小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!

渡琉兎

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1巻

1-1

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  ◆◇◆◇第一章:リドル・ブリード◇◆◇◆

「……リ、リドル・ブリードが授かったスキルは……こ、小型オンリーテイム、です」

 神父はとても言いにくそうに、俺が授かったスキル名を口にした。

「な、なんだとおおおおっ! 貴様、それは本当なのか!」
「ほ、本当です! 神にちかいまして、うそではございません!」

 神父につかみ掛かったのは俺の父親であり、ブリード家当主でもあるビルズ・ブリードだ。
 父さんは神父の答えを聞いた直後、彼の胸ぐらを掴んでいた手を離すと、鋭い視線をこちらに向ける。

「……小型オンリーなど、全く使えんではないか!」

 父さんはそうてると、そのまま教会を出ていってしまった。

「……はぁ。俺、これからどうなるんだ?」

 き込む神父と共に取り残された俺は、そんなことを考えてしまうのだった。

 ◆◇◆◇

 この世界では、一〇歳になると誰もが神から『スキル』と呼ばれる特定の能力を授かる。
 そんな世界で俺、リドル・ブリードは、貴族家であるブリード家の嫡男ちゃくなんとして生まれた。
 ブリード家はテイマーの一族であり、一族の者が授かるスキルは、テイム系のものがほとんどだ。
 テイムとは、本来なら人間の天敵てんてきとなっている魔獣まじゅう従魔じゅうまとして使役し、自由自在にあやつることで、ブリード家はテイムスキル一つで成り上がった貴族家でもある。
 この世界では授かったスキルをかして生活することが当然とされており、他人の持つスキルはなんであれ尊重そんちょうするべきだと言われていた……はずなのだが、時間の流れが人間の考え方を変えてしまった。
 他人の授かったスキルを尊重するという考え方は過去のものとなり、今ではスキルの有用さで人の価値の全てを判断する者が大多数になっている。
 テイム系のスキルも例外ではなく、大型の魔獣をテイムできる者がよしとされており、小型の魔獣をテイムするのは悪だと断言までされる時代になってしまった。
 それは大型魔獣は力が強く有用で、小型魔獣は弱く使い物にならない、という思想が時代を積み重ねるにつれて人々にり込まれていったからである。
 だからこそ父さんは、小型オンリーテイムという、小型魔獣しかテイムできない俺のスキルを聞いて苛立いらだち、神父に掴み掛かったのだ。
 ……まあ、これが弱いスキルを授かった俺を心配しての行動ならうれしかったんだけど、そうじゃないんだよなぁ。

「我がブリード家に小型オンリーだと? ふざけるな!」

 家に帰ってきた俺が最初に見たのは、れに荒れている父さんの姿だった。
 そう、父さんは俺のために怒っていたのではなく、ブリード家に汚点おてんが生まれたことを怒っていたのだ。

「貴様が、あんな役立たずな小型の魔獣を連れてくるなどするから、こんなことになったのだ!」

 そう言い放った父さんは、リビングを荒らすだけ荒らしたあと、そのまま自室へ引っ込んでしまった。

「……あいつらは、役立たずじゃない」

 今の俺には誰もいなくなったリビングでそうつぶやくことしかできず、仕方なく自室へ戻っていく。

「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「ただいま。レオ、ルナ」

 出迎えてくれたのは、スキルを授かる前から一緒に暮らしていた小型魔獣のレオとルナである。
 レオは犬にそっくりな魔獣で、あざやかな青い毛並みが特徴的だ。とても甘えん坊かつやんちゃな男の子である。
 ルナは猫にそっくりな魔獣で、燃えるような赤い毛並みが特徴的で、性格は花を愛するきれい好き、自由奔放じゆうほんぽうな女の子だ。

「本当にお前たちは可愛いな~。前の世界にいたレオとルナも、同じくらい可愛かったんだぞ~」

 俺が「犬」やら「猫」やら、さらに言えば「この世界」や「前の世界」と表現しているのには理由がある。

「お前たちだけが、俺の心の支えだよ。異世界に転生とか、本当に大変だもんな」

 そう、俺はこの世界に転生した、もと日本人なのだ。
 もとは六井吾郎むついごろうという名前でサラリーマンをしていたのだが、残業中に突如視界が暗くなり、気づいた時にはリドル・ブリードに転生していた。
 ちなみにレオとルナという名前は、前世の俺が飼っていた犬と猫の名前である。

