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第一章:逆行聖女
第50話:聖女アリシア 3
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――そして迎えた翌日の早朝。
(……あぁ、やっぱり)
アリシアは夢を見ていた。
自分ではない女性が何かを伝えようとしている。
しかし、口は動いているもののその声は全く聞こえない。
だが、ここからどのように展開していくのかを、アリシアは知っている。
『…………聞こえますか、下界の子よ』
徐々に女性の声が聞こえるようになり、続けてこう口にする。
『あなたに聖女の神託を授けましょう』
前世と同じセリフを、目の前の女性が口にする。
女神かもしれないと前世では思ったアリシアも、今となってはそうは思えなかった。
『さあ、目覚めなさい。さすればあなたの運命は、大きく動き出すでしょう』
(そんなこと、わかっているわ。そのせいで私は、私は……)
そこまで考えたところで女性の姿が徐々にぼやけていき、同時に右手の甲に火傷を負ったような鋭い痛みが走ったように感じ、アリシアは目を覚ました。
◆◇◆◇
「――熱い!?」
「アリシア! 大丈夫か!!」
思わず声をあげたアリシアだったが、その声に重ねるようにして別の声が真横から聞こえてきた。
気づけばぐっしょりと汗をかいており、呼吸も荒くなっている。
しかし、痛みを感じていた右手の甲にはすでに痛みはなく、変わりに右手を包み込んでいる温かな感触に触れてホッと胸を撫で下ろしていた。
「……お父さん?」
「あっ! す、すまない、アリシア。女の子の部屋へ勝手に入るのはどうかと思ったんだが、やはり心配でな……」
「ううん、怒ってないよ。お父さんの顔が見られて、安心したから」
アリシアの声を聞いたアーノルドが慌てて手を離そうとしたのだが、彼女は怒ってないと言いながら彼の手を握り返した。
「……そうか。なら、いいんだが……それにしても、ものすごい汗だぞ? 何か拭くものを持ってこよう。少し待っていて――」
「待って、お父さん」
タオルを持ってくるために席を立とうとしたアーノルドを呼び止めたアリシアは、握り返していた彼の手をゆっくりと離す。
「……右手の甲を見てほしいの。たぶん、もうあるから」
「……な、なんだと? だが、さっきまでは何も……」
アリシアの言葉に、アーノルドは恐る恐る包み込んでいた彼女の右手を離していく。
そして、言われた通りアリシアの右手の甲へと視線を向けた。
「……まさか、そんな!」
「ほらね? だから言ったでしょう?」
驚くアーノルドへそう口にしながら、アリシアは右手の甲を自分の顔の前まで移動させた。
前世で何度も見て、撫でて、最終的には恨みもした聖女の神託へ、今世でも視線を向ける時が来たのだ。
「……今世では私に、どんな運命を課すつもりなのかしら」
「私が絶対に守り抜いてやる!」
思わずこぼれ落ちてしまった呟きに、アーノルドが声を荒らげた。
「聖女の神託がなんだ! アリシアは聖女として生まれてきたのではない! 私とミーシャの間に生まれた、誰よりも可愛い娘なんだ!」
「お父さん……ううん、大丈夫だよ」
「だが、アリシア!」
アーノルドも覚悟を決めていたが、いざ聖女の神託を目の当たりにし、そのせいでアリシアが悲しそうな表情を浮かべているのを見てしまうと、どうしても自分が守らなければと思わずを得ない。
しかし、アリシアはここでも首を縦に振ることはしなかった。
「私は自分を守るための力を身につけたわ。それも、お父さんのおかげでね。だから、安心して。私は王都で自分を守り抜いて必ずディラーナ村に帰ってくるから、お父さんは私が帰る場所を守ってほしいの」
「……何度も、話をしたものな」
「えぇ、そうだよ」
「…………この、頑固者め」
「うふふ。お父さんに似たんだよ?」
「だとしたら、私は自分の性格を恨まなければならないな」
