小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!

渡琉兎

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2巻

2-3

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「「はーい!」」

 すぐに二人も手を貸し、中型魔獣のワイルドディアがものの数分で毛皮、お肉、きばつめ、他にも様々な素材に切り分けられた。

「よし、こんなものか」
「リディアルも近いし、全部持って帰ろうか!」
「そうだな。血の臭いを嗅ぎつけて他の魔獣が来るかもしれないし、さっさと戻ろうぜ!」

 ガズンさんが満足気に頷きながら大きい素材を背負うと、オルフェンさんが生肉などの素材を袋に入れて持ち、ミシャさんが残りの細かい素材を持った。
 その様子を見て、俺は尋ねる。

「『魔法鞄まほうかばん』は持っていないんですか?」

 魔法鞄とは、見た目以上にものが入り、しかも中は時間が流れない便利な魔導具である。
 しかし、俺の問いにガズンさんは苦笑した。

「魔法鞄はとても貴重な魔導具だからな。俺達は持っていない。リディアルに来るまではルッツ様が持っているものを借りることもあったが、普段はこんな感じで直接運んでいるんだ」
「……そうなんですね」

 ガズンさんの話を聞いて、俺はアニータさんの作った魔法鞄を思い浮かべてしまう。
 彼女の魔法鞄は中の時間経過は止まらないが、それでも大量の荷物を収納することはできる。
 それだけでも冒険者にとっては役に立つ魔導具であることに変わりはない。
 アニータさんからは魔導具の素材をお願いされていたし、その対価として魔法鞄をお願いするのはありなのではないだろうか。
 ガズンさんたちとは出会ってまだ一日も経っていないけど、話をしていて悪い印象は全くないし、ルッツさんが護衛に選んだ人たちでもある。信用できる可能性は高そうだ。
 そんなことを考えながら、俺たちはリディアルに戻ろうとした――その時だった。

『――アアアアアアアアァァァァアアァァッ‼』

 突如、魔の森の奥から耳をつんざくような、甲高い鳴き声が響いてきた。

「ハーピィだ!」
「面倒な魔獣が出てきたなぁ」
「お任せあれ! 空を飛ぶ魔獣でも、私の魔法があれば簡単に……倒せちゃう……え?」

 ガズンさんの言葉にオルフェンさんが面倒くさそうに答え、続けてミシャさんが自信満々に話し始めたのだが、段々と声が尻すぼみになっていく。
 どうしたのだろうと彼女の視線の先を見ると、その理由がなんとなく分かってしまった。

「……ハーピィの、群れ?」
「な、なななな、何匹いるのよおおおお⁉」

 パッと見で五匹か……いや、六匹はいるな。
 どうやらこの数を相手にするには、ミシャさんでも骨が折れるということだろう。

「下りてきた奴は俺とオルフェンで相手をする! ミシャは魔法で上空に待機している奴を狙ってくれ!」
「くそっ、肉の大半は捨てなきゃいけないか」
「もー! せっかく解体までしたのにー!」

 戦うには身軽にしなければならない。毛皮や牙や爪なら問題ないが、オルフェンさんが持っている生肉は、戦闘中にどうしても砂埃すなぼこりを被ることになるだろう。
 地面に転がってしまったら、それこそ捨てなければならなくなるはずだ。
 ミシャさんも言っていたが、せっかく解体までしたのだから、無駄にさせたくはない。

「……ここは、俺たちが戦います!」
「ガルアッ!」
「シャアアッ!」

 というわけで、俺はレオとルナにこの場を任せることにした。

「危険だ! ハーピィは一匹だけならBランクだが、群れとなれば強さがAランクに上がる魔獣なのだぞ!」
「ルッツさんからは聞いているが、それでも小型魔獣は下がっていてくれよな!」
「そうだよ! これでも私たち、Aランク冒険者なんだからね!」

 ……なるほど。頭の中では理解していても、実際に小型魔獣が下に見られてしまうのは、正直イラッとしてしまうな。

「……やるぞ。レオ、ルナ!」
「ガルアアアアッ‼」

 俺が号令ごうれいを掛けると、最初にレオが氷魔法を発動させる。


 するとレオの前方から広範囲に冷気が広がっていく。

「な、なんだと⁉」
「マジかよ⁉」
「氷の、階段⁉」

 ガズンさん、オルフェンさん、ミシャさんが順番に驚きの声を上げた。

「シャアアアアッ‼」

 続いてレオが作った氷の階段を、ルナが一気に駆け上がっていく。
 突然出来上がった氷の階段に驚いていたハーピィたちは、行動が一泊いっぱく遅れていた。
 ルナの鋭い爪がハーピィを切り裂き、二匹が地面へ落下していく。

「落ちた奴は俺がやろう!」

 そう申し出てくれたのは、ガズンさんだ。
 ガズンさんが持っていた素材は、地面に投げ出しても使えなくなるようなものはなく、大剣を抜いて即座に地面でのたうち回るハーピィに止めを刺してくれた。

「レオも行ってくれ!」

 俺の合図を受けたレオも階段を上っていき、ルナと一緒になってハーピィを地面へ落としていく。
 しかし、ハーピィもただやられているわけではない。
 氷の階段から離れた位置へ移動する。
 しかし、そこが射程範囲しゃていはんい外と思ったら大間違いだ。
 レオとルナは氷と炎を空中に作り出し、それを高速で撃ち出していく。

「嘘でしょ⁉ 私のより速いんだけど‼」

 撃ち出された氷と炎は、一秒と掛からずハーピィに命中した。
 苦悶の声を漏らしながら落ちていく個体もいれば、絶命して地面に叩きつけられる個体もいる。
 数の優位を完全に失った残りのハーピィたちは、そそくさと魔の森の奥へ逃げ帰ってしまった。

「ガウガウ!」
「ミーミー!」

 脅威きょういが去ったと分かったレオとルナは、俺の足元へやってくると、その顔をこすりつけてきた。

「よしよし。よくやったな」

 レオとルナの戦果に大満足の俺は、二匹を両手で抱き上げると、そのままガズンさんたちへ視線を向けた。

「どうですか、俺の従魔たちは? 小型だからって甘く見たら、痛い目にいますよ?」

 小型だからと下に見られたことが嫌だったので、俺はあえてレオとルナを強調するように抱きながらそう口にした。

「……リドル殿。先ほどの発言は撤回する。本当にすまなかった」

 ガズンさんが申し訳なさそうにそう口にすると、丁寧に頭を下げてくれた。

「「ご、ごめんなさい‼」」

 続けてオルフェンさんとミシャさんも勢いよく頭を下げてくれたので、俺は満足したと同時に、やり過ぎたかなと思ってしまった。

「ありがとうございます。それと、すみませんでした。俺もちょっとやり過ぎました」

 謝罪を受け入れるのと同時に、俺も頭を下げたのだが、ガズンさんは首を横に振る。

「リドル殿は何も悪くない。俺たちがり固まった思考で、小型だからと下に見てしまったのだ」
「ルッツさんに聞いていたのになぁ。いや、マジで強かった! レオもルナもよ!」
「可愛くて強いとか、反則じゃない?」

 ……そうでしょうとも。レオとルナは可愛くて強い、全てにおいて最強の従魔なんですよ!

「それにリドル殿は、俺たちのためを思って前に出てくれたのだろう? 本当に感謝するよ」
「肉が無駄にならずに済んだぜ!」
「今日はみんなでお肉パーティだね!」

 人によっては、どれだけ小型従魔が活躍しても、運がよかったとか、魔獣が弱っていたからだとか、文句を言う人もいる。
 むしろ、そちらの方が多いかもしれない。
 しかしガズンさんたちは、目の前で起きたことをしっかりと受け止め、自分たちが間違っていたこと、そして感謝を口にすることができる人格者だった。
 ……本当に、ルッツさんは見る目があるな。
 そんなことを思っていると、ガズンさんたちが呟く。

「とはいえ、これ以上は荷物を持てないし、ハーピィに関しては燃やして処理するしかないか」
「羽はいい素材になるが、しゃーなしだ」
「それじゃあ燃やすねー、ファイア!」