「こんなに可愛くて、やしを与えてくれるお前たちが、役立たずなわけないんだけどなー」
「キャウ~!」
「ニィ~!」

 俺はレオとルナの美しい毛並みを撫でながら、これからのことを考えていく。

「俺はきっと次期当主候補から外されるだろうし、どうせなら小型魔獣が愛される場所で、ゆっくりと暮らしたいもんだよなぁ」

 俺は『小型従魔は役立たず』という考え方に納得していない。
 だがブリード家の人々だけでなく、ここの領民たちも同じような思想を持っている。
 だからだろう、俺がレオとルナを散歩に連れ歩いていると、遠目からでも気づくくらいの、嫌悪感を含んだ視線がさってくるほどだ。
 ゆえに、小型従魔が愛されるような楽園があったなら、ブリード家を捨ててでも飛び出していきたいという考えを持っている。

「追放もののラノベとか結構あったけど、俺もそういう展開にならないかな。なあ、レオ、ルナ?」

 俺はそんな願いを口にしながらレオとルナを撫でまわし、二匹に癒やされながら、いい身の振り方が見つかるまで、しばらくはこのままの生活を維持しようと考えた。

 ◆◇◆◇

 俺が小型オンリーテイムを授かってから――二年後。
 弟のアヴィドがスキルを授かることになった。
 父さんは俺が小型オンリーテイムを授かって以降、アヴィドに多大な期待を寄せてきた。
 効果があるかは分からないが、アヴィドには小型の魔獣に触れさせず、常に父さんがテイムしている中型や大型の魔獣にだけ触れさせていたほどだ。
 俺も一緒に教会へ行きたかったが、当然というかなんというか、拒否されてしまった。
 さて、アヴィドはどんなスキルを授かることやら。

「――よくやったぞ、アヴィド!」
「――ありがとうございます、父上!」

 すると、窓の外から父さんとアヴィドの声が聞こえてきた。
 二人の喜びの声を聞くに、どうやらアヴィドは父さんが納得できるスキルを授かったようだ。
 屋敷の扉が開く音が聞こえてからしばらくして、俺の部屋の扉が乱暴に開かれた。

「……と、父さん? それに、アヴィドも? いったいどうしたんで――」
「リドルよ! 本日をもって貴様を次期当主候補から外す! そして、次男のアヴィドを次期当主として正式に任命する!」

 ……それを言うために、帰ってきて早々に部屋へ来たのかよ、この父と弟は。

「ごめんね、兄さん。でも、悪く思わないでほしいんだ。俺の授かったスキルが上級テイムだったんだから、仕方がないだろう?」

 父さんも父さんだけど、アヴィドもアヴィドだな。
 ニヤニヤしながらの発言からするに、絶対に悪いとは思っていないだろう。
 しかし、上級テイムときたか。
 テイム系のスキルの中でも、上級テイムは名前の通り上位に位置する優秀なスキルだ。
 テイムできる魔獣の数が多く、中型や大型の魔獣もテイムしやすいと言われている。
 さらに言えば、父さんが同じ上級テイムを授かっているので、それもまたアヴィドをたたえている理由の一つなのだろう。
 俺は内心面倒に思いながらも答える。

「もちろん従います、父さん」
「あぁ、それとだな。貴様はどうせこの屋敷に置いていても役に立たんだろう? 故に、心の広い私から、せめてもの情けをおくってやろうと思う」

 ……なんだろう。アヴィドがずっとニヤニヤしているし、嫌な予感しかしないんだが?

