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第一章:逆行聖女
第49話:聖女アリシア 2
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アリシアが初めて聖女の片鱗を見せた日から四年が経ったものの、彼女の秘密を知る者はいまだに少ない。
アーノルド、ヴァイス、シエナ、ゴッツの四人に加えて、今ではジーナも知るところになっているのだが、それ以外では誰も知らない。
ダレルには伝えてもいいかと思っていたアリシアだったが、そこはアーノルドとゴッツに止められてしまった。
「ダレルは口が軽いからな、絶対にダメだ」
「団長の言う通りですね」
協力者が多い方が良いと思っていたアリシアも、二人の意見が一致したことですぐに諦めた。
本来であればジーナにも伝える予定ではなかった。危険に巻き込みたくなかったからだ。
しかし、ジーナはアリシアやヴァイスのことをよく見ており、二人が何かを隠していると察してしまった。
「……二人とも、何か隠してるでしょう!」
そう言われたのは、聖女の片鱗を見せてから一ヶ月も経たないタイミングだった。
こうも早くバレてしまったのには、アリシアとヴァイスが嘘をつけない性格だったのもあるが、お互いに顔に出てしまった。
直後には一気に詰め寄られ、二人は秘密を打ち明けなければジーナが止まらないと察し、仕方なく伝えたのだ。
このことはアーノルドにも伝わっており、その日にはジーナを家に呼んで事情を説明した。
ジーナは絶対に誰にも言わないと約束してくれ、それ以降はアリシアとヴァイスも顔に出ないよう注意しながら、今日まで過ごしてきた。
だが、明日には聖女の神託がアリシアに与えられてしまう。
そう考えると、今日だけは顔に出さないということができなくなってしまった。
「はいはーい! みんな、表情が暗いわよー!」
訓練中だったこともあり、このままでは怪我をしてしまう恐れがあるとシエナが手を叩きながら、一度訓練を止めた。
「あっ! す、すみません、シエナさん!」
「お、俺もすみません!」
「うわーん! ごめんなさい、シエナさーん!」
アリシア、ヴァイス、ジーナと謝罪を口にしたものの、シエナも事情を知っているのでこれ以上は言及しなかった。
それはシエナも考えていることであり、顔には出していないが彼女もアリシアのことを心配しているのだ。
「気持ちはわかるけど、剣を持っている時は集中しないとね」
「「「……はい」」」
「とりあえず、一度休憩にしましょうか」
四人は日陰に移動すると、シエナが冷えた水を持ってきてくれた。
それを口に含みながら、三人は小さく息を吐いた。
「……アリシアちゃん、緊張してる?」
「……ううん。前世でも経験したことだから、大丈夫です」
シエナの言葉にアリシアは笑みを浮かべながらそう答えた。
だが、その笑みに力はなく、緊張しているのは明らかだ。
「……なあ、アリシア。王都に行く時、俺もついて行ったらダメか?」
「どうしたの、ヴァイス兄?」
「あっ! お兄ちゃん、ズルい! 私も言おうと思っていたのにー!」
「ジーナちゃんも?」
昨日までついていきたいなどと口にしてこなかった二人の言葉に、アリシアは驚いてしまった。
「アリシアが危険な目に遭うとわかっているのに、ただ黙って村に留まるだなんて、俺にはできそうもないよ」
「私もだよ! アリシアちゃんを助けたいの!」
二人の気持ちを受けて、アリシアは嬉しくもあり、その気持ちに応えられないと決めていたこともあり、辛くもあった。
「……ごめんね、二人とも」
「アリシア!」
「どうしてなの? 私たちだって、強くなってるんだよ?」
「私がどうこう言える立場じゃないのはわかっているんだけど、信頼できる人は王都に行っても多い方がいいんじゃないの?」
二人の思いを受けてなのか、シエナは連れて行く方がいいのではないかと意見を口にした。
だが、それでもアリシアは首を横に振り、二人の同行を断った。
「王都はあまりにも危険なの。二人もだし、もしかしたらシエナさんでも危険かもしれない。そんな場所に連れて行くなんて、私にはできないわ」
「俺たちなら大丈夫だ! 自分の身は自分で守れる!」
「そうだよ!」
「だとしても、私は連れて行けないわ。……そもそも、そういうものだから」
