小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!

渡琉兎

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1巻

1-2

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「……んなわけあるか」
「おや? あなたは小型従魔が役に立たないと思っているのですか?」
「当然だ。小型従魔なんて、なんの役にも立ちやしねぇ。今だって俺は、魔獣に襲われないかって冷や冷やしてるんだぞ?」

 そういえば、ほとんどの場合、乗合馬車には護衛をつける。
 その護衛は人の場合もあれば、従魔の場合だってある。
 しかし、俺たちの乗合馬車には誰もいやしない。
 馬車を引いているのも普通の馬だし……あれ? これってもしかして、あの管理人にぼったくられたか?

「まあまあ、いいではないですか。道中の村で護衛を雇えば――」
『ブルオオオオッ!』

 ルッツさんが答えていると、前方から何かの鳴き声が聞こえてきた。

「ひいいいいっ! くそっ、やっぱり出やがった! 魔獣だ、くそったれが!」
「おやおや、困りましたね」

 大慌ての御者とは違い、ルッツさんは何故か落ち着いた口調で話している。
 ってかさ、この状況、俺もヤバくないか? いや、ヤバいよね!

「ど、どどどど、どうしましょう、ルッツさん!?」
「どうしましょうと言われましても……まあ、どうにかなるんじゃないですか?」
「どうにかなるわけないだろうが! くそっ、俺は逃げるぞ! 逃げるからな!」
「あぁっ! ちょっと!?」

 御者の男性は御者台から飛び降りると、進んできた道を一目散に走り去ってしまった。

「おやおや、困りましたねぇ」
「本当に困っているんですか、ルッツさん!?」

 俺はルッツさんの両肩に手を置いて前後へ振り回しながら問い掛ける。

『ブルオオオオッ!』
「き、来たああああっ!?」

 魔獣の鳴き声が段々と近づいてきて、ついには視界に捉えられるほどの距離まで迫ってきていた。
 いのししに似た巨大な魔獣が、こちらに突っ込んでくる!

「ガルアッ!」
「シャアッ!」
「えっ? あ、おい! レオ! ルナ!」

 すると突然、レオとルナが荷台を飛び出すと、馬車の前におどた。
 そこは魔獣が突っ込んでくるだろう場所でもある。

「危ないって! レオ! ルナ!」
「なんとまあ、主思いの従魔ですね」
「そんな冷静に言っている場合ですか!」

 マズい、マズいマズい、マジでマズいって! このままじゃ、レオとルナが殺されてしまう!

『ブルオオオオッ!』

 興奮した鳴き声を響かせながら、魔獣が一直線に突っ込んでくる。
 俺は荷台から飛び降り、二匹に駆け寄る。

「逃げろ! レオ! ルナ!」
「ガルアアアアッ!」
「シャアアアアッ!」

 ――キンッ!

「うわああああ……あ、あれ?」

 魔獣がレオとルナにぶつかると思った瞬間、二匹の姿が一瞬ぶれたように見えた。
 そして直後、一直線に突っ込んできていた魔獣の動きがゆっくりになり、馬車の目の前で横に倒れてしまったではないか。

「……え? いったい、何が起きたんだ?」
「ガウガウ!」
「ミーミー!」

 魔獣のもとまで近づいた俺の呟きに反応するように、レオとルナが嬉しそうに鳴いた。

「……まさか、お前たちがやったのか?」
「ガウ!」
「ミー!」

 するとルッツさんが近づいてきて、感心したように口を開く。

「なんとまあ! 頼りになる従魔ではないですか!」
「…………えっと、マジか、これ?」

 完全に予想外な出来事に、俺はしばらく頭の中が真っ白になってしまっていた。
 だがよく考えてみれば、レオやルナと一緒に狩りに行ったことはない。
 見た目が可愛いから勘違いしていたけど、レオもルナも実は強かった……ってことか?

「……リドル様?」
「え? あ、はい!」

 俺が思考を巡らせていると、そこへルッツさんが声を掛けてきた。

「この魔獣の死体、いかがなさいますか?」
「魔獣ですか? ……いかがするも何も、処分するしか――」
「でしたら私にゆずっていただけないでしょうか!」
「どわあっ!?」

 ルッツさんが急に大声を出したので、俺は驚きの声を上げてしまった。

「おっと、失礼いたしました」
「……い、いえ」
「実は私、流れの商人をするにあたり、『魔法鞄まほうかばん』を所持しておりまして」
「魔法鞄ですか?」

 聞いたことがある。
 なんでも、見た目以上にものが入り、しかも中は時間が流れない、文字通り魔法の鞄なんだとか。
 確か、ブリード家にも一つだけあったと思うけど……あれ、めちゃくちゃ高価なものじゃなかったっけ?
 俺は不思議に思いながらルッツさんに尋ねる。

「構いませんけど、これが入るんですか?」
「はい!」
「結構大きいですよ?」
「問題ありません!」
「……そ、そういうことでしたら、どうぞ」
「ありがとうございます!!」

 ……め、目と鼻の先で喜ばないでくれると、ありがたいかな、うん。

「それではこちらが、お譲りいただくにあたっての料金になります」

 するとルッツさんはいきなり、じゃらじゃらと音が鳴る小袋を取り出して俺に押し付けてきた。

「えぇっ!? いや、いらないですって!!」
「何を仰いますか。商人として、適正価格で購入するのが当然です」
「こ、この魔獣にそれだけの価値があるんですか?」
「あります! それに私は命を助けていただいた身でもありますし、少し色を付けさせてもらっていますけどね」

 う、うーん。これ、本当にもらってしまっていいんだろうか。
 とはいえ、先立つものがあると助かるのも事実だし……。

「……そ、それじゃあ、ありがたくいただきます」
「そうしてくれると、私としても助かります」

 満面の笑みを浮かべながらそう口にしたルッツさんは、腰にげていた一〇センチほどの小さな鞄を開き、鞄の口を魔獣へ近づけた。すると――

「えぇっ!? ……い、一瞬で、消えた? もしかして、鞄の中に入ったんですか?」

 俺の身長の倍以上の大きさはあった魔獣が、一瞬にして消えてしまったのだ。

「その通りです。先ほどの魔獣はホーンブルと言いまして、毛皮もそこそこの値段で売れるのですが、それ以上にお肉がとても美味なのです。なので、確保できる時には可能な限り確保させていただきたいと思っております」

 ホーンブル……確か、ブリードの屋敷でも出されたことはあったっけ。
 まあ、俺が食べたのはレオと暮らす以前のことだったから、六年以上前の話になるけど。

「それにしても……レオにルナでしたか? この子たちはとても強いのですね! 小型だからとあなどってはいけない。やはりそうではないですか!」
「そうだ! レオにルナ、お前たちって、こんなに強かったんだな」

 ルッツさんの言葉で俺はハッとなり、すぐにレオとルナへ振り返る。
 二匹は既に俺の足元へやってきており、顔をこすりつけてくれていた。

「……なんだよ。こんなに可愛くて強いとか、インチキじゃないか?」
「ガウ?」
「ミー?」
「……いいや、そうだよな。なんてったって、俺の従魔だもんな!」

 レオとルナの主である俺が、二匹を信じてやらないでどうするんだ。
 そうさ。二匹は可愛くて、強くて、最強の従魔なんだ!

「……リドル様は、レオとルナが何を話しているのかを理解されているのですか?」

 するとここで、ルッツさんから当たり前のことを質問された。

「そうですよ?」
「……はは。これは驚きましたね」
「……え? どういうことですか? テイマーなら当然、従魔の話を理解できますよね?」

 俺はそれが当たり前だと思っていたのだが、もしかしてそうじゃないのか?
 でも、父さんは確かに従魔とやり取りをしていたように記憶しているんだけど。
 俺が考えていると、ルッツさんが説明してくれる。

「テイマーにも色々ありまして、従魔の言葉を理解できる者、できない者がおります。とはいえ、できる者でも従魔の気持ちがなんとなく分かる程度が多いと、私は伺っております」
「なんとなくって、それじゃあ従魔たちの意思をきちんと理解できないじゃないですか」
「そうなのです。ですから、明確に意思の疎通そつうができる者は重宝されるのです」

 そういうことであれば、上級テイムを授かっている父さんとアヴィドは、きちんと従魔と話ができて当然か。小型オンリーテイムの俺ですらできるんだからな。

「やっぱり上級テイムは貴重なスキル、ということか……」
「それはまあ、そうなのですが……いえ、今のリドル様にはどうでもいいことでしたね」

 ん? それはいったいどういうことだろう?

