90 / 99
第二章:自由と束縛と
第90話:冒険者アリシア 15
しおりを挟む
メリダの部屋は冒険者ギルドの二階、そこの一番奥にある。
ギルドマスターであるメリダを先頭にギルド内を進んでいたせいもあり、多くの冒険者たちから注目を集めていた。
「……なんだか、恥ずかしいです」
「ごめんなさいね、ケイナさん」
「こういう時は堂々としていればいいんだよ」
「そうは言いますけど、ゼーアさん」
「アリシアを見てみろ。全く気にしてないじゃねぇか」
「ん? 私?」
「……本当ですね。さすがはアリシア様です!」
特に周りからの視線を気にしていなかったアリシアからすると、ただメリダの後ろを進んでいただけなので何も感じておらず、ケイナやゼーアの言葉を聞いてもただ首を傾げなら足を進めるだけだった。
「こちらです」
そうこうしているうちに部屋の前に到着すると、メリダが扉を開けて中へ入るよう促してくれた。
アリシアからゼーア、ケイナと中へ入り、最後にリティが扉を閉めるとそのまま給湯室へ移動する。
アリシアたちは部屋の中央に置かれていた椅子に腰掛け、テーブルを挟んで向かい側にメリダが座る。
しばらくしてリティがお茶を運んできてそれぞれの前に置いていくと、一礼をしてから部屋を出ていった。
「……さて、メリダさん。雑談ではなく、確認がしたいということでよろしいですか?」
リティが出て行ってからすぐ、口を開いたのはアリシアだった。
「え? そ、そうなんですか?」
「普通に考えたらそうだろうよ」
ゼーアもそのことに気づいていたが、ケイナだけはメリダの言葉をそのまま信じており、まさかの展開だと驚いていた。
「仰る通りです。これは冒険者ギルドを預かる者として、最優先で聞いておかなければならないことなのです」
「それはここが魔導都市だから、でしょうか?」
彼女の言葉を受けてアリシアが答えると、メリダは驚きの表情を浮かべた。
「……気づいていらっしゃったのですか?」
「ラクドウィズに到着してからすぐ、二人からも魔導師ギルドに登録した方がって言われたものですから」
「そうでしたか。……ですが、ラクドウィズに限って言えば、ゼーアさんとケイナさんの意見の方が正しいのです。特に回復魔法を使えるアリシアさんは」
回復魔法持ちはどこに行っても貴重な存在として扱われている。
それは聖教会が聖魔法を使える人材を聖女候補として早期に確保し、外へ出さないことが原因の一つになっていた。
「アリシアさんの回復魔法は、魔力の流れがとても穏やかで淀みがない、とても素晴らしい魔法です。これだけの魔法が使えるのであれば、魔導師ギルドでも優遇されることでしょう」
「でも私は冒険者として登録をした。それが気になっているんですね?」
「はい。もしかするとアリシアさんは、魔導師ギルドからのスパイではないかとも考えたくらいです」
「スパイだと?」
「ア、アリシア様はそんなんじゃありませんよ!」
スパイという言葉に反応したのはゼーアとケイナだった。
二人はアリシアを尊敬しているからこそ声を荒らげたのだが、当の本人は特に気にした様子もなく口を開いた。
「まあ、そう思われても仕方がないですよね」
「アリシア!」
「アリシア様!」
「二人とも落ち着いて。私がスパイじゃないってことは二人がよく知っているでしょう?」
「……それではお聞きしたい。どうして魔導師ギルドではなく、冒険者ギルドに登録したのですか? ラクドウィズの冒険者ギルドは正直に申し上げて、衰退の一途を辿っているのですよ?」
アリシアが冒険者ギルドに登録した理由はいくつかある。
しかし、その中で一番の要因となるものを、ゼーアとケイナの前で答えるべきだと彼女は考えた。
「それは、ゼーアさんとケイナちゃんと離れたくなかったからですよ」
「……おいおい」
「……アリシア様!」
「……その言葉を信じてよろしいのですね?」
「はい。まあ、信じられないのも分かりますけどね。リティさんにも登録の時に驚かれましたから」
最後は苦笑交じりに答えたアリシアを見て、メリダも似たような表情を浮かべた。
「疑ってしまい、申し訳ありませんでした」
「本当に気にしないでください。それにしても、スパイが送られるほどに冒険者ギルドと魔導師ギルドは仲が悪いんですね」
率直な疑問を口にしただけだったのだが、メリダは深刻そうな表情で小さく頷いた。
