新聞記者の恋

早坂 悠

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1話 プロローグ〜運命の出会い〜

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夏の残暑が過ぎ去り、
外出しやすい気候になった10月上旬。

いつものコンビニに行き、
いつもの帰り道を歩いて
いつものボロアパートに帰宅するだけだった
そんな俺の変わり映えない日常を


 いや、日常ではなく
    人生を変えたのは一人の女だった。


 それは俺の住んでるボロアパートの道路を挟んだ、そのむかえにある新築の戸建に引っ越してきたばかりの女性だった。

その女の名を藤田志穂ふじたしほという。

 志穂はオープン外構の駐車場に風の流れとともに入ってきてしまった落ち葉をホウキで集めていた。

 そんな志穂に俺は目を奪われた。
 志穂は美しい女だった。

 160cmほどの身長にスラッとした手足。ふわりとしたプリーツスカートに薄手のニットカーディガンを羽織って駐車場の掃き掃除をしていた志穂は、セミロングの艶やかな黒髪を片方だけ耳にかけて、その耳には品のよいピアスがしてあった。

 長いまつ毛の大きな瞳、スッと通ったちょうどよい高さの鼻筋に小ぶりの美鼻、淡いピンク色の唇にどこまでも透き通る白い肌

 見惚れてしまうには充分すぎるほどの美しい女で、俺は危うく買ってきた昼食をコンビニの袋ごと、落としそうになってしまった。

 そんな志穂の姿に目を奪われ惚けてしまった俺は、すぐに志穂に気づかれた。しかし志穂は怪訝な顔をひとつもせずに

「こんにちは。最近、越していた藤田志穂です。ご近所の方ですか?よろしくお願いしますね。」

 とにっこり微笑んで自己紹介してくれたのだった。

 この時に俺は目だけではなく、
 心も志穂に奪われた。

 それは俺のつまらない人生を
 薔薇色へと変えてしまう出来事だった。


 俺は藤田志穂に一目惚れして、恋に落ちた。


ーーーーーー

 俺こと岡本 進おかもとすすむ、41歳の
 人生はつまらないものだった。

 大手新聞社に長年勤めていたが、幾つものスクープを追うものの、決定的な証拠をカメラに抑えることが出来ず、誰からも評価されないまま、時を同じくして持病が悪化し、そのまま会社を退職した。

 数年の療養期間を経て社会復帰するものの、なんの実績も残したことがない中年の元新聞記者を、社員として雇ってくれるところはどこにもなかった。

 今はフリーランスの新聞記者として
 生活している。

 もともと人付き合いが苦手な俺は、
 毎晩酒を飲み交わす友人も
 生涯を誓い合う伴侶もいない。

 毎日、毎日、毎日……寝て、起きて、食べて、排泄して、また寝て、また起きて……の繰り返しの変わり映えしないうんざりする毎日で

 ネタになりそうなものを探しては、契約している新聞社に報告して使えそうなネタかどうかを打診する。

 そんな不毛な毎日だった。

 ひとりぼっちで孤独で

 生きがいのようなものは何一つない。
 それが俺ーーー岡本進の人生だった。

 新聞記者としての情熱は遠い昔に失われ、スクープを追いかけていた執念も、やはり遠い昔にトイレにでも流してしまったのかもしれない。

 そんな俺に人生への希望と、そして再び新聞記者としての情熱を取り戻してくれたのが志穂だった。

 そして、あろうことか藤田志穂の旦那が、かつて俺が追いかけていた汚職事件の黒幕である市議会議員の藤田京平ふじたきょうへいだと知った時、


  俺は志穂との
    強い運命の結びつきを感じたのだ。


 藤田京平はヤバイ男だ。

 それは昔、追っかけていた俺だけが知っているアイツの悪行だった。でもそれは今、この時も志穂を苦しめているかもしれないし、

遠くない未来に絶対、キミを傷つける。

俺が京平の悪事を世間に暴いて、
絶対にキミを守ってみせる。

この人生をかけてーーーーーー

(プロローグ終わり)
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