逆行聖女は剣を取る

渡琉兎

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第一章:逆行聖女

第9話:剣士アリシア 3

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 昼ご飯を終えたアリシアは、アーノルドに言われた通り街へと繰り出した。
 丘を下り進んでいくと、すぐに住宅街へ到着する。
 田舎とはいえ生活基盤はしっかりしており、建物も頑丈な石造りで通りを挟むようにして並んでいる。
 アリシアにとっては通い慣れた道のりを進み、一軒の家の前で立ち止まると軽くノックをした。

『――……はーい!』

 元気な少女の声が家の中から聞こえてくると、パタパタと足音がドアの前に近づいてきて、ゆっくりと開かれた。

「あっ! こんにちは、アリシアちゃん!」
「こんにちは、ジーナちゃん!」
「なんだ、元気じゃないか、アリシア!」
「ヴァイス兄もこんにちは!」

 最初に顔を出したのは同い年の少女ジーナ、その後ろからひょっこりと顔を出したのは一つ年上の少年ヴァイスだった。

「昨日はどうしたの? どこか悪かったの?」
「心配掛けてごめんね! 私はどこも悪くないから安心してちょうだい!」
「ほらな、だから言ったじゃないか」
「もう! お兄ちゃんだって昨日はとっても心配していたじゃないのよ!」
「バカ! お前、それを言うなって!」

 兄妹の会話を聞きながら、アリシアはクスクスと笑ってしまう。

「ほらほら、あんたたち! アリシアちゃんをずっと家の外に立たせておくつもりかい?」
「こんにちは、リーナさん!」
「元気いっぱいみたいでよかったよ! 今日は家の中で遊ぶかい?」

 兄妹の母親であるリーナからそう聞かれたアリシアだったが、アーノルドからは外で元気よく遊ぶようにと言われている。
 だからというわけではないが、アリシアは首を横に振って二人へ向き直った。

「外で遊ぼう!」
「わかったわ! いいよね、お母さん!」
「もちろんだよ! だけど、遅くならないようにね!」
「よっしゃー! 今日も負けないからな!」
「鬼ごっこ? いいよ! 私も負けないんだからね!」
「お兄ちゃんはアリシアちゃんに格好いいところを見せたいんだよねー」
「う、うるさいな! ほら、さっさと行くぞ!」
「「はーい!」」

 じゃれ合っている兄妹に変わらない笑みを浮かべていると、僅かに顔を赤くしたヴァイスが大股で歩き出してしまう。
 その後ろ姿を見たアリシアとジーナは顔を見合わせ、あははと笑いながらついていった。

 向かった先はディラーナ村の中央に位置している大広場だった。
 すでに多くの子供たちが走り回っており、元気な声が大広場には広がっている。
 三人は誰もいない場所に集まり、じゃんけんをしてから鬼ごっこを始めることにした。

「あぁー! 私が鬼かー!」
「アリシアはいっつもじゃんけんで負けるよなー!」
「アリシアちゃん、最初にパーを出すのは止めた方がいいよ?」
「あははー。今度は気をつけるよー」
「そう言って、いっつもパーから出すんだよなー」
「それを知っているのに勝っちゃうお兄ちゃんだから、モテないんだよなー」
「おい、ジーナ!」

 ここでもじゃれ合っている兄妹を見て、アリシアはクスクスと笑いだす。
 兄妹とも久しぶりであり、王都に連れていかれてからはアーノルドと同様に顔を合わせたこともなかった。
 こうしてまた子供の時と同じように遊べることがアリシアは嬉しく、気づかないうち――

「えぇっ! お、おい、アリシア!?」
「どうしたの、アリシアちゃん!」
「えっ? 何が?」
「もう! お兄ちゃんがいけないんだよ! アリシアちゃんを泣かせるなんて!」
「えぇっ! うわっ、本当だ、私泣いてた!」
「なんでアリシアが驚いているんだよ!」

 ジーナに自分のせいだと言われたヴァイスは慌てており、アリシアの発言にもどうしたらいいのかわからなくなってしまう。

「その、なんだ。鬼が嫌なら、俺が変わってやってもいいぞ?」
「ち、違うの、ヴァイス兄! 全然大丈夫だから! むしろ、鬼をやりたいくらいだから!」
「本当に大丈夫? やっぱり体調が悪いんじゃないの?」
「本当に大丈夫だよ、ジーナちゃん! ほら、二人とも逃げて! すぐにタッチしてやるんだからねー!」

 腕を振りながらやる気満々をアピールしたアリシアを見て、兄妹は心配そうに顔を見合わせたものの、すぐに気持ちを切り替えて鬼ごっこを始めた。
 その日、アリシアは他の子供たちが帰り始めていく間も兄妹と鬼ごっこを楽しんでおり、帰宅したのは三人が最後だった。
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