87 / 99
第二章:自由と束縛と
第87話:冒険者アリシア 12
しおりを挟む
自らの足でアリシアとゼーアのもとに戻ってきたケイナだったが、その体には鎖で打ち据えられた跡が痛々しく残っていた。
「もう! 無理はしないでって言ったでしょう!」
「あれは生理的に無理な話ですよね? それに、私は無理をしていませんよ?」
「女の子の体にこんな傷……あの男、どうしてやりましょうか?」
「おいおい、すげぇ怖いこと言ってんぞ、アリシアよう」
「はっ! そんなことより、まずは傷の手当てをしなきゃだよね!」
呆れたようにゼーアが声を掛けると、ハッとした様子でアリシアはまたケイナへ視線を戻して両手を傷跡に添えた。
直後には暖かな白い光が顕現し、あっという間にケイナの体に残っていた傷跡が消えてしまった。
「……うわぁ、何度見てもすごいです! ありがとうございます、アリシア様!」
「これくらいどうってことないわよ!」
「それにしてもケイナもやるじゃないか。すこーしだけ見直したぜ」
「ゼーアさん! すこーしじゃなくて、いーっぱい見直してくださいよ!」
「それにはまだまだ足りんな!」
アリシアたちが普段通りの会話を繰り広げている中、ガルアは怒りにわなわなと拳を震わせ、眼光だけで射殺してしまえそうな視線をアリシアへ向けた。
「ふざけんじゃねえぞてめえら!」
「……すでにこちらは二勝、そちらの負けは決定ですね」
「バカ言ってんじゃねえぞ! 俺がいる! こんなザコに任せたのが間違いだったんだ、俺様がてめえら三人をまとめて相手してやるよ!」
そう言ったガルアは背負っていた大剣を抜き放つと、そのまま地面に突き刺した。
ゼーアが使う大剣よりも長く、太く、重い。
一撃の威力で言えばこの場にいる誰よりも強烈なものを持っているかもしれない。
「俺様がてめえら三人をぶっ殺せば、俺様の勝ちだ!」
「やり過ぎですよ、ガルア」
「外野は引っ込んでろ!」
「私は審判であり、ギルドマスターです。この場であなたを裁くこともできるのですよ?」
「……あぁん? 言ってくれるじゃねぇか、ババアが!」
怒りの矛先がアリシアからメリダへ向かおうとした――その時である。
「いいわ、やりましょう」
「……てめぇ、いい度胸してるじゃねえか!」
「アリシアさん、意味のない争いは避けるべきでは?」
「ここで避けたとしても、どうせ別の所で絡まれますよ。そうなると、そっちの方が面倒です」
「かかか、わかってるじゃねえか!」
アリシアの言葉にニヤリと笑いながら肯定を口にしたガルアを見て、メリダはため息をつきながら彼女の耳元で囁いた。
「……勝てるのですか? 彼は他の二人とは違い、強いですよ?」
「そうですか? 私から見れば、お父さんの方が強かったのでどうとでもなると思います」
ガルアを刺激しないよう囁き声で問い掛けたメリダだったが、それを気にすることもなくアリシアはいつもと同じトーンで返事をする。
その声は当然ながらガルアにも届いており、彼はこめかみをピクピクさせるほどの怒りを覚えていた。
「挑発も簡単ですね」
「……もしや、あなたも問題児ですか?」
「そんなつもりはありませんよ? ただ、理不尽に売られたケンカは叩き潰したい、それだけです」
「……はぁ。わかりましたが、無茶だけはしないように」
「お心遣い感謝いたします、メリダさん」
そう口にしたアリシアは最後に笑みを浮かべると、愛剣を抜いて訓練場の中央へ移動する。
ゼーアもケイナも彼女が負けるとは微塵も思っておらず、二人の姿を見たメリダも覚悟を決めた。
「二人とも、準備はよろしいですか?」
メリダが二人の間に立って確認を取ると、同時に頷いた。
「……わかりました。それでは試合――」
「ぶっ殺す!」
「ガルア! 止まりなさい!」
