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第一章:逆行聖女
第22話:剣士アリシア 16
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アーノルドとヴァイスが訓練場に戻ってくると、指示通りにアリシアがシエナと訓練を行っている。
そして、訓練中の二人をキラキラした瞳で見つめているジーナの姿もあった。
「どうしたんだ、ジーナ?」
「あっ! お兄ちゃん、アリシアちゃんがすごいんだよ! とっても格好いいんだよ!」
アリシアは詰め所に足を運ぶようになってから七日が経っている。
その間ずっとアーノルドとシエナの指導を受けており、今ではある程度剣を振れるようになっていた。
しかし、今までずっと追いかけっこやかくれんぼといった遊びしかしてこなかったジーナからすると、目の前のアリシアは初めて見る姿であり、とても新鮮で格好よく見えていたのだ。
「お兄ちゃんもあれくらい格好よくなるのかな!」
「いや、俺はまだアリシアが剣を振る姿を見ていないからなぁ」
「ほんっっとうにすごかったんだから!」
大興奮のジーナは両手をブンブンと振りながらヴァイスに語っている。
その様子をアリシアは汗を拭い苦笑しながら見守っており、シエナはかわいらしいなと笑みを浮かべていた。
「私もああなりたいな~!」
「えっ? でも、ジーナちゃんは危ないと思うよ?」
「えぇ~? でも、アリシアちゃんがやっているんだから、私もできるんじゃないかな~?」
「そ、それはそうなんだけど……」
前世の記憶があるアリシアとは違い、ジーナは純粋などこにでもいる女の子である。
アリシアも前世の子供の頃は剣を握ったことはネイドが指導を受けていた時だけで、それ以降は一度も握ったことがなかった。
それが普通だと今でも思っており、だからこそジーナには普通の女の子のように過ごしてほしいと考えていた。
「どうしますか、団長?」
「うーん、さすがに今からというのは難しいかな。ヴァイスは許しを得ているけど、ジーナは違うだろう?」
「そっかー。それじゃあ、私もお母さんから大丈夫だって言ってもらえたら教えてもらえますか?」
すでにやる気満々のジーナがそう口にすると、アーノルドとシエナは顔を見合わせて困ってしまう。
自警団としては将来の戦力が増えることはありがたいのだが、子供の――それも女の子が剣を持つというのはどうにも難色を示してしまうところではあった。
「……ぶー! アリシアちゃんは大丈夫で、どうして私はダメなんですかー!」
「そ、それは、アリシアの親が私であって、その私が許可をして教えているから――」
「だから私もお母さんから大丈夫だって言ってもらえたらいいってことですよねー!」
「そ、それはそうなるんだが……ア、アリシアからもなんとか言ってくれないか?」
このままでは埒が明かないと思ったのか、アーノルドはアリシアに助けを求めた。
だが、アリシアもどうすればいいのかわからず、何も言えずにただジーナを見つめることしかできない。
「――いいんじゃないですか?」
そこへ口を開いたのは――ヴァイスだった。
「ヴァイス兄、いいの?」
「まあ、母さんが許してくれたらだけどな。子供だからって、女の子だからって、剣を握ったらダメってことはないんですよね?」
「いや、まあ、それはそうなんだが……」
「心構えの問題であれば、木剣を握らせればいいと思います。アリシアだって、ネイド兄が指導を受けている時はそうしていたんだろう?」
「そうだけど……どうしてヴァイス兄が知っているの?」
ネイドの指導は基本的に家の庭で行われており、今回みたいに訓練場で行うこともあったが、その時はアリシアはついていかなかった。
だからアリシアが木剣を振っている姿を見るには、家の庭でネイドが指導を受けている時だけのはずだった。
「あー……一回だけ見たことがあったんだよ。アリシアを遊びに誘おうと思ってな」
「そんなことあったっけ?」
「あ、あったんだよ!」
「うーん……まあ、昔のことだもんね」
覚えていなくても仕方がないかと考えるのを辞めたアリシアだったが、実際はネイドと一緒にいる彼女の事が気になったヴァイスが様子を見に行った時に目撃していた。
そうだとは言い出せるわけもなく、ヴァイスはちょっとした嘘をついてしまった。
「と、とにかく! 木剣だったらジーナが扱うにも問題ないと思うんだけど、どうですか?」
「……まあ、許しが貰えたら、木剣でなら問題ないのか?」
「……そうですね。まあ、木剣なら?」
「わーい! それじゃあ家に帰ったらお母さんに聞いてみるね! やったー!」
――その後、リーナからの許可がジーナにも下りてしまい、アーノルドとシエナは苦笑いを浮かべることになるのだった。
そして、訓練中の二人をキラキラした瞳で見つめているジーナの姿もあった。
「どうしたんだ、ジーナ?」
「あっ! お兄ちゃん、アリシアちゃんがすごいんだよ! とっても格好いいんだよ!」
アリシアは詰め所に足を運ぶようになってから七日が経っている。
その間ずっとアーノルドとシエナの指導を受けており、今ではある程度剣を振れるようになっていた。
しかし、今までずっと追いかけっこやかくれんぼといった遊びしかしてこなかったジーナからすると、目の前のアリシアは初めて見る姿であり、とても新鮮で格好よく見えていたのだ。
「お兄ちゃんもあれくらい格好よくなるのかな!」
「いや、俺はまだアリシアが剣を振る姿を見ていないからなぁ」
「ほんっっとうにすごかったんだから!」
大興奮のジーナは両手をブンブンと振りながらヴァイスに語っている。
その様子をアリシアは汗を拭い苦笑しながら見守っており、シエナはかわいらしいなと笑みを浮かべていた。
「私もああなりたいな~!」
「えっ? でも、ジーナちゃんは危ないと思うよ?」
「えぇ~? でも、アリシアちゃんがやっているんだから、私もできるんじゃないかな~?」
「そ、それはそうなんだけど……」
前世の記憶があるアリシアとは違い、ジーナは純粋などこにでもいる女の子である。
アリシアも前世の子供の頃は剣を握ったことはネイドが指導を受けていた時だけで、それ以降は一度も握ったことがなかった。
それが普通だと今でも思っており、だからこそジーナには普通の女の子のように過ごしてほしいと考えていた。
「どうしますか、団長?」
「うーん、さすがに今からというのは難しいかな。ヴァイスは許しを得ているけど、ジーナは違うだろう?」
「そっかー。それじゃあ、私もお母さんから大丈夫だって言ってもらえたら教えてもらえますか?」
すでにやる気満々のジーナがそう口にすると、アーノルドとシエナは顔を見合わせて困ってしまう。
自警団としては将来の戦力が増えることはありがたいのだが、子供の――それも女の子が剣を持つというのはどうにも難色を示してしまうところではあった。
「……ぶー! アリシアちゃんは大丈夫で、どうして私はダメなんですかー!」
「そ、それは、アリシアの親が私であって、その私が許可をして教えているから――」
「だから私もお母さんから大丈夫だって言ってもらえたらいいってことですよねー!」
「そ、それはそうなるんだが……ア、アリシアからもなんとか言ってくれないか?」
このままでは埒が明かないと思ったのか、アーノルドはアリシアに助けを求めた。
だが、アリシアもどうすればいいのかわからず、何も言えずにただジーナを見つめることしかできない。
「――いいんじゃないですか?」
そこへ口を開いたのは――ヴァイスだった。
「ヴァイス兄、いいの?」
「まあ、母さんが許してくれたらだけどな。子供だからって、女の子だからって、剣を握ったらダメってことはないんですよね?」
「いや、まあ、それはそうなんだが……」
「心構えの問題であれば、木剣を握らせればいいと思います。アリシアだって、ネイド兄が指導を受けている時はそうしていたんだろう?」
「そうだけど……どうしてヴァイス兄が知っているの?」
ネイドの指導は基本的に家の庭で行われており、今回みたいに訓練場で行うこともあったが、その時はアリシアはついていかなかった。
だからアリシアが木剣を振っている姿を見るには、家の庭でネイドが指導を受けている時だけのはずだった。
「あー……一回だけ見たことがあったんだよ。アリシアを遊びに誘おうと思ってな」
「そんなことあったっけ?」
「あ、あったんだよ!」
「うーん……まあ、昔のことだもんね」
覚えていなくても仕方がないかと考えるのを辞めたアリシアだったが、実際はネイドと一緒にいる彼女の事が気になったヴァイスが様子を見に行った時に目撃していた。
そうだとは言い出せるわけもなく、ヴァイスはちょっとした嘘をついてしまった。
「と、とにかく! 木剣だったらジーナが扱うにも問題ないと思うんだけど、どうですか?」
「……まあ、許しが貰えたら、木剣でなら問題ないのか?」
「……そうですね。まあ、木剣なら?」
「わーい! それじゃあ家に帰ったらお母さんに聞いてみるね! やったー!」
――その後、リーナからの許可がジーナにも下りてしまい、アーノルドとシエナは苦笑いを浮かべることになるのだった。
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