「貴様には我がブリード家の領地にある未開地部分を分け与える! そこへおもむき、自らの領地として開拓かいたくし、治めるのだ! がははははっ!」

 ……はい? 俺が領主となり、未開地の開拓をするだって?
 俺は突然の展開を前に、願っていた追放が起きているのだと気づくことができなかった。

 ◆◇◆◇

 ――俺が最初に出会ったのは、レオだった。
 六歳の頃、父さんと一緒に他領へ出掛けている途中、怪我けがをしたレオを見つけたのがきっかけだ。
 レオの見た目は完全に子犬だったので、魔獣だとは思わなかった。周りには誰もおらず、俺はどうしたらいいのか分からなかったけど、怪我をしているのは見過ごせなかった。
 俺はすぐに自分の服を少し破り、傷口に包帯代わりとして巻いた。
 これがレオにとってよかったのかどうかなんて分からない。ただ、何もしないという選択ができなかっただけだ。
 しかし、この行動がきっかけになったのか、レオは俺になつき、ついてきて離れなかった。
 当然、父さんは激怒した。
 こんな小型の魔獣に情けを掛けるなど何事だと言って、その場でレオを殺そうとしたくらいだ。
 あの時に俺が身をていしてレオを守っていなかったら、本当に殺していただろうな。
 俺は父さんをなんとかなだめ、レオを連れ帰った。
 そして一緒に暮らす許可をもらった。
 レオは当時から甘えん坊で、俺がベッドで寝ようとすると毎回のように潜り込んできていた。
 俺もレオの温もりを感じながらの方がぐっすり眠ることができたし、この頃から感じていた父さんに対する恐怖を忘れることもできた。
 今思えば、レオが俺を気遣ってくれていたのかもしれない。

 ◆◇◆◇

 それから一年後に、ルナと出会った。
 ルナはまさかのまさか、ブリード家の屋敷の庭へ迷い込んできたのだ。
 レオと暮らし始めてからというもの、俺はブリード家の使用人たちからもけむたがられる存在になっていた。
 この時も庭で遊んでいたらさささーっと使用人が近くからいなくなっており、周囲には俺とレオ以外誰もいなかった。
 だから、ルナが庭に迷い込んできたことに気づいたのは俺とレオだけだった。
 周囲に人もいなかったので、俺は普通にルナに接した。
 ルナは最初こそ庭の花壇かだんをジーっと見つめていたのだが、徐々にこちらの方に目を向けるようになり、気づけば俺やレオと一緒になって遊んでいた。
 するとどうだ、これまたルナも俺に懐いてきて、離れなくなったのである。
 その後の父さんの反応は、想像にかたくない。
 激怒である。
 俺はこの時も懸命にルナをかばい、結果、ルナとも一緒に暮らすようになった。
 ちなみにそれからは花が好きなルナのために、部屋に花を飾るようになり、気づけば俺も花好きになっていた。
 ブリード家を追放されてからも花との触れ合いは大事にしたいと思う。

 ◆◇◆◇

 これが、俺とレオやルナとの出会いだ。
 父さんに激怒されたとはいえ、俺はレオとルナと出会ったことに後悔はなかった。
 こんなにも可愛い二匹のあるじになれたことを誇りにすら思っている。
 だからだろう、小型魔獣をないがしろにするこの領地から追放されると言われ、そのことを自覚できた時は、心の底から喜んだのだった。

 ◆◇◆◇

 そして今――俺はブリード家を飛び出そうと……もとい、追放されようとしている。
 向かう先は俺が分け与えられた、俺の領地なのだが、そこは完全なる未開地らしい。
 未開地……いったいどんなところなんだろうか。
 森なのか、荒野なのか、はたまた山なのか。
 情報を得ようにも、家の者は俺の話を誰も聞いてはくれない。
 正直、不安はある。だけれどそれ以上に期待の方が大きい。

「俺の自由にできる領地だなんて、ワクワクするよな! レオ、ルナ!」
「ガウ!」
「ミー!」

 俺の足元にはレオとルナが左右に並び立っている。
 ……うん、最高の癒しだ。二匹がいるだけで、俺は頑張れるな!

「それじゃあ、行こう!」


 見送りは誰もいない。
 だが、俺はそれでいいと思っている。
 なんせ追放されるということは、ブリードという家とは無関係の人間になるんだからな。
 小型魔獣だって、役に立つんだ。それを俺は、自分の領地で証明してみせる!