 ガズンさんたちは既にワイルドディアの素材を手にしている。
 だから即座に燃やして処理するという答えに行きついたんだろうけど……使える部位が少ないということは、ゼロではないということだ。
 ……ルッツさんが見定めた人たちだからこそ、やっぱり魔法鞄のことをアニータさんにしっかりと相談するべきだと、燃えていくハーピィの死体を眺めながら考えてしまう。

「……それじゃあ、今度こそ戻りましょうか!」

 俺が最後にそう発し、みんなでリディアルへと戻っていった。


 リディアルに戻った俺たちは荷物も多くあったこともあり、そのままナイルさんの屋敷へ向かう。

「おかえり、リドル! 皆さんもおかえりなさい!」

 ここでもティナが出迎えてくれ、俺は笑顔で手を振り返す。

「ただいま、ティナ。ガズンさんたちのおかげで魔獣狩りがはかどったんだけど、ナイルさんは?」
「ちょっと待っててね!」

 駆け足で屋敷の中に向かったティナは、すぐにナイルさんを連れてきてくれたのだが、その後ろにはルッツさん、アグリコさん、さらにはアニータさんまでいた。

「おかえり、リドル君。魔獣狩り、捗ったんだって?」
「はい。荷物は全部ガズンさんたちが持ってくれています」

 俺がそう答えると、ガズンさんたちは荷物を持ち上げて戦果を見せてくれた。

「なんと! ワイルドディアではないですか!」
「明星の皆さん、そちらはどうなされるのですか!」

 ここでルッツさんとアグリコさんが声を上げたので、ガズンさんたちは二人とやり取りを始める。
 すると今度はアニータさんがそそくさと、俺のところに寄ってきた。

「それで? 私がお願いした、魔獣の素材は?」
「それについてなんですけど、一つ相談があるんです」
「相談? え、素材は?」
「ありませんよ。だって、魔獣を狩ったのは明星の皆さんですし、俺だけじゃ魔獣の素材を確保できませんからね」

 いや、普通に考えたら分かるでしょうよ。そんな愕然がくぜんとした表情されても困りますって。

「それで相談なんですが、アニータさんは魔法鞄を作れますよね? それを俺と、明星の皆さんに作っていただけませんか?」
「「「ま、魔法鞄を作れる⁉」」」

 俺の発言が耳に入ったのだろう、ガズンさんたちからも驚きの声が上がった。

「あぁ。そのことなのですが、そうなるだろうと思って、事前に私の方でアニータ様とは話をつけさせていただきました」

 続いて口を開いたルッツさんは、そう告げたあとに再びガズンさんたちに視線を向ける。

「ここまでの道中で遭遇そうぐうした魔獣の素材。これで私も儲けさせていただきましたので、アニータ様が作る魔法鞄の費用は私が負担したいと思います」

 どうやら俺が提案をする前に、ルッツさんが話をつけてくれていたようだ。
 なんと言うか、先見せんけんめいがすごいよな、ルッツさんは。
 再会してもう何度、ルッツさんのことをすごいと思ったことか。
 しかし、ガズンさん、オルフェンさん、ミシャさんと、大慌てで声を上げる。

「いや、ルッツ様! それはさすがにもらい過ぎです!」
「そうだぜ! 魔法鞄がどれだけ高価なのか、俺でも知ってるって!」
「ワイルドディアの素材を渡しても、まだまだ足りないはずだよね!」

 しかしルッツさんは首を横に振る。

「いいえ。ワイルドディアの素材は必要ありません。本当に稼がせていただいていますし、Aランクパーティなら魔獣を狩ることも多いでしょう。それなら、魔法鞄は必須ひっすではありませんか?」
「それはまあ、そうなのですが……」

 遠慮しているガズンさんに対して、ルッツさんは商人らしい笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「言っておきますが、これはほどこしではありませんよ? ここで明星の皆さんに恩を売っておけば、もっと稼げる気がするのですよね」

 その言葉を聞いて、俺はピンときた。

「もしかしてルッツさん、スキルがそう言っているんですか?」
「いいえ、違いますよ」

 違うんかい⁉

「単純に、私の商人としてのかんです」

 ……まあ、俺としてはガズンさんたちに魔法鞄を持ってもらいたいと思っているから、そっちの方がありがたいし、これ以上は何も言うまい。
 すると、改めてガズンさんが尋ねる。

