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最強剣士
ダンジョン・二階層
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二階層の造りも一階層と同じだった。
見た目が全く変わらないので、ここが本当に二階層なのかと一瞬勘違いしてしまいそうになるが、間違いなく二階層だという理由が三人に近づいてきた。
「……ね、ねえ、アル。あれはなんなのかしら?」
「あれはスライムだな」
「ス、スライムですね……」
地面を這うようにしてゆっくりと近づいてくる青と緑の色をしたスライム。
青色が普通のスライムで、緑色が麻痺攻撃を持っているスライムだ。
スライムは色によって特性が変わること以外には強敵ではない。
場合によってはゴブリンよりも弱い可能性もあるのだが、なぜだか一階層には出てこなかった。
単純に生息域の違いなのか、はたまたゴブリンよりもスライムが実は強いということか。
実力に関しては実際に戦ってみなければ分からない。
「まずは、俺がやろう」
所見の相手を二人に任せるのは気が進まずアルが前に出たのだが、なぜだかクルルがその肩に手を置いた。
「ここは私に任せてくれない?」
「……構わないが、どうしたんた?」
「ふふふ……だって、あれはスライムなんでしょう? 兄さんから、スライムはゴブリンに並ぶ最弱の魔獣だって聞いてるんだもの!」
「……あー、うん、そうか」
最弱だから真っ先に戦うというのもあまり格好よくはないが、やる気になっているところへ釘を刺すのもよろしくないだろう。
アルはスライムをクルルに譲り後ろに下がる。
入れ替わりで前に出たクルルは杖を前に出した火属性の魔法を放つ。
「それに、複数の魔獣相手ならこの魔法があるもんね──フレイムダンス!」
模擬戦で見せたレベル2にあたる火属性魔法。
広範囲を攻撃できるフレイムダンスが二匹のスライムを包み込む。
水分量の多いスライムの表面が高温になりポコポコと気泡を作り出すと、煙が溢れ出してその面積を徐々に小さくしていく。
パッと見では確実にダメージを与えているように見える──だが、実際のところは異なっていた。
「……な、なんで死なないのよ!」
その姿は当初見つけた時よりも二回り程小さくなっているが、スライムは健在であり少しずつではあるがフレイムダンスの中を近づいて来ている。
クルルがスライムを倒しきれていない原因、それは核を攻撃できていないことにあった。
「クルル、スライムは体の中心に丸い核を持っている。その核を破壊しない限り倒すことはできないぞ」
「えっ! そ、そうなの? スライムって、最弱なんじゃないの!?」
「最弱だ。核を破壊すれば死ぬんだからな。だから、広範囲を攻撃できるフレイムダンスより、一点集中で攻撃できる魔法の方が効果的だ」
アルの助言を受けて、クルルはフレイムダンスを中断して別の魔法を発動させる。
「そういうことは、先に教えてよね! ──フレイムランス!」
再び杖を突き出すと、左右に炎の槍が顕現。
ダメージはないものの小さくなったスライムの動きは通常時でも遅いのだが輪をかけて遅くなっている。
「外すなんて、あり得ない! 行け!」
放たれたフレイムランスは、二匹のスライムの核を的確に貫く。
体を二度、三度と震わせたスライムは、核が砕けるのと同時に動かなくなった。
「……ふぅ、やったわね」
「魔獣の特徴を知っておくのもダンジョン攻略には必要になるからな」
「それはそうだけど……ちょっと、アル!」
「なんだ?」
「さっきも言ったけど、知ってたなら先に教えてよね! 無駄に魔法を使っちゃったじゃないのよ!」
クルルが頬を膨らませながら詰め寄って来たのだが、アルにも言い分はある。
「いや、俺が行こうとしたらクルルが前に出たんじゃないか。当然、スライムの特徴も知っていると思ったんだが」
「……そ、そんなもの、知るわけないじゃないのよ!」
「……そうなのか? リリーナはどうなんだ?」
「わ、私も魔獣については詳しくありません。パーティ訓練も急でしたし、日中はノワール家で連携を高める訓練でしたし」
二人とも魔獣についてはほとんど知らないと聞いて、アルはわずかだが不安を抱いてしまう。
それは二人に対してではなく、このパーティ訓練に対してだ。
魔獣の特徴を知らないままダンジョンに潜っているパーティが多いのではないか、もしそうだったとしたら浅い階層でも怪我人が続出するのではないかと。
「……だが、そこはスプラウスト先生が考えてくれているだろう」
そこまで考えて、アルは全てをペリナに丸投げすることにした。
今のアルはリリーナとクルルと三人でパーティを組んでいる。
勝手にリーダーにさせられてしまったが、リーダーだからこそ他のパーティの心配ではなく、二人の心配をするべきなのだ。
「それじゃあ、道中では魔獣の特徴も教えていこうと思うので、勉強しながら進もうか」
「えぇー! 面倒臭いよー!」
「ダンジョンで初見の魔獣と戦うのは危険を伴う。さっきのスライムみたいにな」
「ぐぬっ! ……それはそうだけど」
「私は学びたいです、アル様!」
「ありがとうございます、リリーナ様」
素直に学びたいと口にしたリリーナを見て、クルルも渋々ながら頷いてくれた。
「まあ、アルの言っていることは間違いじゃないもんね……分かった、分かったわよ!」
