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第24話:ゴブリンの巣
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洞窟の中は、思っていたよりも光が差し込んでいた。
「光魔法はまだですか?」
「これくらい光があれば、今はまだ大丈夫だよ」
「……そうですか」
やる気があるところ申し訳ないが、今は間違いなく必要ない。
そもそも、光が差し込まない、深い場所でという話だったはずなのだが、レミティアは入口付近からやる気満々になっており、俺が答えると見た目にも分かるくらいに落ち込んでしまった。
「レミティア様が活躍する場はすぐにやってきますよ!」
「……そうよね、リディア! その時はしっかりと仕事をこなしてみせるわ、アリウス!」
「そ、その時はよろしく頼むよ」
……どうしてこんなにもやる気満々なのだろうか? まあ、やる気があるのはいいことなんだけど。
そんなことを考えながら進んでいくと早速、洞窟を根城にしている魔獣の一匹を見つけた。
「……とりあえずは、普通のゴブリンだな」
見つけたゴブリンは、どこにでもいるような、ごく普通のゴブリンだった。
しかし、まだ洞窟に入ってさほど奥には進んでいない。
ゴブリンの上位種がいるとすれば、もっと奥の方だろう。
「見つかれば俺たちの存在が奥にいるだろう親玉にバレてしまいます。一撃必殺でいきましょう」
「ふむ、ならば私は遠慮しておくとしようか」
俺の言葉を受けて、バズズさんがそう口にした。
「よろしいのですか、父上?」
「私は力こそ強いが、速さはリディアに及ばん。おそらくだが、アリウス殿にも及ばんだろう。ならば、老骨は見守り、若者に任せるとしよう」
バズズさんは俺たちを立ててくれているが、本気になればゴブリンを瞬殺するくらい簡単だろう。
これは、期待に応えないといけないな。
「それじゃあ俺が――」
「いいえ、アリウス殿。私が参りましょう」
俺が剣に手を伸ばしながら口を開くと、言葉を遮ってリディアが言葉を発した。
「……いいのか?」
「はい。それに、父上の期待に応えるのは、まず私でなければ!」
リディアの主張が反発心からくるものであれば止めていたが、彼女のそれは父親への対抗心からだ。
やる気に満ちており、絶対にできるという自信も伝わってくる。
「……分かった、任せるよ」
「ありがたい」
俺の言葉に一言で返すと、リディアは腰に提げた剣の柄を握り、集中を研ぎ澄ませていく。
「……参る」
ぼそりとそう口にした直後、リディアは風と化したかのような速度で洞窟の中を駆け出し、ゴブリンを自らの間合いに捉えた。
『ゴブ――!?』
ゴブリンが気づいたのが早かったのか、それとも首を刎ね飛ばされたのが早かったのか。
どちらにしても、ゴブリンは仲間を呼ぶことなく、その場で首と胴が離れた状態で倒れた。
「……こんなものかな」
どうやら俺は、リディアの実力を正確に把握できていなかったらしい。
これだけの一撃を放てるのだから、一瞬の実力で見れば俺を超えているかもしれない。
……はは、どうやらまだまだ、精進しなければならないようだ。
そのことに気づかせてくれたリディアには、礼を言わなければならないかもしれないな。
「お疲れ様、リディア」
「これくらい、どうってことはありませんよ!」
「そんなこと言って、油断していたら足元をすくわれるわよ?」
「レミティア様までそんなことを、十分に警戒していますからそのようなことは――」
――カランコロンカラン。
「……あ」
「「「……え?」」」
どこか照れたように頬を掻いていたリディアだったが、わずかに後方へ足を動かした直後、乾いた木と木がぶつかり合う音が洞窟内に響き渡った。
「……あ、あはは~。これって、もしかして~?」
「こんの――バカもんがああああっ!!」
『『『『ゴブゴブゴブゴブウウウウッ!!』』』』
汗が滝のように噴き出したリディアへバズズさんが怒鳴り声を響かせるのとほぼ同時に、洞窟の奥からゴブリンたちの敵意に満ちた声が聞こえてきた。
「光魔法はまだですか?」
「これくらい光があれば、今はまだ大丈夫だよ」
「……そうですか」
やる気があるところ申し訳ないが、今は間違いなく必要ない。
そもそも、光が差し込まない、深い場所でという話だったはずなのだが、レミティアは入口付近からやる気満々になっており、俺が答えると見た目にも分かるくらいに落ち込んでしまった。
「レミティア様が活躍する場はすぐにやってきますよ!」
「……そうよね、リディア! その時はしっかりと仕事をこなしてみせるわ、アリウス!」
「そ、その時はよろしく頼むよ」
……どうしてこんなにもやる気満々なのだろうか? まあ、やる気があるのはいいことなんだけど。
そんなことを考えながら進んでいくと早速、洞窟を根城にしている魔獣の一匹を見つけた。
「……とりあえずは、普通のゴブリンだな」
見つけたゴブリンは、どこにでもいるような、ごく普通のゴブリンだった。
しかし、まだ洞窟に入ってさほど奥には進んでいない。
ゴブリンの上位種がいるとすれば、もっと奥の方だろう。
「見つかれば俺たちの存在が奥にいるだろう親玉にバレてしまいます。一撃必殺でいきましょう」
「ふむ、ならば私は遠慮しておくとしようか」
俺の言葉を受けて、バズズさんがそう口にした。
「よろしいのですか、父上?」
「私は力こそ強いが、速さはリディアに及ばん。おそらくだが、アリウス殿にも及ばんだろう。ならば、老骨は見守り、若者に任せるとしよう」
バズズさんは俺たちを立ててくれているが、本気になればゴブリンを瞬殺するくらい簡単だろう。
これは、期待に応えないといけないな。
「それじゃあ俺が――」
「いいえ、アリウス殿。私が参りましょう」
俺が剣に手を伸ばしながら口を開くと、言葉を遮ってリディアが言葉を発した。
「……いいのか?」
「はい。それに、父上の期待に応えるのは、まず私でなければ!」
リディアの主張が反発心からくるものであれば止めていたが、彼女のそれは父親への対抗心からだ。
やる気に満ちており、絶対にできるという自信も伝わってくる。
「……分かった、任せるよ」
「ありがたい」
俺の言葉に一言で返すと、リディアは腰に提げた剣の柄を握り、集中を研ぎ澄ませていく。
「……参る」
ぼそりとそう口にした直後、リディアは風と化したかのような速度で洞窟の中を駆け出し、ゴブリンを自らの間合いに捉えた。
『ゴブ――!?』
ゴブリンが気づいたのが早かったのか、それとも首を刎ね飛ばされたのが早かったのか。
どちらにしても、ゴブリンは仲間を呼ぶことなく、その場で首と胴が離れた状態で倒れた。
「……こんなものかな」
どうやら俺は、リディアの実力を正確に把握できていなかったらしい。
これだけの一撃を放てるのだから、一瞬の実力で見れば俺を超えているかもしれない。
……はは、どうやらまだまだ、精進しなければならないようだ。
そのことに気づかせてくれたリディアには、礼を言わなければならないかもしれないな。
「お疲れ様、リディア」
「これくらい、どうってことはありませんよ!」
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「……あ」
「「「……え?」」」
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「……あ、あはは~。これって、もしかして~?」
「こんの――バカもんがああああっ!!」
『『『『ゴブゴブゴブゴブウウウウッ!!』』』』
汗が滝のように噴き出したリディアへバズズさんが怒鳴り声を響かせるのとほぼ同時に、洞窟の奥からゴブリンたちの敵意に満ちた声が聞こえてきた。
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