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魔法競技会
個人部門・決勝戦②
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初手はレイリアが取った。
剣と魔法では射程に差があり過ぎる。アルディソードを持っているが、あくまでもこれは斬れる魔法装具なので魔法も放てる。
だが、アルが魔法を放とうとしていたとしても、レイリアの魔法発動速度はアルのそれを上回っていた。
「ウォーターアロー」
射速もアルが見てきた中でもトップクラス、平凡な実力者ならばこの一射で眉間を射抜かれていただろう。
事実、レイリアは決勝までこの方法で勝ち上がってきている。
たまたま平凡な実力者しかいなかったのか、それともレイリアが異常に強かったのか。
しかし、決勝戦に限って言えば今までの内容は全く当てはまらない。
「ふっ!」
鋭く振り抜かれたアルディソードがウォーターアローを斬って落としたのだ。
観客がどよめく中、相対しているレイリアも似たような心境だっただろう。
だが、目の前の光景が当たり前かのように、手を止めることなくウォーターアローを連射していた。
緩急を織り交ぜて放たれるウォーターアローを全て斬り捨てるなどできはしない、そう考える者もいただろう。
しかし、アルはそんなできはしないことをやってのける男なのである。
「これじゃあ、埒が明かないわね」
「なら、別の手で、攻めてくるか?」
「いいえ。これでダメなら──追加するまでよ」
前方に突き出されていた右手の魔法装具に加えて、今度は左手の魔法装具も突き出される。
そして、変わりなく放たれるウォーターアローとは別に、アルが立つ舞台の四方からアーススピアが襲い掛かってきた。
ウォーターアローに射抜かれるか、アーススピアに貫かれるか。
二つに一つの未来しか想像できなかっただろうが、アルには別の未来が待っていた。
「これも、凌ぐのね!」
全てをアルディソードで対処するのは不可能だと判断したアルは、速くとも遠くから迫ってくるウォーターアローを体術で回避しつつ、完全なる同時攻撃を仕掛けてきたアーススピアの一ヶ所を細切れにして包囲を脱した。
「ウッドロープ」
「甘いわ、ウッドロープ」
お互いから放たれたウッドロープが舞台の中央で絡み合い、激しいせめぎ合いを繰り広げる。
しかし、このせめぎ合いはそう長くは続かず、徐々にレイリアが押し込んでいく。
「基本となる属性レベルに差があるみたいね」
「まあ、俺はレベル1だからな」
「あら、そんなことをバラしてもいいのかしら?」
「どうせ、調べはついているんだろ?」
「その通りだけ──!」
目の前で起きている状況は当然だとアルは認識している。
レベルの違いはそうそう覆るものではなく、魔法装具を使ってもせいぜい一つの差くらいしか埋まらないだろう。
アルの木属性レベルが1なのに対して、レイリアのレベルは4。
さらに言えば、魔法装具を使っているのはアルだけではない。
むしろ、一瞬でもせめぎ合いに持っていけたこと自体があり得ない状況だった。
だが、分かっていたとしてもただで終わる男ではない。
レイリアが他属性の魔法を同時に使用しているように、アルもそれが可能である。
このまま押し切ろうと思っていた矢先、レイリアの眼前に飛び込んできたのは今まさにレイリアが放っているウォーターアローだったのだ。
「……魔力融合を使えるのだから、当然よね」
試合開始前から予想していたことだ。
だが、予想に反して自分優位に進んでいた試合経過から、心のどこかに油断が生じていたのかもしれないと気を引き締める。
さらに、こうなるようにわざと押されている振りをしていたのではないのかとさえ思い始めていた。
「演技も上手なのね」
「何のことだ?」
「それも演技かしら? まあ、なんにせよ、これ以上はやらせないわ」
「この程度で終わる奴じゃないことは、知っている」
一度攻めの手を加えたのだからと、アルは自ら前に出る決断を下す。
ウォーターアローの射線上に幾重にもアースウォールを作り出して時間を作り、そのままファイアボルトを放つ。
自ら作り出したアースウォールを砕きながらもレイリアへ向かっていくファイアボルトだったが、アルよりも高密度なアースウォールがそれを防いだ。
しかし、砕けたアースウォールが砂煙を巻き上げて視界が悪くなると、アルは足音を立てることなく素早く移動を開始──その矢先である。
「……ん?」
足元がふらつき、眩暈までしてしまう。
このままではマズいと判断したアルは、身を潜めるためのアースウォールを再度作り出して深呼吸をする。
次いで身体的損傷がないかを確認したが、これも見当たらない。
今起きている現象に何か理由を付けるとするならば、その答えは一つしかなかった。
「……闇属性か」
「ご明察」
「ちっ!」
突如聞こえてきたレイリアの声に、身を潜めていても意味がないと悟ったアルは一旦魔法での攻防を諦めた。
魔法の腕前はレイリアに分があると割り切り、自分にしかないものに集中していく。