「それより、これなら護衛役はレオとルナで問題はなさそうですね」

 ここでルッツさんは話題を変えて、これからのことを口にした。

「確かにそうですね。とはいえ……御者の人、逃げちゃったんだよなぁ」

 俺は周囲を見渡してみたが、御者の男性の姿は影も形もなくなっている。
 きちんと育てられていたのか、御者の男性とは違い、馬は逃げずにその場に残ってくれている。
 まあ、手綱たづなで馬車と繋がっているから、逃げるに逃げられなかっただけかもしれないけど、なんであれ馬がいるのはありがたい。
 だけど、俺は馬車を操ったことなどなく、どうしたらいいのかさっぱり分からない。

「ふむ……でしたら、私が御者を務めましょうかね」
「えぇっ!? ルッツさんって、馬車も操れるんですか?」
「過去に数回だけですが、操ったことがあるのですよ」

 すごいな、ルッツさん。この人がいなかったら、俺はここで詰んでいただろう。
 俺も負けてられないな。

「護衛は任せてください! それに、レオとルナが狩った魔獣も、お譲りしますので!」
「適正価格で買い取り、ですからね?」
「あー……それじゃあ、御者をしていただく分の金額は引いてくださいね?」
「ふふ、そうきましたか。それでは、それでお願いいたします」

 こうして俺たちは、二人と二匹になってしまいながらも旅路たびじを進んでいった。

 ◆◇◆◇

 北へ進み始めてから三日が経過した。
 その間、小さな村へ何度か立ち寄り、必要な物資を買い足した。
 ルッツさんは道中で狩った魔獣を売ったり、解体を依頼したりと、商人としての仕事にもいそしんでいた。

「そろそろ北の未開地、リドル様の領地に到着いたしますよ」

 荷台でレオとルナを撫でまわしていると、御者台からルッツさんの声が聞こえてきた。
 俺は荷台の窓を開いて前を向くと、そこに広がっていたのは――

「……すごい。なんて広大で、緑豊かな森なんだ!」

 未開地と聞くだけだと、何もない荒野こうやのような、誰も生活できないような場所なのかと勝手に想像していたのだが、そうではなかった。
 青々とした森がどこまでも広がっており、木々のおかげか、空気がとても澄んでいるように感じられる。
 どうしてここが未開地のままなのか、今の俺には正直なところ分からない。
 だけど、ここが俺の領地になるのだというのであれば、少しだけ……本当にすこーしだけ、父さんに感謝してもいいかもしれない。

「リドル様はどうしてここが未開地なのかはご存じですか?」
「いいや、分かりません。ルッツさんは知っているんですか?」

 今まさに俺が思っていた疑問を口にしてきたので、すぐに問い返してみた。

「こちらの森は別名、もりと呼ばれておりましてね。他の場所に比べて強い魔獣が生息していると言われているのですよ」
「……強い魔獣、ですか?」

 それを聞くと、確かに未開地であるのは納得できる。
 おそらく、父さんが使役している従魔や、ブリード家の兵士たちでは歯が立たないから、開拓も諦めているということだろう。
 ……そんな場所に俺を送り出したのかよ、あの父さんは!

「それと領地についてですが、もしも分け与えた相手がどんな事情があれ亡くなってしまった場合、その領地はもとの持ち主へ自動的に返還されるようですよ」
「……それってつまり、父さんは俺がここで死ぬと思っている、ってことですか?」
「それは分かりませんが、そういう法律がある、ということは覚えておいて損はないかと」

 ……あんの野郎! 何が父さんだ! あんな奴、クソ親父で十分だな、クソ親父め!