「……本当によろしいのですか、ルッツ様?」
「もちろんです。そうすれば、私ももっと稼がせてもらえそうですしね」

 その言葉を聞き、ガズンさんはオルフェンさん、ミシャさんに目配せをしたあと、笑みを浮かべながら右手を差し出した。

「ありがとうございます、ルッツ様」
「ふふ。交渉こうしょう成立ですね」

 ガズンさんの手をルッツさんがにぎる。どうやら丸く収まったようだ。

「ちょっと、ちょっと! それじゃあリドル君に魔法鞄を渡していたら、私も魔獣の素材を確保できたってことよね! すぐに持ってくるから、ちょっと待っていてちょうだい!」

 するとここでアニータさんが早口でそう言ってきた。

「え? 作るじゃなくて、持ってくるんですか?」
「前にリドル君が言ってくれたじゃない。この村に返せるものがあるって。それが魔法鞄や簡易小屋なんだって。だから、作りやすい魔法鞄はちょこちょこ作っていたのよ」

 アニータさんは、俺の発言をきちんと覚えていてくれたんだな。

「すぐ持ってくるから! 本当に待っていてよね!」

 最後にそう告げたアニータさんは、駆け足でナイルさんの屋敷を飛び出すと、物の数分で二つの魔法鞄を手に戻ってきてくれた。

「どっちにする!」

 戻ってきて早々、アニータさんは魔法鞄二つをグイッと目の前に突き出してきた。
 一つ目はウエストポーチタイプの魔法鞄で、見た目はとても小さく、動くことの多い冒険者には打ってつけのサイズ。
 二つ目はショルダーバッグタイプの大きめの魔法鞄だ。

「ガズンさんたちから選んでいいですよ」

 とはいえ、決めるのは彼らだ。
 俺はどちらでも問題ないため、先に選んでもらうことにした。

「俺は腰に提げるタイプがいいと思うが、どうだ?」
「小回りもくし、いいんじゃねぇか?」
「私も賛成!」

 ガズンさんたちに迷いはないようで、すぐに決まった。

「それじゃあ俺が、肩から下げるタイプにします」
「リドル君には言ってあるけど、私の魔法鞄は研究中で時間経過はしちゃうから気をつけてね」
「だとしてもありがたい。本当に感謝するよ、アニータさん」

 アニータさんが注意事項を伝えると、ガズンさんは頷きながら感謝を口にした。

「というわけで! ……リドル君。次からは絶対に、魔獣の素材、よろしくね?」

 このタイミングでずいっと顔を寄せられ、俺は体を若干引きながら返事をする。

「あはは。分かりましたから、離れてくれませんか?」
「……本当に分かったんでしょうね~?」
「本当ですよ。魔法鞄までいただいたんです、嘘はつきませんよ」
「…………まあ、そういうことなら信じましょう!」

 ここでようやく体を離してくれ、俺はホッと息をく。

「今回はハーピィの素材を破棄はきしましたが、次からは破棄する素材を少なくできそうですね」

 俺がそう呟くと、ルッツさんは悲しそうに叫ぶ。

「な、なななな、なんですって⁉ ハーピィの素材と言えば、その羽は高級繊維せんいに変わるというのに! ……あぁぁ、もっと早くアニータ様とお会いできていれば、こんなことには‼」

 なんと、ハーピィの羽がそのような素材になるとは思わず、俺は尋ねる。

「そんなにいい素材なんですか、ガズンさん?」
「まあな。だが、俺たちからすればワイルドディアの素材の方が貴重だったんだ、致し方ない」
「高級繊維って言われても、俺たちにはそれを使った道具なんて回ってこないからな」
「依頼があったら狩るくらいよ、ハーピィなんて」

 冒険者と商人の考え方の違い、なんだろうな。この温度感の差は。

「リドル様! アニータ様と同じことを言うようですが、今後は可能な限り魔獣素材を持ってきてください! 私が間違いなく儲けに変えてみせますから!」
「……ぜ、善処します」

 今度はルッツさんにずいっと詰め寄られてしまい、俺はまたまた体を若干引いてしまう。

「よろしく! お願い! いたします!」
「…………はい」

 アニータさんよりも粘り強くお願いしてきたルッツさんは、しばらくしてようやく離れてくれた。
 ……魔獣素材については、アニータさんとルッツさんの前で話題にしたらダメだな、うん。