ギルドマスターであるメリダを先頭にギルド内を進んでいたせいもあり、多くの冒険者たちから注目を集めていた。
「……なんだか、恥ずかしいです」
「ごめんなさいね、ケイナさん」
「こういう時は堂々としていればいいんだよ」
「そうは言いますけど、ゼーアさん」
「アリシアを見てみろ。全く気にしてないじゃねぇか」
「ん? 私?」
「……本当ですね。さすがはアリシア様です!」
特に周りからの視線を気にしていなかったアリシアからすると、ただメリダの後ろを進んでいただけなので何も感じておらず、ケイナやゼーアの言葉を聞いてもただ首を傾げなら足を進めるだけだった。
「こちらです」
そうこうしているうちに部屋の前に到着すると、メリダが扉を開けて中へ入るよう促してくれた。
アリシアからゼーア、ケイナと中へ入り、最後にリティが扉を閉めるとそのまま給湯室へ移動する。
アリシアたちは部屋の中央に置かれていた椅子に腰掛け、テーブルを挟んで向かい側にメリダが座る。
しばらくしてリティがお茶を運んできてそれぞれの前に置いていくと、一礼をしてから部屋を出ていった。
「……さて、メリダさん。雑談ではなく、確認がしたいということでよろしいですか?」
リティが出て行ってからすぐ、口を開いたのはアリシアだった。
「え? そ、そうなんですか?」
「普通に考えたらそうだろうよ」
ゼーアもそのことに気づいていたが、ケイナだけはメリダの言葉をそのまま信じており、まさかの展開だと驚いていた。
「仰る通りです。これは冒険者ギルドを預かる者として、最優先で聞いておかなければならないことなのです」
「それはここが魔導都市だから、でしょうか?」
彼女の言葉を受けてアリシアが答えると、メリダは驚きの表情を浮かべた。
「……気づいていらっしゃったのですか?」
「ラクドウィズに到着してからすぐ、二人からも魔導師ギルドに登録した方がって言われたものですから」
「そうでしたか。……ですが、ラクドウィズに限って言えば、ゼーアさんとケイナさんの意見の方が正しいのです。特に回復魔法を使えるアリシアさんは」
回復魔法持ちはどこに行っても貴重な存在として扱われている。
それは聖教会が聖魔法を使える人材を聖女候補として早期に確保し、外へ出さないことが原因の一つになっていた。
「アリシアさんの回復魔法は、魔力の流れがとても穏やかで淀みがない、とても素晴らしい魔法です。これだけの魔法が使えるのであれば、魔導師ギルドでも優遇されることでしょう」
「でも私は冒険者として登録をした。それが気になっているんですね?」
「はい。もしかするとアリシアさんは、魔導師ギルドからのスパイではないかとも考えたくらいです」
「スパイだと?」
「ア、アリシア様はそんなんじゃありませんよ!」
スパイという言葉に反応したのはゼーアとケイナだった。
二人はアリシアを尊敬しているからこそ声を荒らげたのだが、当の本人は特に気にした様子もなく口を開いた。
「まあ、そう思われても仕方がないですよね」
「アリシア!」
「アリシア様!」
「二人とも落ち着いて。私がスパイじゃないってことは二人がよく知っているでしょう?」
「……それではお聞きしたい。どうして魔導師ギルドではなく、冒険者ギルドに登録したのですか? ラクドウィズの冒険者ギルドは正直に申し上げて、衰退の一途を辿っているのですよ?」
アリシアが冒険者ギルドに登録した理由はいくつかある。
しかし、その中で一番の要因となるものを、ゼーアとケイナの前で答えるべきだと彼女は考えた。
「それは、ゼーアさんとケイナちゃんと離れたくなかったからですよ」
「……おいおい」
「……アリシア様!」
「……その言葉を信じてよろしいのですね?」
「はい。まあ、信じられないのも分かりますけどね。リティさんにも登録の時に驚かれましたから」
最後は苦笑交じりに答えたアリシアを見て、メリダも似たような表情を浮かべた。
「疑ってしまい、申し訳ありませんでした」
「本当に気にしないでください。それにしても、スパイが送られるほどに冒険者ギルドと魔導師ギルドは仲が悪いんですね」
率直な疑問を口にしただけだったのだが、メリダは深刻そうな表情で小さく頷いた。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる