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最強剣士
アルの指導③
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「魔力を読む。とアンナは言っているが、実際には少し違うかもしれない」
「そうなのですか?」
「あぁ。これは俺の場合なんだが、俺は魔力を感じ取るんだ」
「魔力を感じる……ですが、魔力というのは自分のものは感じ取ることができても、相手の魔力を感じ取ることはできないのでは?」
「普通はそうだ。さっきの話とも似てくるが、魔力操作も言ってみれば自分の魔力を操作しているのであって、相手の魔力をこちらが操作できるはずもない」
「だったら、どういうことなのですか?」
優秀なアンナでさえも、アルの話を聞いていく中で混乱し始めていた。
そこで、アルはいくつかのヒントを与えることにした。
「魔力操作を行うのに必要なものはなんだ?」
「魔力操作なら、属性の魔力を感じ取り、その魔力を強くイメージして形作ることです」
「その魔力はどこにあると思う?」
「どこにって、それは私の中にあるに決まっています。私の中から魔法は発動するのですから」
「それじゃあ、自分の中にある魔力を放つと、その魔力はどうなる?」
「空気と混ざり合い、消えていきます」
「うん、その通りだ」
「ア、アルお兄様、いったい何が言いたいのですか? それくらいなら私も習って──」
「最後に、自分の中から消えた魔力はどうやって回復するんだい?」
「私の中から消えた魔力、ですか?」
最後の質問にだけ、アンナは即答することができなかった。
一般的には寝れば回復すると言われており、実際に一晩寝れば多くの魔力が回復するので誰もそこを疑うようなことはしてこなかった。
だが、アルはたった一度だけ不思議な感覚を経験していた。
それは、自主練習の時に集中し過ぎて魔力を使い過ぎた時だ。
急に視界がぼやけ、周囲の景色が揺らぎ始めた。
椅子に座っていたから机に突っ伏すだけで大事には至らなかったが、立っている状態であれば倒れた拍子にどこかに頭を打っていたかもしれないとエミリアには怒鳴られた。
そして、その時に言われた言葉がある。
『──数日休めば、魔力は回復しますよ』
一晩ではなく、数日と言った。
魔力量にもよるのかな、とその当時のアルは考えていたが、実際はそうではなかった。
魔力というのは自分の中にあるだけではなく、この世界中どこにでも存在している。
一晩寝れば回復するという言葉は、空気中の魔力を体内に吸収して蓄積しているのだとアルは理解した。
体内に吸収してしまえば、後は勝手に自分の魔力として変換されて感じ取ることができるのだと解釈した。
だが、そこでさらに疑問が浮かび上がって来た。
──空気中に存在している魔力を感じ取ることはできないのかと。
自分の魔力として変換された魔力しか感じ取ることができないという定説を、アルは根底から疑い始めた。
魔力操作も、基礎魔法もやり尽くしていたアルは数日間だけ空気中の魔力を感じ取ることに時間を費やしたことがある。
そして、アルは感じ取ってしまった。空気中にある魔力の残滓を。
それはとても儚く、とても弱々しい魔力残滓だったが、確かに感じ取ることができた。
「……く、空気中の魔力なんて、本当に感じ取ることができるのですか? そもそも、本当にあるのですか?」
「うーん、そこに関してはあくまでも俺の推論というか、感覚の話になってきちゃうから信じてもらうしかないんだけど、そこから俺はもう一つの疑問に行きついたんだ」
「それは、なんですか?」
「空気中にある儚く弱々しい魔力の残滓を感じ取ることができたなら、強く猛々しいであろう人の中にある魔力、もしくは放たれた魔力を感じ取ることはできないかってね」
魔力を感じ取るなら、その力が強ければ強いほど感じ取りやすいはずだとアルは考えた。
当初はこの話を聞いたエミリアもアンナと同様に困惑していたが、すぐに検証に付き合ってくれた。
そして、エミリアという優秀な家庭教師がいたからこそ、アルの推論は自分の中での確信につながったのだ。
「エミリア先生が金属性で金属加工をしている時、先生の中からも加工されている金属からも、とても美しく緻密に制御された、それでいて力強さもある魔力を感じ取ることができたんだ」
「……お兄様、それって、ものすごいことではないのかしら?」
「エミリア先生もそう言っていたけど、多くの人間がこのことを検証するには無理があるだろうって言われてね。胸の内に秘めておくことにしたんだ」
「どうして検証できないの?」
「それは、自分の口で言うのは恥ずかしいんだが……」
頬を掻きながら目を逸らしたアルだったが、アンナの視線が真っすぐにこちらを見ていることはすぐに察しがついたので、仕方なく理由を教えることにした。
「……お、俺と同じくらいに魔力操作ができる人間がほとんどいないだろうって。だから、この方法は俺にしか当てはまらないから口にしてもバカにされるだけだろうって」
「えっと、それはつまり、アルお兄様は唯一無二の存在になられたと言うことですか?」
「そ、そんな大層な言い方をしないでくれよ!」
「でも、そう言うことですよね? それに、その言い方だとエミリア先生よりも魔力操作が上手いのだと言っているように聞こえましたが、そうなのですか?」
「……俺はそんなことを全く、全然、これっぽっちも思っていないんだけど、エミリア先生はそう思っているみたいだな」
ここまで話をして二人でエミリアの方へ視線を向ける。
話が聞こえていたわけではないだろうが、目が合った途端に大きく頷いて見せた。
「……アルお兄様、本当にすごいです!」