「……マリノワーナ流剣術、参る」
全ての感覚を研ぎ澄ませたアルは、ゆっくりとまぶたを閉じた。
剣と魔法では射程に差があり過ぎる。アルディソードを持っているが、あくまでもこれは斬れる魔法装具なので魔法も放てる。
だが、アルが魔法を放とうとしていたとしても、レイリアの魔法発動速度はアルのそれを上回っていた。
「ウォーターアロー」
射速もアルが見てきた中でもトップクラス、平凡な実力者ならばこの一射で眉間を射抜かれていただろう。
事実、レイリアは決勝までこの方法で勝ち上がってきている。
たまたま平凡な実力者しかいなかったのか、それともレイリアが異常に強かったのか。
しかし、決勝戦に限って言えば今までの内容は全く当てはまらない。
「ふっ!」
鋭く振り抜かれたアルディソードがウォーターアローを斬って落としたのだ。
観客がどよめく中、相対しているレイリアも似たような心境だっただろう。
だが、目の前の光景が当たり前かのように、手を止めることなくウォーターアローを連射していた。
緩急を織り交ぜて放たれるウォーターアローを全て斬り捨てるなどできはしない、そう考える者もいただろう。
しかし、アルはそんなできはしないことをやってのける男なのである。
「これじゃあ、埒が明かないわね」
「なら、別の手で、攻めてくるか?」
「いいえ。これでダメなら──追加するまでよ」
前方に突き出されていた右手の魔法装具に加えて、今度は左手の魔法装具も突き出される。
そして、変わりなく放たれるウォーターアローとは別に、アルが立つ舞台の四方からアーススピアが襲い掛かってきた。
ウォーターアローに射抜かれるか、アーススピアに貫かれるか。
二つに一つの未来しか想像できなかっただろうが、アルには別の未来が待っていた。
「これも、凌ぐのね!」
全てをアルディソードで対処するのは不可能だと判断したアルは、速くとも遠くから迫ってくるウォーターアローを体術で回避しつつ、完全なる同時攻撃を仕掛けてきたアーススピアの一ヶ所を細切れにして包囲を脱した。
「ウッドロープ」
「甘いわ、ウッドロープ」
お互いから放たれたウッドロープが舞台の中央で絡み合い、激しいせめぎ合いを繰り広げる。
しかし、このせめぎ合いはそう長くは続かず、徐々にレイリアが押し込んでいく。
「基本となる属性レベルに差があるみたいね」
「まあ、俺はレベル1だからな」
「あら、そんなことをバラしてもいいのかしら?」
「どうせ、調べはついているんだろ?」
「その通りだけ──!」
目の前で起きている状況は当然だとアルは認識している。
レベルの違いはそうそう覆るものではなく、魔法装具を使ってもせいぜい一つの差くらいしか埋まらないだろう。
アルの木属性レベルが1なのに対して、レイリアのレベルは4。
さらに言えば、魔法装具を使っているのはアルだけではない。
むしろ、一瞬でもせめぎ合いに持っていけたこと自体があり得ない状況だった。
だが、分かっていたとしてもただで終わる男ではない。
レイリアが他属性の魔法を同時に使用しているように、アルもそれが可能である。
このまま押し切ろうと思っていた矢先、レイリアの眼前に飛び込んできたのは今まさにレイリアが放っているウォーターアローだったのだ。
「……魔力融合を使えるのだから、当然よね」
試合開始前から予想していたことだ。
だが、予想に反して自分優位に進んでいた試合経過から、心のどこかに油断が生じていたのかもしれないと気を引き締める。
さらに、こうなるようにわざと押されている振りをしていたのではないのかとさえ思い始めていた。
「演技も上手なのね」
「何のことだ?」
「それも演技かしら? まあ、なんにせよ、これ以上はやらせないわ」
「この程度で終わる奴じゃないことは、知っている」
一度攻めの手を加えたのだからと、アルは自ら前に出る決断を下す。
ウォーターアローの射線上に幾重にもアースウォールを作り出して時間を作り、そのままファイアボルトを放つ。
自ら作り出したアースウォールを砕きながらもレイリアへ向かっていくファイアボルトだったが、アルよりも高密度なアースウォールがそれを防いだ。
しかし、砕けたアースウォールが砂煙を巻き上げて視界が悪くなると、アルは足音を立てることなく素早く移動を開始──その矢先である。
「……ん?」
足元がふらつき、眩暈までしてしまう。
このままではマズいと判断したアルは、身を潜めるためのアースウォールを再度作り出して深呼吸をする。
次いで身体的損傷がないかを確認したが、これも見当たらない。
今起きている現象に何か理由を付けるとするならば、その答えは一つしかなかった。
「……闇属性か」
「ご明察」
「ちっ!」
突如聞こえてきたレイリアの声に、身を潜めていても意味がないと悟ったアルは一旦魔法での攻防を諦めた。
魔法の腕前はレイリアに分があると割り切り、自分にしかないものに集中していく。
「……マリノワーナ流剣術、参る」
全ての感覚を研ぎ澄ませたアルは、ゆっくりとまぶたを閉じた。
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