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第二章:自由と束縛と
第91話:冒険者アリシア 16
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「魔導師ギルドの者たちは、自分たちだけいれば問題ないと考えているのです。なので冒険者ギルドは必要ない、排除しろという動きを常日頃から行っています」
メリダの言葉を聞いて、アリシアたちは驚きを隠せなかった。
「大きな都市には冒険者ギルドも魔導師ギルドも存在していますが、どこも共存しているはずですよね?」
「はい。冒険者の数が圧倒的に多い都市なんかでも、魔導師ギルドと友好関係を築いております。ですがラクドウィズでは、そうもいかないのです」
「まあ、魔法を万能と見る連中がいないわけでもないからな。魔導師が多い場所じゃあ、そういう奴らが集まっちまうのも仕方がないのかもな」
「で、でも、冒険者の人たちだって依頼をしっかりとこなしているじゃないですか!」
どこか納得してしまっているアリシアたちとは違い、ケイナだけは反論を口にする。
ケイナの意見はもっともだが、事はそう簡単に解決できるものではなかった。
「ラクドウィズでは領主も魔導師で、その周りを固める者たちも魔導士です。それに都市を守る者たちも騎士団ではなく魔導師団となっております」
「魔導師のオンパレードじゃねぇか」
「主要な施設を取りまとめる者たちも全て魔導師で構成されており、言ってしまえば私もその一人なのです」
「メリダ様も魔導師なのですか?」
ケイナの質問に、ゼーアがため息交じりに口を挟んだ。
「お前なぁ。エルフと言ったら、魔法を得意とする種族じゃねぇか」
「そ、それくらい私にも分かりますよ! でも、冒険者ギルドを任されているくらいですから、冒険者だって思うのが普通じゃないですか!」
「一応、私の場合は魔導師ギルドにも冒険者ギルドにも登録しております。まあ、魔導師ギルドには登録させられたと言った方がいいですけどね」
メリダは元々冒険者として活動しており、ランクもAランクまでいった凄腕冒険者だった。
しかし、依頼の最中にケガを負ってしまい冒険者を引退しようかと考えていたところへ、領主から冒険者ギルドのギルドマスターにならないかと打診された。
引退を考えたものの、冒険者の先輩として後輩を導く手助けができればと引き受けたのだが、その条件として魔導師ギルドへの登録が必須と言われてしまったのだ。
「冒険者が魔導師ギルドにも登録することが悪いことではないのです。むしろ、魔法が使えるなら登録を進めることだって他の都市ではありますから」
「でも、ラクドウィズでは魔導師ギルドに登録するハードルがとても高いんですよね」
「本当にアリシアさんは博識でいらっしゃる」
手放しに誉められたことでアリシアは少しだけ恥ずかしくなり、話をすぐに本題へ戻した。
「ど、どれくらい高いんですか?」
「回復魔法が使えればほぼクリアでしょう。そうでなければ、最低でも二属性の中級魔法が使えなければ登録できません」
「に、二属性の中級魔法だと!?」
「それって大変なんですか?」
「一番得意な属性でも中級魔法を使えるようになるのに二年から三年は掛かるって言われているから、二属性ってなると最短でも五年は掛かるでしょうね」
「……ご、五年も登録できずに、ただひたすら魔法の鍛錬をしなきゃいけないってことですか?」
ケイナの言葉にメリダは小さく首を横に振った。
「アリシアさんが仰ったのは魔法を得意とする者でも、ということです。普通の人であればさらに倍は掛かるかもしれませんね」
「倍!? ……それ、本当に登録できるんですか?」
「だからこそ、魔導師ギルドに所属している者たちはエリート中のエリートであり、自尊心の塊みたいな者が多いのですよ」
苦笑いを浮かべながらメリダが答えると、ケイナは口を開けたまま固まってしまった。
「魔導師ギルドに登録しなくてよかったな、アリシア」
「最初から登録するつもりなんてなかったですよ」
「ですがアリシアさん、気をつけてください」
ゼーアとのやり取りを聞いていたメリダは、アリシアに注意するよう警告した。
「先ほどもお話ししましたが、魔導師ギルドは冒険者ギルドを排除しようと動いております。アリシアさんが回復魔法を使えると知られれば、すぐにでも接触してくるでしょう」
「その時は丁重にお断りさせていただきます。それで引き下がらなかったら……まあ、力尽くになるかもしれませんが」
「俺たちも力を貸すからな」
「アリシア様は渡しません!」
「私もギルドマスターとして、全力でアリシアさんたちをお守りいたします」
疑問が解消されたメリダの表情は晴れやかであり、アリシアたちを守ると口にした時は真剣そのものだった。
