【完】ちょっと前まで可愛い後輩だったじゃん！！

サン

「ユウマ！」

現在時刻午後6時、生徒及び研究生が学校内に居れるのは6時30分までなので、時間ぴったりに終わる在校生に合わせて俺が提案した待ち合わせ時間だ。

ほーら、俺を見つけたエルも駆け足で寄ってくる。
…見たとこ長い事居たっぽいけど…アイツ、もしかして授業終わりからずっとココに居たのか……？？

「お～っすお疲れエ…っわぷ！」
「あぁ…会いたかったです…私の最愛ユウマ…」
「ぅおい…！抱きしめるなよ人前だぞお前！！はーなーせ！！」
「嫌です！私はもう、この有り余った貴方への愛を隠しません。」

そ…そんなこと言われてもー！！

「……んぁ～あぁ…！分かった、分かった！あと1分だけな？」
「…5分…」
「……5分だけな」

分かってる…分かってるんだよ。
コイツは一度決めたことを絶対に変えない奴なのも…今、周りに居る連中に私エルの想い人はユウマ俺だって事を分からせる為に見せつけてる事も……

「…僕、ユウマ様のそういう所大好き」
「……だろうな。」

……あーあ…マジ…なんで俺なの？他にもっと…居るだろ王子なんだから、よりどりみどりだろ…

「…ﾋｯ…！」

「コラ、牽制すんなら離れるぞ」
「嫌です…！でも…今のユウマを見たら皆が貴方の虜になってしまう…」
「ならねぇよアホ」
「ユウマは、自分の事を分かってませんね…本当は私以外誰にも見せたくない。」

束縛系は流行らねぇぞ…？
ちょーっと前までは可愛い弟だったのに…誰に何言われたらこんな性格になるんだよ。

「……5分」
「…名残惜しいですね、ユウマ手を」
「は？」
「エスコート位私にさせて下さい。」
「…満足か？」
「はい勿論」

七瀬優馬、元日本人、小卒で長所は明るい所、短所はとにかく流されやすい性格。
…あー…兄ちゃんみたいになりたかったな…今もほら、エルドレッドに対してどうしたらいいのか、自分じゃ分からない。

「ユウマ…どうしました？」
「…なんでもねぇよ、ほら帰んだろ」
「……ユウマ」

綱渡りしてる様な感覚と…絶対的なトラウマ…
不安定な自分の現状が、大切な物を失うかもしれないという恐怖が…いつも…いつも俺に絡みついていて、酷く怖い。

……そう言えば…コイツも…

……いーや…これ以上考えんのはやめだ。