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6・茶道 探偵部(仮)と謎の美少女
6-16・モリワキ団がその真髄を見せる
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おれたち8人、エタり部(仮)のメンバーとそのサポートメンバーは、ふたりひと組みになって河原のゴミ拾いをした。
おれとワタルは橋をはさんだ下流。
ミナセとクルミはその上流。
コミーとゴーレムのコミーはおれたちの対岸。
ミロクとミドリはミナセたちの対岸、という組み合わせだった。
ワタルはおれに、プラゴミ・紙ゴミ・ペットボトルゴミ・空き缶ゴミ・透明瓶ゴミ・その他の色瓶ゴミの6種類のゴミ袋をもたせ、ほいほいほいっ、と先に進んで、拾ってはおれに投げつけてくる。
ゴミ袋はミドリが用意したもので、実際にはいくらでもゴミが入る四次元ゴミ袋なんだけど、そんなん使ったらまずいかもね、ということで、「いくらでも増えるゴミ袋」ということになった。
外見も手触りも同じなんだけど、「ゴミ袋袋」から1枚取り出すと1枚増えるので、なかなか重宝である。
「危ないものとか、汚いものとかあったら置いといてね。あとで回収するから。具体的には注射針とか医療関係のもの、それに動物の死体とか火薬とか銃器、要するにメルカリで送れないようなものなのね」と、ミドリは連絡してきた。
使用ずみのなんたらは、と、ミナセはでかい声で対岸のミドリに聞いていた。
おれがぼーっと、30秒ぐらい、対岸の働く美少女姉妹を見ていると、足元に袋に入れてないゴミがどんどん、ちゃんと種類別に積み上げられていく。
対岸のふたりは、これ、どうしようか、だよねー、ないない、みたいな感じのことを、お互い同じ数の袋を持って話していて、とても楽しそうだけど速度はそんなに早くない。
幸せで仲良さそうでうらやましい、と思っていたら、怠けるな、と、戻ってきたワタルに足を踏まれた。
「悪い」と、ワタルは言い、なにが、とおれが聞くと、ほかのふたりより不器用なので、という返事だった。
いやー、ミドリはともかく、クルミのほうは器用に不器用なのごまかしてるだけだろ、あいついなくてもおれたちの部はちゃんと回ると思うよ、と答えると、誰かをageるのに他の誰かをsageるもんじゃない、と横を向いた。
同じ異世界人でも、リアル世界のヒトとの接し方と距離の置き方があるのがおもしろいな。
「ところで、別腹で空き缶が入ってる袋持ってるけど、それは何?」と、おれは疑問に思った。
「とてもとても珍しい空き缶で、近所では手に入らないのだ。たぶん長距離ドライバーが別の地域で買ってきた限定もの」
いささか不衛生じゃないかな、と聞くと、あとでミドリがぴかぴかにしてくれる、そうである。
おれたちの担当部分が最初に終わると、ゴミ袋はまとめて橋の下に置いといて、というミロクの指示があったので、言われたとおりにした。
ほかの部員の組はまだ1/2、コミーたちは1/3ぐらいしか終わっていないから、おれとワタルはコミーたちを手伝うことにした。
一番最後になったコミーたちのところで、おれたちは記念写真を撮った。
やりとげたぞ、という共同作業のふたりは、汗と汚れに紛れていて、両手にゴミ袋を持ったコミーは、まるでなにかのライトノベルの本文イラストのようだった。
しかし。
しかし。
しかしなのである。
「……関係者誰も来ないな」と、おれは言った。
朝日が昇ってからずいぶん経ち、その間に犬を散歩させているヒトや、ジョギングをしているヒトなどは土手の上から「おはよう」とか「おつかれさん」とか言ってくれてるのに、『ゴミ拾い大会』の主催者・関係者が顔を出さない。
おれは、近くの自動販売機でクルミが人数分買ってきてくれた飲み物のひとつをうけとり、手袋を取ってごく、としながら、ふところの携帯端末の画面を再確認した。
「あーっ!」
なんだよこれ、ゴミ拾い大会は「休みの日」じゃなくて「休みの次の休みの日」になってる。
要するに、明日、だな。
「これはもう、モリワキ団のしわざ、ということにしてもいいんだよね、ミロク」と、ミナセが言ったので、ミロクは深くうなずいた。
きのう画面を見たときも、そのようにはなっていなかった。
いいことをさせるつもりで悪いことをさせる、まさにこれがモリワキ団の手だ、とミロクは言った。
「それでも、河原は広いから、明日の大会でも参加者の作業はないことはないだろう、しかし憎むべき……いや恐るべきはモリワキ団」
なにそのモリワキ団って、宗教団体? となにも知らないコミーは聞いた。
おれたちも、ミロクを除いては特に知識があるわけではない。