ガルアはメリダの開始の合図を待たず、制止の声も聞かず、アリシアめがけて突っ込んでいった。
「もう! 無理はしないでって言ったでしょう!」
「あれは生理的に無理な話ですよね? それに、私は無理をしていませんよ?」
「女の子の体にこんな傷……あの男、どうしてやりましょうか?」
「おいおい、すげぇ怖いこと言ってんぞ、アリシアよう」
「はっ! そんなことより、まずは傷の手当てをしなきゃだよね!」
呆れたようにゼーアが声を掛けると、ハッとした様子でアリシアはまたケイナへ視線を戻して両手を傷跡に添えた。
直後には暖かな白い光が顕現し、あっという間にケイナの体に残っていた傷跡が消えてしまった。
「……うわぁ、何度見てもすごいです! ありがとうございます、アリシア様!」
「これくらいどうってことないわよ!」
「それにしてもケイナもやるじゃないか。すこーしだけ見直したぜ」
「ゼーアさん! すこーしじゃなくて、いーっぱい見直してくださいよ!」
「それにはまだまだ足りんな!」
アリシアたちが普段通りの会話を繰り広げている中、ガルアは怒りにわなわなと拳を震わせ、眼光だけで射殺してしまえそうな視線をアリシアへ向けた。
「ふざけんじゃねえぞてめえら!」
「……すでにこちらは二勝、そちらの負けは決定ですね」
「バカ言ってんじゃねえぞ! 俺がいる! こんなザコに任せたのが間違いだったんだ、俺様がてめえら三人をまとめて相手してやるよ!」
そう言ったガルアは背負っていた大剣を抜き放つと、そのまま地面に突き刺した。
ゼーアが使う大剣よりも長く、太く、重い。
一撃の威力で言えばこの場にいる誰よりも強烈なものを持っているかもしれない。
「俺様がてめえら三人をぶっ殺せば、俺様の勝ちだ!」
「やり過ぎですよ、ガルア」
「外野は引っ込んでろ!」
「私は審判であり、ギルドマスターです。この場であなたを裁くこともできるのですよ?」
「……あぁん? 言ってくれるじゃねぇか、ババアが!」
怒りの矛先がアリシアからメリダへ向かおうとした――その時である。
「いいわ、やりましょう」
「……てめぇ、いい度胸してるじゃねえか!」
「アリシアさん、意味のない争いは避けるべきでは?」
「ここで避けたとしても、どうせ別の所で絡まれますよ。そうなると、そっちの方が面倒です」
「かかか、わかってるじゃねえか!」
アリシアの言葉にニヤリと笑いながら肯定を口にしたガルアを見て、メリダはため息をつきながら彼女の耳元で囁いた。
「……勝てるのですか? 彼は他の二人とは違い、強いですよ?」
「そうですか? 私から見れば、お父さんの方が強かったのでどうとでもなると思います」
ガルアを刺激しないよう囁き声で問い掛けたメリダだったが、それを気にすることもなくアリシアはいつもと同じトーンで返事をする。
その声は当然ながらガルアにも届いており、彼はこめかみをピクピクさせるほどの怒りを覚えていた。
「挑発も簡単ですね」
「……もしや、あなたも問題児ですか?」
「そんなつもりはありませんよ? ただ、理不尽に売られたケンカは叩き潰したい、それだけです」
「……はぁ。わかりましたが、無茶だけはしないように」
「お心遣い感謝いたします、メリダさん」
そう口にしたアリシアは最後に笑みを浮かべると、愛剣を抜いて訓練場の中央へ移動する。
ゼーアもケイナも彼女が負けるとは微塵も思っておらず、二人の姿を見たメリダも覚悟を決めた。
「二人とも、準備はよろしいですか?」
メリダが二人の間に立って確認を取ると、同時に頷いた。
「……わかりました。それでは試合――」
「ぶっ殺す!」
「ガルア! 止まりなさい!」
ガルアはメリダの開始の合図を待たず、制止の声も聞かず、アリシアめがけて突っ込んでいった。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる