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第25話:ゴブリンの上位種
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リディアが足に引っ掛けたのは、ゴブリンが仕掛けた罠の一つ、鳴子。
こちらに被害は出ないものの、奥にいるゴブリンへ侵入者を知らせるものだ。
「まったくお前という奴は! 気を抜きすぎだ!」
「そ、そんなつもりは――」
「つもりがなくてもそうなってしまったのだから、気を抜いていることに変わりはない!」
「も、もももも、申し訳ございませんでした!!」
どれだけ言葉を尽くそうとも、バズズさんの怒りが収まることはないと悟ったリディアは、慌てた表情で謝罪を口にした。
「リディア!」
「は、はい! 本当に申し訳ございませ――」
「謝罪はあとでいい! 来るぞ、ゴブリンの群れが!」
まずはこの場を乗り切ることが先決だと俺が口にすると、リディアはハッとしたあと、即座に表情を引き締め直す。
すでにバズズさんは臨戦態勢を取っており、自らの背後にレミティアを移動させている。
「前に出てゴブリンを殲滅する。リディア、付き合ってもらうぞ!」
「任せてください!」
「油断するでないぞ、二人とも!」
「「はい!」」
バズズさんの助言に返事をすると、俺とリディアが前へ駆け出す。
何故なら通路の先を曲がったところに、ゴブリンが殺到してきたからだ。
「柔剣!」
剛剣は狭い通路では扱い難い。
それも仲間と一緒に剣を振るうのであれば、なおさらだ。
瞬間的な動きのキレ、そして状況に合わせて柔軟に対応することができる柔剣が、より状況に適していると判断する。
「エアリアル!」
すると横からリディアの声が響いてきた。
エアリアルは確か、風魔法だったはず。
どうやらリディアが授かったスキルは風魔法のようだ。
「先行します! こぼれたゴブリンを!」
「任せろ!」
俺以上の加速を見せたリディアがゴブリンの群れへ突っ込んでいくと、一振りで先頭を走っていた数匹を切り裂いていく。
「うおおおおおおおおっ!!」
雄たけびをあげながら剣を振るう姿は、間違いなく騎士そのものの姿だ。
『ゴブゴブゴブゴブ!』
とはいえ、気合いだけでは一人で全てのゴブリンを倒すことはできない。
リディアの剣が届かない範囲から回り込んできたゴブリンを、俺は背後から切り捨てていく。
「はあっ!」
『ゴブリャ!?』
その数はごく少数で、俺のやることはほとんどない。
それだけリディアが風魔法を丁寧に使い、漏れが出ないようゴブリンを倒してくれているのだ。
「リディアの奴、すごい気迫だな」
そんな感想が、思わず口から零れ落ちる。
それほどにリディアから伝わってくる気迫が強烈なものだった。
「私のミスは、私自身が取り返す!」
リディアにとって、鳴子を鳴らしてしまった自身のミスを挽回したいという思いが強いようだ。
対抗心と、挽回したいという思い。
それらが今のリディアの動力源になっているはず。
「いきました、アリウス殿!」
「分かった!」
それなら俺は、俺のやるべきことを冷静に遂行するだけだ。
リディアが指示した通り、数匹のゴブリンが彼女の横を抜けてくる。
今回は背後を狙うわけではなく、まっすぐにこちらへ迫ってきている。
「舐められたものだな!」
『ゴブリャ!?』
俺が鋭く剣を振り抜くと、抜けてきたゴブリンの胴が上下に分かたれた。
そのまま動きを止めることなく剣を振り続けたことで、抜けてきた数匹のゴブリンを一瞬にして片付けてしまう。
こうなると、再びリディア任せになってしまう。
俺にできることはなくなり、再びゴブリンが抜けてきたタイミングで剣を振るう。
しかし、ここで俺はおかしなことに気がついた。
奥から出てきているのは普通のゴブリンだけで、上位種の姿が見当たらない。
これだけの数のゴブリンが集まっているのだから、絶対に上位種はいるはずなのだ。
「……危ない! リディア!」
「アリウス殿――!?」
俺が声をあげたのと、洞窟の奥から炎が噴き出したのは、ほとんど同時だった。
リディアは間一髪で大きく後方へと飛び退き、炎の直撃を回避することに成功した。
「大丈夫か?」
「……ア、アリウス殿の声がなければ、危なかった」
そう口にしたリディアだったが、その視線は俺ではなく、炎が飛んできた通路の奥を睨みつけている。
あれはほぼ確実に魔法だろう。
ということは、上位種だとすればゴブリンウィザードか、ゴブリンマジシャンが妥当だろうか。
「…………おいおい、マジか?」
しかし、俺の予想は最悪の形で外れてしまう。
同じゴブリンでも、実力が拮抗していれば上位種に従わないことも多い。
だが、俺たちの目の前に現れたのは、ゴブリンの上位種の中でも、実力が高い種ばかりだった。
こちらに被害は出ないものの、奥にいるゴブリンへ侵入者を知らせるものだ。
「まったくお前という奴は! 気を抜きすぎだ!」
「そ、そんなつもりは――」
「つもりがなくてもそうなってしまったのだから、気を抜いていることに変わりはない!」
「も、もももも、申し訳ございませんでした!!」
どれだけ言葉を尽くそうとも、バズズさんの怒りが収まることはないと悟ったリディアは、慌てた表情で謝罪を口にした。
「リディア!」
「は、はい! 本当に申し訳ございませ――」
「謝罪はあとでいい! 来るぞ、ゴブリンの群れが!」
まずはこの場を乗り切ることが先決だと俺が口にすると、リディアはハッとしたあと、即座に表情を引き締め直す。
すでにバズズさんは臨戦態勢を取っており、自らの背後にレミティアを移動させている。
「前に出てゴブリンを殲滅する。リディア、付き合ってもらうぞ!」
「任せてください!」
「油断するでないぞ、二人とも!」
「「はい!」」
バズズさんの助言に返事をすると、俺とリディアが前へ駆け出す。
何故なら通路の先を曲がったところに、ゴブリンが殺到してきたからだ。
「柔剣!」
剛剣は狭い通路では扱い難い。
それも仲間と一緒に剣を振るうのであれば、なおさらだ。
瞬間的な動きのキレ、そして状況に合わせて柔軟に対応することができる柔剣が、より状況に適していると判断する。
「エアリアル!」
すると横からリディアの声が響いてきた。
エアリアルは確か、風魔法だったはず。
どうやらリディアが授かったスキルは風魔法のようだ。
「先行します! こぼれたゴブリンを!」
「任せろ!」
俺以上の加速を見せたリディアがゴブリンの群れへ突っ込んでいくと、一振りで先頭を走っていた数匹を切り裂いていく。
「うおおおおおおおおっ!!」
雄たけびをあげながら剣を振るう姿は、間違いなく騎士そのものの姿だ。
『ゴブゴブゴブゴブ!』
とはいえ、気合いだけでは一人で全てのゴブリンを倒すことはできない。
リディアの剣が届かない範囲から回り込んできたゴブリンを、俺は背後から切り捨てていく。
「はあっ!」
『ゴブリャ!?』
その数はごく少数で、俺のやることはほとんどない。
それだけリディアが風魔法を丁寧に使い、漏れが出ないようゴブリンを倒してくれているのだ。
「リディアの奴、すごい気迫だな」
そんな感想が、思わず口から零れ落ちる。
それほどにリディアから伝わってくる気迫が強烈なものだった。
「私のミスは、私自身が取り返す!」
リディアにとって、鳴子を鳴らしてしまった自身のミスを挽回したいという思いが強いようだ。
対抗心と、挽回したいという思い。
それらが今のリディアの動力源になっているはず。
「いきました、アリウス殿!」
「分かった!」
それなら俺は、俺のやるべきことを冷静に遂行するだけだ。
リディアが指示した通り、数匹のゴブリンが彼女の横を抜けてくる。
今回は背後を狙うわけではなく、まっすぐにこちらへ迫ってきている。
「舐められたものだな!」
『ゴブリャ!?』
俺が鋭く剣を振り抜くと、抜けてきたゴブリンの胴が上下に分かたれた。
そのまま動きを止めることなく剣を振り続けたことで、抜けてきた数匹のゴブリンを一瞬にして片付けてしまう。
こうなると、再びリディア任せになってしまう。
俺にできることはなくなり、再びゴブリンが抜けてきたタイミングで剣を振るう。
しかし、ここで俺はおかしなことに気がついた。
奥から出てきているのは普通のゴブリンだけで、上位種の姿が見当たらない。
これだけの数のゴブリンが集まっているのだから、絶対に上位種はいるはずなのだ。
「……危ない! リディア!」
「アリウス殿――!?」
俺が声をあげたのと、洞窟の奥から炎が噴き出したのは、ほとんど同時だった。
リディアは間一髪で大きく後方へと飛び退き、炎の直撃を回避することに成功した。
「大丈夫か?」
「……ア、アリウス殿の声がなければ、危なかった」
そう口にしたリディアだったが、その視線は俺ではなく、炎が飛んできた通路の奥を睨みつけている。
あれはほぼ確実に魔法だろう。
ということは、上位種だとすればゴブリンウィザードか、ゴブリンマジシャンが妥当だろうか。
「…………おいおい、マジか?」
しかし、俺の予想は最悪の形で外れてしまう。
同じゴブリンでも、実力が拮抗していれば上位種に従わないことも多い。
だが、俺たちの目の前に現れたのは、ゴブリンの上位種の中でも、実力が高い種ばかりだった。
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