「きゃああああああああっ!!」

 すると突然、森の奥から女性の悲鳴が聞こえてきた。

「行きましょう、ルッツさん!」
「い、行くのですか!?」

 俺がルッツさんに声を掛けると、彼は少しばかり驚いた声を上げた。

「もちろんです!」
「わ、分かりました! 急ぎますので、舌をまないでくださいね!」

 そう宣言したルッツさんが馬を走らせると、荷台が大きく上下にれた。
 俺は荷台の壁に手を当てながら必死に耐えつつ、窓から前方を見据みすえる。
 馬車はそのまま森へと入っていくと、しばらくして再び悲鳴が聞こえてきた。

「こ、来ないで! いや、いやああああっ!!」
「レオ! ルナ!」
「ガルアッ!」
「シャアアッ!」

 俺が声を掛けると、レオとルナは迷うことなく窓から飛び出し、声のした方へ駆けていく。

「リドル様! これ以上は馬車で進むことができません!」
「俺たちも降りていきましょう!」
「わ、分かりました!」

 ルッツさんには申し訳ないが、レオとルナがこの場にいないのであれば、二匹が向かった方へ俺たちも進んだ方が間違いなく安全だ。
 ただ、魔の森の魔獣は強い個体が多いと、先ほどルッツさんは言っていた。
 レオとルナが予想外に強かったとはいえ、ここの魔獣に通用するのか……俺は二匹を送り出したものの、今になって不安になってきてしまう。
 二匹の無事を祈りながら走っていくと、茂みの奥から何かが近づいてきた。そして――

「うわあっ!?」
「きゃあっ!?」

 悲鳴の主だろう、茶髪の女の子とぶつかってしまった。
 お互いに尻もちをついてしまい、そこへルッツさんが追いついた。

「大丈夫ですか、リドル様?」
「お、俺は大丈夫です。あの、君は大丈夫?」

 ルッツさんが手を差し出してくれたので、俺はすぐに立ち上がる。
 そのまま女の子の方へ駆け寄った。

「あ、あの! 助けてください! ま、魔獣が!」
「えっと、もう俺の従魔が――」
「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「きゃあっ!」

 俺が女性に声を掛けていると、女性が飛び出してきた方向からレオとルナが嬉しそうな鳴き声を上げながらやってきた。

「レオとルナも無事でよかった。魔獣はどうなった? 追い払ったのか?」

 レオとルナに問い掛けると、二匹はお互いに顔を見合わせたあと、勢いよく首を縦に振った。

「え? 本当に? マジで?」

 レオとルナからの報告を受けて、俺は思わずそう口にしてしまった。
 すると、二匹の言葉が分からないルッツさんが尋ねてくる。

「……ど、どうしたのですか、リドル様?」
「えっとー……この女の子を襲っていた魔獣ですが、この子たちが倒してくれたみたいです」
「え? …………ええええぇぇっ!?」

 いや、うん、そうなるよね。
 魔の森の魔獣だもの、きっとものすごく強い魔獣だったんだと思うんだ。

「もしかしてお前たちって、俺が思っていた以上に、ものすごーく強かったりするのか?」
「いやはや、もしかしなくてもその通りですよ、リドル様!」

 何故かルッツさんが興奮している。
 ……あぁ、いや、なるほど、そういうことか。
 ルッツさんの気持ちを理解した俺は、レオとルナを見つめる。

「なあ、お前たちが倒した魔獣のところへ案内してくれるか?」
「さあ、早速向かいましょう!」

 ルッツさんは二匹と一緒に森の奥に駆けだしていく。
 魔獣をゲットできるチャンスとあって喜んでいるのだろう。さすが商人だ。
 奥に進んでいったレオとルナ、ルッツさんを横目に、俺は目の前に座り込む女の子に声を掛ける。

「立てますか?」
「……」
「……えっと、大丈夫ですか?」
「はっ! す、すみません、私ったら!」

 どうやら驚きすぎて、目を開けたまま呆然ぼうぜんとしていたようだ。

「いえ、お気になさらず」

 俺が手を差し出すと、女性は少しだけ躊躇ためらったものの、手を取ってくれた。
 そのままグッと引っ張って立たせると、彼女が俺よりも少しだけ背が低いのだと分かる。

「俺はリドル・ブリードと言います。もしよろしければ、お名前を伺ってもよろしいですか?」

 日本のサラリーマンとして鍛え上げた言葉遣いを駆使くしして、可能な限り丁寧ていねいで、悪感情を抱かせないような話し方で自己紹介した。

「わ、私は、ティナって言います」
「ありがとうございます。それじゃあティナさん、俺たちもあっちへ行きましょう」

 ティナさんの手を取ったままそう告げると、彼女はビクッと体を震わせ、その場で立ち止まってしまう。
 ……しまったな。魔獣に襲われたばかりで、またその場所に戻ろうなんて、怖いに決まっているじゃないか。