「頼りにしています、メリダさん」
彼女の言葉にアリシアも笑みを返し、握手を交わしてから部屋をあとにしたのだった。
メリダの言葉を聞いて、アリシアたちは驚きを隠せなかった。
「大きな都市には冒険者ギルドも魔導師ギルドも存在していますが、どこも共存しているはずですよね?」
「はい。冒険者の数が圧倒的に多い都市なんかでも、魔導師ギルドと友好関係を築いております。ですがラクドウィズでは、そうもいかないのです」
「まあ、魔法を万能と見る連中がいないわけでもないからな。魔導師が多い場所じゃあ、そういう奴らが集まっちまうのも仕方がないのかもな」
「で、でも、冒険者の人たちだって依頼をしっかりとこなしているじゃないですか!」
どこか納得してしまっているアリシアたちとは違い、ケイナだけは反論を口にする。
ケイナの意見はもっともだが、事はそう簡単に解決できるものではなかった。
「ラクドウィズでは領主も魔導師で、その周りを固める者たちも魔導士です。それに都市を守る者たちも騎士団ではなく魔導師団となっております」
「魔導師のオンパレードじゃねぇか」
「主要な施設を取りまとめる者たちも全て魔導師で構成されており、言ってしまえば私もその一人なのです」
「メリダ様も魔導師なのですか?」
ケイナの質問に、ゼーアがため息交じりに口を挟んだ。
「お前なぁ。エルフと言ったら、魔法を得意とする種族じゃねぇか」
「そ、それくらい私にも分かりますよ! でも、冒険者ギルドを任されているくらいですから、冒険者だって思うのが普通じゃないですか!」
「一応、私の場合は魔導師ギルドにも冒険者ギルドにも登録しております。まあ、魔導師ギルドには登録させられたと言った方がいいですけどね」
メリダは元々冒険者として活動しており、ランクもAランクまでいった凄腕冒険者だった。
しかし、依頼の最中にケガを負ってしまい冒険者を引退しようかと考えていたところへ、領主から冒険者ギルドのギルドマスターにならないかと打診された。
引退を考えたものの、冒険者の先輩として後輩を導く手助けができればと引き受けたのだが、その条件として魔導師ギルドへの登録が必須と言われてしまったのだ。
「冒険者が魔導師ギルドにも登録することが悪いことではないのです。むしろ、魔法が使えるなら登録を進めることだって他の都市ではありますから」
「でも、ラクドウィズでは魔導師ギルドに登録するハードルがとても高いんですよね」
「本当にアリシアさんは博識でいらっしゃる」
手放しに誉められたことでアリシアは少しだけ恥ずかしくなり、話をすぐに本題へ戻した。
「ど、どれくらい高いんですか?」
「回復魔法が使えればほぼクリアでしょう。そうでなければ、最低でも二属性の中級魔法が使えなければ登録できません」
「に、二属性の中級魔法だと!?」
「それって大変なんですか?」
「一番得意な属性でも中級魔法を使えるようになるのに二年から三年は掛かるって言われているから、二属性ってなると最短でも五年は掛かるでしょうね」
「……ご、五年も登録できずに、ただひたすら魔法の鍛錬をしなきゃいけないってことですか?」
ケイナの言葉にメリダは小さく首を横に振った。
「アリシアさんが仰ったのは魔法を得意とする者でも、ということです。普通の人であればさらに倍は掛かるかもしれませんね」
「倍!? ……それ、本当に登録できるんですか?」
「だからこそ、魔導師ギルドに所属している者たちはエリート中のエリートであり、自尊心の塊みたいな者が多いのですよ」
苦笑いを浮かべながらメリダが答えると、ケイナは口を開けたまま固まってしまった。
「魔導師ギルドに登録しなくてよかったな、アリシア」
「最初から登録するつもりなんてなかったですよ」
「ですがアリシアさん、気をつけてください」
ゼーアとのやり取りを聞いていたメリダは、アリシアに注意するよう警告した。
「先ほどもお話ししましたが、魔導師ギルドは冒険者ギルドを排除しようと動いております。アリシアさんが回復魔法を使えると知られれば、すぐにでも接触してくるでしょう」
「その時は丁重にお断りさせていただきます。それで引き下がらなかったら……まあ、力尽くになるかもしれませんが」
「俺たちも力を貸すからな」
「アリシア様は渡しません!」
「私もギルドマスターとして、全力でアリシアさんたちをお守りいたします」
疑問が解消されたメリダの表情は晴れやかであり、アリシアたちを守ると口にした時は真剣そのものだった。
「頼りにしています、メリダさん」
彼女の言葉にアリシアも笑みを返し、握手を交わしてから部屋をあとにしたのだった。
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