 ◆◇◆◇第二章:小型オンリーテイマー◇◆◇◆

 ……さて、周りからの視線が痛いなぁ~。
 散歩の時にも感じていた嫌悪けんお侮辱ぶじょくの視線を、今はよりはっきりと感じてしまう。
 もしかすると、俺がブリード家を追放されたことがすでに知れ渡っているのかもしれない。
 となるとそれを広めたのは、おそらくだが父さんだろう。
 まあ、こうなることは予想していたから俺は我慢できるけど、レオとルナには申し訳ない。

乗合馬車のりあいばしゃがあるところまで我慢な。レオ、ルナ」
「……ガゥ」
「……ミィ」

 二匹に声を掛けながらしばらく街の中を歩き続け、俺はようやく乗合馬車の停留所ていりゅうじょに到着した。

「すみませーん」
「はいはい、いらっしゃいませ! 本日はどちらまで……ぷっ」

 おいおい、客の顔を見て「ぷっ」はないだろうよ。

「聞きましたよ。あんた、北の未開地に飛ばされたんですってね」

 ニヤニヤしながらそう口にした乗合馬車の管理人に、俺は営業スマイルを貼り付けながら問い掛ける。

「そうなんですよ。なので北に行く乗合馬車を探しているんです」
「あるにはあるんですがねぇ……人が集まらんことには、馬車は出せないんですよ」

 この街から北には小さな村が点々と存在している。
 それらの村からこっちへ来る人はいるが、その逆、街から村へ向かう者は多くはなかった。
 村から来る人のほとんどは出稼ぎ目的で、そのまま街に移り住む者が多いからだ。

「人が集まれば出せるんですがねぇ、こっちも商売なもんでねぇ」

 ……こいつ、俺のことをいじって楽しんでやがるな。
 しかし、乗合馬車が出ないとなると正直、マズい。
 北の領地まで結構な距離があり、徒歩だとおそらくだが一〇日くらいは掛かるだろう。 
 それだけの物資を持って徒歩での移動なんて、自殺行為だ。

「おや? あなた、北に行きたいのですか?」

 そこへ一人の男性が現れ、俺に声を掛けてきた。

「そうなんですが、あなたは?」
「あぁ、失礼いたしました。私は流れの商人をしております、ルッツと申します。実は私も北の方へ行きたいと思っておりました」
「あぁん? あんた、本気で言っているのか?」

 管理人が面倒くさそうに商人の男性、ルッツさんへ問い掛けた。
 どうやらこの管理人、北への乗合馬車を出したくないみたいだな。

「もちろん、本気ですとも」
「だが、たったの二人じゃあ馬車は出せねぇぞ?」
「そうでしょうとも。ですが……こちら、受け取っていただけませんか?」

 ルッツさんが乗合馬車の男性に小声で話し掛けながら、小さな袋の中身を見せている。
 ……あれ、絶対にお金だよな。

「……いいんですかい?」
「……えぇ、もちろんです。馬車を出してくれれば、ですけどね?」

 ニコリと笑ったルッツさんから小袋を受け取った管理人は、その中身を数え終わると、満面の笑みを浮かべた。

「ありがとうございます! ではでは、御者ぎょしゃを呼んでまいりますので少々お待ちを! お前も代金さえ払えば乗ってもいいぞ!」

 管理人はそう言って俺に視線を向けた。
 俺は彼に運賃うんちんを支払うと、すぐにルッツさんへ声を掛ける。

「あの、ありがとうございました」
「いえいえ、私も北に行きたいと思っておりましたからね」

 ニコニコと笑ったままのルッツさんを見て、俺は疑問に思っていることを聞いてみる。

「あの、ルッツさん。俺はここから北にある未開地の領主に任命された、リドル・ブリードです」
「なんと、あなたがうわさのリドル様でしたか」
「ここから北はかなりの田舎で、正直、商人のあなたが行って、儲けられそうなものはないと思います。それでも行かれるんですか?」

 俺にとっては乗合馬車が出てくれるのでありがたいことだが、ルッツさんに損はしてほしくない。
 それにルッツさんのおかげで馬車が出るのだから、北の村について、俺が知っていることは伝えておいた方がいいだろう。
 しかし、ルッツさんは微笑みながら答える。

