだけなら……いいよね? それが彼への裏切りだとわかっていたのに、何故だか気持ちを止められなくて、スマホで連絡を入れたあとカバンに教科書をしまった。

 HR中も勿論話なんて入ってこなくて、ただぼーっとカルマのことを考えてしまう。こんなにも誰かのことを想って時間を潰したことはない。カチカチと何度もシャーペンの芯を出してはしまい、また出してはしまいと、今日の私は落ち着きがなさすぎる。

 「はぁ」ため息を1つ吐いてコロンとシャーペンを転がすと

「今日の真理亜本当に変だね。大丈夫?」

 なんて愛梨が話しかけてきた。

「そうかな?」

「うん。そう。瑠偉くんと喧嘩でもした?」

「ううん。喧嘩なんてしたことないもん」

「あらま惚気られちゃった……」

 惚気たつもりはなかったけれど、本当のことだ。一度も喧嘩したことないし、言いたいこともはっきり言ったことない。ただ運命の相手だからと言われて、その気になったということもある。キスはしたにしろその先はまだだし……

 そんなことを思ってハッとした。まるで瑠偉と付き合ってることに納得してないみたいだと。

「真理亜?」

「え、あ、な、なに?」

 私の癖なのか動揺を隠すため再びシャーペンの芯を出そうと押したところ、まさかの反対側で鋭い痛みが走る。

「…っ」

「なにしてんの!? 大丈夫??」

 ツゥと小さく血が出てきた。愛梨の言う通りなにしてるんだろ。私は。

「痛い……思いっきり押しちゃったせいで刺さった……」

「バカだな真理亜……絆創膏あるよ。あげるね。」

ガサゴソとカバンからおしゃれなポーチを出して、ピンクの絆創膏を差し出される。

「ありがとう……」

 お礼を言って未だに止まらない血を覆うように、指にそれを貼った。ピンクの絆創膏が少しだけ赤くなる。

「今日は本当に真理亜らしくないね……早く帰ってゆっくり休みなよ」

「うん……ありがとね」

 そうこうしているうちにHRが終わって、放課後が訪れた。瑠偉と顔を合わせてしまえば、罪悪感に負けそうなので、慌てて約束の場所へと向かった。

 会いたい……貴方に今すぐ会いたい……

 貴方の元に走るにはこのドレスは邪魔だわ。ああ、そしてこの広い廊下も今は疎ましい。

 ガラガラっと扉を開けて

「カルマ!!」

 そう叫んだ。まるでお屋敷の一室に中へ入ったような感覚だったのに、そこでふと我に返る。あれ? 私今、制服のことをドレスだと思った? 廊下だって学校の廊下じゃなかったような……

 もうこの目に映っているのは普通の化学室で、ゆっくりと振り向いたカルマさんが瞳に映る。しかしその刹那彼がカッと目を見開いた。

 「……カルマ?」

 一体どうしたと言うんだろう。どこか苦しそう……

「マリア……お前っ……」

「え……」

 みるみるうちに赤くなっていく彼の目。え!? と後ずさりすれば開いていたはずのドアが、触れてもいないのにバンッと閉まる。

「きゃっ!!」

 なにが起こっているんだ。ガタガタと地震が来たように、辺りが揺れる。

 「……マリアの……血……」

「……な、なに? え?」

  牙が……鋭く伸びて……る……。その姿をはっきり見たと言うのに、カルマの姿が目の前から消えた。なにが起こっているかわからない状況でバサリッと甘い香りに包まれる。

 「ひっ……」

「……お前は……俺のものだ……」

 ひんやりと首筋に冷たい何かが触れた瞬間、恐ろしい痛みと激しい熱が襲いかかってきた。

「あ……っ……うっ……」

 ……血を……吸われてるの……?

 

 
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