80 / 99
第二章:自由と束縛と
第80話:冒険者アリシア 5
しおりを挟む
冒険者ギルドは宿屋を出て五分ほど歩いた場所に位置している。
頑強な石造りの建物は威風堂々としており、ここだけが周囲の華やかな建物とは一線を画していた。
「王都では冒険者ギルドの前を通ることはあったが、ここはどうにも活気がないなぁ」
「魔導都市ですから、魔導士ギルドに人が多くいるんじゃないですか?」
「その可能性は高いわね。でもまあ、私たちは魔導士ではないし、やっぱり冒険者ギルドへ登録するべきよね」
アリシアはそう口にしたものの、二人の視線はそれを否定するものだった。
「……お前は魔法が使えるだろうが」
「……それも、とびっきりすごい魔法が!」
「はいはい。お世辞はいいから、さっさと冒険者ギルドに登録しましょう」
手をひらひらと振りながら歩き出したアリシアを追って、ゼーアとケイナも冒険者ギルドへ足を踏み入れる。
ギルド内は通りとは違い多くの人がひしめき合っていた。
依頼版にはいくつもの依頼書が張られており、冒険者たちは依頼を吟味して依頼書を剥がしていく。
とはいえ、あくまでもギルド内に多くの人がいるというだけで、その規模は王都の冒険者ギルドとは比較にならない。あちらでは依頼書を吟味する時間もごくわずかで、そうでなければ先に依頼を取られてしまうほど多くの冒険者が活動しているのだ。
「比べるもんじゃねえが、やっぱり少ねぇなぁ」
「アリシア様は魔導士ギルドに登録した方がいいんじゃないですか?」
「私だけ仲間外れにするつもりなの?」
「そ、そんなことは!」
「だったら登録しちゃいましょう。登録カウンターは……うん、あっちだね」
左奥のカウンターへ歩き出したアリシアたちは、暇そうにあくびをしていた受付嬢に声を掛けた。
「あの、すみませーん」
「ふああぁぁ。……ふえ?」
「冒険者登録をしたいんですけど」
「……登録? …………ええええぇぇええぇぇ!? と、登録ですか! ぼ、冒険者ギルドでええええぇぇっ!!」
受付嬢の悲鳴にも似た大声を聞いて、ギルド内にいた冒険者たちの視線がこちらに集まってきた。
どうしてそこまで驚かれてしまったか理解できず、アリシアたちは困惑してしまう。
「あぁ、申し訳ございません! しょ、少々お待ちを! えぇっと、書類はどこだっけ~?」
バタバタと動き出した受付嬢は、引き出しを何度も開け閉めしながら書類を取り出すと、額に汗を浮かべながらニコリとほほ笑んだ。
「えっと、その……こ、こちらにお名前、年齢、性別、扱う武器の記載をお願いいたします!」
「……は、はぁ」
アリシアたちは顔を見合わせ、困惑したままだが言われた通りに書類を記入していこうとしたが、名前を書いた時点でゼーアとケイナの手が止まったままだ。
「あれ? どうしたの?」
「えっと、その……」
「あー、俺たちは奴隷同然の扱いを受けてきたからなぁ。読むことはなんとかできるんだが、名前以外は書くことができねえんだ」
「あっ! し、失礼しました! 冒険者になる方にはそういう方も結構多いんです。なので、代筆も承っていますよ!」
説明がところどころ抜けていることにどうにも信用に欠けるなとアリシアは思い、代筆は遠慮することにした。
「いえ、大丈夫です。二人とも、私が書いてもいいかしら?」
「も、申し訳ございません、アリシア様」
「俺らも文字を学ばないといけないかねぇ」
「無理にとは言わないけど、少しでも書けるようになっていけば、読みの方もはるかに楽になるから、時間があればやってみてもいいかもね」
そんな会話をしながらも、アリシアは手を止めることなく自分の書類、ゼーア、ケイナの書類と記入を進めていく。
そのまま受付嬢に書類を提出すると、彼女は不備がないことを確認すると、机の一番下にある大きな引き出しから無色透明の水晶を取り出してカウンターに置き、一度席を立つとカウンター裏の一番奥にある金庫から三つの銅色のバッジを手に戻ってきた。
「それでは最後に、こちらのバッジへ記載いただいた内容を登録させていただきますね」
そう口にした受付嬢は書類に重ねるようバッジを置き、水晶を書類とバッジの上部に置いた。
「まずはアリシアさんから水晶に両手を置いてください」
「わかりました」
内心でドキドキしながら、アリシアは両手を水晶に置いた。
すると、水晶から光が放たれると、その光は書類とバッジに収束していく。
しばらくして光が消えると、受付嬢はバッジを手に取りアリシアへ差し出した。
「こちらで登録は完了です。細かな説明はゼーアさん、ケイナさんの登録を終えてからいたしますね」
このままゼーアとケイナの登録も終えて、アリシアたちは晴れて冒険者になったのだった。