それでも最後にはアーノルドも自分を無理やり納得させると、いつもと変わらない柔和な笑みを浮かべながらアリシアの頭を撫でたのだった。
(……あぁ、やっぱり)
アリシアは夢を見ていた。
自分ではない女性が何かを伝えようとしている。
しかし、口は動いているもののその声は全く聞こえない。
だが、ここからどのように展開していくのかを、アリシアは知っている。
『…………聞こえますか、下界の子よ』
徐々に女性の声が聞こえるようになり、続けてこう口にする。
『あなたに聖女の神託を授けましょう』
前世と同じセリフを、目の前の女性が口にする。
女神かもしれないと前世では思ったアリシアも、今となってはそうは思えなかった。
『さあ、目覚めなさい。さすればあなたの運命は、大きく動き出すでしょう』
(そんなこと、わかっているわ。そのせいで私は、私は……)
そこまで考えたところで女性の姿が徐々にぼやけていき、同時に右手の甲に火傷を負ったような鋭い痛みが走ったように感じ、アリシアは目を覚ました。
◆◇◆◇
「――熱い!?」
「アリシア! 大丈夫か!!」
思わず声をあげたアリシアだったが、その声に重ねるようにして別の声が真横から聞こえてきた。
気づけばぐっしょりと汗をかいており、呼吸も荒くなっている。
しかし、痛みを感じていた右手の甲にはすでに痛みはなく、変わりに右手を包み込んでいる温かな感触に触れてホッと胸を撫で下ろしていた。
「……お父さん?」
「あっ! す、すまない、アリシア。女の子の部屋へ勝手に入るのはどうかと思ったんだが、やはり心配でな……」
「ううん、怒ってないよ。お父さんの顔が見られて、安心したから」
アリシアの声を聞いたアーノルドが慌てて手を離そうとしたのだが、彼女は怒ってないと言いながら彼の手を握り返した。
「……そうか。なら、いいんだが……それにしても、ものすごい汗だぞ? 何か拭くものを持ってこよう。少し待っていて――」
「待って、お父さん」
タオルを持ってくるために席を立とうとしたアーノルドを呼び止めたアリシアは、握り返していた彼の手をゆっくりと離す。
「……右手の甲を見てほしいの。たぶん、もうあるから」
「……な、なんだと? だが、さっきまでは何も……」
アリシアの言葉に、アーノルドは恐る恐る包み込んでいた彼女の右手を離していく。
そして、言われた通りアリシアの右手の甲へと視線を向けた。
「……まさか、そんな!」
「ほらね? だから言ったでしょう?」
驚くアーノルドへそう口にしながら、アリシアは右手の甲を自分の顔の前まで移動させた。
前世で何度も見て、撫でて、最終的には恨みもした聖女の神託へ、今世でも視線を向ける時が来たのだ。
「……今世では私に、どんな運命を課すつもりなのかしら」
「私が絶対に守り抜いてやる!」
思わずこぼれ落ちてしまった呟きに、アーノルドが声を荒らげた。
「聖女の神託がなんだ! アリシアは聖女として生まれてきたのではない! 私とミーシャの間に生まれた、誰よりも可愛い娘なんだ!」
「お父さん……ううん、大丈夫だよ」
「だが、アリシア!」
アーノルドも覚悟を決めていたが、いざ聖女の神託を目の当たりにし、そのせいでアリシアが悲しそうな表情を浮かべているのを見てしまうと、どうしても自分が守らなければと思わずを得ない。
しかし、アリシアはここでも首を縦に振ることはしなかった。
「私は自分を守るための力を身につけたわ。それも、お父さんのおかげでね。だから、安心して。私は王都で自分を守り抜いて必ずディラーナ村に帰ってくるから、お父さんは私が帰る場所を守ってほしいの」
「……何度も、話をしたものな」
「えぇ、そうだよ」
「…………この、頑固者め」
「うふふ。お父さんに似たんだよ?」
「だとしたら、私は自分の性格を恨まなければならないな」
それでも最後にはアーノルドも自分を無理やり納得させると、いつもと変わらない柔和な笑みを浮かべながらアリシアの頭を撫でたのだった。
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