「すみません、ティナさん。でも、俺の従魔が魔獣を倒したと言ってくれました。連れのルッツさんも向かってくれています。大丈夫、もう魔獣はいませんよ」
「……わ、分かりました」

 俺がそう説得すると、ティナさんも納得してくれたのか、歩き出してくれた。
 だけど、俺の手を取る左手には力が入っており、ついてきてくれてはいるけど、まだ怖いのだと実感させられる。

「大丈夫、大丈夫です」

 そんなティナさんに、俺は大丈夫だと何度も声を掛けながら歩いていき、時間を掛けて、ようやくレオとルナ、ルッツさんのもとへ辿り着いた。

「ガウガウ!」
「ミーミー!」
「すごいですよ、リドル様! デスベアーですよ、デスベアー!」

 俺の到着にいち早く気づいたレオとルナが嬉しそうに鳴き、ルッツさんも大興奮で声を上げた。
 しかし、ティナさんは信じられないといった様子で呟く。

「……本当に、倒してる?」
「だから言ったでしょう? 大丈夫だってね」

 俺はどこか誇らしげに答えた。
 まぁ彼女の気持ちも分かる。まさか小型の従魔が大型の魔獣を倒すなどとは夢にも思わなかったのだろう。
 俺だって、二匹から直接言われていなかったら、信じられなかったと思う。

「……うぅぅ、うああああぁぁん! ごわがっだよおおおおっ!!」

 緊張の糸が切れてしまったのだろう、ティナさんはその場に座り込むと、ぼろぼろと涙を流しながら泣き出してしまった。

「ガウ?」
「ミー?」

 すると、レオとルナがティナさんの方へと歩いていき、彼女の膝にポンと顔を乗せた。
 そして、そのままコテンと首を横に倒す仕草を見せる。
 ……くっ! 俺もそんな仕草、してもらったことがないぞ! 可愛いなぁ、可愛いじゃないか、レオもルナも!

「……ありがとう。うふふ、可愛いね」

 レオとルナの仕草は、泣きじゃくっていたティナさんを落ち着かせることに成功した。
 ここは森の中であり、まだまだ魔獣は多く生息しているだろう。
 大きな声で泣いていたら、魔獣が集まってくるかもしれない。
 そういう意味でも、二匹の行動は意味のあるものだろう。

「ぐすっ! ……あの、助けていただいて、本当にありがとうございました!」

 涙をぬぐいながら立ち上がったティナさんは、お礼を言いながら俺に向かって頭を下げた。

「通り掛かっただけで、当然のことをしただけです。それに倒してくれたのはレオとルナですし」
「あの、よろしければ、私が暮らす村まで来ていただけませんか? お礼もしたいので!」

 思いがけないティナさんの言葉。だが俺としては領地民と出会えるチャンスである。
 ルッツさんの方へ視線を向けると、彼も笑顔で頷いてくれた。

「分かりました。案内していただけますか?」
「はい!」

 元気になったティナさんは、笑顔で返事をすると立ち上がる。レオとルナも彼女の左右に立っていた。
 ……俺もあとで、お膝で首コテンをやってもらうからな!

 俺たちは一度馬車の方へと戻り、ルッツさんが馬を馬車から外すと、手綱を握って歩き出す。
 ティナさんを助けてから三〇分ほど森の奥へ進んでいくと、突如としてひらけた場所に到着した。
 そこには木造の建物がいくつも並んでおり、ここがティナさんの暮らしている村なのだと一目で分かった。

「ティナ!」
「お父さん!」

 村の入り口が見えてくると、茶髪の男性がティナさんの名前を呼んだ。その隣には同じく茶髪の女性の姿もある。
 ティナさんは二人のもとへ駆け出していき、女性に抱き着いた。

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