不遇天職と不遇スキルは組み合わせると最強です! ~モノマネ士×定着で何にでもなれちゃいました~

渡琉兎

文字の大きさ
29 / 46

第26話:三匹の上位種

しおりを挟む
「ゴブリンナイト、ウォリアー、ハイモンクだって?」

 こいつらは群れを率いることの多い上位種だが、こいつらを従えている、さらに上の上位種がいるってことだ。

「レミティア様、身体強化魔法をお願いできますかな?」
「わ、分かったわ!」

 俺が警戒を強めていると、後方からバズズさんとレミティアの声が聞こえてきた。

「フルブースト!」

 レミティアがそう口にすると、俺たちの体に美しい純白の光が降り注いだ。

「これは……?」
「レミティア様の聖魔法、フルブーストです、アリウス殿!」
「私も前に出ます。レミティア様は防御魔法で自衛をお願いいたします」
「分かりました。皆さん、お気をつけて」

 フルブーストによって身体強化されたとして、二人でゴブリンの上位種を三匹、一斉に相手取ることは難しい。
 そのことに気づいていたのだろう、バズズさんも前に出てきた。

「レミティアの護衛は大丈夫なんですか?」
「問題ありませんぞ。レミティア様の防御魔法は一級品ですからな。とはいえ……」

 そこで言葉を切ったバズズさんは、背中の大剣を抜き放つと、剣先をゴブリンウォリアーへ向けた。

「長い間で一人にするつもりはありません。ウォリアーは私が相手をいたしましょう」
「それでは私はハイモンクを」
「ってことは俺は、ゴブリンナイトだな」

 それぞれが誰を相手にするかを決めたところで、俺たちは一斉に駆け出した。
 ほぼ同時にゴブリン上位種たちも駆け出しており、彼我の距離は一瞬にして詰まった。

「うおおおおっ!」

 俺が鋭く振り抜いた剣と、ゴブリンナイトの直剣がぶつかり合い、激しい金属音が洞窟内に響き渡る。
 それも、こちらの戦闘だけではなく、同時にバズズさんとリディアも戦闘を開始したので、音の広がりは相当なものだ。

『ゴブ! ゴブゴブ! ゴブラアアアアッ!!』

 だからといって、たかが音だ。目の前に迫ってくる直剣への集中力が欠けるようなものではない。
 数合打ち合ったあと、俺は軽く後方へ飛び退き、着地と同時に再び前進。緩急をつけた攻撃を仕掛けていく。

『ゴブラアアッ! ゴブブ、ゴブラアアアアッ!』

 ちっ、こちらの緩急をつけた攻撃にもついてくるのか、ゴブリンナイト!

「それなら、これでどうだ!」
『ゴ、ゴブリャ!?』

 単純な剣術だけではゴブリンナイトとほぼ互角。それならスキルを多用すればいいだけの話だ。
 普通はできないだろう。しかし、俺にはできるんだよな!

「快速」

 俺は快速スキルを使って一気に前へ――出るわけではない。
 大きく後方へ飛び退くと、そのまま壁に両足をつける。

『ゴブ?』

 ゴブリンナイトは困惑気味に首を傾げている。
 そうだろうな、俺の行動の意味なんて、お前には分からないだろう。

「怪力、飛行!」

 足の筋肉を強化して壁を蹴りつけると同時に、飛行を発動させて超低空飛行で一気に接近する。

『ゴブラッ!?』

 驚愕の表情を浮かべたゴブリンナイト。その顔を俺ははっきりと見ていた。

「はあっ!」

 ゴブリンナイトが直剣を盾代わりにしようと腕を動かしたが、完全に遅れている。
 俺は柔剣を用いて剣の動きを波打たせると、直剣を回避してゴブリンナイトの首へ剣身を滑り込ませた。

 ――ズバッ!

 ゴブリンナイトの首が宙を舞うと、残された胴体から力が抜け、ゆっくりと後方へと倒れ込んでいった。

「よし、次だ!」

 バズズさんかリディアの助太刀にと振り返ろうとした直後――

「――!?」

 背筋が凍るほどの悪寒を感じ、俺は先の通路へ視線を向けた。

「…………レミティア!!」
「え?」

 俺はレミティアの名前を叫ぶと同時に駆け出す。
 レミティアは驚きの声を漏らしているが、名前を呼んだ理由を説明している暇はなかった。

 ――ゴウッ!

 再び噴き出した炎が、レミティアを狙ってきた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

追放された【ガチャ師】の俺、鑑定不能のゴミアイテムばかり出ると思いきや、実は神話級の遺物だった件

夏見ナイ
ファンタジー
ユニークスキル【ガチャ師】を持つレクスは、所属するSランクパーティで「ゴミ出し」と蔑まれていた。彼のスキルが生み出すのは、鑑定不能のガラクタばかり。ついに役立たずの烙印を押され追放された彼は、辺境の地で絶望の淵にいた。 だが、そこで彼は気づいてしまう。誰もがゴミと捨てた鑑定不能のアイテムこそ、かつて世界を創った神々の武具――『神話級の遺物』の封印された姿だったのだ! これは、ゴミ拾いと罵られた男が、世界で唯一の【神話級ガチャ師】として真の力に覚醒し、心優しい仲間と共に自分を追放した者たちを見返し、やがて世界の運命に立ち向かう逆転成り上がりファンタジー。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...