「……いや、俺はレベル1しか持ってないからな?」
最後はアルの予想外の方向へと話が進んでしまったが、自宅での訓練は初日を終えたのだった。
「そうなのですか?」
「あぁ。これは俺の場合なんだが、俺は魔力を感じ取るんだ」
「魔力を感じる……ですが、魔力というのは自分のものは感じ取ることができても、相手の魔力を感じ取ることはできないのでは?」
「普通はそうだ。さっきの話とも似てくるが、魔力操作も言ってみれば自分の魔力を操作しているのであって、相手の魔力をこちらが操作できるはずもない」
「だったら、どういうことなのですか?」
優秀なアンナでさえも、アルの話を聞いていく中で混乱し始めていた。
そこで、アルはいくつかのヒントを与えることにした。
「魔力操作を行うのに必要なものはなんだ?」
「魔力操作なら、属性の魔力を感じ取り、その魔力を強くイメージして形作ることです」
「その魔力はどこにあると思う?」
「どこにって、それは私の中にあるに決まっています。私の中から魔法は発動するのですから」
「それじゃあ、自分の中にある魔力を放つと、その魔力はどうなる?」
「空気と混ざり合い、消えていきます」
「うん、その通りだ」
「ア、アルお兄様、いったい何が言いたいのですか? それくらいなら私も習って──」
「最後に、自分の中から消えた魔力はどうやって回復するんだい?」
「私の中から消えた魔力、ですか?」
最後の質問にだけ、アンナは即答することができなかった。
一般的には寝れば回復すると言われており、実際に一晩寝れば多くの魔力が回復するので誰もそこを疑うようなことはしてこなかった。
だが、アルはたった一度だけ不思議な感覚を経験していた。
それは、自主練習の時に集中し過ぎて魔力を使い過ぎた時だ。
急に視界がぼやけ、周囲の景色が揺らぎ始めた。
椅子に座っていたから机に突っ伏すだけで大事には至らなかったが、立っている状態であれば倒れた拍子にどこかに頭を打っていたかもしれないとエミリアには怒鳴られた。
そして、その時に言われた言葉がある。
『──数日休めば、魔力は回復しますよ』
一晩ではなく、数日と言った。
魔力量にもよるのかな、とその当時のアルは考えていたが、実際はそうではなかった。
魔力というのは自分の中にあるだけではなく、この世界中どこにでも存在している。
一晩寝れば回復するという言葉は、空気中の魔力を体内に吸収して蓄積しているのだとアルは理解した。
体内に吸収してしまえば、後は勝手に自分の魔力として変換されて感じ取ることができるのだと解釈した。
だが、そこでさらに疑問が浮かび上がって来た。
──空気中に存在している魔力を感じ取ることはできないのかと。
自分の魔力として変換された魔力しか感じ取ることができないという定説を、アルは根底から疑い始めた。
魔力操作も、基礎魔法もやり尽くしていたアルは数日間だけ空気中の魔力を感じ取ることに時間を費やしたことがある。
そして、アルは感じ取ってしまった。空気中にある魔力の残滓を。
それはとても儚く、とても弱々しい魔力残滓だったが、確かに感じ取ることができた。
「……く、空気中の魔力なんて、本当に感じ取ることができるのですか? そもそも、本当にあるのですか?」
「うーん、そこに関してはあくまでも俺の推論というか、感覚の話になってきちゃうから信じてもらうしかないんだけど、そこから俺はもう一つの疑問に行きついたんだ」
「それは、なんですか?」
「空気中にある儚く弱々しい魔力の残滓を感じ取ることができたなら、強く猛々しいであろう人の中にある魔力、もしくは放たれた魔力を感じ取ることはできないかってね」
魔力を感じ取るなら、その力が強ければ強いほど感じ取りやすいはずだとアルは考えた。
当初はこの話を聞いたエミリアもアンナと同様に困惑していたが、すぐに検証に付き合ってくれた。
そして、エミリアという優秀な家庭教師がいたからこそ、アルの推論は自分の中での確信につながったのだ。
「エミリア先生が金属性で金属加工をしている時、先生の中からも加工されている金属からも、とても美しく緻密に制御された、それでいて力強さもある魔力を感じ取ることができたんだ」
「……お兄様、それって、ものすごいことではないのかしら?」
「エミリア先生もそう言っていたけど、多くの人間がこのことを検証するには無理があるだろうって言われてね。胸の内に秘めておくことにしたんだ」
「どうして検証できないの?」
「それは、自分の口で言うのは恥ずかしいんだが……」
頬を掻きながら目を逸らしたアルだったが、アンナの視線が真っすぐにこちらを見ていることはすぐに察しがついたので、仕方なく理由を教えることにした。
「……お、俺と同じくらいに魔力操作ができる人間がほとんどいないだろうって。だから、この方法は俺にしか当てはまらないから口にしてもバカにされるだけだろうって」
「えっと、それはつまり、アルお兄様は唯一無二の存在になられたと言うことですか?」
「そ、そんな大層な言い方をしないでくれよ!」
「でも、そう言うことですよね? それに、その言い方だとエミリア先生よりも魔力操作が上手いのだと言っているように聞こえましたが、そうなのですか?」
「……俺はそんなことを全く、全然、これっぽっちも思っていないんだけど、エミリア先生はそう思っているみたいだな」
ここまで話をして二人でエミリアの方へ視線を向ける。
話が聞こえていたわけではないだろうが、目が合った途端に大きく頷いて見せた。
「……アルお兄様、本当にすごいです!」
「……いや、俺はレベル1しか持ってないからな?」
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