上 下
89 / 116
6・茶道 探偵部(仮)と謎の美少女

6-15・活動実績になるイベントその1

しおりを挟む
『河原のゴミ拾い大会』か、と、おれはワタルが送ってくれたフライヤーの画像を確認した。

 開催はこんどの休みの日、ただし雨天順延。

 どなたでもチームで参加できます。

 中学生以下の参加は成人の許可が必要です。

「大会、だけど賞金は出ないんだな」

「だけど、実績作りになる。ゴミーだって、その日までは大丈夫なんだろ」

 ゴーレムのゴミーは、オリジナルのコミーと比べるとそんなに命を保てない。

「やろうぜ、偽ゴミー」と、真ゴミー、つまり偽コミーは真コミーに言った。

 それから休みの日までは、ふたりの生活は変わらなかった。

 ゴミーは庵から学校に行って、クラス・ミーティングには毎日参加して、合唱の練習みたいな部活はちゃんとやる。

 授業は教室で受けなくても問題ないんだけど、それでも半分ぐらいは出席して、メイド子さんとその友だちとも仲良くしてる、と、同じクラスのクルミは報告して、画像も送ってくれた。

 ところで中学生の画像で気になってたのは、水着のときも夕景で帰宅するときも、ある時期からはニー・ショット、つまり足の先までは写ってない画像だった、ってことだ。

 そんなこと聞いてないって、そうだね、言ってないからね。

 もしあったとしたら、足首のところにはサポーターをしていたかもしれない。

 クラスのゴミ収集場まで、ぜんぜん歩けるのに、あたしにやらせてくれねぇんだよ、と偽ゴミーは言った。

 しょうがないから、椅子と机の足磨いてたそうである。

 なお、今週はゴミ当番ではない、とのこと。

 偽ゴミーは、空き缶ボックスを蹴飛ばしたり、カラスにバドミントンのシャトルをぶつけるのはもうやめた。

 夜はクルミたちと一緒にフロカラオケに行き、朝はワタルと一緒に公園でバドミントンをする。

 ただ、ワタルは取るのはうまいんだけど、投げ返すのはヘタなんだよなー。

     *

 おれの家から歩いて5分ほどのところには、ほどほどの川幅の川が流れていて、上流は学校のそばを通っている。

 昔は両側の土手にサクラが植わってたらしいんだけど、どうも治水の問題としてサクラはよくない、ということで、土手と並行している道路の両脇が今は桜並木になっている。

 サクラの花はとうに散り終えて、それでも葉桜がわしゃわしゃ、という感じでもなく、もわーっ、と薄緑色に染めている。

 ゴミ拾い大会の当日、おれたち茶道 探偵部(仮)の部員およびふたりのコミーは、日が昇る前のトワイライト・タイムに、そろいだけど色違いの作業服で、川にかかる橋のたもとに集まった。

 ミロクは黒、ミナセは灰色、おれは赤、クルミは白、ミドリは緑、ワタルは青。

 そして、コミーは黄色、ゴミーは濃紺である。

 手には軍手で、足は長靴。

 これらはぜんぶ、前日に近くの作業服屋から買ったものだった。

 なお、ミロクは花粉よけの黒マスクとサングラスをしており、似たような感じでメンバーはみんな、キャラに合わせた帽子をかぶって、口にはマスクをしていた。

 空はすかっ、とは晴れておらず、全体にこの季節にはありがちに、もわーっ、としている。

 ただ、雨は降りそうにないし、太陽が昇ってきたら、体を動かしていると汗が流れるぐらいの温度だ。

「さぁて、下準備をするのよね」とミドリは、いつもの扇子ではなくて鹿島神宮のおみやげとして部室のリアル保管ボックスに置いてある木刀を両手持ちにして、草がそろそろぼうぼうになりかけてる両岸に、縦横4回振り回して言った。

「ヴァーデ・レトロ・サタナー!」

 橋の上流と下流、両岸の土手150メートルほどの草が……枯れた、ではないな、しおれた、でもない。

 時間が巻き戻されたかのように縮んで、溜まっていたゴミが丸見えになった。

 すげぇな、本当に魔法使えるんだ、とふたりのコミーは驚いてた。

 お前らがふたりいるのは魔法ではないのか、と改めて聞きたい。

「ところで、今の呪文みたいなの、なに?」と、おれは聞いた。

「サタンよ去れ、つまり悪霊退散、って意味のラテン語なんよ。別に「クリア!」とかでもいいんだけど、こういうときはラテン語使うやん、異世界だと」

「ついでにゴミ収集もできないかな」

「あのねぇ、そういうのは魔法じゃなくて人力でやるから意味あるんだよ」

 ごもっともである。
しおりを挟む

処理中です...