「それはそうと、ルッツさんとアグリコさんは、アニータさんとどんな話をしていたんですか?」

 俺は話題を変えるため、三人がどのような話をしていたのかを聞いてみた。

「それよ! リドル君、ルッツさんって、さいっこうね!」
「……な、何があったんですか?」

 ものすごいハイテンションでそう口にしたアニータさんを見て、俺は思わず問い掛けてしまう。

「私の魔導具を見て、色々な使い方を提示してくれたのよ! それに、どんな改良を加えたらもっと良くなるはずだってアドバイスまで!」
「いえいえ、これも全てアニータ様の魔導具が素晴らしいものばかりだからですよ」
「んもう! 褒め過ぎよ~!」

 ……アニータさん、完全にルッツさんの口車に乗せられている気がする。
 でもまあ、俺としてはアニータさんの魔導具が、彼女の満足する形で広まってくれるのは嬉しいので、何も言わないでおこう。

「この感じだと、ルッツ様はしばらくリディアルに滞在することになりそうだな」

 そう口にしたガズンさんを見て、俺は気になることを聞いてみる。

「ガズンさんたちはこれからどうするんですか?」

 リディアルまでルッツさんを護衛してくれたが、現状は既にお役御免やくごめんの状況だろう。
 引き返すのか、それともここに留まるのか。もし留まるのであれば、彼らが泊まる場所を考えなければならない。
 すると、ガズンさんが答えてくれる。

「ルッツ様の護衛依頼は片道だけだったが、俺たちはしばらく留まってもいいと思っている」
「魔の森での狩りは、正直儲かりそうだからな!」
「魔法鞄も手に入ったし、それもありだよね!」

 オルフェンさんとミシャさんも同意したので、俺は答える。

「となると、泊まる場所を考えないといけませんね」

 ルッツさん、アグリコさん、そしてガズンさんたちが泊まるとなれば、ナイルさんの屋敷だけでは部屋が足りなくなるだろう。
 それに女性のミシャさんがいるので、そのあたりも配慮しなければならない。

「ルッツさんとアグリコさんは、私の屋敷で問題ないと思うよ」
「それじゃあミシャさんは私の屋敷に来る? 女性だし、その方がいいんじゃないかしら?」

 ナイルさんとアニータさんから嬉しい提案があったので、最後に俺が確認する。

「三人がそれで良ければ、ガズンさんとオルフェンさんは俺の屋敷で受け入れられますよ?」
「私はそれで問題ございません。アグリコはどうですか?」
「私も大丈夫です」

 ルッツさんとアグリコさんの商人組は問題なさそうだ。

「私も問題ないよ! むしろ、女性と一緒に寝泊まりできるなんて、久しぶりだから楽しみ!」
「リドル殿が迷惑でなければ、むしろお願いしたい限りだ」
野営やえいをするつもりだったからな。屋根やねがあるだけでもありがたいぜ」

 ミシャさんとガズンさんも嬉しそうにそう口にしたが、最後のオルフェンさんの発言だけは無視できない。
 せっかく来てくれたお客さんを野営させるなんて、領主として見過ごせないからな。

「ナイルさん。そういうことなら、今日の夜は皆さんの歓迎会をやりませんか?」

 ここで俺から一つ、ナイルさんに提案してみた。
 初めてリディアルに来てくれた四人にも、ここに来てよかったと思ってもらいたいからね。

「それはいいね。コーワンに声を掛けておこう」

 コーワンさんかぁ……まあ、お酒を飲むのが大好きな人だから、仕切ってくれそうだよね。

「それならば、ナイル様。俺たちが狩ったワイルドディアの肉も使ってもらいたい」

 ガズンさんの提案に、ナイルさんが尋ねる。

「いいのかい?」
「もちろんです。正直、俺たちが食べるとなれば、ただ焼いて終わりのことが多いですからね。調理はお任せすることになりますが、せっかくなら美味しく食べたいので」
「なるほど。そういうことなら、ありがたく使わせてもらうよ」

 それから俺たちはナイルさんの屋敷で雑談しながら、夜まで時間をつぶすことにした。


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