「よし、それじゃあ先に進もうか」
そこからは初見の魔獣が現れるたびに、アルの講義が行われた。
見た目が全く変わらないので、ここが本当に二階層なのかと一瞬勘違いしてしまいそうになるが、間違いなく二階層だという理由が三人に近づいてきた。
「……ね、ねえ、アル。あれはなんなのかしら?」
「あれはスライムだな」
「ス、スライムですね……」
地面を這うようにしてゆっくりと近づいてくる青と緑の色をしたスライム。
青色が普通のスライムで、緑色が麻痺攻撃を持っているスライムだ。
スライムは色によって特性が変わること以外には強敵ではない。
場合によってはゴブリンよりも弱い可能性もあるのだが、なぜだか一階層には出てこなかった。
単純に生息域の違いなのか、はたまたゴブリンよりもスライムが実は強いということか。
実力に関しては実際に戦ってみなければ分からない。
「まずは、俺がやろう」
所見の相手を二人に任せるのは気が進まずアルが前に出たのだが、なぜだかクルルがその肩に手を置いた。
「ここは私に任せてくれない?」
「……構わないが、どうしたんた?」
「ふふふ……だって、あれはスライムなんでしょう? 兄さんから、スライムはゴブリンに並ぶ最弱の魔獣だって聞いてるんだもの!」
「……あー、うん、そうか」
最弱だから真っ先に戦うというのもあまり格好よくはないが、やる気になっているところへ釘を刺すのもよろしくないだろう。
アルはスライムをクルルに譲り後ろに下がる。
入れ替わりで前に出たクルルは杖を前に出した火属性の魔法を放つ。
「それに、複数の魔獣相手ならこの魔法があるもんね──フレイムダンス!」
模擬戦で見せたレベル2にあたる火属性魔法。
広範囲を攻撃できるフレイムダンスが二匹のスライムを包み込む。
水分量の多いスライムの表面が高温になりポコポコと気泡を作り出すと、煙が溢れ出してその面積を徐々に小さくしていく。
パッと見では確実にダメージを与えているように見える──だが、実際のところは異なっていた。
「……な、なんで死なないのよ!」
その姿は当初見つけた時よりも二回り程小さくなっているが、スライムは健在であり少しずつではあるがフレイムダンスの中を近づいて来ている。
クルルがスライムを倒しきれていない原因、それは核を攻撃できていないことにあった。
「クルル、スライムは体の中心に丸い核を持っている。その核を破壊しない限り倒すことはできないぞ」
「えっ! そ、そうなの? スライムって、最弱なんじゃないの!?」
「最弱だ。核を破壊すれば死ぬんだからな。だから、広範囲を攻撃できるフレイムダンスより、一点集中で攻撃できる魔法の方が効果的だ」
アルの助言を受けて、クルルはフレイムダンスを中断して別の魔法を発動させる。
「そういうことは、先に教えてよね! ──フレイムランス!」
再び杖を突き出すと、左右に炎の槍が顕現。
ダメージはないものの小さくなったスライムの動きは通常時でも遅いのだが輪をかけて遅くなっている。
「外すなんて、あり得ない! 行け!」
放たれたフレイムランスは、二匹のスライムの核を的確に貫く。
体を二度、三度と震わせたスライムは、核が砕けるのと同時に動かなくなった。
「……ふぅ、やったわね」
「魔獣の特徴を知っておくのもダンジョン攻略には必要になるからな」
「それはそうだけど……ちょっと、アル!」
「なんだ?」
「さっきも言ったけど、知ってたなら先に教えてよね! 無駄に魔法を使っちゃったじゃないのよ!」
クルルが頬を膨らませながら詰め寄って来たのだが、アルにも言い分はある。
「いや、俺が行こうとしたらクルルが前に出たんじゃないか。当然、スライムの特徴も知っていると思ったんだが」
「……そ、そんなもの、知るわけないじゃないのよ!」
「……そうなのか? リリーナはどうなんだ?」
「わ、私も魔獣については詳しくありません。パーティ訓練も急でしたし、日中はノワール家で連携を高める訓練でしたし」
二人とも魔獣についてはほとんど知らないと聞いて、アルはわずかだが不安を抱いてしまう。
それは二人に対してではなく、このパーティ訓練に対してだ。
魔獣の特徴を知らないままダンジョンに潜っているパーティが多いのではないか、もしそうだったとしたら浅い階層でも怪我人が続出するのではないかと。
「……だが、そこはスプラウスト先生が考えてくれているだろう」
そこまで考えて、アルは全てをペリナに丸投げすることにした。
今のアルはリリーナとクルルと三人でパーティを組んでいる。
勝手にリーダーにさせられてしまったが、リーダーだからこそ他のパーティの心配ではなく、二人の心配をするべきなのだ。
「それじゃあ、道中では魔獣の特徴も教えていこうと思うので、勉強しながら進もうか」
「えぇー! 面倒臭いよー!」
「ダンジョンで初見の魔獣と戦うのは危険を伴う。さっきのスライムみたいにな」
「ぐぬっ! ……それはそうだけど」
「私は学びたいです、アル様!」
「ありがとうございます、リリーナ様」
素直に学びたいと口にしたリリーナを見て、クルルも渋々ながら頷いてくれた。
「まあ、アルの言っていることは間違いじゃないもんね……分かった、分かったわよ!」
「よし、それじゃあ先に進もうか」
そこからは初見の魔獣が現れるたびに、アルの講義が行われた。
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