逆行聖女は剣を取る

渡琉兎

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第二章:自由と束縛と

第90話:冒険者アリシア 15

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 メリダの部屋は冒険者ギルドの二階、そこの一番奥にある。
 ギルドマスターであるメリダを先頭にギルド内を進んでいたせいもあり、多くの冒険者たちから注目を集めていた。

「……なんだか、恥ずかしいです」
「ごめんなさいね、ケイナさん」
「こういう時は堂々としていればいいんだよ」
「そうは言いますけど、ゼーアさん」
「アリシアを見てみろ。全く気にしてないじゃねぇか」
「ん? 私?」
「……本当ですね。さすがはアリシア様です!」

 特に周りからの視線を気にしていなかったアリシアからすると、ただメリダの後ろを進んでいただけなので何も感じておらず、ケイナやゼーアの言葉を聞いてもただ首を傾げなら足を進めるだけだった。

「こちらです」

 そうこうしているうちに部屋の前に到着すると、メリダが扉を開けて中へ入るよう促してくれた。
 アリシアからゼーア、ケイナと中へ入り、最後にリティが扉を閉めるとそのまま給湯室へ移動する。
 アリシアたちは部屋の中央に置かれていた椅子に腰掛け、テーブルを挟んで向かい側にメリダが座る。
 しばらくしてリティがお茶を運んできてそれぞれの前に置いていくと、一礼をしてから部屋を出ていった。

「……さて、メリダさん。雑談ではなく、確認がしたいということでよろしいですか?」

 リティが出て行ってからすぐ、口を開いたのはアリシアだった。

「え? そ、そうなんですか?」
「普通に考えたらそうだろうよ」

 ゼーアもそのことに気づいていたが、ケイナだけはメリダの言葉をそのまま信じており、まさかの展開だと驚いていた。

「仰る通りです。これは冒険者ギルドを預かる者として、最優先で聞いておかなければならないことなのです」
「それはここが魔導都市だから、でしょうか?」

 彼女の言葉を受けてアリシアが答えると、メリダは驚きの表情を浮かべた。

「……気づいていらっしゃったのですか?」
「ラクドウィズに到着してからすぐ、二人からも魔導師ギルドに登録した方がって言われたものですから」
「そうでしたか。……ですが、ラクドウィズに限って言えば、ゼーアさんとケイナさんの意見の方が正しいのです。特に回復魔法を使えるアリシアさんは」

 回復魔法持ちはどこに行っても貴重な存在として扱われている。
 それは聖教会が聖魔法を使える人材を聖女候補として早期に確保し、外へ出さないことが原因の一つになっていた。

「アリシアさんの回復魔法は、魔力の流れがとても穏やかで淀みがない、とても素晴らしい魔法です。これだけの魔法が使えるのであれば、魔導師ギルドでも優遇されることでしょう」
「でも私は冒険者として登録をした。それが気になっているんですね?」
「はい。もしかするとアリシアさんは、魔導師ギルドからのスパイではないかとも考えたくらいです」
「スパイだと?」
「ア、アリシア様はそんなんじゃありませんよ!」

 スパイという言葉に反応したのはゼーアとケイナだった。
 二人はアリシアを尊敬しているからこそ声を荒らげたのだが、当の本人は特に気にした様子もなく口を開いた。

「まあ、そう思われても仕方がないですよね」
「アリシア!」
「アリシア様!」
「二人とも落ち着いて。私がスパイじゃないってことは二人がよく知っているでしょう?」
「……それではお聞きしたい。どうして魔導師ギルドではなく、冒険者ギルドに登録したのですか? ラクドウィズの冒険者ギルドは正直に申し上げて、衰退の一途を辿っているのですよ?」

 アリシアが冒険者ギルドに登録した理由はいくつかある。
 しかし、その中で一番の要因となるものを、ゼーアとケイナの前で答えるべきだと彼女は考えた。

「それは、ゼーアさんとケイナちゃんと離れたくなかったからですよ」
「……おいおい」
「……アリシア様!」
「……その言葉を信じてよろしいのですね?」
「はい。まあ、信じられないのも分かりますけどね。リティさんにも登録の時に驚かれましたから」

 最後は苦笑交じりに答えたアリシアを見て、メリダも似たような表情を浮かべた。

「疑ってしまい、申し訳ありませんでした」
「本当に気にしないでください。それにしても、スパイが送られるほどに冒険者ギルドと魔導師ギルドは仲が悪いんですね」

 率直な疑問を口にしただけだったのだが、メリダは深刻そうな表情で小さく頷いた。
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