アリシアの言葉にヴァイスとジーナは口を閉ざすことしかできず、シエナもこれ以上の訓練は難しいと判断したのか、軽い雑談だけで今日の訓練は終了となった。
アーノルド、ヴァイス、シエナ、ゴッツの四人に加えて、今ではジーナも知るところになっているのだが、それ以外では誰も知らない。
ダレルには伝えてもいいかと思っていたアリシアだったが、そこはアーノルドとゴッツに止められてしまった。
「ダレルは口が軽いからな、絶対にダメだ」
「団長の言う通りですね」
協力者が多い方が良いと思っていたアリシアも、二人の意見が一致したことですぐに諦めた。
本来であればジーナにも伝える予定ではなかった。危険に巻き込みたくなかったからだ。
しかし、ジーナはアリシアやヴァイスのことをよく見ており、二人が何かを隠していると察してしまった。
「……二人とも、何か隠してるでしょう!」
そう言われたのは、聖女の片鱗を見せてから一ヶ月も経たないタイミングだった。
こうも早くバレてしまったのには、アリシアとヴァイスが嘘をつけない性格だったのもあるが、お互いに顔に出てしまった。
直後には一気に詰め寄られ、二人は秘密を打ち明けなければジーナが止まらないと察し、仕方なく伝えたのだ。
このことはアーノルドにも伝わっており、その日にはジーナを家に呼んで事情を説明した。
ジーナは絶対に誰にも言わないと約束してくれ、それ以降はアリシアとヴァイスも顔に出ないよう注意しながら、今日まで過ごしてきた。
だが、明日には聖女の神託がアリシアに与えられてしまう。
そう考えると、今日だけは顔に出さないということができなくなってしまった。
「はいはーい! みんな、表情が暗いわよー!」
訓練中だったこともあり、このままでは怪我をしてしまう恐れがあるとシエナが手を叩きながら、一度訓練を止めた。
「あっ! す、すみません、シエナさん!」
「お、俺もすみません!」
「うわーん! ごめんなさい、シエナさーん!」
アリシア、ヴァイス、ジーナと謝罪を口にしたものの、シエナも事情を知っているのでこれ以上は言及しなかった。
それはシエナも考えていることであり、顔には出していないが彼女もアリシアのことを心配しているのだ。
「気持ちはわかるけど、剣を持っている時は集中しないとね」
「「「……はい」」」
「とりあえず、一度休憩にしましょうか」
四人は日陰に移動すると、シエナが冷えた水を持ってきてくれた。
それを口に含みながら、三人は小さく息を吐いた。
「……アリシアちゃん、緊張してる?」
「……ううん。前世でも経験したことだから、大丈夫です」
シエナの言葉にアリシアは笑みを浮かべながらそう答えた。
だが、その笑みに力はなく、緊張しているのは明らかだ。
「……なあ、アリシア。王都に行く時、俺もついて行ったらダメか?」
「どうしたの、ヴァイス兄?」
「あっ! お兄ちゃん、ズルい! 私も言おうと思っていたのにー!」
「ジーナちゃんも?」
昨日までついていきたいなどと口にしてこなかった二人の言葉に、アリシアは驚いてしまった。
「アリシアが危険な目に遭うとわかっているのに、ただ黙って村に留まるだなんて、俺にはできそうもないよ」
「私もだよ! アリシアちゃんを助けたいの!」
二人の気持ちを受けて、アリシアは嬉しくもあり、その気持ちに応えられないと決めていたこともあり、辛くもあった。
「……ごめんね、二人とも」
「アリシア!」
「どうしてなの? 私たちだって、強くなってるんだよ?」
「私がどうこう言える立場じゃないのはわかっているんだけど、信頼できる人は王都に行っても多い方がいいんじゃないの?」
二人の思いを受けてなのか、シエナは連れて行く方がいいのではないかと意見を口にした。
だが、それでもアリシアは首を横に振り、二人の同行を断った。
「王都はあまりにも危険なの。二人もだし、もしかしたらシエナさんでも危険かもしれない。そんな場所に連れて行くなんて、私にはできないわ」
「俺たちなら大丈夫だ! 自分の身は自分で守れる!」
「そうだよ!」
「だとしても、私は連れて行けないわ。……そもそも、そういうものだから」
アリシアの言葉にヴァイスとジーナは口を閉ざすことしかできず、シエナもこれ以上の訓練は難しいと判断したのか、軽い雑談だけで今日の訓練は終了となった。
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