「ああそうそう、ゴミ拾いが終わったら、偽コミーと偽ゴミーの件があるんだっけ」と、ミドリは言った。
これがふたりのコミーの、たぶん最初で最後のイベントなのである。
おれとワタルは橋をはさんだ下流。
ミナセとクルミはその上流。
コミーとゴーレムのコミーはおれたちの対岸。
ミロクとミドリはミナセたちの対岸、という組み合わせだった。
ワタルはおれに、プラゴミ・紙ゴミ・ペットボトルゴミ・空き缶ゴミ・透明瓶ゴミ・その他の色瓶ゴミの6種類のゴミ袋をもたせ、ほいほいほいっ、と先に進んで、拾ってはおれに投げつけてくる。
ゴミ袋はミドリが用意したもので、実際にはいくらでもゴミが入る四次元ゴミ袋なんだけど、そんなん使ったらまずいかもね、ということで、「いくらでも増えるゴミ袋」ということになった。
外見も手触りも同じなんだけど、「ゴミ袋袋」から1枚取り出すと1枚増えるので、なかなか重宝である。
「危ないものとか、汚いものとかあったら置いといてね。あとで回収するから。具体的には注射針とか医療関係のもの、それに動物の死体とか火薬とか銃器、要するにメルカリで送れないようなものなのね」と、ミドリは連絡してきた。
使用ずみのなんたらは、と、ミナセはでかい声で対岸のミドリに聞いていた。
おれがぼーっと、30秒ぐらい、対岸の働く美少女姉妹を見ていると、足元に袋に入れてないゴミがどんどん、ちゃんと種類別に積み上げられていく。
対岸のふたりは、これ、どうしようか、だよねー、ないない、みたいな感じのことを、お互い同じ数の袋を持って話していて、とても楽しそうだけど速度はそんなに早くない。
幸せで仲良さそうでうらやましい、と思っていたら、怠けるな、と、戻ってきたワタルに足を踏まれた。
「悪い」と、ワタルは言い、なにが、とおれが聞くと、ほかのふたりより不器用なので、という返事だった。
いやー、ミドリはともかく、クルミのほうは器用に不器用なのごまかしてるだけだろ、あいついなくてもおれたちの部はちゃんと回ると思うよ、と答えると、誰かをageるのに他の誰かをsageるもんじゃない、と横を向いた。
同じ異世界人でも、リアル世界のヒトとの接し方と距離の置き方があるのがおもしろいな。
「ところで、別腹で空き缶が入ってる袋持ってるけど、それは何?」と、おれは疑問に思った。
「とてもとても珍しい空き缶で、近所では手に入らないのだ。たぶん長距離ドライバーが別の地域で買ってきた限定もの」
いささか不衛生じゃないかな、と聞くと、あとでミドリがぴかぴかにしてくれる、そうである。
おれたちの担当部分が最初に終わると、ゴミ袋はまとめて橋の下に置いといて、というミロクの指示があったので、言われたとおりにした。
ほかの部員の組はまだ1/2、コミーたちは1/3ぐらいしか終わっていないから、おれとワタルはコミーたちを手伝うことにした。
一番最後になったコミーたちのところで、おれたちは記念写真を撮った。
やりとげたぞ、という共同作業のふたりは、汗と汚れに紛れていて、両手にゴミ袋を持ったコミーは、まるでなにかのライトノベルの本文イラストのようだった。
しかし。
しかし。
しかしなのである。
「……関係者誰も来ないな」と、おれは言った。
朝日が昇ってからずいぶん経ち、その間に犬を散歩させているヒトや、ジョギングをしているヒトなどは土手の上から「おはよう」とか「おつかれさん」とか言ってくれてるのに、『ゴミ拾い大会』の主催者・関係者が顔を出さない。
おれは、近くの自動販売機でクルミが人数分買ってきてくれた飲み物のひとつをうけとり、手袋を取ってごく、としながら、ふところの携帯端末の画面を再確認した。
「あーっ!」
なんだよこれ、ゴミ拾い大会は「休みの日」じゃなくて「休みの次の休みの日」になってる。
要するに、明日、だな。
「これはもう、モリワキ団のしわざ、ということにしてもいいんだよね、ミロク」と、ミナセが言ったので、ミロクは深くうなずいた。
きのう画面を見たときも、そのようにはなっていなかった。
いいことをさせるつもりで悪いことをさせる、まさにこれがモリワキ団の手だ、とミロクは言った。
「それでも、河原は広いから、明日の大会でも参加者の作業はないことはないだろう、しかし憎むべき……いや恐るべきはモリワキ団」
なにそのモリワキ団って、宗教団体? となにも知らないコミーは聞いた。
おれたちも、ミロクを除いては特に知識があるわけではない。
「ああそうそう、ゴミ拾いが終わったら、偽コミーと偽ゴミーの件があるんだっけ」と、ミドリは言った。
これがふたりのコミーの、たぶん最初で最後のイベントなのである。
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