「もちろん、行きますよ。ここから北の方角を、私のスキルが示していますからね」
「……スキルが?」
「お待たせいたしました! ささ、出発いたしますよ!」

 ここで管理人が、少しやせこけた男性と共に戻ってきた。
 やせこけた男性は御者台に座り、俺とレオとルナ、ルッツさんは荷台へ乗り込む。

「それではいってらっしゃいませ!」

 右手にお金の入った小袋を握ったままの管理人に見送られ、俺はようやく未開地へと出発することができた。


 出発はできた乗合馬車だが、本来であれば最低でも五人は客がいないと出すことはできないとされている。
 ルッツさんはどれだけのお金を乗合馬車の管理人に渡したのだろうか。
 俺は気になって、再度ルッツさんに尋ねる。

「あの、何度も聞いてしまって失礼かもしれないんですが、本当に北へ行かれるのですか?」
「もちろん。だから乗合馬車に乗っているんですよ」

 それなりのお金を渡してまで北に行きたいだなんて、いったい何があるというのだろうか。
 首を傾げていると、ルッツさんが続ける。

「私のスキル、放浪ほうろうみちびき、と言うんですがね? これが北を目指せと私にささやいているのですよ」
「放浪の導き?」

 スキルって、なんかいろいろとあるんだな。
 俺はブリード家にいたから、テイム系以外のスキルをあまり知らないのだ。まぁテイム系のスキルについても父さんはほとんど教えてくれなかったけど。
 それはともかく、テイム系のスキル以外だと、前世のイメージでは、剣や魔法とか、あとは職人系のスキルなんかはありそうだが。
 ただ……なんていうか、ルッツさんのはスキル名から能力が想像し難いな。
 すると、ルッツさんが俺の顔を見て笑う。

「あはは! まあ、そんな顔にもなってしまいますよね」
「え? あ、すみません! 変な顔になってましたか?」
「私のスキルについて考えていらっしゃったと思いますが、難しそうな顔になっていたもので」

 うぅぅ、マジで失礼な態度を取っちゃったな。

「お気になさらず。私のスキルを簡単に説明しますと、スキルが示した場所へ向かうといいことが起きやすくなる、というものなのです」
「起きやすくなるって、確定じゃないんですか?」
「えぇ。まあ、世の中に絶対はあり得ない、ということだと思います」

 そんな曖昧なスキルでいいのかと思ってしまったが、絶対はないというのは納得できる話だ。

「スキルの示した場所に行くべきか、行かないべきか。それは私の選択次第なのですが、今回は行くべきだと判断しただけのことです」
「どうしてその判断に至ったんですか?」
「ん~……そこはまあ、商人としてのかん、ですかね」

 ニコリと笑いながら「勘」と言われてしまっては、これ以上深く聞いても仕方ないと思い、話題を変えることにした。

「ルッツさんのスキルばかり聞いては申し訳ないので、俺のも教えますね。とはいっても、落胆らくたんされるだけかもしれませんが」
「そんなことはありませんよ。噂には聞いています、小型オンリーテイム、ですよね?」

 俺の噂って、どんなものが流れているんだろうか。
 まあ、絶対にいい噂じゃないことは分かっているんだけど。
 俺は内心ため息をきながら頷く。

「そうです。ここにいるレオとルナは、俺の従魔なんですよ」
「ガウ!」
「ミー!」
「だと思いました。とても可愛らしい従魔ではないですか」

 ルッツさんはそう口にすると、レオとルナを優しく撫でてくれた。

「ルッツさんは、小型の従魔が役に立たないとは思わないんですか?」
「役に立つか、立たないかは、その時々で変わることだと思っています」
「その時々で?」

 それはそうなのだが、この世界でそういう風に考える人は珍しいと思ってしまう。

「はい。大きな荷物を運びたい時は大型の従魔が必要でしょうけど、小さな隙間すきまに入りたい時などは、小さな従魔でないと無理でしょう?」
「それはまあ、そうですね」
「なので、小型だから役に立たないとは、どうしても思えないのです」

 ルッツさんの考え方は、やはりこの世界では珍しいのだろう。
 その証拠に、御者席の方から声が聞こえてきた。


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