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第一章:逆行聖女
第17話:剣士アリシア 11
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「――それじゃあアリシアちゃん、私の動きをしっかりと見ていてね」
「は、はい!」
食事を終えた三人は、再び訓練場へ戻ってきていた。
アーノルドとシエナが考えたアリシア用の柔の剣を見てもらうためだ。
実際に柔の剣を見せるのはシエナである。
「よろしく頼むぞ、シエナ」
「任せてくださいよ、団長!」
「本当は私が見せてあげたいんだがなぁ」
「団長じゃあ体が硬すぎてどうにもなりませんって」
「くっ! 本当のこと過ぎて何も言えん!」
まさしくその通りだった。
アーノルドも自ら考えた柔の剣なので動きは理解できているものの、それが自分にはまったく合わないスタイルのため実際に演じてみせることができない。
そのことが悔しく、泣く泣くシエナにお願いしていたのだ。
「それじゃあ見せるけど、アリシアちゃんが注目して見るべき点は? ちゃんと理解してる?」
「はい! さっき話してもらった内容ですよね!」
そこからアリシアが注目すべき点について述べていく。
基本は守りの構えとなり、腕と手の位置、さらには剣先をどこへ向けるべきか。
そこから相手の動きを見る視線と足さばき。
次に守りから攻撃へ転ずる時は相手の攻撃がどこへ向かうのか、さらに打ち落とすのか弾き返すのかの判断と、素早く剣を振り抜くタイミングだ。
言葉にするのは簡単だが、この全てを守りの時、攻撃の時にはほぼ同時に行わなければならない。
一つでも判断が遅くなれば迎撃が間に合わず攻撃を受けてしまうし、逆に速過ぎれば相手に対応されてしまう。
「難しいけど、まずは見ること。そして、頭の中でイメージを膨らませることが大事だからね」
「はい!」
「細かなタイミングなどは実際に剣を振り、タイミングを自分で見極めるしかない。一度に全てをやるのではなく、今できることから一つずつ潰していけばいい」
「うん! ありがとう、お父さん!」
大きく深呼吸をしたアリシアは、目を見開いてシエナに向けて一つ頷いた。
「それじゃあ、いくわよ!」
「お願いします!」
右手だけで細剣を持ち上げ、小さく息を吐き出す。
すると、シエナの雰囲気が一変した。
「――!?」
常に笑みを浮かべていた表情は、まるで獲物を睨みつけるかの如く鋭いものとなり、視線からは強烈な威圧感が放たれている。
あまりの変わりようにアリシアは息を飲んだが、視線を逸らせるということはなかった。
これから始まるシエナの柔の剣だが、その一挙手一投足を見逃すまいとしている。
そして――シエナが動いた。
頭の中でイメージしている相手を正面に捉えるために片足を軸とし、もう片方の足を忙しなく動かして体の位置を変えていく。
合わせて剣先も同時に動いているのだが、その高さは常に一定を保っており、一切ブレることがない。
全くブレない剣先とは異なり、相手を見据える視線は忙しなく動いており、どこから攻撃が飛んでくるのかを見極めようとしている。
「……ふっ!」
掛け声とともに細剣が振り抜かれた。
剣身の動きが速過ぎてはっきりとした軌道は見えなかったものの、打ち落としたのだろうということだけはわかった。
だが、シエナの動きはそこで止まるわけではない。
打ち落とした動作そのままに剣先を持ち上げると、鋭く一歩踏み込んで相手を貫いた。
それも一度ではなく――三度もの突きを連続で放ったのだ。
実際に動いていた時間はそう長くはないが、シエナの額には大粒の汗が噴き出していた。
「……ふぅぅ。どうだったかしら、アリシアちゃん!」
額の汗を拭いながら、シエナが快活な笑みを浮かべながら声を掛けた。
「……」
「……あの、アリシアちゃん?」
「はっ! す、すみません! その、あまりにすご過ぎて、見惚れてしまいました!」
アリシアから見れば、まるで美しい剣舞を見ているかのようだった。
何度でも、何時間でも見ていたいと思える素晴らしい時間だったが、それだけで終わらせていいわけがない。
アリシアは自分なりにシエナの動きを分析し、こちらを見つめている二人へ向き直りゆっくりと口を開いた。
「は、はい!」
食事を終えた三人は、再び訓練場へ戻ってきていた。
アーノルドとシエナが考えたアリシア用の柔の剣を見てもらうためだ。
実際に柔の剣を見せるのはシエナである。
「よろしく頼むぞ、シエナ」
「任せてくださいよ、団長!」
「本当は私が見せてあげたいんだがなぁ」
「団長じゃあ体が硬すぎてどうにもなりませんって」
「くっ! 本当のこと過ぎて何も言えん!」
まさしくその通りだった。
アーノルドも自ら考えた柔の剣なので動きは理解できているものの、それが自分にはまったく合わないスタイルのため実際に演じてみせることができない。
そのことが悔しく、泣く泣くシエナにお願いしていたのだ。
「それじゃあ見せるけど、アリシアちゃんが注目して見るべき点は? ちゃんと理解してる?」
「はい! さっき話してもらった内容ですよね!」
そこからアリシアが注目すべき点について述べていく。
基本は守りの構えとなり、腕と手の位置、さらには剣先をどこへ向けるべきか。
そこから相手の動きを見る視線と足さばき。
次に守りから攻撃へ転ずる時は相手の攻撃がどこへ向かうのか、さらに打ち落とすのか弾き返すのかの判断と、素早く剣を振り抜くタイミングだ。
言葉にするのは簡単だが、この全てを守りの時、攻撃の時にはほぼ同時に行わなければならない。
一つでも判断が遅くなれば迎撃が間に合わず攻撃を受けてしまうし、逆に速過ぎれば相手に対応されてしまう。
「難しいけど、まずは見ること。そして、頭の中でイメージを膨らませることが大事だからね」
「はい!」
「細かなタイミングなどは実際に剣を振り、タイミングを自分で見極めるしかない。一度に全てをやるのではなく、今できることから一つずつ潰していけばいい」
「うん! ありがとう、お父さん!」
大きく深呼吸をしたアリシアは、目を見開いてシエナに向けて一つ頷いた。
「それじゃあ、いくわよ!」
「お願いします!」
右手だけで細剣を持ち上げ、小さく息を吐き出す。
すると、シエナの雰囲気が一変した。
「――!?」
常に笑みを浮かべていた表情は、まるで獲物を睨みつけるかの如く鋭いものとなり、視線からは強烈な威圧感が放たれている。
あまりの変わりようにアリシアは息を飲んだが、視線を逸らせるということはなかった。
これから始まるシエナの柔の剣だが、その一挙手一投足を見逃すまいとしている。
そして――シエナが動いた。
頭の中でイメージしている相手を正面に捉えるために片足を軸とし、もう片方の足を忙しなく動かして体の位置を変えていく。
合わせて剣先も同時に動いているのだが、その高さは常に一定を保っており、一切ブレることがない。
全くブレない剣先とは異なり、相手を見据える視線は忙しなく動いており、どこから攻撃が飛んでくるのかを見極めようとしている。
「……ふっ!」
掛け声とともに細剣が振り抜かれた。
剣身の動きが速過ぎてはっきりとした軌道は見えなかったものの、打ち落としたのだろうということだけはわかった。
だが、シエナの動きはそこで止まるわけではない。
打ち落とした動作そのままに剣先を持ち上げると、鋭く一歩踏み込んで相手を貫いた。
それも一度ではなく――三度もの突きを連続で放ったのだ。
実際に動いていた時間はそう長くはないが、シエナの額には大粒の汗が噴き出していた。
「……ふぅぅ。どうだったかしら、アリシアちゃん!」
額の汗を拭いながら、シエナが快活な笑みを浮かべながら声を掛けた。
「……」
「……あの、アリシアちゃん?」
「はっ! す、すみません! その、あまりにすご過ぎて、見惚れてしまいました!」
アリシアから見れば、まるで美しい剣舞を見ているかのようだった。
何度でも、何時間でも見ていたいと思える素晴らしい時間だったが、それだけで終わらせていいわけがない。
アリシアは自分なりにシエナの動きを分析し、こちらを見つめている二人へ向き直りゆっくりと口を開いた。
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