頑強な石造りの建物は威風堂々としており、ここだけが周囲の華やかな建物とは一線を画していた。
「王都では冒険者ギルドの前を通ることはあったが、ここはどうにも活気がないなぁ」
「魔導都市ですから、魔導士ギルドに人が多くいるんじゃないですか?」
「その可能性は高いわね。でもまあ、私たちは魔導士ではないし、やっぱり冒険者ギルドへ登録するべきよね」
アリシアはそう口にしたものの、二人の視線はそれを否定するものだった。
「……お前は魔法が使えるだろうが」
「……それも、とびっきりすごい魔法が!」
「はいはい。お世辞はいいから、さっさと冒険者ギルドに登録しましょう」
手をひらひらと振りながら歩き出したアリシアを追って、ゼーアとケイナも冒険者ギルドへ足を踏み入れる。
ギルド内は通りとは違い多くの人がひしめき合っていた。
依頼版にはいくつもの依頼書が張られており、冒険者たちは依頼を吟味して依頼書を剥がしていく。
とはいえ、あくまでもギルド内に多くの人がいるというだけで、その規模は王都の冒険者ギルドとは比較にならない。あちらでは依頼書を吟味する時間もごくわずかで、そうでなければ先に依頼を取られてしまうほど多くの冒険者が活動しているのだ。
「比べるもんじゃねえが、やっぱり少ねぇなぁ」
「アリシア様は魔導士ギルドに登録した方がいいんじゃないですか?」
「私だけ仲間外れにするつもりなの?」
「そ、そんなことは!」
「だったら登録しちゃいましょう。登録カウンターは……うん、あっちだね」
左奥のカウンターへ歩き出したアリシアたちは、暇そうにあくびをしていた受付嬢に声を掛けた。
「あの、すみませーん」
「ふああぁぁ。……ふえ?」
「冒険者登録をしたいんですけど」
「……登録? …………ええええぇぇええぇぇ!? と、登録ですか! ぼ、冒険者ギルドでええええぇぇっ!!」
受付嬢の悲鳴にも似た大声を聞いて、ギルド内にいた冒険者たちの視線がこちらに集まってきた。
どうしてそこまで驚かれてしまったか理解できず、アリシアたちは困惑してしまう。
「あぁ、申し訳ございません! しょ、少々お待ちを! えぇっと、書類はどこだっけ~?」
バタバタと動き出した受付嬢は、引き出しを何度も開け閉めしながら書類を取り出すと、額に汗を浮かべながらニコリとほほ笑んだ。
「えっと、その……こ、こちらにお名前、年齢、性別、扱う武器の記載をお願いいたします!」
「……は、はぁ」
アリシアたちは顔を見合わせ、困惑したままだが言われた通りに書類を記入していこうとしたが、名前を書いた時点でゼーアとケイナの手が止まったままだ。
「あれ? どうしたの?」
「えっと、その……」
「あー、俺たちは奴隷同然の扱いを受けてきたからなぁ。読むことはなんとかできるんだが、名前以外は書くことができねえんだ」
「あっ! し、失礼しました! 冒険者になる方にはそういう方も結構多いんです。なので、代筆も承っていますよ!」
説明がところどころ抜けていることにどうにも信用に欠けるなとアリシアは思い、代筆は遠慮することにした。
「いえ、大丈夫です。二人とも、私が書いてもいいかしら?」
「も、申し訳ございません、アリシア様」
「俺らも文字を学ばないといけないかねぇ」
「無理にとは言わないけど、少しでも書けるようになっていけば、読みの方もはるかに楽になるから、時間があればやってみてもいいかもね」
そんな会話をしながらも、アリシアは手を止めることなく自分の書類、ゼーア、ケイナの書類と記入を進めていく。
そのまま受付嬢に書類を提出すると、彼女は不備がないことを確認すると、机の一番下にある大きな引き出しから無色透明の水晶を取り出してカウンターに置き、一度席を立つとカウンター裏の一番奥にある金庫から三つの銅色のバッジを手に戻ってきた。
「それでは最後に、こちらのバッジへ記載いただいた内容を登録させていただきますね」
そう口にした受付嬢は書類に重ねるようバッジを置き、水晶を書類とバッジの上部に置いた。
「まずはアリシアさんから水晶に両手を置いてください」
「わかりました」
内心でドキドキしながら、アリシアは両手を水晶に置いた。
すると、水晶から光が放たれると、その光は書類とバッジに収束していく。
しばらくして光が消えると、受付嬢はバッジを手に取りアリシアへ差し出した。
「こちらで登録は完了です。細かな説明はゼーアさん、ケイナさんの登録を終えてからいたしますね」
このままゼーアとケイナの登録も終えて、アリシアたちは晴れて冒険者になったのだった。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる